VRMMO。みんな大好き茅場先生が作り上げたフルダイブ型のゲーム機、ナーヴギア。
完全なる仮想現実を作り上げて見せた彼にはさすがの一言だ。
しかし、そのポテンシャルを活かせるゲームというのが中々出てこなかった。
知育系のゲームばかり出してきたゲーム会社には二度と投資しないと決意した。
そこで出てくるのが再び茅場先生。自分で世界初のVRMMOを作り出した変態。
さてさて、そんな僕がいる場所は研究室っぽい場所。誰のって?
「カヤバー、さっさとソフト寄越せ」
茅場先生の部屋でしたー。
「君はもう少し遠慮というものを覚えた方がいいのではないかね」
「このやりとりを傍で見ている10歳がいることは置いといて」
「ちょっと?」
ここまで空気になっていた少女をあえて巻き込んで話を進める。
「虹架を待たせてるんだ、ね?」
「そ、そうだったわ」
少女、七色・アルシャービンは研究者だ。その年齢なんと10歳。文句なしで天才と言っても差し支えない。
アメリカにいたのをこちらの茅場が呼んだ。
「いやいや、七色博士にもお世話になった」
「こちらこそ、ほんとに貴重な経験になったわ」
「僕も一応参加したんだけど?」
博士2人が新たな友情を芽生えさせている中、僕は不満を表に出す。
「なんなら僕、君に感謝されたことないんだけど?」
「...私は」
今までのふざけた雰囲気は鳴りを潜め、真面目な雰囲気で話し出した。出来るなら最初からやってくれ。
「私にとって君は最高の友だ。だから、私はこれを渡したくない」
「知ってる。それでも僕は君にそれを要求するんだよ。それが最善だから」
少しばかり驚いたような表情を見せた後、息を吐く。
「いつからだ?」
「最初から」
「そうか」
二度目のため息。このやりとりについていけなくなった少女は拾える情報から推測しようとしているようだ。
当てられたら困るんだけど。
「七色、そこまで。虹架との時間なくなるよ」
「...そうね。では、茅場博士。また」
「ああ、さようなら。七色博士」
これで七色の日本滞在における用事は終了。あとは人に会って明日にはアメリカに戻ることになっている。
「ただいまー」
「お邪魔しまーす」
やってきたのは僕の家。虹架とは同棲してるのでこっちに来るのが正解だ。たまに実家の方に帰ってるので運が悪ければ会えないけど。
「おかえりー!あ、七色!プリヴィエート!」
「お姉ちゃん!プリヴィエート!」
最近まで疎遠になっていたとは思えない仲の良さ。使える手段をすべて使ってでもこの状況を実現させたのすごくない?すごいよね?よし。
「はいはい、イチャイチャするのはいいけど通してねー」
お茶の用意くらいは僕がする。僕の事情とはいえ、二年間は会えなくなる。七色の帰国を明日にしてもらったのもその辺の事情ありきだ。
その後、一通り東京の街を観光して家で晩御飯。七色と虹架の2人で寝てもらった。姉成分をしっかり補充できた...よね?
「うー、お姉ちゃん...」
「もう、七色。お姉ちゃんだって寂しいんだから」
「お姉ちゃんにはお兄ちゃんがいるじゃない!」
仲がいいのか悪いのか。いや良いんだけど。
「あ、七色。これ」
「ん?なにこれ?」
七色に渡したのは手紙。厳重に封がされているが、普通の手紙だ。
「七色、これは真面目な話なんだが」
と、前置きをして
「この後、日本で大きな事件が起こったときにこれを開けて一人で読んでくれ」
彼女のポカンとした表情を見るのは初めてだったことをここに記しておきたい。
「それと、ごめんね」
表情は先ほどから変わっていない。何言ってるんだコイツとでも言わんばかり。
「何言ってるのお兄ちゃん」
言っちゃったよ。
「今の僕から言えることは、すぐに分かるってことかな」
その時、君は僕を許してくれないかもしれないけど、ね。
そのまま空港で別れて帰宅。今日がSAOのサービス開始日だ。
「それじゃ、行こうか」
「うん!」
お互いに準備は出来ているナーヴギアの初期設定は早めに済ませた。あとは一言、決まった言葉を言うだけ。
「「リンクスタート」」
こうして僕は、デスゲームになることが確定しているSAOの世界に飛び込んだ。