ソードアート・オンライン イフ・メモリーズ 作:虚無の魔術師
ゲーム開始から数ヶ月が経ち。
先行し、攻略に専念した一部のプレイヤーに追いつくように、ビギナープレイヤー達も攻略に乗り出した頃合い。
それは、ある日の事だった。
深い夜の森にいた少女は、屁垂れ込んでいた。
後少しでモンスターに殺されかけたその瞬間を予見し、思わず目を瞑っていた彼女だが────目の前の消失する光を見た途端、力が抜けたのだ。
自分の生命を奪おうとしたモンスターを斬り伏せたのは、銀色の光。白い閃光を帯びた剣を振るう、軽装備の青年。彼は振り返り、少女へと手を差し伸べた。
「─────危なかったね、大丈夫?」
それが少女 ミトと青年 ルフトの出会いであった。
◇◆◇
それから数日が経ち、安全な街への入ったルフトはその少女 ミトと再会した。何か感じ取ったのか、ルフトはミトに話し掛け、軽く世間話をしていた。
「───えっ、君もベータテスターなの!?俺もだよ!」
「貴方も?…………もしかして、あの時の?」
「いやー、まさか同じテスターと会えるなんてね。他の人達は俺よりも早いし、もう先に行ってると思ってたからなぁ」
少し前に何かあったのか、思い悩んでいる様子のミトを元気付けようとするルフト。一生懸命に頑張る彼とは裏腹に、彼女はあることが気になったように質問を漏らす。
「…………貴方は確かテスターの中でも強かったはず」
「うん?確か、そうかも………だけど?」
「どうして、あんな所にいたの?もっと先の攻略に行ってても良かったのに」
それはそうだ。ベータテスターの大半はこのゲームの知識は誰よりも────ゲームマスターや運営を除けば、詳しい部類に入る。それ故に彼等はいち早く攻略を進め、最前線を広げていった。
ミトの記憶にある青年─────ルフトはベータテスターの中でもトップに部類していた。そんな彼が最前線に向かわずに、どうしてこの一帯にいたのか、と疑問に思ったのだ。
そんな少女の疑問に、ルフトは恥ずかしそうに笑った。
「────助けてたから、かなぁ」
「………助けてた?誰を?」
「そりゃ、他の人達だよ。あの地帯はまだ新人の人とかが通るしね。少し前もモンスターの大群に襲われそうになってたから、手伝いをしてね。心配だから周りを散策してたら、君が危なかったっていう訳なんだ」
自慢してるようで少しむず痒いけどね、とルフトは笑って答えた。信じられないと、いった様子でミトは青年を見つめていた。誰かの為に、顔も知らない誰かの為に、率先して行動できるのか、と。
「どうして?自分が、死ぬかもしれないのに………」
「────助けたいからだよ、俺自身がそうしたいからやるだけさ。死ぬのは怖いけど、誰かを見捨てて生き残る自分を許してしまうのは─────もっと、怖いから」
笑顔で告げる青年に、ミトはそれ以上何も言わなかった。いや、言えなかったのだろう。黙って聞いていた彼女は、どうしもない程に深い後悔と自己嫌悪に囚われていた。
(この人は、スゴい…………私とは、違う)
数日前、彼女は仲間を見捨ててしまった。互いにモンスターの相手をしている最中、死にかけていた二人。その際に、彼女はある恐怖に駆られたのだ。
────目の前で、
己が死ぬことへの恐怖すら塗り潰した圧倒的な恐怖が、彼女の心を支配した。その結果、彼女はその場から逃げてしまったのだ。
彼女の死すら確認できず、ミトは絶望のままに自身の弱さを思い知らされた。どうせなら、彼女と同じように戦って死のうと。そうして最後の力を使い潰して消えようと、自暴自棄に暴れていた彼女を助けたのが────ルフトだったのだ。
「────どうしたの?考え事?」
そんな風に自己嫌悪に陥っていた彼女を、ルフトは心配そうに呼び掛けた。大丈夫と、空元気で答えるミトに、彼は納得したように頷く。しかし何か思うように見つめていた彼は、表情を切り替え、笑顔で語りかけた。
