ハンターノート「異世界へ転移した際の対処方法」 作:ちくわ部
蒼の薔薇のイビルアイ様ですね。受注いたしました。
・・・・・・無色の狩人様も同行するのですか?であれば、お願いしたい事があるのです。
そろそろ昇格しませんかとお伝え頂けないでしょうか。あの方は暇さえあれば調査と言って何処かに行ってしまい、中々ギルドに立ち寄らないので手続きが一向に進まないんですよ。今日もギガントバジリスクの素材買取で忙しくて、言いそびれてしまいました・・・。組合長もこれに関しては厄介事だと思っているらしく、無色の狩人を探す依頼を出そうかと、真剣に悩んでいらっしゃったので。
是非ともよろしくお願いします!
10メートルを超える石壁で囲まれた都市エ・ランテル。
城壁の外へ出るため通行する必要のある、関所の前の大通りにハンターは居た。
関所周辺は非常に活気付いており、大きな荷物を運ぶ馬車や、長旅に疲れた商人を目的とした店が多くあった。売店は主に小腹を満たせる様な果物や、パン、焼肉が並んでいてどれも食欲をそそる良い香りを発していた。
ハンターはベンチに座りながら先端と取っ手が少し焦げた串を片手に、顔を覆い隠すヘルムの下で眉間に皺を寄せる。
「ご主人、もう一本いいですかにゃ」
ポルカがもしゃもしゃと口の中に肉を含みながら言うと、ハンターはそれを了承し、ポルカの肉球に銀貨1枚をのせて、ついでに自分の分も買って欲しいと言う。
関門の反対側にある中央広場から、鐘が鳴るのが聞こえる。龍の刻*1を示す鐘だ。
眉間に皺を寄せていたのは決して串肉のせいでは無い。
「・・・・・・なかなか来ないですにゃ。日の出と共に出発すると聞いた筈ですが」
待ち合わせをしている冒険者チーム蒼の薔薇、イビルアイとティナが現れないのだ。
もう既に太陽は登り、街の人々は働くべく寝床から起き上がっている。ハンター達が集合場所に着いた時の薄暗く人気のない大通りとは打って変わって、非常に賑やかな場所となっていた。
ポルカから串肉を受け取ると、ハンターはそれを一口で頬張り、口の中から串だけをを引き抜く。臭い消しのためか香辛料が多く使われているが、それと肉の焼き加減も相まってとスパイシーで歯応えのある料理だった。
ハンターは故郷の名産物、チーズフォンデュに想いを馳せる。丁度この辛さであればチーズと相まってマイルドな味になるであろう。
ハンターは故郷のチーズフォンデュが世界で一番美味しいと思っている。とはいえ、なんでもかんでもチーズにぶち込もうとする村の風習は良くなかった。どれも組み合わせは良く美味しいものばかりであったが、何度も食べると当然胃もたれを起こす。胃もたれのまま行く狩りは最悪である。
ハンターはもし蒼薔薇の2人がこのまま来ないのであれば、美味しいチーズと肉を買って帰ろうと決心する。
「にゃ、この気配は・・・・・・。ご主人来ました」
ポルカの向いている方向に目を向けると、一人の見覚えのあるマントと仮面を被った人物が、何か探すように辺りを見回しながら、中央広場から歩いてくるのが見える。その背後には、金髪を一本に結んでできた縦ロールに、夜空を映し出したような大剣を背負った美女と、一見男と間違ってしまうようながたいで、その体を覆うスパイクのついた鎧を装備した女が一緒にいた。
イビルアイが時折振り返って2人の会話に参加するのを見るに、後ろの2人は知り合いであろう。
ハンターはイビルアイに声をかけようと近づく。しかし、それを妨げるように冒険者、蒼の薔薇を一眼見ようと集まる群衆が彼女らを覆い囲む。中には最上級冒険者と繋がりを持とうと近づき話しかける商人もいたが、彼女らは慣れているのか行手を阻む商人達を軽くあしらう。
このままでは、この人混みがさらなる野次馬が集まりかねない。
ハンターはベンチから重い腰を上げ、イビルアイのいる方向に手を振る。
