嘗て至高だった父へ【OVERLOAD】   作:エーブリス

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前回、割と散々にネタにしたからさ…言及するけど。






至高の41人と、完璧超人始祖って、なんとなく在り方が似てるよね。
主に「最早当人たちにも、遠い遠い夢の中の存在である」所とかさ

あんま言うと、シーズン3を前にネタバレになるので、やめとく。



第32話

 

 

 

 

 

 

 

 


 ~いつかの記憶~

 

ランドナ

「はァ~い。

またまたやって参りましたァ~、本日のお仕置きドナちゃんでぇ~っす」

 

カーキィ

「えっ何このオッサン、なんで聖飢魔Ⅱみたいな恰好してんの?」

 

リリューム

「そも『またまた』とか『本日の』とか言いますけど、初めて見た気がします…」

 

デルモん

「………」

 

ニモエル

「どういうテンションなの…?」

 

 

ランドナ

「では、本題に入るとしようかァ。

――――この中に一人、今日…いいや!昨日の宿題まですっぽかして、ユグドラシルにログインした奴がいる」

 

カーキィ

「あぁそういう…」

 

ランドナ

お前か?

 

カーキィ

「違うわよ!」

 

ランドナ

じゃあ、お前か?

 

リリューム

「ち、違います…」

 

ランドナ

「ふむ…では誰だァ?

モニ…おっとっとっと…ニモエルは皆の分、提出してくれたからなァ」

 

デルモん

「………」

 

ランドナ

「制限時間を設ける。

今ならペナルティ半分で赦してやろう」

 

カーキィ

(ほら、サヨリ!早く!)

 

デルモん

(シッ!)

 

ランドナ

「では開始する。

…ッア♪~んきぃ~りのタチトゥムもぉ~りのトトゥトゥタトゥ~♪」

 

リリューム

「制限時間『蝋人形の館』で数えるんですね」

 

ニモエル

「しかも何で歌詞、誤魔化してるのかしら歌詞知ってる筈なのに

 

 ~ちょっと後~

 

ランドナ

「…♪~みィ~トゥ~のやか――――はいドォーン!、誰も名乗り出ない。

…ふうん、なら俺の勘違いか」

 

デルモん

「………ホッ」

 

 

 

ランドナ

お前を、蝋人形にしてやろうかぁああああああああ!!!

 

デルモん

うわああああああああん!

ごーめーんーなーさーいーーーーーーーー!!!!

 

 

ランドナ

「はい、というわけで…先三人で遊んでなさい。

――――お前さ、やる事やってからユグドラシルって…何度も言ったよな?

 

デルモん

「だってぇ…昨日今日で数学の問題難しくてぇ…」

 

ランドナ

「冗談だろ、あのレベルなら直感モノだろ最早…ていうかそれなら誰かに相談なりしろと…」

 

カーキィ

「…いや、あの問題を直感は無理でしょ」

 

この後デルモんは、態々コピーして持ち込んだ宿題と共に、態々作られた教室(マスター権限でのみ出入り可)へ閉じ込められた。

 

 

ランドナ

「やまいこさん、コレで良かったのでしょうか…」

 

やまいこ

「先ず問題があるとすれば、聖飢魔Ⅱ、かな…?ウケたの?


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

汚泥より放たれる、極太の極光が…次々と軍隊を消滅させる。

そして迫るインスマスのファランクスが、銃弾を“倍の火力で”弾き返し――――その隙間を、荷電粒子の刃が切り裂いていく。

 

 

「あいつらッ…!」

 

霧が晴れる。

戦争の熱気が、外に放たれたのだ。。

 

 

ランドナは数刻ほど前、敵の無線をテンペスト技術*1であっさりジャックした。

故に…外周に待ち構えた、増援部隊の存在を知っていた。

 

その上で、だ…待ち構えていれば、ボロカスにやられている始末。

彼は多少の肩透かしを食らった気分に陥った。

 

 

 

敵の不甲斐なさなど、早急に忘れてしまった。

その直後、彼の死した身体を奔る…大いなる衝撃によって。

 

――――何故、待機を厳命していた…他の娘達が、ここに居るのだ?

 

幾ら人並外れて強くなったとしよう。

…いや、それだけで戦場に放り込む真似などしない。

 

 

心のどこかで叫ぶ“ダメだ、危ない、”と。

 

 もう苦しまなくていい…自分一人だけが、世界に必要な“強さ”を担う。

 だから、自分以外がどんなに弱くとも…赦されるべきだ。

 

「ッ…」

 

「っと。

お疲れ様、お父さん…暫く休めそうよ」

 

「モニ、カ…」

 

バフの反動で、多少ふらつく身体。

気持ちだけが先走る様な状態。

 

…それを支えるニモエルが――父に聞かれるまでも無く――答えた。

 

「成熟したのは、私だけじゃ無いわ。

――――成ったのよ。父さんがくれた、羽の一つ一つが…翼に」

 

「っ…!」

 

彼女は告げる。

鳥籠にいたのは、決してか弱いカナリアでは無かったのだ。

 

…長い、長い幻を見ていた様だった。

何かしらの運命が悪戯し、ニモエルへと人の認識を操る術を持たせた。

けれども父に対しては逆に…その錯覚を――――幻を解いた。

 

 

もしやもすると、ランドナはずっと前から出していたのかもしれない。

自分の役目、その答を。

 

「は、はは…」

 

その笑いは、一体何が為だったのだろう?

彼の“異形”を通り越し“無形”の精神は、その推測を許さない。

 

己自身さえも、分からない。

 

 

「…見えるかい、ソリュシャン」

 

「ッ…!