「それより、早く集会に行こうよ。君が探してる人も、そこにいるかもしれないし」
そう促し、ルフトはミトと共に広場に向かう。
彼が彼女と同行している理由は、それであった。あの時の見捨ててしまった親友がいるかもしれないという彼女に、心配なルフトが付き添っているというのが現状なのだが。
死んでいるか生きているのかの判別の方法など簡単かもしれしない。しかし彼女は、実際に見て知りたいと、覚悟を決めていた。逃げ出した自分から決別するためにも、現実を自身の目で確かめてみせると。
◇◆◇
「今日はオレの呼びかけに応じてくれてありがとう!知っている人もいると思うけど、改めて自己紹介しておこう!オレはディアベル。職業は気持ち的に『ナイト』やってます!」
ユーモアのある自己紹介を述べた爽やかな青髪の男性。軽装備をした彼は噴水広場の壇上に立ち、周りで腰掛けた多くのプレイヤー達に呼び掛けた。
攻略会議。
百階層もある迷宮 アインクラッドの攻略に専念するために、多くのプレイヤーは手を取り合って協力することになった。どんなに強いプレイヤーでも、一人では生き残れない。だからこそ、多くの強者がこの広場に集まって、攻略に参加する意思を示していた。
「今日、俺のパーティーが、あの迷宮区の最上層に続く階段を発見した。つまり明日か、遅ければ明後日には、第一層のボス部屋に辿り着けるってことだ!」
次の階層に向かえる。
その言葉に多くのプレイヤー達が沸いていた。このアインクラッド攻略こそが、この世界から脱出する唯一の方法である。故に、まだ小さな道であろうとも、希望が見えてきたと喜ぶものが多い。
そんな賑わいかけた空気を、一つの声が無に返した。
「─────ちょお待ってんか!」
怒声を響かせ、人影が階段を勢い良く飛び降りた。ダンッ、と着地したその人物────トゲトゲとした髪の目立つ男は、不満そうな顔で周りを見渡した。
「わいはキバオウってもんや。ボス戦の前にこいつだけは言わしてもらわんと、仲間ごっこはでけへんな。こん中にも五人か十人、侘びいれなぁあかん奴らがおるはずやろ」
「────キバオウさん、君の言う奴等ってはベータテスターのことかい?」
「決まっとるやないか! ベータあがりどもは、こんクソゲームが始まったその日に、ビギナーを見捨てて消えよった。 奴らは美味い狩場やら、ボロいクエストを独り占めして、自分らだけポンポン強なって、その後もずーっと知らんぷりや。
こん中にもおる筈やで! ベータあがりの奴らが!そいつらに土下座さして、溜め込んだ金やアイテムを吐き出してもらわな! パーティーメンバーとして、命は預けられんし、預かれん!」
キバオウの怒声に、反応は様々であった。
馬鹿馬鹿しい、と鼻で笑う数人のグループ。それもそうだ、と同調する者もいれば、勝手な言い分だと呆れ、憤慨する者もいる。その一部、彼の言葉に震える者もいた。
ルフトの隣にいたミトも、その一人だった。強い自己嫌悪に苛まれていたのだろう。そんな彼女の隣にいたルフトは心配そうに見守っていた。
その直後、小さなざわめきを一蹴する強い声が響いた。
「──────くだらんな」
その声に、広場一帯が静寂に包まれる。全ての視線がその声の響いた方へと向けられていた。そこにいたのは、鎧を着込んだ黒髪の男だった。目付きが鋭く、背中に三本の剣を装備したその人物は、隣にいた黒髪の少女を座らせて、立ち上がる。
その声を聞いたキバオウも、面食らったように黙っていた。しかしすぐに、威勢を取り戻したように睨み付ける。
「…………なんやと?」
「黙って聞いていれば、恥知らずも良いところだ。本気でそんなことを言ってるのなら、貴様の頭は腐っているぞ。ウニ」
