嘗て至高だった父へ【OVERLOAD】   作:エーブリス

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今回と次あたりで一区切りしたいと考えております。
というかその分でアニメ1期の分で主人公勢が活躍できて区切りの良い部分は終わりそう。


第7話

 

 


 ~いつかの記憶~

 

ペロロンチーノ

「ついに…でけた、俺達の…カラオケ音源その他諸々」

 

ウルベルト

「長かった。

長い長い…戦いだった…」

 

モモンガ

「まだ響く…音楽が響く…」

 

ランドナ

「あの…皆さん仕事に響きませんかねコレ」

 

ペロロンチーノ

「寧ろなんでドナさん平気なんですか…後ヘロヘロさん」

 

ランドナ

「んー、まぁ、僕ぁ常時バッドステータスみたいなものですし」

 

ヘロヘロ

「本職があんな感じなので、後もう少しまでなら耐えられるというか」


 

 

 

 

 

ある日のナザリック第六階層。

図書館から戻って来た当階層の守護者マーレが、嬉しそうな表情をして姉のアウラへと駆け寄って来る。

 

その手には、1冊の本が握られていた。

 

「ね、ねえ!お姉ちゃん、見て見て!

すごいの見つけたよ!」

 

「何よマーレ、凄いのって――――何々?『ナザリック音楽団レコーディング』?

…ねえ?私にはこれが、至高の御方々の、その…歌声が収録されているって読めたんだけど?」

 

彼女が注視した裏表紙にズラリと書かれた「目次」の欄には、至高の41人+α(若しくは彼らによるユニット名)の名前とその隣に曲の名前と思しきものが記載されていた。

具体的には「たっち・みー【ALMIGHTY~仮面の約束】」だとか「ぶくぶく茶釜【15の夜】」だとか、ユニット名表記だと「無課金同盟【自由の翼】」だとか「ナザリック女子会【ハレ晴レユカイ】」だとか…。

 

流石に至高の存在全員とまでは行かなかったが、アインズ・ウール・ゴウンのメンバー大半の声がそこに歌として納められている事が記されていた。

 

 

――――何を隠そう、これこそナザリックの“その場のノリ”に次ぐ“その場のノリ”で始まった【AoGカラオケ忘年会】のビデオログなのである。

 

始まりは、一つのノリで始まった企画だった。

どういう訳かペロロンチーノを始めとする数人がカラオケ音源を自作する術を手に入れ、作った音源を使い「カラオケだかのど自慢大会やろうぜ」とモモンガがほぼほぼ脊椎反射で決定してしまった事件があった。

 

とは言え結局、各々の予定が合わず、プログラムやら小道具やらを無駄に細かくものの、それら全てが“尻切れトンボ”のお手本となるのは発案者モモンガでさえ若干目に見えていた。

そこから、あえなくお流れとなり皆の記憶から消え去ったのだった…。

 

 

だがしかし、事が動いたのはある年の年末近く…ギルメンの大半がログイン状態で年を越せるという本当の本当に奇跡的な状態が確定した為、カラオケ大会が忘年会行事として行われる事になる。

 

カラオケ音源は以前の企画段階で言いだしっぺのペロロンチーノ他が(ノリと勢いの割に)ヒィヒィ言いながら作成したものを流用…しようとしたのだが、如何せん規模が大型化した事により更なる曲数が必要となり、結局音楽系の著作権に詳しいギルメンが何処からかフリーのカラオケ音源を引っ張って来たのだ。

 

 

その時の映像記録及びに、百科事典(エンサイクロペディア)に似た情報記録系マジックアイテムをギルドの有識者が何かしらの手を加え、他のマジックアイテムとなんやかんやで組み合わせて完成したのが、この古本のような外見をしたデータストレージなのである。

…主にヘロヘロさんが頑張りました。

 

 

「お姉ちゃん…ちょっとだけ見てみようよ」

 

「えー…でもこれって勝手に見ていい物なの?