「あ、こっち見ましたにゃ」
しかし、イビルアイはじっとハンターを見つめると、再び探すように群衆を見渡す。
気付かなかったのだろうか。そう思いながらハンターはイビルアイの行先に周り、再び手を振って自分の存在を誇示する。
今度は煩わしそうに、まるで見なかったことにするかように目を背ける。
ハンターは姿勢をそのままに、ゆっくり首を回してポルカと目を合わせる。
「・・・・・・もう直接文句を言いに行った方がいいんじゃないですか?これでは埒があかないですにゃ」
だがこの人混みを超えて行くのは少々困難である。ここはポルカに任せるとする。
「了解ですにゃ」
そう言うや否や、ポルカの姿は人混みの中に吸い込まれてゆく。
時折野次馬が足元を見て驚いている様子から、順調にイビルアイの元に行っているのがよく分かる。
しばらくして、人混みを抜けたポルカがイビルアイの元に行くと、突然現れた獣人に野次馬が疑問と驚きの声をあげる。しかし、イビルアイとポルカはそんなことを気にせず、二言三言言葉を交わすとポルカに続いて3人がハンターのいる場所に向かってくる。
「ハンター・・・・・なのか?噂で聞いていたが本当にコロコロと装備を変えるんだな」
その言葉を聞いてハンターはようやくイビルアイが自分を気付かなかった理由を理解した。
ハンターの装備は揺らめく炎のように捻じ曲がった突起の装飾があるもので、赤色と青い突起のある鱗で出来ていた。そう、昨日会った時と装備が全く違ったのである。
加えてポルカも同じ素材とデザインの装備を着用していた。これなら気づかなくても無理はない。
もしや、これとイビルアイを囲む民衆のせいで、ここに来るのに遅くなったのではとハンターは推測する。
「いいや、それは俺のせいだな。どーも、俺はガガーランだ。よろしく」
ハンターの目の前にずいと手が突き出される。その腕は女性を思わせない太く、無駄のない筋肉で出来ていて、非常に逞しいものであった。
ハンターはその手を取り、固く握って握手をする。
「遅れて申し訳ないわ。私は蒼の薔薇のリーダー、ラキュースよ。よろしく」
今度先程とは対照には細く、指にそれぞれ指輪のついた手が差し出される。
ハンターは優しくその手を取り、握手をする。
「ガガーランが本調子でもないくせに、私たちについてくると言い出してな。押し問答の末、時間がないとのことで連れてきたんだよ」
イビルアイは呆れたように言う。
そういえば、ティナはどうしたのだろうか。ハンターは疑問をそのまま口にする。
「ティアの付き添いだ。リハビリとして訓練を勤しんでいる。こっちはガガーランの付き添いとしてラキュースが一緒だ」
「別に必要ないっていったのによお。まあ気にすんなハンターさんよ」
そう言ってガガーランはハンターの肩を叩く。
なかなか愉快な人・・・・・・という感想で終わらせていいのかわからないが、いい人そうで何よりである。
「では、挨拶が済んだところでパーティー紹介といこう。ガガーランは
実にバランスの良いパーティーだ。近中遠距離、全てに隙がない。
彼女の発言の中で、ハンターが気になる言葉が一つ出てきた。『魔法』である。既に魔法と呼ばれる未知の現象をハンターは何度か観測したが、発生の原理は未だわからないままだった。魔法を間近で見られるとは非常に幸運である。
「ボクはポルカですにゃ。ハンターさんのサポートをする中衛の援護をします。ハンターさんはいつも色々やりますが、今日は前衛がメインですにゃ」
ポルカの説明の後、ハンターは軽く会釈する。
ポルカの言った通り、ハンターは色々こなす器用貧乏な人間である。
時に最前線でモンスターと剣と爪を交え、時にモンスターを足止めするために罠と閃光玉を投げる罠師となり、時にモンスターを追い詰めるために弓矢を放つ弓使いとなっていた。
