ハンターノート「異世界へ転移した際の対処方法」 作:ちくわ部
依頼主:ギルドによくいる冒険者
依頼内容:よう、久しぶりだな!またエライもん持ってきやがってよぉ・・・またあの大森林に行ってきたのか?お前も物好きだなあ。
そうそう、早く冒険者組合に行ったほうがいいぜ。お前を待ってる人がいるからな。
ん?誰かって?それは行ってからのお楽しみよ!かなりのビッグネームだから粗相のないようにしろよ。じゃあな!
扉が大きな音を立てて勢いよく開かれる。
そこは冒険者組合と呼ばれる、その名の通り冒険者が通い、依頼を受けるための施設であった。
呪術的な意味の込められたブレスレットを身につけ長く捻じ曲がった木の杖を持つ者や、聖職者と思われる純白のローブを身に纏う者。重厚な鎧で全身包み大きな髭を蓄えた剣士、それと対称的に軽装で弓を背負う可憐な女性、様々な人物がそこにいた。
数多の視線が入り口の扉へ集中する。
室内はしんと静まる。
依頼の書かれた紙が貼られる掲示板を眺めながら仲間と相談していた者、依頼内容の確認のため依頼主と打ち合わせをしていた者、約束の時間になるまで雑談していた者。誰もが口を噤んだ。
受付嬢が乱暴に扉を開ける冒険者に対し、苦言を呈そうと受付の控室から顔を出す。そして、室内の異様な雰囲気を感じ取り、すぐさまこの静かなる騒動を引き起こした人物へ目を向ける。
「おい、ここに『無色の狩人』は居るか?」
静寂を破ったのはこの異様な雰囲気を作り出した人物。
その人物は背丈が子供ほどしかなかった。額に大きな宝石がついた仮面を被り、縁がボロボロになっている赤いマントと漆黒のローブを身につけている。
時には命の危険をも脅かされる冒険者。危険を承知して依頼に向かう覚悟を持った人間の集うこの場所で、子供が入ってくること自体が異質であり、異様な空気を作った原因であると思われたがそれだけではなかった。
周囲の人間の視線が胸元に光る金属プレートに注がれる。
「おいあれってアダマンタイト・・・!?」
「いやいや、ただの子供の仮装だろ」
「バカっ!俺は一度王都で見たことがある。あれは蒼の薔薇のイビルアイだ!」
冒険者の階級における最上位を意味するアダマンタイト。その象徴たるアダマンタイトでできたプレートを首から下げるその人物は、最高位冒険者チーム『蒼の薔薇』のイビルアイであった。
静寂は騒然へと変わる。
「でもなんで王都で活動しているはずのイビルアイ様が此処、エ・ランンテルに?」
「さっき『無色の狩人』って言ったぞ。アイツを探してるんじゃないか・・・?」
「おい、そこのお前」
仮面で少しこもった、女性だと辛うじて分かる声でイビルアイが、先程まで小声で話していた銀色に輝くプレートを首にした男に言う。
「へ、へい」
「『無色の狩人』を知っているか?」
「自分が見たのは二月ほど前でしたんで、そこまで知ってることは──」
「それでもいい。私は急いでいるんだ」
イビルアイは食い気味に言うと、男は落ち着かせるようにゆっくりと話し出す。
「・・・これだけはハッキリと。馬鹿でけぇ剣を担いでるのを覚えてますぁ」
「グレートソードか?」
「いやいや、あれは剣なんてもんじゃあねえっすよ。あれはもう、人間が振るうことを考えて作ってねぇような代物じゃあないでっせ」
聞けばその剣、担いでいた人間の背丈と同じ大きさをしていたと言う。イビルアイはグレートソードを2、3倍大きくさせた剣を頭に思い浮かべる。
「結構前だが俺も見た。カタナ、ってやつじゃないか?南方の方から流れてきた武器で見たことあったぜ」
「刀かぁ?俺が見た感じ、あんな細い刀身してなかったぞ?つってもグレートソードとも言えないほどデカかったけどな。どちらにせよ、剣士なのは間違いねぇ」
「我が見た時は盾と槍を持ってたぞ」
「ええ〜。私は盗賊かと思ったんだけどなー・・・」