至高の御方々の記録でしょ?」

 

「で、でも…そんな大事な物だったらテイトゥスさん、多分貸し出しなんて許可しないだろうし、そもそもアインズ様が持ってるんじゃないかな?」

 

「それも…そうね」

 

弟の言い分に一応納得したアウラは「それじゃあ…」と、そっと本を開いた。

 

 

開き切ったページが淡い光を放ち、それが虚空に浮かぶディスプレイとなる。

画面中央には薄灰色の(再生)ボタンが記されており、直感的にそれに触れれば良いと分かる様になっている。

 

今度はその右向き三角形を、マーレがぶるぶると指先を震わせながら押した。

 

 

すると、ディスプレイの映像が動き出し、二人の良く知るものが映し出される。

何故か特攻服をズラリーゼントを身に纏い、仕事どころか実生活でも中々出さないような野太い歌声で歌っているものの、生みの親が分からなくなる程では無い。

 

「この声!この姿!」

 

「ぶくぶく茶釜様だ!ちょっと声が野太いけど…

 

マーレが思わず口にしてしまう太く粗野っぽい声で歌う画面内のぶくぶく茶釜だが、流石は現役プロ声優と言うべきか、歌声そのものは万人が美声と思えるレベルをキープしている。原曲をリスペクトしたようだった。

 

彼女の後ろで立ち尽くしている、古の特攻服を着用する者の特定は出来なかったが…恐らくはその場限りで配置したNPCか何かだろう。

 

 

…生みの親のライブを最後まで聞いたダークエルフの姉弟は、次のページを開く。

 

「あ!アインズ様だ!

それとペロロンチーノ様にウルベルト様も!」

 

所謂、無課金同盟と呼ばれる三人組である。

歌はアインズ(当時モモンガ)の微妙なドイツ語歌唱から始まり、そこからウルベルト、ペロロンチーノと合流する形での合唱となった。その後もドイツ語パートをアインズが担当していた事から、恐らくこれの収録とパンドラズ・アクターの作成は近い時期の話なのではと思われる。

某古き第三帝国の髭男らしい、大ぶりなジェスチャーを歌唱に混ぜてもいるので可能性としては大分高い。

 

結局のところ同盟三人の歌声は、先のぶくぶく茶釜の歌唱とは雲泥の差ではあるが、アウラとマーレには忠誠心補正で美声に聞こえていた。

 

 

「――――…お姉ちゃん、すごかったね。

至高の御方の歌…」

 

「そうねぇ…本当にすごいの聞けちゃった」

 

一度本を閉じたアウラは、そこで「あれ?」と裏表紙における可笑しな表示を見つけた。

他の項目が“「プレイヤー名【曲名】」”と言った形式で記されているにも関わらず、一か所だけ…ただ単に「らいず」と記されたページがあったのだ。

 

 

「これ…誰が歌っているのか、書いてないね」

 

「只の書き忘れ…なんて、至高の御方がするわけないからね。

せっかくだし、これも一回聞いてみよっか」

 

彼女が再び該当ページを開き再生ボタンへと触れ…そしたら伴奏も何も無く、只々歌声だけが流れた。

綺麗だが歌い慣れてない印象があったので曲自体初めて聞く二人にも原曲ではないと判断できたが、肝心な「誰が歌っているのか?」という疑問は晴れなかった。

 

 

――――いや、どうにも聞き覚えがあるような無い様な…という微妙な塩梅に、アウラもマーレも「うーん」と唸った。

ともあれ、暫くは偶によく聞く言葉(英語)聞いた事も無い言葉(ロシア語)のアカペラは、静かに第6階層で流れた。

 

 

 

 

 

 

 


 ~いつかの記憶~

 

ランドナ

「…あれ?あ、あぁ…まあ、なぁ…(久しぶりに最古図書館来たのはいいが…カラオケのログが大分抜かれてる。恥ずかしくでもなったのかな?皆)」

 

モモンガ(伝言)

「ランドナさん、ありました?」

 

ランドナ

「!、あぁ、はいはい…えっと、あぁこれか。

ありましたありました」

 

モモンガ(伝言)

「よかったぁ。

それじゃあ先ずは――――」

 

  作業中…

 

ランドナ

「――――と、こんなものか。

って(しまった…カラオケのログ持ったまま作業してた)、不味い不味い。戻さないと…アレ?(容量がさっきより………気のせいか?)」

 

モモンガ

「?。

何か、ありました?」

 

ランドナ

「いえいえ、何でもないっす(そう言えば俺のインベントリにも空きが…まあ、今日は大したモノ入れて無かったし)」


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――先ず、事は数十分前に遡る。

ジョナサンは先に娘へと伝えた通り、幾つかの武具屋や道具屋を梯子する形で不要な物品を売りさばき、今後の生活費を稼ぎに町中を歩いていた。

 

そして今後…少なくとも3か月程暮らしていくには十分なだけの額を手に入れ、漸く宿屋に戻った。

 

 

事が大きく動いたのはそれからだった。

 

「リ…っ。

ナター、シャ…?」

 

自分らが借りた部屋には、誰も居なかったのだ…待っている筈の娘ナターシャさえも。

何処かに出かけているのか?と思ったが、部屋が多少荒れているのを見つけるや否や、彼は咄嗟に部屋中を調べた。

 

彼女がスライム形態を利用して隠れそうな所も調べたが何も無い。

 

「ナターシャ?