はっ、ランドナ様のご息女たちの活躍…しかと目に焼き付けておりますわ」

 

いつの間にか、彼らの背後にいたソリュシャンへと問いかける。

親子の時間を邪魔せぬ様…ゆっくり、静かに近づいたつもりだった。

 

しかし“鎌獅子”とは、闇と死の世界における頂点捕食者…その呼び名である。

隠密が完璧であるが故に…その嗅覚には引っかかる。

 

 

尤も、今ここに居るのは…そんな怪異染みた生物では無い。

たった一人、娘達を思うだけの――多少おかしな点は多いが――一般的な、父親の姿だ。

 

「すげぇだろ…僕の娘達は…」

 

「はい。

至高の御方を継ぐ者たちとして、この上ない威光でございます」

 

鳥籠の判決は出た、ノットギルティだ。

臨時とは言え裁判官の色眼鏡が、些か強過ぎる気もするが…。

 

けれども、はためく翼は誰が見たって、力強い。

 

 

 

即ちこの瞬間、彼の任務は終わったという事だ。

 

どこか力の抜けるような感覚を覚える。

少しずつだが、ニモエルへと寄りかかっていく。

 

 

「…鳥籠も、親鳥も。

最早、なにも不必要(いらな)いな…」

 

「――――お言葉ですが、ランドナ様」

 

もう眠ってしまおうか?柄にもなく考えた、その次の瞬間だった。

またまたいつの間にか…今度は自分から、横槍を入れて来た…アルベドの鋭い美声が響いた。

 

「あ、あぁ…アルベドか。

何だい?」

 

「先ず…被造物たる私めの、愚かな口答えをお許しください。

――――ただ子を育てるだけを後世への奉仕、ましてや其れのみを命題とする等、下等かつ凡百な命。

…それこそ、野をさまよう人間以下の獣と同じにございます」

 

そうでありましょう?

剃刀のように鋭い目つきで問いかける彼女の言葉には、少なくとも“続き”と“真の意味”が存在している様だった。

 

 

幻と言えど、至高ともあろう御方が、その程度で終わる筈は無い…という“続き”。

 

そして「面を出して泣きつくなら、中途半端は許さないぞ。そして二度と逃げるな」という脅しが“真の意味”と、言った所だろうか。

 

 

…これはランドナという一個人の推測に過ぎない。

生まれも育ちも劣悪な彼の、捻くれた妄想で済むのなら――――無論、それでいい。

 

もし真実なら…彼女の内の“黒い感情”との折り合い、なのかもしれない。

或いは別の――――神さえ謀るような、壮大な陰謀の一滴か。

 

 

…どうであれ、これは一種の依頼だ。

自身の力が求められる事に、原則優劣を付けないのがランドナ(町田怜雄)のポリシーだ。

 

普段なら料金をしっかり頂くが、この度はお友達価格。

自分の転職先と、娘の社会見学先の提供をちょっぴり頼むだけ。

 

 

――――なんか、普通に依頼貰うよりも、大分割高になってはいないか?

 

けれどもそれは、今気にすることでも無い。

深い頷きを見せた彼は…今度こそ自らの足で立つ。

 

「――――ようやく、僕に特殊役(ワイルド)としてのお株が回って来た…らしい」

 

「ジョナサンの時はずっと斥候だったらしいわね」

 

「魔法、使う訳にも行かなくて」

 

彼はカースドフォースから霊柩車の車列(ペインティット・ブラック)へと持ち替える。

特殊役の立ち回りとして、彼は基本的に部隊の後列周辺を陣取るのだ。

 

その際――ユグドラシル時代は問題無かったが――攻撃範囲の大きい散弾銃では、間違いなくフレンドリーファイアが発生する。

 

車列にはその心配が全くない、という訳では無い。

けれども、ランドナの射撃スキルを鑑みれば0%に限りなく近い。小数点以下に無限にゼロが立ち並ぶのだ。

 

 

理由が何であれ、一先ずカースドフォースはインベントリへとベンチ休憩に入った。

直後――――どこか近くで爆発が起こる。

 

将軍、お待たせしました

 

霧の壁範囲内の敵残存戦力の殲滅を確認。

これより我々も、魔導国本隊への合流を行います

 

最後にやってきたのはシージ達だった。

アストラル系特有の()()()とした、重く素早い軌跡。

 

その後ろは…まごう事なき屍山血河。

 

轟々と燃え盛る炎は、装甲車等の車両から放たれるもの。

ばっくりと穴の開いたボディからは、分厚かった複合装甲の断面が見える。

 

これでは、奇跡さえない限り生存者は想像もできないだろう。

 

 

「完璧だな。

――――それじゃ、行くか」

 

言葉を言い終えるより早く、そして突拍子も無く…ランドナは、次の戦地へと駆けた。

その速度は、人間種よりはずっとずっと速いが、別に(初速以外は)最速という訳では無い。

 

「いいの?事前の確認とか」

 

「予想は付くさ。

現状そんな…勢力が3つも4つも入り組んで無いんだし王国もあれじゃ動かねぇだろうしな

 

ニモエルは翼を使い、父の右斜め上を飛翔。

速度としては大体同じ程度である。

 

 

「では…私は、そろそろアインズ様の元へ」

 

「おう。

ありがとうね、アルベド」

 

「勿体無いお言葉です。

それでは――――くれぐれも、よろしくお願いいたします」

 

アルベドは言葉の通り、アインズが居るのであろう――――二人とは別方向へと向かった。

まあ、件のギルドマスターも前線付近にはいるのだろう…きっと、そう距離は離れない筈だ。

 

 

「…私達はどうする?シージ」

 

前線に行くか?

尤も、向こうは更に開けてる…お前の適性には向かんだろうが

 

「貴方達も大概じゃない?」

 

残るソリュシャン及び、シージの半分。

彼女らは最前線で殴り合うよりは、もう少し“薄暗い仕事”の方が力を発揮する。

 

全くだぜ。

じゃ――――あれだ“もっと奥”へ行くかい

 

「賛成よ。

それじゃ――――私は先ず一報は入れるわ」

 

俺達は事中の報告で。

結果があれば、どうとでもなるさ

 

ここでシージ達は、まさかの独断での行動を決める。

 

立場上、色々と許されざる行為だが…結果さえあればいい。

そう判断する所は、エンジニアだった親の血を、色濃く受け継いだのだろう。

 

 

…まあそれ以上の理由はあるのだが。

 

「アテはあるの?」

 

無かったら指示を仰ぐ

 

これ以上、語る事は無い。

そうと言わんばかりに、ソリュシャンはメッセージによる会話を始めた。

 

シージ達は、また重い空気を残して走り去る。

 

 

 

――――報復の刻、訪れり。

今こそ地獄からの生還者により、その業火で暖められた“絶望”が孵化する。

 

静寂の中…ひたすら惨く、それが降り注ぐ。

死を厭わない、信念あるいは忠義に身を捧げし戦士。

 

その得物こそが…己の宿命を壊すのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 ~いつかの記憶~

 

ランドナ

「いや…流石に円形闘技場(コロッセウム)のプロレスリング出現機能はバレそうだし、なんなら雰囲気ぶち壊しですし、怒られるんじゃないですか?」

 

