【第1章完】キラキラ!~美人七姉妹とのドキドキ同居生活!?※キラキラしたものとは言ってない~   作:阿弥陀乃トンマージ

8 / 50
第2話(3)女にしてください

「いや~悪いですね~放課後付き合わせちゃって……」

 

 オパールと山田は並んで廊下を歩く。

 

「別に構いませんが……何の御用でしょうか?」

 

「えっと……」

 

 オパールが立ち止まってモジモジとする。山田が首を傾げる。

 

「?」

 

「ちょっと恥ずかしいな……」

 

「恥ずかしい?」

 

「いや、なんていうか……」

 

「なんていうか?」

 

 オパールがなにかを決意した顔で両手を合わせ、山田に頼み込む。

 

「ボ、ボクを女にしてください!」

 

「えっ⁉」

 

「⁉」

 

 廊下を通っていた生徒たちが驚いた顔で振り返る。

 

「ちょ、ちょっと、こちらへ!」

 

 山田がややうろたえながらも、とりあえずオパールをその場から連れ去る。

 

「……いやいや、本当申し訳ないです~」

 

「……“勉強の出来る”女にしてくださいということだったんですね……」

 

 図書室で向かい合いながら、山田は頭を抱える。

 

「ちょっとテンパっちゃって、大事なところが抜けちゃいましたね~」

 

「テンパらないで下さい。周囲に人が少なかったのが幸いでした……」

 

「幸い?」

 

 オパールが首を傾げる。

 

「……いえ、もはやどうでもいいことです。それにしても、勉強が苦手とは……」

 

「へへっ……」

 

 オパールが後頭部をかく。

 

「こう言ってはなんですが……」

 

「なんですが?」

 

「よくこの学校に受かりましたね」

 

「ストレートですね、物言い」

 

 オパールが苦笑する。

 

「この学校は結構偏差値が高いのですが……」

 

「一世一代の勝負の一夜漬けでなんとかなりました」

 

「そ、それは凄いですね……」

 

「でしょ?」

 

 オパールが笑顔で胸を張る。

 

「……入ったは良いものの、授業のレベルの高さに戸惑っていると……」

 

「はい、その通りです……」

 

 オパールが俯く。

 

「……そう言えばそんなことおっしゃっていましたね……まあ、力になれるのであれば……お教えしましょう」

 

「本当ですか⁉」

 

 オパールが顔を上げる。

 

「なんでも聞いてください! と、大見得を切りましたからね」

 

「助かります~」

 

「なにが分からないのですか?」

 

「えっと、古文ですね」

 

「古文ですか」

 

「はい」

 

「例えばどこが?」

 

「助動詞の接続ですね、未然形とか連用形とか終止形とかもう……言葉の勉強で形ってなに?って感じで……」

 

「ああ、それなら簡単です」

 

「え?」

 

「歌で覚えれば良いんです」

 

「歌?」

 

「未然形、未然形♪」

 

「⁉」

 

「『る』、『らる』、『す』、『さす』、『しむ』ときて~♪」

 

「ちょ、ちょっと待って下さい!」

 

「どうかしましたか?」

 

「いや、い、いきなり何を?」

 

「桃太郎の歌に乗せて覚えるんですよ」

 

「も、桃太郎……?」

 

「ええ、そうです。最初から歌い直しますよ……未然形、未然形♪ 『る』、『らる』、『す』、『さす』、『しむ』ときて~♪ 『む』、『むず』、『ず』、『じ』、『まし』、『まほし』、『り』~♪」

 

「へ、へえ……」

 

「連用形、連用形♪」

 

「つ、続くんですか⁉」

 

「それは……はい」

 

「そ、そうなんですか……」

 

「続けますよ……『き』、『けり』、『つ』、『ぬ』、『たり』、『たし』、『けむ』と~」

 

「ほう……」

 

「『なり』、『たり』、『ごとし』は連体形~♪」

 

「あ、連用形と連体形は続くんですね」

 

「そうです」

 

「へ~」

 

「終止形、終止形♪」

 

「ま、まだあった⁉」

 

「『らむ』、『らし』、『まし』、『べし』、『めり』と『なり』~」

 

「ほうほう……」

 

「ラ変につくとき、連体形~♪」

 

「いや、そのラ変が分からん!」

 

 オパールが頭を抱える。山田が呟く。

 

「ラ変はラ行変格活用です……」

 

「ああ……」

 

「『あり』、『をり』、『はべり』、『いまそかり』の四語しかありません」

 

「え、四語だけなんですか?」

 

「ええ」

 

「そ、それなら覚えられるかも……」

 

 オパールの顔が明るくなる。山田が告げる。

 

「まずは最初のつまずきを克服しましょう」

 

「つまずき?」

 

「ええ、助動詞の接続です」

 

「ああ、はい……」

 

「今歌った桃太郎の替え歌を体中に染み込ませるんです」

 

「か、体中に? ど、どうやって?」

 

「……歌うんです。さあ、どうぞ」

 

「えっと……未然形、未然形♪」

 

「そうです、恥ずかしがらずに!」

 

「『る』、『らる』、『す』、『さす』、『しむ』ときて~♪ 『む』、『むず』、『ず』、『じ』、『まし』、『まほし』、『り』~♪」

 

「おおっ、良いですね!」

 

「おっほん!」

 

「!」

 

「盛り上がっているところ悪いけど、そういう勉強はよそでやってもらえる?」

 

 図書室の先生が、二人に睨みをきかせる。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。