何処だ…おーい」

 

一応夜中なので、周囲に気を使いつつナターシャを呼ぶが、何処にも反応がない。

自覚できるほどの冷や汗をかいたジョナサンは、部屋を一通り確認した後、ごく低位の追跡系魔法を(カウンター等対策込みで)幾つか行使して、娘の足跡を辿った。

 

 

魔法により現れた、蛍のような物体が移動を始め、それをジョナサンは追いかけた。

 

「ッ…(この魔法が反応したという事は、リリュは部屋から出てそこまで時間が経っていない。まだ間に合うハズだ…!)」

 

まだ間に合う…そう言うものの、彼の頭の中では“最悪の状況”のシミュレートが行われ、そして取るべき対策を移動がてらに練った。

既にコンパウンドボウは手に握られていた…矢も同様に、対の手で構えている。

 

そして究極的には…と、封じていた二種の魔銃をも取り出した。

 

「後は…(こっちはまあ使うだろうが、場合によっては此方の純潔を破る事にもなりかねない…か)」

 

最後に腰部にマウントされた、非常用の武器も手触りでその所在を確認する。

そしてその他アイテムもインベントリから取り出しやすい所に移し、ジョナサンは臨戦態勢へと入った。

 

 

…気が付けば、随分遠くまで歩いていた。

目の前に見えるのは、エ・ランテル外周部にある共同墓地…そこに近づいて初めて気が付いた、中から“マズい気配”が隠す気も無く漂っている。

 

「…何が起きている」

 

彼は左手から触手を伸ばし、それをグラップリングフックのように使って厚い壁を飛び越えて墓地へと踏み入った。

 

 

――――そこには、言葉を失うような光景が広がっていた。

 

「ウソだろ…」

 

骨、…何処を見てもスケルトン系のアンデットで埋め尽くされた墓地の風景は、地獄と呼ぶ他に無かった。きっと(あらゆる宗教が語る)地獄に落ちた罪人共だって、もっとマシな姿をしていると信じたい。

 

一応、スケルトンとは言っても流石にジョナサンのよく知るモモンガのようなオーバーロード等、超高位スケルトン系種というわけではない。寧ろ最低位の、100レベルのプレイヤーならば素手を振るうだけでも斃せてしまうような骨格標本程度の雑魚ばかりだ…恐れるに値しない。

 

 

だが数が多い…多すぎる。

殺されないとしても、いつまでも足止めを喰らっている時間など無い。

 

「いつもこんなのか?此方の墓地ってのは…」

 

覚えておくべき常識に加えておくべきか…そう考えた所で、ふと昼間の記憶が過る。

 

 

 

土地の案内をしてくれた冒険者ガガーランの証言だ。



『ここを真っ直ぐ進めば共同墓地がある。

先祖の墓が無ければ近づかない方が良い…特に夜は、な』

 

『…悪霊でも出るんですか?』

 

死霊(レイス)なんてご大層なヤツぁ、そうそう出やしねぇよ。

大体はスケルトンやゾンビ、それとちょくちょくって位に黄光の屍(ワイト)百足状の骸骨(スケルトン・センチュピート)が出るんだ』

 

動死体(ゾンビ)…』

 

『そうだ。

…んで、そいつ等が弱くて少ない内に衛兵たちが定期的に土に還してるんだとよ』



――――詰まる所、眼前のアンデッド祭りは異常事態だという事だ。

 

「しかしなぁ…(これだけのアンデッドを生み出す魔法、確か階位は6か7程だったハズ。一般的に第三位階で打ち止めになるこの世界で、使える奴となると…まあ、明らかに強敵だろうな)」

 

流石にスキルの上位物理無効Ⅲを貫通する60レベル以上の敵が…それももし多数現れたら、ビルドが事故死の危険と並走しているジョナサンにとって非常に厄介だ。

 