次から次へと情報が流れ出る。しかし、その情報の内容は千差万別で統一性がなかった。
──曰く、巨剣を担ぎその巨剣で獲物を真っ二つに叩き斬る怪力の持ち主。
ーー曰く、異国の剣である刀を操り、その業前で有りとあらゆる攻撃を紙一重で避け、瞬時に敵を斬り伏せることが出来る者。
──曰く、姿形を変える摩訶不思議なバトルアックスを持ち、重量があるのに関わらず決して武器に振り回されることなく、それを自在に操る技量を持つ。
ーー曰く、数多もの敵の猛攻をその要塞とも言える盾で防ぎ切り、あまつさえ相手へ突進を繰り出し、盾で相手を吹き飛ばすと共に、槍で相手を貫いて絶体絶命とも言える状況から人の命を助けて見事に生還した。
──曰く、ふざけたような被り物を着用しながらも、機敏に矛を振り回し、大地に矛を突き立て大きく跳躍。そのまま宙を舞い獲物の背後を取って急降下し、地に足を付けることなく討伐。
──曰く、・・・
──曰く、・・・
誰に聞いても様々な変わった答えが返ってきて、情報に統一性がない。
イビルアイは仮面の下で周囲に聞こえない小さな舌打ちをする。
しかし、イビルアイが苛立ったのは情報に統一性がないことに対してではない。それは“皆揃って吟遊詩人と同じ事を口にする”ということに他ならない。
仮にも彼女は最高位冒険者である。
情報の扱いは十分に心得ており情報収集をする際、吟遊詩人から情報を手に入れることも少なくない。その時に彼女が留意することの一つとして、吟遊詩人達の話は話半分で聞いておくことがある。
吟遊詩人達は各地へ転々とすることが多く、現地で見聞きした内容を歌として歌うことがあり、情報通であったりする。しかし、仕事柄というべきか何故か話が盛り込まれていて、誇張して話されることがあるのだ。
実際にイビルアイのパーティーメンバーである、筋肉の塊ことガガーランは山道を塞ぐ、一軒家ほどの巨大な岩を持ち上げ、立ち往生した商人達を助けた。という歌を歌われた事があったのだ。ただ、実際は人間二、三人分の大きさの岩を持ち上げていたので、あながち間違いでは無かったが。
イビルアイはこの都市、エ・ランテルに訪れる前に情報収集を行った。その時に吟遊詩人から『無色の狩人』のことを聞き出したが、話半分に聞いていたその時は大した人物では無いと考えていた。
イビルアイは眉間に皺を寄せる。先程得た情報を喋った人々話は、噂を聞いただけではなく、実際に見た者もいる。信憑性は非常に高い。今探している『無色の狩人』が吟遊詩人が脚色する必要のない逸話を持っているという事になるのだ。
『無色の狩人』の情報が一巡したところで、イビルアイは受付場に向かう。
カウンターにいる受付嬢の背が少し伸びる。姿勢を正したのだろう。
「『無色の狩人』は?」
「申し訳ございません。ここ1ヶ月、冒険者組合で依頼を受けた記録がございませんので」
綺麗に腰を曲げて謝罪をする。
受付嬢の返答に対してイビルアイは訝しげな声色で疑問を口にする。
「・・・死んだんじゃないのか?」
「いえ、大体1ヶ月の周期で現れたり、調査と言って何処かに行くので・・・今日で1月と3日ですね。そろそろ帰ってくる頃ではないかと」
受付嬢がため息をつき、手元の資料をパラパラ捲りながら言う。
「申し訳ございませんが、これ以上は個人情報となりますのでご了承ください。本人が組合に訪れ次第、イビルアイ様にご連絡差し上げます。宿は黄金の輝き亭で宜しかったでしょうか?」
「そうだ、よろしく頼む」
用がなくなった冒険者組合を出る。
太陽の眩い光を黒いローブが吸収して体がほんのり暖かくなる。
「・・・普通に待つよりそろそろ帰ってくる、と言われて待つ時間の方が長く感じる。そう思わないか?」
「ん、バレたか」
背後には両手をイビルアイの脇に近づける、金髪を赤い紐で纏めた少女がいた。イビルアイはすぐさま脇に近づく手を叩き払う。