るし★ふぁー

「肉世界的には何も違和感無いでしょ。

サイコマンの遺産って事で大体片付くと思うよ。イッツ、オモシロ起源説

 

ランドナ

「まさかのナザリック、完璧超人始祖が起源…と言う事ですか。

――――何なら、超神由来の可能性すらあると」

 

るし★ふぁー

「考えただけでクソ面白いなソレ。

後それに、このリモコン操作でしか出てこない訳で…しかも隠し場所も、無作為に選ばれた一席に、特定の合言葉を言わないと出てこないから」

 

ランドナ

「まあウチのメンバーで、不意に「アンジンロッソ」とか呟く人間居なさそうですもんね」

 

るし★ふぁー

「寧ろその塩超人の言葉を突拍子も無く呟くヤツとか、逆に見てみたいわ」

 

ランドナ

「…僕?」

 

るし★ふぁー

「なワケwww。

…まあ、初級ダンジョンに指摘が無ければフルパワー装備で挑む様は、手加減もプロレスも知らない三階のバカっぽいとも言える」

 

ランドナ

「んじゃ、もののついでにサタン狩り行きましょうか」


 

 

 

 

 

 

 

 

『――――後ろの方、地域住民の完全撤退が完了したそうよ!

ここから更に本気でやれるわ!』

 

「おっけい!

――――皆、もう一息だよ!」

 

自らが呼び出した海水。

その波に合わせ…デルモん及びに深海魚人(インスマス)が大きく前進。

 

オリーブドラブの軍隊を押し返しつつ、飛来する弾丸に砲弾…その破片等まで、纏めて跳ね返す。

それも、飛んで来た時の数百倍に、威力を増幅して。

 

 

タンクこそ、サシの殴り合いを制する。

そうとでも言わんばかりに、猛攻を仕掛けた。

 

「そぉらあっ!」

 

追い討ちに起こした渦潮。

それは、勢いによって天へと伸び…濁流の柱と化す!

 

1本、2本、3本…増えに増えては、雑兵どもを巻き上げる。

弾丸では決して倒せぬ…無敵の突撃兵とも言えるだろう。

 

特に、戦車などの兵器群が巻き上げられた時が危険だ。

濁流に混ざる鉄片が、それを強力な掘削機に変えてしまう。

 

歩兵など、一般・強化兵問わずに粗挽きミンチだ。

…流石に腸詰するには粗すぎるが。

 

 

――――既に誰もが気付いている。

現状これらの機動兵器に、先のハインドDのようなバリア機構は見られない。

 

何らかの要因…例えば先の“騎士”の撃破だろうか?

そこで、エネルギー供給にアクシデントが起きたのか。

 

…それとも単純に、機構の量産体制が整っていなかったのか。

 

 

『いいわいいわ!デルモん、そのまま押し上げちゃって!

――――リリュ準備は?次は着弾地点10mもズラすなんてポカしないでよね!』

 

『うるさいですね、貴方の誘導がヘタクソなんです。

種族名もスキルも何もかも、ニュータイプの物真似みたいなのに』

 

相も変わらず、気に喰わない姉妹に悪態を付きつつも…リリュームは指定された地点へと急行。

 

到着するのと同時に、その周辺を不完全蕩泥(ハーフスライム)特有の泥への潜行と浮上を繰り返す、通称【バタフライ走行】で取り囲むように走る。

 

 

これは、ただ単に「デカい泥の塊が突然聳えて取り囲まれる」という視覚的威圧と共に、スキルで「潜行した周囲地面が泥濘と化す」ので、心理的・物理的に敵の機動力を削ぐ事が出来るのだ。

 

現状、ただでさえ…成人男性の腰あたりまで海水が溢れているのだ。

その上で地面がぬかるめば、陸戦機械化大隊の機動力など目に見えて落ちる。

 

 

――――まあ、それはそうと、だ。

今の三女の物言いに、カーキィがキレない筈もなく。

 

『一ッ言ッ!多いのよ!あんたは!

真後ろでゼクノヴァしてやったっていいのよ!?こっちは』

 

『やめて下さいよ。

こんな所にイオマグヌッソの残骸持ってこないでください、普通に迷惑です』

 

『じゃあアンタ自分で測量しなさいよ!

こっちがその手間省いてやってんの忘れた!?』

 

『あーはい結構です、私が計算する方が確実です』

 

「二人共!

喧嘩しない!こんな時に!」

 

通信上で始まる姉妹喧嘩だが、こんな事しながら連携作業は着実にこなしている。

その辺りは、父親の教育は本当に実を結んでいた様だ。

 

 

…アインズはコレを聴きながら、嘗ての仲間を思い出している。

誰と誰かは、言うまでも無いだろう。

 

それはともかく、と…彼も動く準備をしていた。

 

『カーキィ、俺も所定の位置についた。

後はそっちからの指示で失墜する天空(フォールンダウン)「アインズ様ぁあああああ♥」げぇッ…コホン、指示は頼んだぞカーキィよ』

 

『おっけー!

あと、魔導王ロールお疲れ様『お、おう』

 

何と言うか、魔導国宰相を兼ねた専属護衛官が到着なされた様だ。

 

 

随分と漫才が続いたものの、本来ここは正念場。

空中にて可変飛行を行うカーキィが管制となり、それらの情報を【感受性精神力場(サイコフォース)】の共有能力を用い、味方全体へ伝達している。

 

うっかり、敵に漏らさないようにする訓練は――――あの日からずっと重ね続け、今現在花開いている。

 

 

『あと30秒後よ!各員用意!』

 

「カキちゃん!なんか来た!

あれって――――サンダーボルト、って奴じゃない!?」

 

『はぁ?サンダーボルト?A-10?

そんな古代兵器――――あるわね!落とす!』

 

こちらが爆撃をするなら、向こうも同じ事をする。

それをそのまんま言葉にする様に…敵軍も攻撃機を用意して来た。

 

 

機種は【A-10 サンダーボルトii】。

デルモんやアインズ等、2130年代人からすれば戦争博物館の置物。

現場でもせいぜい極貧極まる反アーコロジー勢力が、たまーに汚染された空を飛ばすくらいだ。

 

…そして現行主力戦闘機に秒で落とされるのが、お約束。

 

――――けれども、この件と魔法の中世風世界からしたら、そこらのドラゴンより、ずっとずっと厄災の度合いは高い。

搭載された【報復者】の前では、かのスマウグの放火さえ…ただのボヤ騒ぎである。

 

当然、今の魔導国軍にも大分脅威である。

あの黄緑のエネルギーがある分、件の大口径機関砲(GAU-8アヴェンジャー)が自軍中央へ無造作に放たれるだけでも痛手なのだ。

 

『3機か…!