 

一先ず彼は気配遮断系のスキルを用い、こっそりと骸骨達の間を進んだ。

アインズ・ウール・ゴウンにおいては主にその他役(ワイルド)として、奇襲を多用し先手を取り続ける戦術を用いた為に必要なだけの隠密系スキルは持ち合わせていた。

 

ジョナサンの種族【死体変異動体(ネクロミュータント)】は異業種のアンデッド系に属す為、生者の反応を基に追いかけるスケルトンやゾンビ等の探知からは抜けられる可能性があるのだが、アンデッド系としては“妙な特異性”を持つ為に、こうして石橋を叩いて渡るような慎重さを見せたのだ。

 

 

 

…彼は、気配を殺すように歩きながら、自分の娘達への対応について迷いを覚えていた。

自分は違う、明らかに違う…そんな実感と共に生まれた疑念、そして孤独――――そうだ、生き物は自分以外全てが異形種なのだ、同種など最初から存在していない。しかし生の空気すら吸えず、突き返すための槍を捨てられない生命(みな)は、だから無理に“同種”を作って群れるのだ。そうとでも思わなければいけなかった少年時代。

 

そんな己が、彼女達へ向けた愛情は果たして正しいモノだったのか…と。

4人の翼を腐らせる、その鳥かごをこじ開けるのは…彼の夢の一つだった。しかしそれは独りよがりだったのではないか?もしかすると自分は屑鉄の街の空を飛ばせてしまったのではないか?

 

 

これが後悔か、それとも分かれ道なのか…己にも分からなかった。

そんなズキズキと痛むような思いの中、不意に気配遮断をかき消す。

 

…ジョナサンに気が付いたスケルトンたちが、彼を一斉に取り囲む。

これはこれでいつも通りだ。殺しという行為そのものに私情を挟むべきでは無いが、殺すには動機が居る。

 

 

――――いや、偽りの命を持つアンデッドを“殺す”と表現するのは間違いか?

まあ何だって良い。転げまわる石ころの様に、全てが真っ黒になっちまえば…他の色なんて存在しなくていいから。

 

そういった静かな怒りと共に…彼は“隻眼の女”へと鏃を向けた。

 

「あっれぇ?もう来ちゃったんだ、クソ仮面…せっかくさぁ、サプライズパーティーの準備をしてたのにぃ?」

 

「何言ってる。

お前が誘ったんだろ」

 

「はぁ?

もしかして、あんたの娘の事?確かに部屋まで入ったのに逃げられて――――あ…!」

 

隻眼の女――――クレマンティーヌは、黒い眼帯に隠れていない左目と、その端正な口を酷く歪めた。

あぁそうかそうか、そう言う事…相手の焦りを感じ、彼女はものすごぉく愉悦に浸ったが…同時にものすごぉく後悔した。なんて迂闊な事を口走ったのかと。もっと面白くなっただろうに。

 

「もしかして「お前の娘は預かった」とか言った方が良かったぁ?」

 

「そんな嘘ハナから信じないさ。

…後、笑って誤魔化すのは今後やめとけ。お前のは微塵も愛嬌がない」

 

ともあれ、今の彼女の失言によりリリュームの無事はある程度保証された。

 

「ホンットこいつ何もかもむかつくっつーの。

まあいいよねぇ、だって今度こそ死んでもらうからッ――――――――」

 

クレマンティーヌが咄嗟にスティレット(の様に見える謎の武器)を引き抜いた、その瞬間に彼女の額目掛けて矢が飛んできた。

音速の壁を突き破ったその飛翔を、間一髪で打ち落とした彼女は一気にジョナサンへと間合いを詰める。

 

対して彼は弓に固執せず、寧ろそれを捨てて腰部の鞘にマウントしたグラディウスを引き抜き、神速の刺突をブロックした。

 

 

この時初めて、クレマンティーヌが今も尚自分を殺せる気でいる理由を察した。

 

「(明らかに力が上がっている…最早レベル60相当、いいやそれより少し上か)…何に手を出した、勝てもしないのに」

 

彼を殺す条件である【上位物理無効Ⅲの突破】は満たしているようだ。

 

 

「さあね?

カジッちゃんによればぁ?なんか親切な誰かさんが恵んでくれたらしいけど…最ッッッ高ッ!本気のてめぇを此処まで追い詰められるんだからよぉ!!」

 

力を得た高揚感からハイテンションになる彼女を、ジョナサンはさっと笑い飛ばした。

 

「俺の、本気?