彼女の名前はティナ。イビルアイと同じ『蒼の薔薇』に所属する忍者である。
「すごい、なんで分かった?やっぱり愛の力?」
「ほざけ。お前ならそうするだろうと思っただけだ。・・・で、情報はどうだ?」
ティナは盗賊に近いレアな職業の忍者である。情報においてはチームの中で姉妹であるティアと並んで突出している。彼女であればイビルアイよりも大きな収穫が期待できるはずだ。
「『無色の狩人』その名の所以は不特定多数の情報ばかりで未だ情報が定まらない事と、モンスター討伐の依頼ばかりこなしている事からきてる」
「成る程、それは初めて聞いた。だが、この異常なまでの整合性のない噂はなんなんだ?怪力だの、奇妙な被り物をつけた変人だの、剣の達人だの・・・」
「答えは単純。色々な武器と装備を使ってるから」
「・・・そんな事が可能なのか?」
「じゃないとこんな色々な噂はできない。若しくは『無色の狩人』は複数人居るか」
「その可能性もあるな」
今まで聞いた噂で10個以上。『無色の狩人』が使用した武器の数である。これらの武器を使用して極めることは常人、否超人でさえも難しいであろう。そして『無色の狩人』は様々な装備を所持しているが、必ず顔を隠す防具を身に付けているそうだ。そう考えると中身が入れ替わっている可能性は否めない。
「『無色の狩人』はソロで活動しているんだったな?」
「んー、半分正解・・・?『無色の狩人』は1匹の魔獣を引き連れてる。魔獣というか使い魔?」
ただひとつ。誰に聞いても口を揃えて言う情報がある。
それは魔獣を引き連れているということだ。
「それは聞いた。だがどんな見た目かは知らんな」
「ネコ」
「・・・ん?何がだ?」
「魔獣の見た目。子供くらいの背丈の二足歩行で歩くネコ。それに喋る。『無色の狩人』を“ご主人”と呼んでいる事から、主従関係にあると推測」
「それはもはや魔獣というより獣人の奴隷じゃないか?」
ここリ・エスティーゼ王国は隣国のバハルス帝国とは違い、第三王女であるラナー・ティエール・シャルドロン・ライル・ヴァイセルフにより少し前に奴隷の売買を禁止された国であり、この国には“実質的に”奴隷が存在しないのである。
だが、国外から来たというのであれば、奴隷である可能性はあるが・・・。
「デリカシーのないイビルアイに言うけど、使い魔に奴隷って言うと怒る。注意して」
「・・・気をつける」
「その感じは言おうとした?私たちは『無色の狩人』に“助けを求めに”行くんだから、粗相のないようにするべき」
「・・・ああ」
話は遡ること半年前、国の民には周知されていない事であるが、この世界に異変が起こっていた。
最初に異変に気付いたのは村へ運送を行う小さな商業ギルドの商人と、護衛の中級冒険者達であった。国と国を経由する道路とは違い、村へ輸送をするのに使う道は危険度が大きく違う。村への輸送とはいえ、ある程度の護衛をつけるのが普通である。また、道の近辺にはゴブリンの集落が複数存在することもあり、ゴブリンといえども気を抜く事ができない場所であったため、ある程度の冒険者を雇っていた。
ある時、いつも通り護衛をつけて荷物を搬送したところ、1匹の奇妙なモンスターに遭遇したのだ。
青い鱗に鳥のような嘴や赤い鶏冠。肉食獣を連想させる、ギラギラとした目と嘴から覗かせる鋭い歯、長くて鋭利な爪。トカゲというには少し鳥らしさのある骨格で、鳥というには些か凶暴性が目立つ。
幾度となくこの道を通った商人はこのモンスターを知らず、数々の依頼をこなしモンスターの知識が豊富な中級冒険者もまた、そのモンスターを知らなかった。
結局そのモンスターは商人達を気付く事なく何処かに消え、無事に荷物を送り届ける事ができた。そしてその次も、また次も何事も無く、まさに順調であった。
だが、その順調である状況に冒険者と商人は違和感を覚える。ゴブリンが現れないのだ。