間隔が広い、もしかすると1機逃すかも!』

 

「ごめん!そんな高高度の対空技無い!」

 

『こっちも複合魔術の収縮中です。

他に割くリソースがありません』

 

『私も超位魔法で動けん…!

アルベドもダメだ…対空砲火で釘付けになっている!』

 

『ウソでしょ…まあいい!やるだけやってみる!

多分このレーザータレットならッ…でもタイミングが』

 

「ッ…!(もしカキちゃん失敗したら、皆が…)」

 

ここに来て、更なる窮地が襲う。

いくらサンダーボルトが空対地攻撃機故の低機動力だとして、現状の距離感では、広域散開したそれら3機をカーキィ一人に任せると…確実に1機は逃す。

 

その一機による機銃掃射と爆撃で、間違いなくこちらの犠牲者は跳ね上がる。

 

 

「…ちょっかい出して押し返すだけならどう?」

 

『それなら間に合うけど、多分脅しじゃ意味ないでしょ。

私がもう何機の兵員輸送ヘリ、落としてると?

…明らかに制空権が取れてない状態で攻撃機突っ込ませてるんだから、向こうも半ば特攻隊扱いで出してるだろうしッ…!』

 

そうだ、いくらサンダーボルトが優秀な機体だからと言って、無理がある。

何も…制空権も確保できてない空域へと、適当にぶち込んでいい訳では無い。

 

 

とは言え30㎜の機関砲と、大質量の爆弾は――しつこく語る通りに――喰らえば、魔導国軍とも言えど、無傷では済まされない。

 

此方が落とせても、その鉄槌は間違いなく振り下ろされる。

 

『最悪ダメージレースで勝つのは…ダメ、ですよね。

さっきまでの部隊は、代えの利く低位から中位の召喚アンデッドが潰された程度。

…対しては今回は、相当数の戦力に加え、NPCまで投入されている。

――――これで半壊とかしたら、確実にこの後国の威信に関わります』

 

そう、ここで徒に犠牲者を増やせば、後が不味いのだ。

魔導国の国力に、属国や周辺国が疑問を覚えれば…望まぬ混沌で溢れかえる。

 

もしやもすると、この謎の近代的戦力へと肩入れする国が増えるかも知れない。

 

特にバハルスだ。

あの鮮血帝の事だ、いくら闘技場の件で色々へし折ったにしても、戦果によってはモダン軍隊の出所とコンタクトを取るだろう。

 

仮にそれでジルクニフを処したとして、現状の帝国を引き継がせられる人材は…正直難しい。

 

 

つまりここで、何としても「魔導国に手を出すのはリスク的にヤバい」と思わせなければならないのだ。

 

 

 

更にここで、デミウルゴス及びにコキュートスからの伝言(メッセージ)が、アインズへと届く。

 

『アインズ様…超位魔法展開中、失礼します。

やはり、こちらの戦力に…あの航空兵器を落とし得るだけの対空機構が存在しません』

 

『仮ニ魔法ガ届イタトシテ、先ノ…ハインドDナル航空機ノヨウナ防壁ガアルノナラバ、効果ハ見込メマセン』

 

『そうか…。

(確かに、ここで国の求心力が削がれるのはマズイ…国のや、やた、ええと…屋台骨が漸く組み上がって来たところなのに)ッ…』

 

一頻り悩んだ末…アインズは判断を下す

 

『止むを得ん。

カーキィ及び浜辺に打ち上げられたイカ(シーサイド・スクイッド)各員よ、敵航空戦力の殲滅は諦め、我々の被害を極力減らす方向に――――』

 

『――――アインズさん、まだ諦めるのは早くなくって?』

 

突如として、割り込んで来たニモエルの声。

先程、無線越し聞いた…緊急時故の焦りはもうない。

 

いつも通り、堂々とした様が見える。

 

「お姉ちゃん!」

 

『ッ!(ニモエルちゃん!?まさか)』

 

『カーキィ、皆の視線伏せさせてね!』

 

その直後―――すぐ後ろで“紅蓮の満月”が、妖しく輝いた。

 

 

 

 

するとどうだ?

何の冗談だろうか。

 

…サンダーボルトたちは、その場で急旋回を始める。

味方の方へと機銃掃射、及び爆撃を開始した。

 

『うわぁ…(やっぱ怖ッ、星海使(スターゲイザー)の認識災害スキル…どんなに抵抗しても、自覚無くやられるって話だもんなぁ。俺掛かってないよね?まぁ、ともかく!)。

良し、後は――――カーキィ!あとどれ位だ!』

 

『今の奴で状況変わったから…うん、位置そのまま、あと10秒後!』

 

『了解です!』

 

『承知した!』

 

『それじゃ、私は別の事してくるわね』

 

そして再開される、攻勢への布石。

指定座標を超火力で叩けば、逆に敵軍が総崩れとなる。

 

「皆構えて!来るよ!」

 

デルモんの一声で、インスマス達が完全防御態勢に入る。

それに合わせ、後方で待ち構える斬り込み部隊もまた、身を屈めた。

 

 

『3、2、1――――今ッ!!

 

『行きます!』

 

『【失墜する天空(フォールンダウン)】!!!!』

 

瞬間――――放たれる極光。

片や地より、死の絶熱が膨れ上がり。

片や天より、魔の火球が墜ちた。

 

塵の一つも残さない決定打(いちげき)が、確実に敵の“はらわた”まで抉り込んだ。

 

 

機械化大隊、最早型無し…陣形総崩れ。

 

ナノマシンのお陰か、どうも撤退指示は早かったようだ。

二つの超攻撃の瞬間には、あらゆる敵性ユニットが…来た道を引き返していた。

 

数人の捨て駒…もとい、殿を除いて。

 

『敵軍撤退!撤退してる!

後はアインズさんに任せるわ!』

 

『決まっている――――追い潰せ!

歯向かう愚か者に、制裁を与えるのだ!ナザリックが威を見せよ!』

 

「え、え!?やるの!?