馬鹿言うな、俺の何処見て野伏(レンジャー)だと思ったんだ?確かにレンジャーの経験はあるが」

 

「はぁ?簡単に弓捨てるヤツが弓使い(アーチャー)だってのかよ!?

それじゃあ、アレ?暗殺者(アサシン)!?その剣闘士のショートソードで!?ギャッハハハ!ウケる!」

 

剣闘士用…その言葉を聞いて、彼は少し訝しむが…これ以上先のステップへは行けない。

その暇が無かった、それどころじゃない。

 

「まあ、誕生日プレゼントなんでな…こいつは簡単には手放せない。

それに暗殺者というのも否定しないでおくが、見りゃ分かるさ」

 

引き抜いたばかりのグラディウスをまた鞘へと収納したジョナサン――――いいや、ランドナは、いよいよやって参りましたと言わんばかりに【霊柩車の車列(ペインティットブラック)】を手に取り、腰だめ且つ片手で銃口をクレマンティーヌへと向けた。

 

彼女がその『銃』と呼ばれる形、その符牒の意味など、知る由も無いだろう。

剣や槍以上の「ぶっ殺す」が含まれる…血生臭い進化の果てを。

 

 

「アッハハハ!

何、ソレ」

 

「殺戮の解答例だ」

 

そしてそれ以上の有無を言わさずトリガーを引く!

 

 

ずががが…ッ!と、気味の良い炸裂音が空気を揺らし、クレマンティーヌやそこら中の骸骨共を震わせる。

薙ぎ払うような魔弾の弾幕が、彼女諸共周囲のスケルトン達を蹴散らしていく。

 

スキルやらデータクリスタルやら何やらで盛りに盛られた装弾数が秒で空になる程の発射速度を見せた後、その手頸のスナップで空マガジンを放り捨て、その場に墜ちていた満タンのマガジンと交換する。

 

このマガジンは、とあるガンナー系スキルの効果で、スケルトンを倒した際にドロップしたものである。

 

 

「ッんのぉ…クソが!」

 

そしてクレマンティーヌは、最早くたばったモノとして扱っていたのだが…意外や意外、腹に魔弾を何発も受けて尚きびきびと動いていた。

確かに出血していない気はしたが…と、迫る彼女からランドナは距離を取る。

 

 

中遠距離を主戦場とする者が、近距離戦に長ける相手から離れるのは、重力に従い落ちる林檎以上の自然の摂理だ。

それをやらない射手は只の馬鹿、それも救い様のないレベルの馬鹿である。

 

だから離れる、だから追う。

これだけが…今のカオスにある交戦規定。

 

 

「ったく、タフさだけは100レべか、それかボス級か(速くて硬いのは正直厄介だな…いっそ任意発動スキルも使うべきか)」

 

彼女はそのまま追いかける…かと思いきや、呆れ果てた表情をするランドナを尻目に撤退した。

 

クレマンティーヌと入れ替わる様に、数に物言う総攻撃を開始した骸骨共は、どういう訳か薄紫色のオーラを纏っていた。

とは言えこれはユグドラシルのプレイヤーにとって未知のモノではない。

 

何であろうが、今度はこいつらが“追う”らしい。

 

「(強化モブ、ね…暫く見て無かったけど)またしょっぱい仕掛けを」

 

彼は一切臆することなく、規定通りに“離れ”つつ、1体1体を丁寧にそして即座に処理していく。

この時、弾丸の節約も兼ねてセミオート状態に切り替えていた…この程度の低級アンデッド、弾丸1発さえあればカタが付く。

 

無駄弾を撃つつもりは既に無かった。

 

 

次から次へ、自分との距離が近いスケルトンから順に攻撃する様子は、このまま続けばスケルトンの1体たりともランドナに近づくことなく全滅する。

そのハズだが…運命はそんな単調な結末を望んでいなかったようだ。

 

…不意に後ろから気配がして、咄嗟に振り向いてみれば巨人――――否、巨人の様に大柄な人間種のゾンビが、両腕を振り上げ待ち構えていた。

ランドナは一度スケルトンの群れへの対処を中断、振り翳されたゾンビの両腕へと照準を定める。

 

