次回から第2節とかで章分けして、なんか書き方もちょっと変えてみようかなぁって。
追記:冒険者ジョナサンのランク修正
今や日が暮れてより暫く経ち、再び太陽が上がらんとしているか否かという刻。
地獄絵図と化した死人たちの寝室で、一つの審判が下ろうとしていた。
「…【流水加速】、【疾風走破】」
極めて低く構えたクレマンティーヌが、武技の重ね掛けを行い、目の前にいる怨敵ランドナの息の根を止めんと得物を握る。
「【能力向上】、【能力超向上】…!
フフフ…お前、もう終わりだよバケモノ野郎」
「すごいな、その言葉。
全て返ってきてる…面白い位に」
銃、刃物、徒手空拳。
持ちうるすべての攻撃手段に転じられる、完璧な構え。
その体勢を取った彼は余裕を崩さず、彼女の仕掛けた挑発に応じた。
今までの様に。
やがて舌戦に発展する。――――という事も無かった。
どちらも戦の結果にて語る、生粋の戦士である。
両者は口を噤んだ。
…最も、クレマンティーヌは沸々と湧き上がる怒りを噛み締めていたが。
――――最初に動き出したのはクレマンティーヌだった。
それもただ直線的に突撃したのではない、右に左に。
不規則なジグザグ走行を行い、ランドナの銃への対策を取って来た。
残像が出来る程のスピードで動く彼女に、流石の彼も一瞬戸惑う。
いや…当てる事は出来る、しかし不確実だ。
そんな状況で弾を消費しようとは彼には思えなかった。
恐らく彼の友人であれば、あの動きでも1発たりとも外すことなくすべて眉間に――それも1ミリの狂いなく――叩き込めるのだろう。
だがランドナは、その技能を持たない。
いや、やれば出来なくも無い…が、経験にない分不確実だ。
やる必要もなく、リスクは冒せない。
その速度に似合わず彼女は、徐々に徐々にと距離を縮めている。
対してランドナは何もしない。
上記の理由から、最早この状態で出来る事など無いとした。
決着の瞬間を…白兵戦に望んだのだ。
――――クレマンティーヌが突然、ジグザグを止める。
そして、一気に直線的突撃を開始した!
動体視力でそれを捉えていたランドナは、遂に来たかと構えた。
しかし…衝突まで残り5m地点で再び彼女は分裂したのだ。
「ッ…(随分な手品を)」
この大胆なマジックに、ランドナも多少は面食らった。
超速度にもの言わせた…随分乱雑な手品だ。
見渡せば彼を囲む様に残像たちが円陣を組んでいる。
恐らく平面的には回避も防御もリスクが高かった。
なれば…と、意識を上に向ける。
しかし、恐らく相手はそれを望んでいるだろうと、躊躇しかけた。
…だが、相手が望む行動であればこそ、だ。
事が上手く行く時こそ非常に不味い――――
もう一度空を睨み、高く“跳”んだ!
それは残像たちが、一斉に襲い掛かったのと同時である。
一段目の攻撃が外れた。
そのことを確認した彼女は即座に追いかける様に“飛”び上がる。
…ランドナの背後へと回り込んだ!
対して彼はソレを追いかけ、視界に収める為、空中で身体をぐるりと捻った。
至近距離のクレマンティーヌ目掛けて狙いを定め…――――。
「【
――――…そして引き金を引く。
「ハッ…!
【不落要塞】…!」
しかし放った弾丸は、いとも容易く弾かれてしまった。
まるで彼女の皮膚一枚が、厚い厚い戦車装甲であるかのように。
「やっぱ――――終わるのはテメェだァ!」
そして隙が生じたランドナへと、新たな得物【
バキンッ――――そんな強烈な音を立て、生まれた衝撃波がクレマンティーヌを飲み込み、彼女を更に上空へと吹っ飛ばした…!