ゴブリンは知能が低く、戦力差を考えずに特攻を仕掛けてくる事が多い奴らである。また、村へ輸送する物品には食料が多いため、匂いにつられて寄ってくることもある。
ゴブリンが現れない原因と考えられるのは3つ。
1つ目は単純に運が良かった。これは一番可能性が低い。
2つ目はゴブリンの集団での大移動。今までに何度か冒険者組合に報告されていおり、新たな縄張り獲得の為に行われていると考えられている。
3つ目は他のモンスターに襲われ、集落、若しくは部族の壊滅。この道路周辺にゴブリン、オーガ以上のモンスターは確認された事がなかった。が、今は違う。既に未知のモンスターと遭遇しているのだ。可能性は高い。
この道路を幾度となく通る商人は冒険者にゴブリンの集落の偵察を依頼した。2つ3つ目が有力な説となっている今、危険性の高いが依頼であるのは間違いない。
そして中級の金、白金級の冒険者が調査に向かった。
結果はパーティー半壊。
命からがら逃げ帰った生存者は口を揃えて“銀色のドラゴンに襲われた”と証言した。また、ゴブリンの集落は周囲一帯焼け落ちていたそうで、見る影もなかったそうだ。
その後『蒼の薔薇』が呼ばれ、ドラゴンの調査及び周囲の村の安否確認、中級冒険者の救命の依頼が出された。
イビルアイは半年経った今でも覚えている。あの異様な光景を。
なんとそこら一帯は、元からそうであったかのように生態系が書き換わっていたのだ。巨大な植物が芽吹き、巨大な羽虫が宙を飛び、未知のモンスターが闊歩していた。
幸いにも村々の住人達は無事で、金級冒険者一人の生存も確認された。村の住民は周囲の異変にも気付いていなかったようだ。とはいえ再びドラゴンが近辺に現れない保証はない。村の住民の避難を任務遂行とした。
これが始まりである。
その後、各地から未知のモンスターの出現が確認されるが、未だ大きな被害は報告されていない。
「鬼リーダー達がいない今、これが私達に出来る精一杯のこと」
「ああ、解ってる・・・。ん?」
周りの人々がざわざわと騒つき、基本的に馬車などが通る道の中央に、人集りができていくのが見える。
「この辺りで大道芸をやる予定でもあったか?」
「違う。これは驚き・・・恐怖の声?」
ティアは耳をそば立てながら様子を伺う。
「・・・どうやらモンスターがいるらしい」
「モンスターだと?モンスターの見世物小屋か?」
「よく見えない。上から見よう」
そう言うとティナは人集りとは逆へ行く。そして路地へ向かい家の壁を蹴り、素早く壁を駆け上る。
「まったく、人に見られたらどうするんだ・・・。《飛行》」
呆れながらもイビルアイはティナに続き、宙を飛ぶ魔法で民家の屋根へ登る。そして屋根に登り切ると、騒動の全容が見えてくる。
「あれは・・・ギガントバジリスク、なのか?」
「多分そう。作り物じゃない、本物」
人集りの中心には、一人の人間が引く大きな布で覆い隠された荷車があった。布からは石化させる魔眼を持ち、猛毒の血と鋼をも超える硬さを持つモンスター、ギガントバジリスクと思われる足や顔が見え隠れしていた。
「ん、ネコ!」
「は?どうした突然・・・」
ティナが指差す先は人集りとは少し離れた位置、少し遠い場所だ。イビルアイにもはっきりわかるほどの大きさの猫が、人と人の間を縫うように走っていた。来た方向はイビルアイ達が先程歩いていた、冒険者組合であった。
そして大猫は大きな荷物を乗せた荷車を引く人物に声をかける。
「ティナ。あいつらが何を喋っているか分かるか?」
「流石に無理、人が多い。でもネコに大きな荷車を引っ張る怪力・・・大当たり」
「だな。人がいない場所で声をかけるぞ」
衝動的に書いたので誤字脱字、意味不明な言葉が多いかも知れません。
ご了承下さい。
どの武器が使用されている話を読みたいですか?※これによって投稿される順序が決まるわけではありません。
-
太刀
-
操虫棍
-
ガンランス
-
スラッシュアックス