「だっ、誰がウニや!?おどれ喧嘩売っとんのか!?わいはキバオウや!!」
「生憎、雑魚の名前なぞ興味はない。貴様なぞ、ウニで充分だ」
傲岸不遜といった態度の男。キバオウを露骨に見下し、侮蔑する口振りに、怒りを覚えるキバオウだが、男は素直に取り合わない。それどころか、不愉快そうに眉をひそめる。
「それより、おどれ。何がくだらんのや」
「決まっている。貴様の言葉の全てだ。先程の発言、ベータテスターが情報を独占したせいで大勢が死んだと言ったな。それは間違いだ」
「何が間違いやねん!奴等が狩り場やクエストを根こそぎ漁ったから、他の奴等が強くなれずに死んだやろーが!それともなんや!死んだ奴等が悪いって言いたいんかいな!?」
「──────そうだが?」
断言した。
アッサリと、当然だと言うように。その言葉にキバオウすらも、呆然としていた。異様な空気の中で、当たり前と言う口調で男は話す。
「奴等は死んだ。それは弱いからだ。実力も運も足りず、無様に死んだのは奴等の不徳だ。ビギナーだろうが、ベータテスターだろうが、死んだ奴は弱いから死ぬ。直接殺したならまだしも、それは貴様の自分勝手な妄想だ」
「ざ、ざけんなや!?そんなんで納得できるかいな!連中が見殺しにしたのは事実やろうが!そんな奴等に、命や背中預けられるわけないやろ!」
「……………」
はぁ、と男が溜め息を吐き出す。呆れたように一息ついた男は─────背中の大剣を持ち上げ、キバオウへと突き立てた。突然のことに気圧されるキバオウ、ディアベルや何人かが止めようと駆け寄るが、凄まじい怒気を帯びた男がそれを諌めた。
「───俺はな、親がいない。父親は酒浸りで自殺した、母親は俺達を捨てて不倫相手と駆け落ちした。妹と二人で過ごしてきた。そんな俺達を助ける奴等は、誰もいなかった。だからこそ俺達は、自分達の力で生き延びてきた」
「…………」
「なのに、何だ?見殺しにされただ?なら何か、このゲームに詳しいベータテスターの奴等は、ビギナー全員に配慮するのが当然か?────笑わせるな、お前達とて今更自分達よりも立場の低い奴等のことを配慮すらしてこなかったクセに、自分達の不平等だけを感情的に吼えるな。クズ」
大剣を突き立てる腕が震える。恐らくは、怒りだろう。今すぐにでも剣を突き立てようと、力を込める。それが不可能だとわかっていながらも、彼にはそうするだけの衝動があった。
「俺はな、お前みたいなクズが────自分達に都合の良いことを通してきたクセに、不都合だけは自分勝手に文句を言って、美味しい思いをしようとしてるクズが大嫌いだ。ここで斬り殺してやりたいくらいにな」
その時だった。
「────そこまでにしろよ」
「…………」
二人の男が、飛び出してきた。男の剣を受け止めるように大剣を向ける青年と、抜き放ったショートソードを男の首に向けた両目を閉ざした青年。二人の人物が、男の凶行を止めていた。
「やりすぎだ。アンタに不満があるのは分かるが、度が過ぎるぜ」
「…………ここは圏内。プレイヤーのHPは削れない。剣を下げることを推奨する」
男はフンと鼻を鳴らす。忌々しそうに剣を下げ、少し距離を取る。そんな男に、落ち着いたキバオウは顔を真っ赤にして食いかかった。
「待てやゴラァ!おどれ好き勝手言いおって─────」
「おい待てよ、クリのオッサン。アンタにも言いたいことはあんだぜ」
クリやとぉ!?と息巻くキバオウに、大剣を軽く肩に乗せた如何にも戦士風な青年が気軽な様子で語り始める。
「オレはフレイブ。攻略チームのリーダーをやらせて貰ってんだが……………確か、アンタの言い分だと。ベータテスターの奴等は情報を独占してたせいで皆が死んだ、責任を取って今まで稼いできたもん全部差し出せってことになるんだが、合ってるか?」
「…………まぁ、そんなところや」