弾丸はゾンビを貫通する際、インプロ―ジョンバレットの効果でその腐った肉体を破壊。

両腕は胴体からオサラバしてその場にボトリと落下した。

 

 

よろめいた巨漢ゾンビに彼は…美しきしなやかさを見せて風を切る、太い鞭のような回し蹴りを放った。

生命力と引き換えである、比類なき攻撃力上昇効果で強化された一撃は、ゾンビ如き跡形もなく消し飛ばした。

 

無論だが獅子闘士の滾瞳(サマードラゴンズ・スピリット)は装備済みである。

 

 

気が付けばスケルトンの群れはもうすぐの所まで迫っていた…眼前、何処を見たって骨である。

これには流石のランドナも、車列をフルオート状態にし、斜めに構えて然程精密な照準を行わず対抗するが、流石にライフルの取り回しでは限界が見えて来た。

 

 

一応、ライフル銃でも頑張れば近接的運用は行えるが…既に周囲を取り囲まれている。

彼は“危ない橋”を原則渡らない主義だ。

 

そう考えて咄嗟に車列を背中に回し、太腿のホルスターにぶち込んであった拳銃【フランツカフカ】を引き抜いて、腕を曲げつつ両親指で反動を受け止める形で、水平に近い程斜めにそれを構え始めた。

 

こちらの火力は先の車列に劣りはすれども、スケルトン1体を倒すのに必要な弾数は結局1発だ。

レベルの差もそうだが、この銃の1発は正確には1発ではない。

 

「(1発の弾丸で3点バーストが可能となるデータクリスタル…厳選した甲斐があったよ。皆)シッ…!」

 

最小限の動きで360度の敵を薙ぎ払う度、食いしばった歯から鋭い吐息が漏れる。

 

 

ランドナが確認した通り、フランツカフカには1発の消費で3発の弾丸がバーストされる仕組みがある。

この効果の代償として1発あたりの火力は低下するが、3発合計した火力で低下分を“おつり”込みで補え、尚且つ“攻撃が当たる度に火力が上昇する”効果のデータクリスタルが、バースト火力をさらに増強させる。

 

それによって生じる反動の増加は、それなりの“バースト発射速度増強”と僅かな“反動遅延”*1、そして己の技術で対処。

他に生じた様々な欠点は己自身が獲得したスキルでどうにか補う形となっているのだ。

 

 

――――群れの中から、一回り大きな…今度はスケルトンが掴みかかって来た!

それにさえ彼は一切の動揺をも見せず、胸辺りで抱え込むように構えたカフカで、スケルトンの脊髄を正確に撃ち抜いた。

 

支えが崩れ、上下に分裂したスケルトンを踏み潰しつつ目前まで迫った他の骸骨の頭蓋を、フランツカフカのグリップ底で思いっきり叩き割った。

流れる様に怯んでいるスケルトンへと発砲しようとするが、丁度弾切れだった為に即座にマガジンを入れ替えて復帰する前に撃ち滅ぼした。

 

マグチェンジに掛かった時間…まさかの1秒未満!素晴らしいテクニックだ。

 

 

そして棒切れを振り下ろしたスケルトンの腕を止め、足を払って宙に浮かせ、一度後頭部から一回転させてからの投げ技で他の数体を巻き込んで粉々にした。

 

…この際、ちょっとしたミスで銃の側面にかなりの圧力をかけてしまった為、ランドナはノールックでスライド動作を確認するが、意外な事に何の突っかかりもなく動作した。彼は思わず「モデル(CZ75)より頑丈だな」と呟く。或いは自己再生か…まあどちらでも良い。

 

 

周辺の骸骨が粗方片付いた…という所で、突如として地中から飛び出して来た百足状の骸骨(スケルトン・センチュピード)が勢いのままにランドナの上空を舞い、彼へとトップアタックを仕掛けて来た。

 

「百足というか土竜というか、やってる事は海豚だな」

 

アインズ・ウール・ゴウン時代、確かブループラネットが持ち込んだ物だったか…100年以上前の水族館で行われていたイルカショーの映像を思い出しつつ、それとは別に武器をカフカから車列に切り替えて対空砲火を開始した。

 

 

センチュピードの身体は瞬く間に崩れ去り、上空数十m付近には幾多の骨片と成りて落ちて来た。

 

【流水加速】――――――――ッ!!!」

 

そして「漸くか」と一息ついた所を狙って、クレマンティーヌが遠方より武技を用いて急接近し、そのスティレットの形をした“何か”を下段から突き立てた。その一撃は車列の側面に阻まれたものの、その真っ黒くて光沢の一切ない塗装の一部を僅かに剥がした。

 

「クソッ…塗り直しじゃねぇかッ!」

 

「あはッ!