逃げてるんだよ!?」

 

『当たり前でしょ!変に慈悲ッたら、結局ナメられるわよ!』

 

やがて始まる、無慈悲な追撃戦に…デルモんは戸惑いを見せた。

 

いくら今まで…同じ?人間にすら手をかけた残虐非道の軍隊だろうとも。

彼女は、弱った所を叩くのは気が引けてしまう。

 

 

しかしこれは、先の“やられ過ぎ”と話は同じ。

ここでやらなければ、最悪の場合無礼(ナメ)られる可能性が出て来る。

 

砕けて言えば「まあ、あいつ等何だかんだで甘いし」という形で、だ。

 

 

なまじ周辺国の情勢が荒んでいるあまり、その考えも通用する可能性が出て来るのだ。

何も、ちゃんとモノを考えられる頭脳だけが、国の舵切りをしては居ない。

 

そんな馬鹿が頭の国など、正直一捻りだろうが…残念ながら天才より馬鹿の方が総数は多い。

馬鹿全員でかかって来られたら、流石にリソースが削られる。

 

 

…また、そのモダン軍隊との戦争に焦点を絞っても、こちらの損耗があまり激しくない。

そんな今…此処で敵戦力を切り詰めねば、もっと厄介な現代兵器を製造される可能性だってある。

 

削れた筈のリソースを、存分に使われて。

屈辱である。

 

 

先のサンダーボルト等の攻撃機以上に対地攻撃性能のある

 

…例えばB29等の爆撃機を大量生産されてみろ。

その上で投下する爆弾全てに、あのエネルギーを注いでみろ。

 

魔導国どころか、ナザリックの上半分さえ残るか多少怪しい。

 

 

現状生産が間に合ってないと思しき、例の高性能バリアだってそう。

敵兵一人一人に配られる可能性もあるのだ。

 

 

――――苦難を乗り越え「それでも」と…誰とでも手を伸ばし繋げる優しさ。

それは戦時では、甘さという利敵行為になってしまう。

 

どうして善良を罪に問わねばならぬのだ。

本当に、戦争とは悲しいものである。

 

「魚神様、お気持ちは分かりますが…今は、後ろの仲間や民を救うと思い、何卒心を鬼にしていただきたく存じます」

 

「…悪ィな、お魚――――おっと、確か、デルモ…だったか。

今はやらなきゃやられる、って状況なんだよ」

 

「み、皆…」

 

彼女の両翼に立つ、親衛隊深海魚人(インスマス・ロイヤルガード)のアンディと、蜥蜴人(リザードマン)のゼンベルによる説得で、どうにか追撃の意思にギアが入る。

 

 

…奴らはいずれ、また友達を殺しに戻って来る。

それまでの時間を稼ぐためにも、そして将来死ぬ仲間を減らす。

 

――――最終的には、ゼロにするためにも。

 

誰も、殺さずには生きられない。

どちらかを選ばねば生きられない。

 

…何も選ばぬ者は、味方どころか敵ですら無い。

只の、退けられない邪魔だ…最低以外の、何でもない。

 

 

その事実への直面が、踏み出す足へと意味を持たせた。

選んだのだ、自らの意思と責任を以て。

 

「…ごめんね、待たせて。

――――行こうッ!」

 

「承知ッ!」

 

ぶぅん…と、赤い刀身の重刺剣【土星ダーツ】を振るい、デルモんはインスマス共々…海水の上を滑り始める!

 

躊躇はしたものの、以前ほどのモノではない…決意の切り替えは、成長の賜物だろう。

 

「聞いたな!ザリュース!」

 

「ああ…ッ!

全員!斬り込むぞ!」

 

ぉおおおおおおおッ!と…背後のリザードマン達が鬨の声を共鳴させる。

彼らは海中へと潜り込み、泳ぎでインスマス軍の後を追った。

 

何分、走るよりも泳ぐ方が早い…そういう種族なのだ。

水で満たしたのは、この時の為でもある。

 

 

――――途中、空から1機…急降下して来る機影が一つ!

先程のサンダーボルト、その生き残りだ。

 

2機はどうも、アインズとリリュームの攻撃で散った様だが…最後の1機が、破れかぶれの攻撃を仕掛けて来たようだ。

 

引き続き告げるが、デルモんには有効な対空スキルが、あまり存在しない。

 

「カキちゃん!アレお願い」

 

『今向かって――――あ、やっぱ大丈夫そ』

 

応援をドタキャンしたカーキィ。

彼女は一体、何を見たというのか。

 

「え!?何で「デルモんちょっと頭下げろ」ぇえ、うわッ!?!?!?!?!?」

 

その答えは、間髪入れずに知る事となった。

 

聞き覚えがあり過ぎて、すぐわかる声。

声程じゃないけど、かなり聞き覚えのある銃声。

 

 

背後には父、ランドナが立ち…カースドフォースでサンダーボルトを撃滅していた。

 

…先ほど、車列に持ち替えたばかりのハズなのに。

まあ、鴨を撃つには突撃銃より散弾銃の方が適している訳だ、適材適所である。

 

「ハインドDに続いてサンダーボルトとは…。

なんか軍事知識覚えたての小中学生みたいなチョイスだな次はトムキャットか?

 

「とーさん!」

 

「何足止めてんだ、行け、行け」「あッそうだった!」

 

大好きな父親の援軍に喜ぶが、今はそれ所では無いと急かされ、また前身を始める。

 

 

因みに彼は、纏っているエンジニアスーツの効果により、水中及び宇宙空間を高速移動できる。

…ユグドラシルでは、あまり使わなかった機能だ。

 

「い、いつからいたの!?」

 

「ちょっと水潜るから、無線でな。

――――さっきからいたぞ。ニモが来たのと同時くらいに』

 

「き…気が付かなかった~」

 

『俺の攻撃、大体地味だからね』

 

自ら言った通り、ランドナの攻撃は地味なのがウリである。

 

目立ちにくく弱そうなエフェクトの、通常ジャブ程度のなんてこと無い通常攻撃。

それが、即死クラスの大ダメージを持っている事…それが強みなのだ。

 

故に、目立たないのは仕様である。

 

『どうせ見せしめ目的の、敗残兵狩りだ。

いいかデルモん…深追いする必要は無いが、手を抜くような事はするなよ。俺も、上手くは言えないが――――ただ、その、優しさは…いつかの為に、とって置いてくれ。お前が手に入れたものだろ?』

 

「うん…!」

 

もう敵の背中は目前。

残るは――先の一瞬に、切り替えた――ただ一つの決意のみ。

 

――――……ごめんな

 