「なッ…!?」
斥力に攫われて、ただ上空に流されるだけの彼女を…彼はただ見つめていた。
「(【
それはデスペナルティの増加を条件とするそれは…HP25%以下の時、超位魔法含めたすべての攻撃を一度だけ防ぎ、またそこから3秒間攻撃及び全エネミーを寄せ付けない斥力を発生させる常時発動型スキルだ。
ユグドラシルでは、条件が条件な為に人気は無かった。
生存技能に定評のあるランドナだからこそ使いこなせたスキルである。
普通なら3秒後に袋叩きに逢いかねないスキルだ。
ともあれ彼女はまだ動く事が出来る。
常に獲物を捉え続け、既に決着までの術式を組み立てる。
無事着地した彼女は、スピンランスを握り直してその切先をペロリと舐めた。
表情をぐにゃりと歪めながら。
「フフフ…アハハハ。
殺す…殺してやる……ッ!!」
最早愛とも変わらぬ様な、執拗な殺意をたった今着地した
よくも此処までコケにしてくれたイラつきとか、絶対強者の余裕みたいな物をこれでもかと見せつけられた嫉妬とか、片目を奪われた怒りとか。
それらを跳び越すくらい
それが昂り、只々失った右目がズキンズキンと疼く。
――――しかし、その
「ッ!?」
いつの間にか、足が泥濘に深く深く沈み込み、彼女の力では一切抜けなくなっていた。
…この状況にクレマンティーヌは覚えがあった。
あの時だ――――ムカつく小娘を尾行し、嬲ろうとした、あの瞬間。
彼女は「まさか…」と思いながら、背後の気配に気が付く。
無論…その正体はナターシャ。
――――いいや、今はリリュームとしての姿か。
「…人の男を取ろうとするから、足元掬われるんですよ。
この若作りクソババァ」
「がぁあッ…!
この小娘もッ、バケモノか…ッ!」
あの儚そうな、しかし毒のある声が鼓膜を撫でる。
直後…両肩あたりに何か鋭利なものが付き立てられた!
白い細腕はだらりと垂れて、力が入らなくなった。
その手から
突き立てられたのは、嘗てリリュームに奪われた彼女のスティレットだ。
襲撃の後、どうやら保管していたらしい。
既にクレマンティーヌの表情は、また歪む。
それは悦楽から絶望によるモノへと代わっていた。
対してランドナは「またか」とでも言いたげである。
見るからに、呆れを表情として浮かべていた。
「父親を彼氏みたいに言うんじゃありません。
…全く、誰が強めの罠のために視線誘導から時間稼ぎまでしたと思ってるの。相手割かしプロだったんだからさぁ」
「はぁい。
でも、指示したのはお父様ですよ?少しぐらい褒めて貰わないと。
…私、泣きます」
むすっ、とするリリュームの貌。
それを見て…教育方針を思い出した。
褒める時はちゃんと褒めなければいけない。
そう、盟友やまいこの前で誓った筈。
「うん。
それについては本当によくやったよ。さっすがウチの罠担当だ」
「えへへ…」
「!?、ひぁ…ッ!」
リリュームの更に細く白い手が、クレマンティーヌの“とんでもない部分”へと潜り込み、まるで触手のように蠢く。
彼は先程よりずっとウンザリした様子を見せた。
…娘が加害者の、セクハラ現場なんてどうしろと。
本当に、本当にどうしろと。
「やーめーろ。感極まってそう言う事するのやーめーろ。
仕事は真面目にって、いつも言ってるでしょ?」
「ごめんなさい…。
このおばさん、すごくイイ声で啼くものだから…つい」
「いッ――――…!
触、る…な…ッ!?!?」
父親に止められて尚も、彼女は弄るのを止めない。
布に遮られて見えぬ部分で…陰側の核を撫でたり爪で強く抓ったりする様子を、しかしまだ仕留めきれていない以上目を離すわけにもいかず、彼はウンザリしたため息を吐きながら捉え続けていた。
「もうこっちでさっさと終わらすか。
――――【
「えー、そんなー」
愉しみ切れていないリリューム。
その隣では…クレマンティーヌの絶望が、更に色濃い物へと成ってゆく。
「なッ!?
う、嘘だろ――――テメェ娘諸共殺る気かよ!?」
「いや別に…避けずに受けただろ?よく分からんスキルで」
「あ、もう撃ってたのですね…【
「うん。
撃ったよ、マグロの切り身」
先の空中戦でクレマンティーヌの【不落要塞】に弾かれた弾丸【
これによって変化した弾丸を1つの目標につき3発当てた時、次の攻撃系スキルが必中となるというものだ。
因みにスキルによる攻撃は多段・範囲攻撃であっても、そのスキルそのものが必中となる。
一個人の頭上のみに降る雨と言うのも、なかなか面白いだろう。
「それじゃあ…一緒に死の舞踏を楽しみましょう?