「それって得するのお前らだけじゃねーの?謝るのは百歩譲って理解できるけど、お前らじゃなくて死んだ人達の方だろ。それに、何でアイテムやコルまで出さなきゃいけないんだ? 無関係なお前ら相手に」
言葉に詰まったようだった。
反論できないキバオウにフレイブは呆れ半分で頭を抱えている。そして、近くにいた男に指差しながら、思っていたことを語り出した。
「死んだ人間を出汁にして、ベータテスターから貰えるだけ貰おうなんてやり方、端から見れば横暴だし、死んだ奴等のことを利用してるだけだ。あの人が怒ってんのは、そういうことだと思うぜ」
「あ、アホか!ダシにしとらんわ!わいはただ、奴等がわいらを見捨てたクセに平然としとる事が気に入らんねん!中には見殺しにした奴だっているやろ!」
「─────じゃあ、聞くけどよ。アンタ、テスターの奴等が見殺しにしたって、実際に見たのか?」
今度こそ、キバオウは黙った。フレイブは本当にアホらしいという感じであった。それどころか肩を竦め、
「そもそもの話、テスターの奴等からお零れを貰うなんて。オレはごめんだな。こちとらゲーマーの端くれ、奴等を正面から越えてやりてぇし、奴等を責め立てて責任を取らせようなんて、恥知らずな真似、オレはヤだね」
「うっ…………ぐぅ」
「それによ、テスター全員がビギナーを見捨てた訳じゃねぇだろ」
周囲を見渡したフレイブの視線がある人物を捉える。しかし即座に視線を外した彼は、キバオウや全員に向けて堂々と語った。
「─────『銀の英雄』、これを知らねぇなんて常識知らずはいねえよな?」
直後に、ざわめきが増した。知っているという者が大半だ。何なら、彼に助けられたという者も多い。幸いなことに、ルフト本人には気付いていない様子だった。端の方でミトと一緒に静かに聞いていたからか。フレイブは気付いていたが、敢えて指摘しなかった。
それはこの事態に巻き込まれないようにした、彼の善意からか。
「『銀の英雄』………確か、他の奴等を助けて回るプレイヤーの事やろ。それがどうしたんや」
「ソイツもベータテスターだろうぜ。他人を助けられる程強い奴が、ビギナーなワケねぇしな」
彼の推測は事実と類似していた。
そんな風に自身の考えを語ったフレイブはニヤリと笑い、キバオウに確かめるような言葉を投げ掛ける。
「────さて、キバオウだっけか。アンタの言うことが事実なら、その英雄様もベータテスターとして責任取らせるってことだよなぁ?英雄様に頭下げさせて、身ぐるみも剥いで、それでアンタは満足なんだろ?」
「い、いや………そこまでは、言うとらんやろ」
「無理だよなぁ?何せ数百人も助けてきた英雄様から身ぐるみを剥ぐなんて、助けられた奴等も不満を覚えるだろうぜ。この集会にも、英雄様に助けられた奴等が多い。んな真似したら、協力なんて出来ねーだろーぜ。少なくとも、この集会もおじゃんなワケだ」
ルフト以外のベータテスターに責任を取らせればいい、なんて言い方は筋が通らない。一人だけ例外にして他を責め立てるなどしても、無関係な一部は不満を撒き散らすだろう。
どちらにしても、キバオウにはベータテスターを糾弾しても意味がない。彼がベータテスターを責め立てられるのは、彼等が無知なプレイヤー達を見捨てた奴等だという大義名分があったからだ。
その中の一人、多くの人達を助けてきたベータテスターがいる時点で、キバオウの大義名分は揺らいでしまう。確証もない、ただの八つ当たりにも近い言葉を受け止める者も、少なくなるのだ。
こんな状況になっても、キバオウは何かを言おうとした。恐らくは、そんなことしたのはルフトだけで、他の奴等は見捨てたに決まっている、とでも言おうとしたのか。
しかし、彼の目論みはまたしても叶わなかった。
「そいつと同じく、俺も発言していいか」