その一言の、誰にも聞こえない謝罪。

それは…彼女から芽生えた覚悟を、枯れる間も無く踏みにじってしまった事への後悔か。

 

雷であり太陽(ライジングサン)”である…他者を照らせる“光”たるという覚悟を。

 

 

 

 

 

 

 



一度も嘘を付かないで 一番も後悔をしない

そんな日があったかな? あの日あなたに出逢うまで



 

 

 

 

 

 

 

そしてドラマは、もう一つ…同時に進む。

 

『…あの、ランドナ、さん…ですよね』

 

「ええ、モモンガさ…いや、アインズ王?アインズさん?ですかね」

 

『まあ、今はそれでお願いします』

 

「…お互い、積もる話もあるでしょう。

けど、後で」

 

『はい、また』

 

十と数年来の、古き友との再会。

しかし今は、それを喜ぶ場面では無かった。

 

 

今は、何処までも追い望んだ夢に縋る事は出来ない。

ただ…此処にいる全員と共に、生きて明日の陽を拝む為。

 

凍る様な絶望を、眼前の敵目掛けて押し付ける。

 

只それだけだ。

御託は要らない…明日の権利の為に、戦え。

 

 

「…ッ!」

 

ダダダ、ダダダ、ダダ…と。

相変わらずの射撃技術を用い、機関銃のような連射で次々と目標を撃ち抜く。

 

無論、先と同じくセミオートでフルヘッドショットだ。

 

 

やがては視界の中に、脅威となり得る殿が見当たらなくなる。

…次にランドナは、移動する地点を見つけた。

 

 

――――目を付けたのは、走行中のACV1機だった。

そこに触手を伸ばし、ワイヤーアクションの要領で移動…。

 

上部に飛び乗った直後、車列の弾頭を全て【徹甲弾(アーマーピアシング)】に切り替える。

間髪入れず、車体目掛けて掃射を開始。

 

この時、動力や燃料、弾薬周りは避け、搭乗スペースを狙った。

誘爆されては、危険極まりない。

 

 

――――あっという間にハチの巣となる。

 

その頃には、兵員輸送装甲車は中身ごと息を引き取っていた。

機動停止を確認した彼は、その上から援護射撃を始める。

 

 

…辺り一面は、これまた地獄絵図だった。

海水で足を取られ、満足に動けぬ敵兵を…泳ぎに長けたリザードマンが海中へと引き込む。

 

または機動力で翻弄しながら、剣や斧等の近接武器で次々と屠っていく。

その様は、ちょっとしたモンスターパニック映画だ…軽く赤い絨毯を歩けるかも。

 

いや…サブカルチャーが氾濫した今の世だ。

似たシーンが、古いB級映画か…その手のハリウッドにもありそうだ。

 

 

…装備には(西暦換算で)数百年の差があったハズだ。

それが、戦術的有利によってこうも容易く覆ってしまうらしい。

 

この絶望でも、どうせあの兵士はナノマシン制御で何も感じてないのだろう。

そう彼は、一種の気味悪さ・気味悪さを覚えた。

 

自分も、その類とあまり変わらない事を自覚しながら。

 

 

その場所に問題は無いと判断。

…次は別の方向――――ちょうどデルモんが戦っている地点を見た。

 

「…(殿だけを狙っているな…まあ、そんなもんだ)」

 

逃げる背中を切り伏せるのは、やはり抵抗があったらしい。

どうしても向かってきてしまう、足止め役のみを狙っていた。

 

まあ、ちょっとした見せしめなのだ…無理に追いかける方が愚策でもある。

 

 

その背後でギギギ…と、覚束ない動作で、戦車の砲塔が彼女を狙う。

不味い――――とっさの判断で、砲手のいる部分を狙う。

 

が、引き金を引く前に…1本の大刀が、厚いチタン合金を穿つ。

すぶりと、深々と。

 

「御方ノ、ゴ息女ニ…手出シハサセヌゾ…!」

 

「あれは、コキュートス…か」

 

冷気纏う、水色のシルエット。

ナザリックの高火力仲間…武人建御雷の形見を彼は忘れる事は無かった。

 

 

「えっ…あ!貴方は、確か…え~っと」

 

「魚神様、こちらがコキュートス殿になります」

 

「あ!建御雷さんの!」

 

「覚エテ頂キ、コノ上ナイ幸セニゴザイマス。

――――サァ…此処カラハ、我ラ守護者ノ役目。オ嬢様ガオ手ヲ汚サレル必要ハアリマセヌ故」

 

そう言って、彼はその巨躯を用い、デルモんの盾となる様に仁王立ちした。

しかし…件の彼女は「大丈夫だよ」とでも言う様に、刀を握るその手の1本に触れ、隣に並び立つ。

 

「私は…もう逃げたくない。

例え指先どころか、身体中が血塗れになったって…!

見えない今日の――――そして明日から吹く風に、立ち向かう事を辞めたくない」

 

「…!」

 

「その向かい風が、私の絶望だったとしても…ね。

だからこそ、だよね…立ち止まってられないって、負けられないって。

靡かれて、闇の底まで流されて…誰も幸せにならないなんて、絶対いやだ」

 

そして、彼女は…コキュートスに見える様、てを刺し伸ばした。

 

「だから――――大丈夫、一緒に行こう?コキュートスさん」

 

「ッ…ッッッ!!

カタジケ、ナイ…。

ヤハリ、強イ御方ダ…オ嬢様コソ“至高”ノ後継者ニ…」

 

「ちょ、そ、そこまでは…言い過ぎ、かな…」

 

何故か感極まるコキュートスに、ちょっと過剰に褒められ、たじろぐデルモん。

彼女らの件について、ほぼ部外者だったランドナには、何事だか分からないが…。

 

 

何あれ、赦しとは稀有なものなのだろう。

 

 

…それはそうと、そろそろ先攻部隊が敗残兵への取付きに成功している。

もう周囲を満たす海水に、戦術的有効性は存在しない。

 

『…デルモん、そろそろ水引かせろ。

リザードマン達は十分位置についた、これ以上は後発の進みが遅れる』

 

『!、そうだった…打ち合わせの事忘れてた。

――――ごめんねコキュートスさん、今水無くすから」

 

「イエ…私ハ、冷気デ足場ヲ作レマスノデ」

 

多少慌てる様子を見せつつ、彼女は海流操作を行った。

みるみるうちに、周囲から水気が消えていく。

 

 

――――それが引き切る前に、一縷の雷撃が墜ちた。

 

…いや、まだ水浸しの所いっぱいあるけど?