あぁいや、死ぬのは貴女だけですけれど」
「はゥ……ッ!?あがぁあッ!?
――――クソっ、クソックソッ!クソがぁああああああ!」
一瞬、彼女の右手が一層クレマンティーヌの下半身に沈み込んだ。
…かと思えば、そのまま鍵盤断裂やら何やらで動かなくなった彼女の両手を無理やり上げて、仰向けに倒した。
まるで地面に磔にされたかのような彼女が見上げた空。
これぞ正しく「今にも落ちてきそうな空の下で」だった。
どんな過程を踏もうが、こんな結末では何も浮かばれなさそうだ。
「さようなら、変態おばさん」
「変態についてはリ――――ナターシャも人の事言えないだろうに」
遂に落ちて来た、殺戮の雨。
それらは地面に溶け込むリリュームに一切当たる事は無かった。
全てが、磔のクレマンティーヌに降り注いだ。
血――――否、その様に見える謎の液体を撒き散らしながら、彼女の肉体は瞬く間に崩れ去っていく。
「…お父様、いくら娘でも言っていい事があると思います」
「んな事言われても…。
さっきのアレ、どう弁明するんだ?」
「…。
もういいです」
これがPvEはおろかPvPまで密かに猛威を振るった高火力コンボ「超精密爆撃セット」である。
マーカードロップの効果で、広範囲攻撃である筈のマーダースコールの弾丸が全て捕捉された目標へと誘導されるようになっているのだ。
ランドナの火力バフと合わさり、最早喰らったら最後…。
敵は、ミンチより酷い遺体を晒すことになる。
…暫く降り続けた雨は、今や止もうとしている。
豪雨に晒され続けた標的は、あらゆる欠片を周囲に撒き散らす。
…しかしそこには臓物めいた物は一切無い。
身体強化の代償だったのだろう…とても異質なものが散乱していた。
「機械?
この人も義体だったのでしょうか?」
リリュームが言及したように、クレマンティーヌの体内組織は全て機械的な物質に置き換わっていたのだ。
「いやぁ、前と今回とでは比べ物にならないくらい強くなっていたからなぁ…。
おそらくこの数日で、サイバネの様な施術でもやったんだろう」
そう言ってランドナは、奇跡的に残っていた彼女の眼帯を拾い上げては、まるで汚い物でも触ってしまったかのように放り捨てた。
――――にしてもまあ、随分と綺麗に形だけは残ったものだ。
「…ともかく、この世界の認識は改めるべきですね。
確かに私達に刃を届けられるような存在は、希少ですが…いる事には居る」
「あぁ、そうだな。
なあ?所で――――」
その刹那だった。
ぐわりと…眩暈を起こしそうなほど、激しい殺気が二人を襲う。
もはや説明不要、クレマンティーヌが生きていた。
機械の身体が成せる業か?それとも…。
まあいい、どっちにしろ
…空高く飛び上がった彼女へ、一気にランドナが飛びついて…そして組み付く。
「もうやらなくていい…!
貴様の、その下手な死んだふりは…もうたくさんだーっ!」
「■■■■■ッ!!?!?!?」
先の弾幕で発声器官が潰れたのか、クレマンティーヌは言葉を上手に発する事が出来ない。
「まあ、せっかく…か」
亡霊のような有様の彼女。
対してランドナは、
鮮やかに片脚を首に、もう片脚を彼女の脚に絡める。
そして…両手首をそれぞれの手に持ち、彼女を掴む。
「ッ!!」
そして彼は両腕に力を入れて、肩関節とは逆方向にめいっぱい、力の限り伸ばし…クレマンティーヌの胴体を縦に、背中側に折り曲げた!
同時に首に絡めた足もまた、じわじわと大蛇の様に締め付ける!
