「...........空中庭園がめっちゃ攻撃されいてる件について」
到着直後にもオデュッセウスからの熾烈な総攻撃にさらされたこの異聞帯であるため、中枢部の警備が当然甘いはずもなく、ゼウスの大雷霆によりいきなり空中庭園ごと撃墜されそうになるという過酷なスタートを切った。
「まぁ、セミラミスの空中庭園はそう簡単には破壊出来ないよ。幾重にも強化が施されているんだからな。」
クリプター達に言わせると「下手をすれば汎人類史よりも繁栄している文句なしの人類史」の評判どおり、繁栄を極めた都市を象徴するかのように「誰も彼もが笑顔でいる」環境らしい。
(幸福かつ充実した日常を過ごす住民たちではあるが、その日常会話にはごく自然に神々への感謝の言葉が当たり前のように含まれる、か。)
都市の見た目は汎人類史にかなり近く、いわゆるステレオタイプの未来都市に近い。発言者のカイニスに言わせるとこれを「気色の悪い都市」と評しており、理想郷であることや笑顔で神々に感謝する事が当たり前の価値観と肌が合わないものと思われる。
(そして、神々は千差万別であることを許すため、他人と相違点が大きい者を卑下するような差別もないとか。)
追放されたアトランティスの民に見られた驚異的な身体的特徴に加えてさらに、住民は視野の広さを含めた知識レベルも高い事が窺え、空想樹と異聞帯のことを一般住民が当たり前のレベルで知っている。
「これまでの異聞帯とは全く違う。」
都市の発展も、全エリアの端から端まで余すことなく行き届き、それが数千年という単位で「変わらぬ豊かさ」を保ち続けている。テオス・クリロノミアの完成度もアトランティスのそれに増して優れており、人々は神々から直接殺害の標的になった場合以外ならたとえ死んでも蘇る身体を手に入れ、老化さえも起こらない。
「異常が過ぎるぜ、クリプター。人類全体を神に引き上げるつもりか?」
空想樹の存在が周知されていることからもわかるように「カルデアは異聞帯を滅ぼしてきた」ことを市井のレベルで認知されており、一般市民が問答無用で襲ってくることのありうる地域と遂に正面切って対峙することとなる。すなわち、異聞帯のすべて。オリュンポスに生きて暮らす人々のすべてが空中庭園の敵である事。
「だが、それでいい。罪悪感もなにも感じずに攻略ができるというもの。そうであろう、マスター?」
「あぁ、進むべき道に障害があるってんなら取り払うまでだよ。そうやって俺たちは前に進んできた。」
現在攻撃を仕掛けてくるオリュンポス市民(並の英雄くらいに実力者)目掛け、無慈悲な空中庭園砲台浴びせている。というか市民らは不死身なので常に殺し続けなば攻撃の手はやまない。
(他の世界線だと宮本武蔵並びにシャーロック・ホームズと協力してこの異聞帯を攻略するらしけれど、どこですか?)
この異聞帯の空想樹はすでに完成しているらしく、地球圏の8割を覆う超大規模なものでキリシュタリアは大神ゼウスがこれを「アトラスの世界樹」と命名したとかなんとか。また、上空を覆っている「空想樹の樹枝」の発生源でもあるんだと。
「この異聞帯が個人的には一番ヤヴァいと思ってるよ。」
「そうであろうな。」
「空よ、裂けよ。星よ、砕けよ。天に有りしは全て我。星を統べしは全て我!『我、星を裂く雷霆(ワールドディシプリン・ケラウノス)』!!」
一体全体どういうことだろう。あり得ない。今の怒声で空中庭園は半壊、いや半分焼失した。
「セミラミス!サーヴァントは全員無事か!」
セミラミスは冷や汗を見せつつも頷く。
「皆、無事だ。庭園内で無事な領域に強制送還転移させた。誰一人として退基はしておらぬ。」
良かったと胸に手を当てる。空中庭園はキルケーの仕掛けた魔術により元の状態へと回帰している。外を見渡せば世界が半分焼失していた。攻撃の桁が違い過ぎる。
「そら、敵の首領、姿形が見えてきたな。人類史の想像するギリシャ全能神らしからぬ姿ではあるがまさしく奴がそうなのであろう。マスター、どうする?空中庭園の砲台、それと我らサーヴァントたちだけではあれを倒すまでは至らんぞ。」
そんなことは分かっている。今しがた空中庭園内にあるカルデアの人員から報告がアナウンスされたのだ。観測されているやつの数値は俺たちの総攻撃を持ってしても倒し切る事は出来ないと。
「ははは......これまでなんとかやって来れたが、ここが俺たち最後のグランドオーダーかも知れないな。」
味方は空中庭園組と生き残ったカルデアの構成員のみ。所長代理もムニエル。他の世界線ではいるであろうダ・ヴィンチもゴルドルフもアトラス院の魔術師もネモ船長もいない。それだけではない。どの異聞帯でも通常協力してくれる味方(主にサーヴァント)も空中庭園で攻略する自分たちにはいないのだ。
(まさに詰みってやつだな。)
拳をぎゅっと握りしめる。前方に浮かぶ異様な姿をした浮遊する顔面。本来の姿である「真体」と言うやつだ。巨大な顔面の上下に翼がついた、マンボウや戦闘機を想起させる姿をしている。
「先輩」
「うわぁ!?ま、マシュかぁ、いつの間に隣にいたんだ?」
「いつでもどこでも隣にいますが、何を言っているのですか。まぁ、その件については今はどうでもいい事です。あの目の前の敵が私と先輩の未来を脅かそうとしているのですから。」
マシュが突然と姿を現す。そして空中庭園の外壁の上に飛び乗り、叫んだ。
「ろぉおおおおおおおおおまぁああああああああ!!!」
ローマ?何を言っているんでしょうか、この頭の可笑しい後輩は。
『最高神クィリヌスの祝福』
ムニエル所長から通信を受ける。前方にいる全能神ゼウスに攻撃が届く、と。一体全体何が起こっているんだ。
「先輩の令呪、使わせて頂きます。拒否権はもちろんありません。私が先輩を放つ。先輩と私が一つになる。一つの砲台となる。」
ブツブツと後輩マシューは呟いている。
「装填完了、ブラックバレル、射出しますッ!!」
放出される砲撃。質量共に密度は空中庭園の全砲門起動時と同等以上の火力を誇った。
(何がヤバいって、あの全能神の巨大顔に大きな風穴をあけたこがこの後輩の恐ろしさを物語ってる。)
自分の令呪の強制使用並びに全能神ゼウス、神殺しをこの後輩は成し遂げたのである。