周囲にリザードマンの軍隊とか沢山居るけど?

 

そこを高圧電流が伝う可能性、普通にあるけど?

 

「ッッッ…(ど、どこのトンマだ。クソッタレ)」

 

味方が感電死する可能性を考えていないのか?

あまりに考え無しが過ぎる、酷い何てものですらない。

 

勢い100%な攻撃に、どうも近頃の精神汚染が酷い三女(リリューム)の仕業を疑った。

 

父の見解は当初、彼女の荒れ(または“アレ”)具合を、最初は環境の変化と予測していた。

だが…暫く見て見ると、何だかスキルによる精神汚染の方が影響強い様に感じて来た。

 

 

…カーキィ曰く「パパの前以外じゃ、割とあんな感じだった」との事だが。

 

 

ともあれその“トンマ”の姿は、間もなく見る事になる。

 

「どんな武具を持ったとして…所詮人間(ムシケラ)人間(ムシケラ)ね」

 

「…(ナーベラル・ガンマ、か…アレでも炎雷さんの形見なのがな)」

 

まさかこんな形で高火力仲間の形見を見るハメになるとは。

流石に一つ、彼女の頭にも雷を落とした方がいいか?説教の意味で。

 

ランドナはそう考えてるが…ちょっと戦況に余裕が無い。

 

「またの機会に、と…(あんまり、恥のかからんタイミングの方がいいかな)」

 

この問題は多分、ナーベラルだけの問題では無い。

ナザリックのNPC全員が抱える問題なのだろう。

 

浅い説教ではどうにもならない程には…根は深く張っている、かもしれない。

…というか、41人と1人がそう言う風に作ってしまった。

 

 

意識改革云々は置いといて、問題は戦況だ。

言うまでも無く優性である。

 

追撃戦は大詰めを迎えている…やがては皆、勝鬨を轟かすだろう。

 

 

だが――――ランドナの役目は、それに混じり…勝利を分かち合う事ではない。

そんな日の当たる場所に、陰の居場所は無い。

 

陰は影へと、潜み、次の手へと駒を進めるべきだ――――休息は許されない。

 

 

魔導国は威を示した。

それが、それだけが世界樹(ユグドラシル)なのだ。

 

なれば42人目は根である。

根とは、土と糞尿に塗れ、その巨栄を支えるモノを指す。

 

「――――お疲れ様です、ランドナさん…。

…あれ?えぇと、ドナさん?何方に?」

 

闇より討つ刃は、喉元に届いてこそ価値がある。

功績とは、首を揃えて初めて示せる。

 

 

撤退した軍隊が、道標となるだろう。

全てとは行かずとも――――奴らの腱には、風刃は届く。

 

「少し、野暮用が…ね」

 

死のそよ風に乗り、訪れるは()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 ~いつかの記憶~

 

施設の管理者

「――――つまり、貴方が“あの4人”を引き取る、という事ね。怜雄」

 

町田怜雄

「そう言う事になるな。

重三きっての願いだ…この書類の通り」

 

施設の管理者

「ふぅん――――…。

…分かった、あの娘達は任せる」

 

町田怜雄

「相変わらず、話が早くて助かるぜ」

 

施設の管理者

「貴方は用意がいいから、話もすぐ進むのよ。

――――にしても“鎌獅子”が何を言い出すかと思えば、普通に子育てなんてね」

 

町田怜雄

「へっ…。

一人で第14大陸アーコロジーを滅ぼした、伝説の“アークイーター”様が言えた事かよ。

この純度100%の孤児院も」

 

施設の管理者

「その伝説は死んだわ、とっくの昔にね。

…人は変わるのよ、怜雄」

 

町田怜雄

「誰も定めには逆らえない、生き方は返って来る。

特に、闇に生まれた人間は…」

 

 

施設の管理者

「――――じゃあ、貴方は何を残す訳?」

 

町田怜雄

「さあね。

底なし沼で手ェ振るくらい、多分できるよ」


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

恐ろしき姿をしたオーバーロードは、しかしそれなりに良き政治と発展の多大な後押しによって…少しづつ、ほんの少しづつ、人々の心を手繰り寄せた。

 

しかし惜しむらくは、先に姿を晒した事。

人が数多持つ悪夢が如き姿を、一切取り繕わなかった事。

 

故に、より強い拒絶が発生し、今…巨大な戦争へと発展した。

 

 

オーバーロード(上帝)は一人では無い。

そして“かれら”の後ろには、巨大な意思(MIND)がある。

 

 

 

 

 

 

…これが俗にいう、シャドーモセス

 

「あら、ソレ知ってるのね。

図書館にノベライズあったのかしら?」

 

返答は後で行います。

敵の心臓部が近い

 

あっ…ごめんなさい

 

ここは、例のモダン軍隊…その中継基地。

どうも相手側の最重要人物が、この近くにいるらしく、周囲は厳戒態勢を敷いていた。

 

…情報自体は、ランドナが行ったテンペストによって得たモノだ。

其れを聞いたニモエルの提案で、今現在その基地への潜入を行っている。

 

…ここいらなら安心だ。

あるなら、茶菓子も出せますよ

 

レーションでいいか?

お嬢に鳥の餌なんざ食わすな

おっと、魔導国謹製だぞ?

やばいな…不敬罪でしょっ引かれちまう

 

…今後の戦いにおける“布石”を撃つために。

 

 

…しかし、演説の原稿に細工しただけとは。

いつもの眼力ではダメだったのですか?