ばき、ぼき、めきょ、ぼき…人体はおろか、機械からも鳴って欲しくない、歪な音が響き渡る。
もうこれだけで十分、戦闘不能に出来てはいた。
しかし彼は…“ナザリックの超必殺仕事人”は、半殺しなどという中途半端を許さない。
故に、最後の段階へと入った。
天から地へ…下されるは決して正義では無い、殺意の鉄槌。
…端的に言えば、それはブリッジと呼ぶ体勢だった。
その形のまま…クレマンティーヌの両腕を掴み、両脚を絡み合わせて拘束する。
最後に、掴んだ両腕で頭部を挟み込むことで、それを完全固定。
このまま彼女を下敷きにする事で、ただの落下を必殺技へと変貌させる。
完璧な殺法だった。
クレマンティーヌが、自分の
まだ体に残っていた
まるで、今の彼女のプライドを象徴するように…!
近づく大地を見つめる片眼は、気高さなど無く陰る。
最後の一枚(シルバー級だった…)が剥がれた瞬間、墓地の一角に…巨大なクレーターが生まれた。
「…マズッた、やり過ぎた」
生死の確認は、技の
寧ろ…少し音を立て過ぎた事だけが気がかりである。
自身の身体能力の限界を確かめる為の、あの見様見真似の行動だったが…とにかくランドナは、手招きでリリュームを呼び寄せ、足早にその場を去っていく。
…これは、その道中の他愛ない会話だった。
「あ、あぁ。
――――そういえば、さっき言いかけた事なんだけど」
「?、何でしょうか?」
「今さ、一応…他の三人、自由に行動させてるだろう?
もしかして、お前も…どうだ?」
「…大丈夫です。
確かに一人旅や、皆と探検する事も魅力的ですけれど、お父様を独り占めできる悦びには勝りませんから」
「そう、か…――――帰ろうか…」「はい…!」
幾つかの言葉を交わした後、ランドナとリリューム――――いや、ジョナサンとナターシャはそのまま共同墓地を後にしたのだった。
~いつかの記憶~
ランドナ
「なあ…俺、たっち・みーさんの強さの秘訣、分かっちまった気がするんです…」
ウルベルト
「お?
聞かせてくださいよ是非」
武人建御雷
「おう俺も俺も」
ランドナ
「あの人…全部のPvPを記憶してるんですよ、自分が参加したヤツ。
更にヤバいのが――――倒したプレイヤーの名前も、判明してる限りすべて記憶してるっていう」
ウルベルト、武人建御雷
「「」」
るし★ふぁー
「え、何?あの人トレーズ・クシュリナーダか何か?」
そしてジョナサンとナターシャが去った後…クレマンティーヌの遺骸の元に冒険者モモンとその従者ナーベがやって来た。
先ほど、ズーラーノーンの片割れたるカジット及び
「人間…では無いようですねモモンさ――――ん。
そして、これは…」
「…そうか。これが“漆黒の剣”殺害及びにンフィーレア誘拐の下手人か(それにしても…酷い有様だな、一体どんな攻撃を喰らったらこんな事に?本当に何この体勢、手足他関節全部滅茶苦茶だ…)」
酷い有様の為、姿形の判別は出来なかった。
カジットの発言や状況証拠といったもので、とりあえずの判断が行えたくらいには。
このまごう事なき変死体を、一先ずモモンはグレートソードで掘り起こした後、適当な布に包んで担ぎ上げた。
先の戦闘で、カジットとその弟子たちを灰も残らず消し去ってしまった為、実行犯として差し出す死体が必要だからだ。
――――こんなのを差し出して、果たして信用されるかはともかく。
謎は相変わらず、尽きる事を知らない。
この女の種族について…
巨大クレーターという痕跡は、その力を何よりも雄弁に語っている。
相当な実力者であることは間違いないのだ。
「(これだけの力があるんだ…いずれ何処かで名前を聞くかもしれないな。若しくは俺達の様に息を潜めているのか…)。
行くぞナーベ。こいつ…というか、コレを冒険者組合に突き出す」
「はっ」
二人は踵を返し、来た道を辿った。
「待つでござる!
拙者を置いて行かないでほしいでござるよぉ!」
その後を、従属した森の賢獣――――もとい、ハムスケが追いかけた。
しばらく後…
とある冒険者たちが集う酒場にて、ジョナサンはこんな会話を耳にした。
「なぁ知ってるか?