今日の役職はモンスターの隙を作りつつ、相手に強力な一撃を叩き込むサポート兼アタッカーだ。
「背中のそれ、俺の
ガガーランの目線がハンターの背中に背負うものに行く。
それは『ハンマー』と呼ばれる武器で、その名の通り槌のようなシンプル見た目である。使い方もシンプルで敵に振り下ろして打撃を与えるというものだ。この打撃をある程度モンスターの頭部に当てると、相手をスタンさせて目眩状態にすることができ、隙を作ることが可能だ。
それに対して
ハンターはその武器に関して色々聞きたいことがあるが、時間が大幅に遅れていることを気にする。
「それもそうだ。こんな話は馬車でもできる。行くぞ」
「・・・・・・この時間に馬車を予約するのは少し難しいと思いますにゃ。ただでさえ人が多い関所の近くでこの人通りの多い時間帯は、待つ時間が長過ぎますにゃ」
「それ以外に方法があると言うのか?安心しろ。私たちには“コレ”がある」
そう言ってイビルアイは胸元に下げるプレートを指で弾く。
-◇-◇-◇-
稲妻が大地を刺すように走り抜け、それに続くように雷鳴が響く。空は黒く厚い雲で覆われ、日中であるにも関わらず日の光は大地を照らすことはなかった。
唯一の自然の光源である雷の光で、地上からはるか上にとあるハンターと1匹のオトモが黒色の空に浮かび上がる。
「ご主人、なんでこの仕事引き受けたんですか!すごく揺れますにゃ!」
オトモアイルーのポルカの発言に、ハンターは何度も答えただろうと切羽詰まった表情で答える。
今、2人はこの荒れ狂う天候の中で、船と気球を組み合わせたような構造を持つ飛行船に乗っていた。2人がこの状況で飛行船に乗っている理由はこの丁度真下にいる、大地を揺るがしながら地を進む巨大なモンスターにある。
頭に持つ一角と長い首尻尾を持ち、鱗に沿って生える多数の棘を持つモンスター。山龍ラオシャンロン。
歩く天災とも呼ばれるそのモンスターは、今まで観測されたものでも全長70mほどの大きさを誇っており、その巨体が動くたびに地は揺れ、崖が崩れる。
このモンスターの特徴はその図体の大きさだけでなく、神出鬼没であることも挙げられる。何度か地中から姿を現す姿が観測されたそうだが、どのようにして地中に潜りどのようにして地面を移動しているかなどは未だ不明だ。また、ラオシャンロンは周期的に同じ地に現れ、縄張りを監視するように同じルートを徘徊する。
しかし今回に関してはその限りではなかった。まずラオシャンロンの全長は80m以上あり、今までの記録の中にこの地にラオシャンロンが出現したというものはない。つまり、進行ルートが一切わからなかったのだ。
今回この2人がここにいるのも、どこからともなく突然現れたこの巨大モンスターの進行方向を、地上の調査隊や別のハンターに知らせるためであった。
揺れ動く飛行船の中でハンターは双眼鏡を手に、ラオシャンロンと調査隊を交互に監視する。
「ご主人、合図です!あっちですにゃ!」
ポルカの言葉を聞いてハンターは先程見ていた場所と異なる場所を注視する。すると、ラオシャンロンの進行方向から迎えに来るように5つほど馬車が走ってくるのが見える。馬車に被せられた布にはハンターズギルドのマークが書かれていることから、増援であることが伺える。
馬車からは装備というには少々肌の露出が激しい網のある黒い装備を纏った、1人の女性ハンターこちらに向かって手を振っている。モンスターの位置を知らせて欲しいという合図だ。
すかさずハンターは強い光を発する道具を馬車に向かって使用し、チカチカと光で信号を送ってラオシャンロンの位置を知らせる。
「あの大きさからして、多分あの渓谷を右に真っ直ぐ行って広い場所に出ると思いますにゃ」
