【第1章完】キラキラ!~美人七姉妹とのドキドキ同居生活!?※キラキラしたものとは言ってない~   作:阿弥陀乃トンマージ

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第8話(4)エメラルドの夢

「……ぷはあっ!」

 

「社長、少し飲み過ぎでは……」

 

「これが飲まずにいつ飲むのよ!」

 

「しかし……」

 

「らいじょうぶ! 大人だもん、自分のキャパシティーくらい分かっているわよ!」

 

「らいじょうぶの時点で大丈夫ではないのですが……」

 

「いいから、ワインもう一本持ってきて!」

 

「……はい」

 

 秘書が奥に下がる。山田が周囲を見渡して感嘆とする。

 

「知ってはいましたが、このバーカウンター、あらためて凄いですね……」

 

「そうでしょ?」

 

「はい。本当にお店に来たのかと思ってしまいます」

 

「えへへ、実はリフォームの際に一番力入れたのって、ここなのよ~」

 

 エメラルドは笑みを浮かべる。

 

「そうなんですか?」

 

「夢だったのよ、自宅兼オフィスにバーカウンタ―を設置するの~」

 

「夢を叶えられたんですか。まさにジャパニーズドリームですね!」

 

「あっはは! まあ、そうなっちゃうかな~」

 

 山田の賛辞に対し、エメラルドは照れくさそうに後頭部を掻く。

 

「いや、本当にすごいですよ」

 

「でも……そんな夢を守ってくれたのは君だよ~!」

 

「うわっ⁉」

 

 エメラルドは隣に座る山田に抱き着く。山田が驚く。

 

「どうもありがとう~」

 

「ちょ、ちょっと、エメラルドさん……」

 

 エメラルドは山田に対し、頬をすりすりとさせる。山田は戸惑う。

 

「……おっほん!」

 

 戻ってきた秘書が大きめの咳払いをひとつ入れる。エメラルドが首を傾げる。

 

「うん? どしたん?」

 

「……少し密着し過ぎでは?」

 

「そう? これくらい普通だよ~」

 

 エメラルドはさらに頬をすりすりとさせる。山田はさらに戸惑う。

 

「エ、エメラルドさん……」

 

「……飲み過ぎですね。やはりワインのおかわりは無しで……」

 

「ああ、ちょい待ち、ちょい待ち!」

 

 エメラルドは慌てて山田から離れ、秘書を呼び止める。秘書は呆れ気味に見つめる。

 

「……」

 

「もう一杯だけ、お願い!」

 

 エメラルドが両手を合わせる。秘書はため息交じりにワインを開ける。

 

「今日はこれで最後ですよ?」

 

「うん、貴女も飲みなさい!」

 

「いいえ、厳密にはまだ業務時間内ですので……」

 

「これは命令よ!」

 

「……分かりました」

 

 秘書は自らのグラスを用意し、ワインを注ぐ。エメラルドはそれを見て笑顔になる。

 

「……カンパ~イ♪」

 

「……乾杯」

 

「しかし、山田君には驚いたよ~」

 

「まったくです、あそこで『パックマン・ディフェンス』とは……」

 

「え? パ、パックマン?」

 

「……説明よろしく」

 

 困惑する山田に対し、エメラルドは秘書に促す。促された秘書は説明を始める。

 

「買収対象業が買収を仕掛けてきた企業に対して、逆にTOBを実施する手法です。その様がパックマンに似ていることが由来になります」

 

「ああ、なるほど……」

 

 山田が腕を組んで頷く。

 

「……その発想はありそうで無かったわ」

 

「いやいや、素人の思い付きのようなものですから」

 

「何言ってんの、そこから凄かったじゃない、ねえ?」

 

 エメラルドが秘書に同意を求める。ワインを飲む秘書がグラスを置いて口を開く。

 

「……ええ、買収資金を捻出するために、我がグループ企業を売却に打って出るとは……」

 

「で、でも!」

 

「はい?」

 

 声を上げた山田に対し、秘書が首を傾げる。

 

「自分で提案しておいてなんですけど、あの企業の得意とする分野は今後伸びる可能性が高いと思われますが……」

 

「そうですね。ですが、だからこそ高値で売却出来たとも考えられます」

 

「そ、そうですか……」

 

「まあ……その辺はあまり気にしなくて良いわよ……」

 

「え? どういうことですか、エメラルドさん?」

 

「幸いにして悪い評判はまったく聞かない企業に売却することが出来たからね……この分はまた別で取り返せばいいわ」

 

「は、はあ……」

 

「らいじょうぶ、らいじょうぶ、心配ないわよ!」

 

 山田に対し、エメラルドが笑う。秘書が眼鏡のブリッジを抑えながら呟く。

 

「ですから、らいじょうぶの時点で大丈夫ではありません……」

 

「とにかくこの会社を守れたことが何よりだわ! うん? 君も飲みなさい!」

 

「社長、彼は未成年です」

 

「あ、そうだった……」

 

 秘書の指摘にエメラルドがペロっと舌を出す。山田が席を立つ。

 

「ちょっと失礼します……」

 

「なに~? もうちょっと付き合いなさいよ~」

 

「すぐ戻りますので……」

 

 山田が外に出る。

 

「?」

 

 エメラルドが首を傾げる。言葉通り、山田はすぐ戻ってきて、少し大きい紙袋を手渡す。

 

「どうぞ」

 

「? なにこれ?」

 

「……ちょっと早いですが、お誕生日プレゼントです。おめでとうございます」

 

「えっ⁉ あ、開けていい?」

 

「どうぞ」

 

「こ、これは……?」

 

「安眠枕です。エメラルドさん、あまり頑張り過ぎないで、休めるときは休んで下さい……」

 

「!」

 

 エメラルドが自分の胸をギュッと抑える。山田が尋ねる。

 

「どうしました?」

 

「い、いいや、それじゃあ、今日はもう休もうかな~」

 

「そうですか」

 

「山田君~お願い、寝室まで連れて行って~」

 

「えっ⁉」

 

 急にもたれかかってきたエメラルドに山田が驚いて秘書を見る。

 

「……寝室の場所はご存知ですよね? トパーズさんには上手く伝えておきます」

 

「い、いや……」

 

「今日のところは譲ります。今日のところは……!」

 

 秘書の声色には何故か悔しさが混じっている。

 

「それじゃあ、レッツゴー♪」

 

「ええっ⁉」

 

 山田が逆に引き摺られるようにバーを出る。

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