 

「私のは、偶に言葉がしっちゃかめっちゃかになるのよね。

それでも良かったけど…スレイン法国の事もあるし。後、他にもね?」

 

どうも我々の浅知恵では及ばぬ領域らしい

まあ、あの内容なら………言わせれば、確実でしょうね

 

バレなきゃいいが…

 

「見るからに、自分で書いた内容も忘れそうな人でしょ。

気が付いても…きっと“天啓”とか言い出しそうよ」

 

それは、もう本当にごもっとも。

ですが“もしも”の事もありますので

 

元より、一か八かだ。

無理だとしても、後は宰相様や魔導王、それとデミウルゴス様の仕事だろう。ぶん投げればいいさ

 

さて、指輪の幽鬼(ナズグル)9体と星海使(スターゲイザー)1体が談笑している内、煌びやかな舞台に、ひとりの貴族が昇った。

 

――――いや、もう“貴族”では無く国の創設者、言うなれば“国父”なのだが。

 

しかし、そうとは見えない…どうもカリスマが無い様子である。

その上で軽薄さすら感じる、最早為政者として、どうしてこれが通用するのか?と、素人でさえ不安を想起せざるを得ない。

 

どちらかと言えばコメディアンの風格だし、コメディアンだって為政者をやるなら十分に、我が身には気を使う筈なのだ。

 

 

…此処まで言って、思い出した。

国民はほぼ全て、ナノマシンの傀儡なのだ。

 

始まりますよ、ニモエル様

 

「ええ、見えてるわ」

 

侵入者の目に気付く事無く、国父は自慢げに襟を…そして髪型を整える。

そして一歩…マイクが立ち並んだ台の前に近づく。

 

 

 

 

 

 

 

国父――――フィリップ・ディドン・リイル・モチャラスは、声を張り上げた。

 

「諸君!我々は…選ばれた!」

 

威勢だけは良い。

 

「選ばれたのだ!誰に!?

――――そう“意思”!この、大天空を埋め尽くしたる、大いなる意思に!」

 

フィリップは大袈裟とも言うべき身振り手振りで、自分の語る言葉の壮大さを演出している。

実際言葉も大袈裟である。

 

…やり方そのものは、20世紀前半に生まれた、かの独裁者も用いていた演説手法ではある。

事実その演説によって――要因は他、無限に存在したが――一人の男は、少なくともヨーロッパ一国民ほぼ全ての心を掴み取った。

 

後の結果がどうあれ、だ。

 

 

しかし、フィリップはそれだけに留まらない。

台からマイクを引き抜き、コードの許す限り…縦横無尽に動き回った。

 

まるで、自分の声を…満遍なく届けんとする様に。

或いは…己が抱く野望とは、手先一つでは収まりきらないと、そう示す為に。

 

「意思は、お許しにはならなかったのだ。

――――リ・エスティーゼの悪臭漂う腐敗を。

――――バハルスの目に余る横暴を。

――――スレインの神を僭称し、古びた椅子へと沈み込む不遜を。

――――アインズ・ウール・ゴウンの!悍ましきアンデッドの跋扈を許す、あらん限りの冒涜を!

 

この一文が読まれた時…ニモエルは小さくガッツポーズをした。

 

「緊張で、多少改変するくらいになっちゃったけど…一先ずこれで、この国に味方は居なくなったわね」

 

「意思は仰った――――我々の幼年期は、今この瞬間終りを迎えたと!

そしてその次なる段階…青年期(ジュネッス)だ!意思の名のもとに成長を遂げ、ジュネッスとなった我々“新人類”には!その腐敗!横暴!不遜!冒涜!全てを裁き!正す!その権利と義務がある!

故に!知恵と力を賜った!

 

突然だった。

ズダダ、ズダダダダダ…と、あちこちから銃声が鳴り響く。

 

「フハハ、聞こえるか?聞こえるだろう…この鉄火の爆発こそ!意思の力、即ち…我々ジュネッスの力である!古臭い剣や槍が何だ?軟弱なる魔法が何だというのだ!!

現に今、我々は悍ましきアインズ・ウール・ゴウン魔導国の、邪悪なる軍勢を打ち破った!観よ!観るがいい!」

 

どうも彼の背後は、巨大なスクリーンだった様で…そこには雑魚アンデッドの残骸と、それを踏み潰しながら進軍する、モダン軍隊が映る。

 

そんな雑魚で自慢されてもな…

 

「これが無辜の市民をも喰らう!邪知暴虐の末路であるのだーっ!」

 

「ちょいちょいアドリブ入れてるわねコレ。

――――逆に破綻しないかしら」

 

大丈夫、原文からして破綻しております。

それより…確か、最初に一般市民へのジェノサイド行為をやったの、向こうじゃ無かったか?

 

その証拠確保のため、アインズ様がデルモゲニー様へと人命救助を命じたという話だろう

 

お前、今は良いが…本人の前では“デルモん様”だぞ。物凄い気にされている

 

「お願いね」

 

色々とクドい演説にも飽きて来たのか、また雑談を始める潜入組。

 

ともあれ「モダン軍隊が法国の後ろ盾を得る」という、最悪――――とまでは行かなくとも、面倒臭い展開だけは避けたかった。

 

その為に、本来の台本に「スレイン法国への敵対宣言(王国、帝国はモノのついで)」と「それを補足する優性思想的概念」をこっそり書き足したモノを(やや大急ぎで)執筆、本物とすり替えたのだ。

 

 

元よりフィリップは身の程に余るほどの野心家であり、自分より上がいる事を許さない性格(タチ)ではあった。

故に、原稿の違いに違和感こそ持てども「こちらの方がいい」と、後先考えず納得してしまったのだ。

 

 

…さて、と。

ソリュシャンも行動を終えていると思われますので、また半分で援護に向かいます

 

「ええ、行ってらっしゃい」

 

シージ達はまた行動を再開した。

 

 

 

そして演説は、大詰めを迎える。

 

「――――改めて宣言しよう!」

 

突然ドンッ!と、彼は目の前の台へと()()()()()()を置いた。

幾つかのマイクを押しのけ、ど真ん中へと陣取るソレに…フィリップは、拳銃を向ける。

 

あの、7.62×39㎜の弾丸を使用する…呪われたモーゼルだ。

 

外しようも無い至近距離で放たれた弾丸は――――人骨等、容易く木っ端みじんにしてしまった。

…余りにも明らか、見紛う事もない。

 

それこそ、アインズ・ウール・ゴウンへの挑戦意思である。

 

 

「我々ジュネッスの統治する、真の楽園【フィリップ・モチャラス臣民共命國】はッ!今この瞬間、そう…手始めに、アインズ・ウール・ゴウン魔導国へと!宣戦を布告する!」

 

 

後に「共命戦争」と呼ばれるそれは、こうして正式に幕を開けたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

或いはこう呼ばれる「幼年期の終り」とも。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「国名もクドいしダッセェ…(ガキのソビエトごっこかよ)」

 

「えぇ…。(もう聞いてるだけ鳥肌が…あ、治った。

でもちょっとかっこいいよな)」

 

 

 

*1
電子機器より漏れる微弱な電磁波を拾い、傍受を行う諜報技術




ちょっと設定書くモチベ無いから、まだまだ待ってて…
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