ラオシャンロンの移動しているのは小さな渓谷で、川の流れる方向に向かって移動している。渓谷はラオシャンロンが動くには非常に狭く、山と山の間に挟まるように動いているため、時折体を山にぶつけて山崩れを引き起こす。
この先は二又になっており、片方は渓谷の終わりに近づく開けた場所に続き、もう片方がさらに狭まった場所となっている。さらに狭まった渓谷の続く先は少しずつ横に逸れて、最後にはラオシャンロン進行方向と垂直になり、一つの山を囲むようにまたラオシャンロンの現れた場所の付近にまで続く。
飛行船の目の前に稲妻が走る。
突然現れたといえばこの雷雲だ。ラオシャンロンの出現の少し後、この地域一帯を覆うように黒雲が現れたのだ。
周辺に強力なモンスターがいないかの調査は既に終わって、ラオシャンロン観測の安全を確認し終えている。そのためこの黒雲がなぜ現れたのは分からず、今は自然現象であるという結論に至っているが、高所での作業中においては非常に間が悪いと言わざるを得ない。
「なっ!ご主人、前からーー・・・・」
次の瞬間、暴風が吹き荒れ飛行船は制御を失う。飛行船は風に翻弄され、船体はギシギシと悲鳴をあげる。ハンターは必死に舵を取り、安定させようと図るが、風の力に抗うことは叶わなかった。
しかし、飛行船の制御の効かず絶えず動き回っているはずの景色に変化は見られなかった。
見渡す限り黒一色。ハンター達はいつの間にか、闇の空間に吸い込まれようとしていたのだ。
「にゃああああ!死にたくないですにゃ!折角ミティちゃんと仲良くなって、デートの約束を取り付けられたのに!」
それは初耳である。ひょっとしたら最近、何らかと理由をつけてハンターズギルドに送る報告書類をまとめる作業をサボっていたのはこのためか。主人が忙しい中遊びに出歩くとはいいご身分である。もし生きていたら今度の書類仕事全部ポルカに回してやろうと、ハンターは心に決める。
突然ハンターの意識が遠のいていき、ブラックアウトしていく。
だが飛行船に必死にしがみつく中、確かにハンターは眼にしたのだ。
漆黒の翼を。
-◇-◇-◇-
ガタンとハンターの体が揺れ、意識が戻る。
飛び起きて辺りを見渡すと、そこは霧に包まれた野原であった。どうやら早朝から依頼の支度をしたせいで、目的地までの馬車の移動中に眠ってしまったようだ。
この夢は“この世界”に来る少し前の記憶だ。この世界に来て意識を取り戻した時、どのようにして来たのか記憶が無かったが、この夢で少しずつ記憶が戻ってきた。
だがこの夢、正確言えば記憶はまだ不完全であるのがハンターには分かる。恐らくブラックアウトした先にもまだ続きがあるはずだ。
「起きたみたいだな。そろそろ着く筈だ」
イビルアイが仮面で表情のわからない顔をハンターに向けて言う。
横を見るとポルカとラキュースが楽しげに喋っている。ハンターが眠っていた間に、仲良くなれただろうか。
そして、ガガーランは装備の点検をしている。ハンターも後で点検をしようと考える。
ハンターは起きて意識がはっきりしていく中、夢について考える。特に夢の最後のシーンである。少なくとも最後のアレに関しては気づくことができず、ほとんど分からず知ることができなかった。
ハンターは夢のあの最後のシーンについて、ポルカに問いかける。
ミティちゃんとやらについて教えて頂こう、と。
実はモンハンアップデート日に投稿しようかなーって考えて書いたんですよね。つまりそういうことです・・・・・・。
あと個人的に過去編の話を読むのは好きではないので、今後も今回のようにさらっと(?)流していきます。ご了承下さい。
モンスターと戦うのは次回になります。
↓試しにアンケート機能を使ってみました。気軽に押して下さい。
↓武器の使用率に左右されるか気になるんですよね・・・
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