空中庭園のある一室_____
『パンケーキ』という単語を聞くだけで私はかたかたと震えてしまう。それもこれもあの悪魔のせいだ。パンケーキは本当はふわふわで私の大好物なのに!
(ひっそりと座に還ろうとも考えた。)
でもそれではあまりにもマスターが可愛そうだと思った。
「________マスターには私が必要だわ!」
あの悪魔じゃなくて私が最初に召喚されていればマスターは『私のもの』だったのに........
「マスター.........ますたぁ」
マスターの事を思うだけで胸が張り裂けそうになる。
『アビーちゃん、大丈夫?』『アビーはいい子だなぁ!』『朝ごはん一緒に食べよ!』『今日は何しよっか?』
あぁ、むちゃくちゃにしたい。あの髪も身体も何もかもを飴玉のように舐め回したい。それに自分の名前を呼び掛けてくれるあの日だまりのようで暖かい声質が頭をとかす。
「......アビーはイケナイ子だわ。」
部屋の隅で過ごす毎日。なるべくマスターとは会わない方がいい。今の状態では何をしでかすか分かったものではない。
アビゲイル・ウィリアムズ (絆9.8)
アビゲイルは怯えていた。セミラミスに対し畏怖や悲しみを感じているのだろう。しかし本質は其処にはない。彼女はセミラミスを言い訳にマスターに対しての異常な程の劣情を隠しているのだ。
絆値が10に到達したとき、彼女は己の欲望を抑え込む事が出来るのか不安で仕方がない。既に髪の色が徐々にではあるが白髪交じになりはじめている。第三の再臨への予兆である。
「スカディーちゃん!」
北欧神話の異間帯、最後の神にして異間帯の王。全てを愛そうと言う彼女は実に慈悲深く神々としていた。と言うか元ウチのサーヴァントでもあるのだが。
「なんか足の小指を扉の角にぶつけて座に戻っちゃったけど、この世界にまた現界してくれたんだね!」
「な、な、な、何を申すか!そんな事は決して起きてなどいないからな!」
しかもしっかりと記憶を保持してらっしゃる。
「あの、スカディー様、この方々はお知りあいなのですか?」
戦乙女達が心配気に尋ねる。
「ふーん、知らぬ!」
なんか拗ねちゃたし。まぁいいか。今は彼女の戦力が欲しい。ていうかシグルドが思った以上に強かった件について。あれ絶対に中身違う何かが入ってるだろ。一サーヴァントの出力じゃないもん、あれ。
(初戦でセミ様の砲台2砲も破壊されたんだぜ?しかも宝具の開帳無しでだ。)
それに破壊してから撤退までの流れが完璧過ぎた。コアトルさんやヴリトラちゃん出す前に逃げて行きやがったからね。
「て言うか............新所長死んじゃった」
自分のせいです、はい。肉壁にしてごめんなさい。必ず全ての戦いが終わり次第新旧共々聖杯で生き返らします!多分........
「スカディーちゃん、はい!」
「なんだこれは?」
「再契約書だけど?」
「せぬけど」
「え?」
「だからせぬと言った」
んーおかしいなぁ。
「今度美味しい朝食つくるけど、来ないの?」
「うぐっ、行きたい!行きたいが......行けぬのだ。」
どうやらスカディーちゃんにも事情があるようだ。
「それじゃあ一つだけ__________全てが終わったら(カルデアに)戻って来てくれる?」
スカディーは目を大きく開き歓喜とした様子で涙を浮かべた。
「あぁ、あぁ!必ず___________(マスターの元に)戻る!」
あまりにも長い時間を孤高の神として過ごしたスカディーにとってマスターの言葉はそれ程までに嬉しいものだった。