お気にを傷物にしちゃった!……【能力向じ ――――うぐッ!?」

 

更なるバフを目論んだ彼女を、そうはさせるかと、後の先手を打つランドナ。

咄嗟に引き抜き、がら空きのどてっ腹へとねじ込んだカフカの引き金を何度も引く。

 

「がッ!ぐうッ!?げはッ!」

 

何で強化したか知らぬが、神話級の拳銃が生むパワーは…今のクレマンティーヌにもキツい様だった。

撃ち切った空マガジンをスナップですっ飛ばし、人間離れした速度で再装填とスライドの前進を行い、再び全弾叩き込んだ。

 

 

まだまだ彼女は息絶えない。

 

「本当の、本当に…いい加減くたばりやがれよッ!」

 

「こっちのセリフだ…!」

 

100レベルの熟練プレイヤーであるランドナがしぶといのは兎も角、その彼の攻撃をあれだけ喰らってもまだ余裕で動ける60~70レベル相当のクレマンティーヌの耐久は一体何が起きているのだろうか?

 

 

ともあれ彼女はまた距離を取り、今度は全身に蔦が巻かれたタイプのスケルトンを呼び寄せた。

正式名称を彼は覚えていなかったが、確かこのタイプには毒があった事だけは記憶していた。

 

間の悪い事に、何故か死体変異動体(ネクロミュータント)には毒無効特性がないし、彼のビルドにとって毒の攻撃はほぼ天敵にも等しい。

…その分神聖属性に妙な耐性があるが、今は関係ない。

 

「割と芸が無いな…」

 

特定のタイミングだけ弱点が露出するボス敵かよ、と悪態のようでそうでもないような事を吐きながらランドナは、いい加減決着を着けるべきと考え…遂に任意発動型スキルの使用を決意した。

 

 

マグチェンジした霊柩車の車列(ペインティット・ブラック)を何も無い上空へと銃口を向けつつ、そのスキルの使用を宣言する…!

 

「【強装炸裂弾(ハイエクスプロージョンバレット)】…【殺戮豪雨(マーダースコール)】…!」

 

放った弾丸が上空十数m地点で広がり、ワームホールのような形に整形される。

スケルトン達が釣られるように見上げたそれが、不意に強い光を放った――――そう思った瞬間、“スコール”の名に違わぬ、魔弾の大雨が蔦スケルトン達へと降り注いだ!

 

弾丸の一発一発が着弾と同時に爆発する炸裂弾となっており、単に火力が高いだけでなく、その効果範囲も桁違いである。

これがガンナー系職業で魔導銃を用いるユグドラシルプレイヤーが、PvEで主な火力源としていた定番コンボ「お手軽版:集中爆撃セット」である。

 

正面は当然、右も地獄、左も、後ろだって地獄だ。

砕けた骨片がポップコーンのように、爆炎に混じって弾ける様は、とてもとても面白く爽快だ。

 

 

…室内での使用は要注意である。

あと打ち上げる射角。

 

 

「さて、と。

…もう手札無いだろ、出て来いよ薄着女」

 

ランドナはもう誰も居ないハズの空間へと語りかけた。

 

「目的は俺だろう、実はもう疲れてるんだ…お前に負けるかもしれない」

 

召喚モンスターなんか捨ててかかってこい…と、話しても通じない程古い映画を引用して、何処かに潜んでいるクレマンティーヌをおびき出そうとしていたようだ。とは言え彼女がこんな安っぽい挑発に乗るかという疑問だが…。

 

 

…割と散々な目に合わせて来たのだ、案外降っ掛かってくるかもしれない。

 

「楽に殺すのは、お前の趣味じゃ無いだろう?