ザッ、と格段と低い声で答えた男が広場の中心に入ってくる。威嚇しかけたキバオウだが、思わず仰け反ってしまう。相手が黒人であり、自分よりも明らかに体格の大きなタイプだったからだろう。
「このガイドブック、あんたも貰っただろう。行く先の道具屋で無料配布していたからな」
「そのガイドブックを作ったのは、ベータテスターってことだろ?随分とお優しいことじゃねぇか、なぁ?キバオウさんよ」
最早、キバオウに立場はない様子だった。反論すらなく、悔しそうに黙り込んでいるキバオウに助け船を出したのは、ディアベルだった。
「ま、まあ、キバオウさんも色々思うところがあったのは分かります。けど、今は皆で協力する為の攻略ですから。どうかこのくらいで終わりにしてください。お願いします」
何とか宥めようとしながらも、深く頭を下げるディアベル。そんな彼の姿を見て、複雑そうな顔をするキバオウに意見を申した数人の反応は様々だった。
「…………フン」
「………無論、その為にここに来た」
「俺もだ。言いたいことを言っただけだからな。喧嘩をしに来た訳ではないさ」
最初に口出した男はつまらなそうに鼻を鳴らし、両眼を閉ざした青年は静かに頷き、エギルもそれに同意した。フレイブは少し黙った後に、「失礼するぜ」と壇上に立ち、口を開いた。
「コイツのようにベータテスターに不満を覚えてる奴等は何人いるかもしれねぇ。だがよ、コイツの言ったことは間違えている。気に入らねぇなら!正々堂々ベータテスターを越えろ!実力でな!」
「────」
「それ以外のやり方でベータテスターを貶めようとすんなら、話は別だ!そんな腑抜けはオレが直接叩き直してやる!オレの目が黒いうちはな!以上!」
言ってのけ、フレイブは他の面々と同じように元いた方に戻っていった。ようやく落ち着いたところで、ディアベルは攻略のための会議を続ける。
そうして、第一階層攻略会議は大した問題もなく、終わりを迎えた。第一階層のボス攻略に向け、準備期間を作る形で。
◇◆◇
「─────ミト!!」
「ア、アスナ………!」
結論から言って、ミトの目的は果たされた。再会を求めていた親友は攻略会議に参加していたらしく、二人は互いの顔を見合った瞬間、喜びのあまりに泣き出しながら抱き合っていた。
その光景に戸惑っていたのは軽装備の青年と男の二人。どうやらミトが探していた親友と同行していたらしく、どういう状況か図りかねているらしい。
二人の再会を邪魔するわけにもいかない、とルフトは気付いたことを口の中で呑み込み、蚊帳の外になった二人の男の方に駆け寄る。
そこで、思い出した。
「あ、君は」
「あ、お前は」
剣士風の青年は知り合いだった。というか、ゲーマー仲である。ベータテスター時期に、張り合っていた事が多かった。テスターの中でも実力が優れており、何度か共闘することもあった彼の事は、ルフトも忘れてはいない。それは、相手も同じだったらしい。
「キリトじゃん、元気そうで何より」
「ルフトか、久し振りだな。まさかお前もここにいるとは」
「そりゃ、テスターやる程だからね。ハマったら簡単には抜け出せないのがゲーマーだし。ま、今は抜けたいけど」
「…………奇遇だな、俺もだよ」
軽く笑い合う二人、キリトとルフト。名前の綴りが似ているのもあるし、ゲームの趣味も合う。普通にフレンド登録もしてるくらいの関係だ。個人的には、友人というよりも、因縁のないライバルみたいな感じか。
「なぁ、キリト。もしかして、お前と同じ経験者か?」
「あ、ああ。そうだ、紹介するよ、ルフトだ」
無精髭の映えた武士みたいな風貌の男が気になったように声をかける。キリトの紹介を、というより名前を聞いた瞬間、眼を見開いた男性に、ルフトは自己紹介を口にする。
「どうも、はじめまして。ルフトです。よろしくお願いします。えーっと」
「クラインだ、よろしくな。銀の英雄さんよ」