あの英雄モモンの影で一気にプラチナ級までのし上がった新米がいるらしいぜ」
「たっはぁ、そいつは運がねぇや。
せっかくスピード出世したってのに、英雄モモンの名声に喰われちまったって訳か」
「そういうこった。
まあソイツはどうやら斥候らしいからある意味都合がいいっぽいが…ついでに子連れらしいぜ」
「ほうほうそりゃあ…息子か?娘か?」
「娘、だそうだ」
「おぉ…ふへへへへ」「へっへっへ」
それを聞いた“プラチナ級冒険者”ジョナサンは肩を竦めながら、酒場を後にして自分たちの住まいへと足を運んだ。
「――――…ただいま、ナターシャ」
「お帰りなさい、お父様。
…もうそろそろ点呼の時間です」
「そうだな」
エ・ランテルでの住居に戻った彼は、娘である“プラチナ級冒険者”ナターシャと共に黒い無線機キットを手に取った。
「おーい
『はーい、てるとですぅ~。
――――何なんスか?この合言葉』
「合言葉に態々意味なんか無いさ。
一先ず全員に繋いでくれ、定期連絡をする」
『うーい。
というわけで――――てつとから全員に通達や、ハイ点呼』
アストロノーツ山田の掛け声で、他の娘達が順番に声を上げる。
『ニモエル、元気よ。
所でデルモんは本当に大丈夫?』
『はいはいはーい!デルモん今
ちょっと大変だったけど、今は平気!』
『リリューム、無事です。
…デルモちゃん、また変な事に首突っ込んでるんじゃ』
『こちらカーキィ異常なし。
それとデルモんがおかしな事になってるのはいつも通りだから、もうそういうの込み込みで動いてるわよ。どうぞー』『おかしな事って言うな―!』
娘達の無事を確認出来たジョナサンは「良し」と頷き、今一度行動に関する注意事項を述べた。
「いいか?何度も言うし当然のことだが…もう一回言っておくぞ。
確かに俺達はこの世界では必要以上に強いかもしれない。
だからってそれを周囲にあまり必要以上にひけらかしたり胡坐をかかない事、これが一つ。
次に俺達より強い存在や俺達を容易に御し得る存在を常に考慮する事、これが二つ目。
そして…まあ、戦うより逃げろ。これが鉄則だ」
分かったな?と無線越しで聞くと、娘達は各々が各々らしい返事を返した。
素直な返事に、元気の有り余る声。そしてやや嫌々そうな返事…これらを聞いてる内に、彼は自分がえもいわれぬ幸福感に包まれている事を感じた。
こんなのでいい、この程度でいい…例え夢だろうが現実だろうが構わない。態々力を用いて、巨万の富を築き上げる必要もない。
等身大…そんな事を言うとスカした様に聞こえるが、本当にそれ位が心地よいのだ。全くそれで良い。
しかし…と、彼は通信を終えながら考える。
この小さな小さな幸せを守るために、どれだけの力が必要となるのだろうか?
職業柄、目に見える見えない構わず、あらゆる概算を行なってきたランドナだが…今回ばかりはその感覚を掴み損ねていた。
もし自分の全力と、それに加えた何かが必要となるのなら…その時自分は立ち上がれるのだろうか?
目に見えず、ありもしない脅威に眩んだ時…すぐに「いや…」と気を持ち直した。
やれるか、やれぬか…そう言う話では無い。
やる――――ただこれだけしか無いのだ。これまでも、そしてこれからも…。
そのために足掻き、朽ち果てられるのなら――――彼の暗く塗りつぶされた心は、最早揺らぐ事は無いだろう。ただ河川に流されて、転げ回る石の様に…。
「…さて。
行こう、ナターシャ。仕事探しだ」
「はい、お父様」
戦いは明日も続く、例え死にたくなったって…いつもそうなのだ。
と言うわけで第一節終了となります。
第二節以降もどうにかプロット固めてから手をつけようと思いますので、お楽しみに。
後書きのオリジナル設定集要るかな?
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要るからリリュのセクハラ削れ
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要らんからリリュのセクハラ増やせ
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リリュのセクハラ削らなくていいから書け
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どむ・しゅとぅっつあー(無効票)