そのアイスピック二号を付き立てて、俺が苦しみもがいて死ぬ様を見るのが目的じゃないのか?」

 

楽しみをフイにはしたか無いだろう…そう言いかけた時、スッと何処からともなくクレマンティーヌが現れた。

 

 

「なんだ、来いよ。

…怖いのか?」

 

「だぁれがテメェみたいなバケモノに!」

 

彼女がスティレットを構え直すと、それは一回り長くそして太くなり、機械音を立ててドリルのように回転をし始めた…真に奇怪な武器である。

 

「!――――ふぅ…あぁ。異形種(バケモノ)殺人鬼(バケモノ)人でなし(バケモノ)

意外や意外、割と言われ慣れてるもんだな…皆そうだし」

 

ユグドラシルでも見た事のない武器の出現に、しかしそれで尚も余裕そうな様子を見せる彼は、仮面の留め具に手を掛けた。

重力に晒された仮面は、風にあおられた扉の様にふわりと開く。

 

 

「いいだろう。

この辺りで名前以外の自己紹介でもしてやるか…」

 

「ッ!」

 

ばっ…と、仮面が投げ捨てられ、巻かれていた包帯が解かれてその素顔が明らかとなった。

 

 

――――先ず目に入るのは、焼け爛れたような皮膚だった。

肌色に赤黒い斑点が目立つグロテスクなそれは見るからに人間種の嫌悪感を沸き立たせ、尚且つ生気を感じられない…最早漂白という表現が正しい程に白濁した眼光と合わさって非常にショッキングだった。

 

極めつけは、左右に分かれてそれぞれが自在に動く下顎と、そこから伸びる鋭い牙の数々だ。

最早これを人間と見間違える者は居ない。

 

 

恐怖と嫌悪感のツーコンボで、クレマンティーヌの表情は限界までに引き攣っていた。

 

「…キモッ

 

「純粋に傷つくぞソレ。

まあいいや…」

 

割とどストレートな罵倒に苦笑いをするランドナだったが、それはそれとしてと流し、武装解除した両手を大っぴらに広げた。

 

 

 

 

「俺の種族は死体変異動体(ネクロミュータント)だ。

…まあ知らんだろうな、俺も(類似種はともかく)同族に会った事が無い」

 

こんな怪物が、冷静に人の言葉を操っている…それを恐怖と捉えるか、コミュニケーションの余地と捉えるかは人次第だ。

少なくとも彼女にとっては恐怖だったようだが。

 

 

ともあれ彼女にとって怪物殺しは過去の常…それに隠した手札はまだ残っている。

今度こそ殺す――――ただ、そう呟いて、姿勢を極限まで低くした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 ~いつかの記憶~

 

タブラ・スマラグディナ

「なんかさ…ウチさ」

 

るし★ふぁー

「ナザリックに屋上は無いけど?」

 

タブラ・スマラグディナ

「いや違う。

…異形種ギルドって割に、そこまで顔怖いって人居なくないかなーって」

 

ペロロンチーノ

「夜道に出会いたくない見た目トップ15くらいに入ってそうなタブラさんに言われても…いや、説得力あるのか?」

 

モモンガ

「その手の話だと…たっち・みーさんの素顔。

あれも意外とショッキングでしたね」

 

ウルベルト

「ふーん。

…あ、そういえばランドナさんの顔」←今かなりたっち・みーの話をしたくない

 

ランドナ

「はい?」

 

ペロロンチーノ

「そういえばランドナさんのアバター、素顔見た事無いな」

 

モモンガ

「何かしら被ってますもんね」

 

 

ランドナ

「あ、こんな感じっすよ」↑(圭 )スポッ

 

タブラ、ランドナ以外

「「「「うぉおおおおおッ!?」」」」←想像以上にグロくて腰抜かした

 

タブラ・スマラグディナ

「うーん、ナイスガイ!」

 

ランドナ

「どもっす。

…あ、顎もこんな感じに」

 

タブラ、ランドナ以外

「「「「うぎゃああああああああッ!?」」」」

 

 

ランドナ

「…正直、モモンガさんも大概だと思うんだけどなぁ」

 

モモンガ

「確かに!?」


 

 

 

 

 

 

 

 

 

*1
所謂アバカンの2点バーストの理論




実際の音楽関係の著作権、どうも調べた限りだと身内というか全く外に出ない(配信とかしない)内輪で使う分にはどうにも大丈夫の様に見えたけど…でもオバロ現実世界は企業が支配者だから無配信の内輪使いも色々面倒そうだなって今更。

にしてもゴットゥーザ様の「15の夜」とか聞きたいわ。



そして本日の選手権優勝者は【黒い眼帯】でした。
善戦した二番手の【メカ】派の皆さん、そしてその他派閥の皆さんもナイスファイトでした。





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