差し出した手を即座に掴んでくれた男性────クラインは、良い笑顔で応えてくれた。はは、と思う一方で、知る人が口にするであろう二つ名を耳にしたルフトは、困ったように笑う。
「あー、もしかして、知ってた?」
「前からな。オレのダチがアンタに助けられてよ、名前もその時にダチから教えて貰ってたんだ。ホントに、ありがとよ」
「………いやー、感謝されたいからやってる訳じゃないし、気にしなくていいから」
そんな風に話していると、ミトとアスナの二人が此方の方に歩いてくる。泣き腫らしたであろう目元を軽く擦りながら、笑ったミトが告げた。
「有名人だね、英雄様」
「……………おぉーう」
「何だその鳴き声」
「…………皆して俺を弄ってくるからじゃん。英雄様って、普通に恥ずかしいよ?やってみる?」
「──────いや、お前に任せとくよ」
真剣な表情でキリトは断言した。率直に考えて、自分には合わないと思ったのだろう。露骨に遠慮する青年から視線を外したルフトは、ミトの隣にいたアスナに声をかけた。
「やっ、アスナ。久し振りじゃん。まさか君も来てたとはね」
「…………うん、久し振りね。流斗君」
「ちょっと、ちょっと。この世界にいる時くらいはルフトって呼んでくれよ。……………あれ?SAOとかやるの、あの人が許したっけ?」
「えっと、兄さんのナーヴギアを借りたから………」
「浩一郎さんかぁ。確か今、出張中だったんだっけ?珍しいよね」
世間話を楽しそうにする二人。キョトンとしていた他の三人も、気になったように声をかけ始めた。というよりも、アスナと現実世界でも関係が深いミトが。
「えーと、アスナ。もしかして、リアルでの知り合いなの?」
「う、うん………ちょっと、ね?複雑な関係だから、説明するのが…………」
露骨に戸惑うアスナ。どこか言い淀んだ少女に全員の視線が集中する。困ったようにアスナがルフトを見ると、彼は仕方ないと溜め息を吐き出しながら、口を開いた。
「─────婚約者なんだよねー、俺って」
……………
「はっ、はあああああああああああああああああああっっ!!!!?」
何も知らぬ三人の絶叫が、街全体へと響き渡った。
注釈:アスナさんはキリトのヒロインです!アスナさんはキリトのヒロインです!(大声)
ただルフトがリアルでお偉い家の人だから、アスナの親御さんが勝手にセッティングしただけで、二人とも婚約者としてではなく、最早友達という関係です!だからそういうことではないんです!!(言い訳)
今回出てきたキャラの紹介
ルフト
闇堕ちが確定した主人公。現時点で助けてきたプレイヤーの数は100人くらい。普通に多い。これは英雄()
ミトさん
鎌の人。多分ヒロインになるかもしれない。
キバオウ
今回の被害者にして元凶。思い込んで、ベータテスターを攻め立てようとしたけど、そのせいで厄介な奴等に絡まれたことは泣いていい(自業自得だけど)
ディアベル
空気なナイト。多分最初から最後まで一番肩身が狭かっただろう人。
謎の男
キバオウに斬りかかったヤベー奴。傲岸不遜過ぎて絶対に仲間がいない。妹と一緒にSAOに参加してる。
盲目の青年
侍みたいな装備の青年。目が見えないのか、両目を閉ざしている。目が見えないのによく街中歩けたし、生き残れたなとか思うかもしれない。
フレイブ
大剣を装備した青年。ギルドのリーダーをしてるだけに指揮能力やカリスマはあるが、戦闘狂な部分がある。柔軟な考えをする一方で、自分が気に入らないと思った相手には容赦をしないタイプでもある。
キリト
黒い剣士になる前の人。多分原作みたいな風に精神的に不安定にならないかもしれない。片方が闇堕ちするから、そんな暇がない。
クライン
侍モドキ。ルフトのお陰で友達が助かったことで感謝したがっている。因みにその友達は原作では死んでいる。