ハンターノート「異世界へ転移した際の対処方法」   作:ちくわ部

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 アンケート回答ありがとうございます。
 とりあえず次回までアンケートは続けるので、投票していない方はぜひ投票して下さい。
 因みに途中経過の順位ですが、多い順で
 太刀
 ガンランス
 スラッシュアックス
 操虫棍
 です!
 半分意外、半分納得の順位ですね。(がんばれガンランス!)



-4-『怪奇!揺れ動く屍!』中

 

 ポルカをとことん問い詰めた後、ハンターは装備やアイテムの点検を始める。

 回復薬、砥石、ペイントボール、罠、爆弾・・・・・。

 その他様々な物があり、どれもハンターには欠かせない物である。

 

「そろそろお前の得物について教えてくれないか?」

 

 確認のためアイテムをポーチから出していると、同じく装備の点検をしているガガーランから声がかけられる。

 その言葉を聞いてハンターは待っていましたとばかりに、ハンターの装備と同じ素材でできた、まるで逆立つ竜の鱗のような見た目のハンマーをガガーランの前にずいと近づける。

 この武器はディノバルドという、尻尾に熱を纏って襲いかかるモンスターの素材から作られた逸品である。その尻尾に熱を纏う性質は武器にもなっても引き継がれており、強い衝撃を与えると熱を纏い、炎を吹き出すほどにまでとなる。

 今回の依頼にこの武器を選んだ理由にアンデッドは打撃に弱く、火属性を弱点としているというのがある。

 

「これは触っていい・・・ってことか?」

 

 自分の武器を自慢しない狩人(オタク)はこの世にいないのだ。

 その代わりに・・・・・、というようにガガーランの武器にハンターは目を向ける。

 

「ああん、分かってるよ。ほれ」

 

 ハンターはガガーランから刺突戦鎚(ウォーピック)受け取ると、取っ手を軽く握る。

 まず、ハンターの感じたハンマーとの差は重量である。ハンマーが重量で相手を叩き潰すというテーマに対し、刺突戦鎚(ウォーピック)は使用者の振る力を主として、尖った先端を利用して破壊力を得るという物だ。

 これはこれでいいかもしれない。が、この重量では少し物足りないと感じてしまう。

 続いて大きさ。これも重さに関することではあるが、打撃部分の大きさが倍以上違う。大型モンスターには少々心持たないが、小型モンスター相手には非常に取り回しがいいだろう。

 

「・・・・・・これは全部モンスターの鱗でできているのか?」

 

 ハンターが刺突戦鎚(ウォーピック)の解析に夢中になっていると、ガガーランから質問される。

 答えは“ほぼそうである”といえよう。他には別のモンスターの尻尾や骨、ハンマーの基礎を形作る金属などがあるが、そのほとんどがディノバルドの鱗である。

 ディノバルドの鱗の特徴として研ぎ易さが挙げられる。見た目の刺々しさに反して、非常に滑らかな質感で武器に付着した不要部物を落としやすいのだ。これはディノバルドが斬竜と呼ばれる所以である、刃のように扱う尻尾を研ぐ習性から適応して獲得した能力だろう。

 

「成る程なあ、面白い。で、どうよ俺の刺突戦鎚(ウォーピック)ちゃんは」

 

 刺突と打撃の複合された武器というのは非常に興味深かった。柄の長さと打撃部のバランスが絶妙で振りやすそうである。馬車から降りたら是非試させてほしい。

 それに手入れの届いたいい武器である。ところどころ傷があるが、それがなければ新品と勘違いしてしまうような艶をしている。手入れの行き届いた良い武器である。

 ハンターがそのような旨を話すと、ガガーランはニヤリと笑い、わかっているじゃないかという顔を向けてくる。

 それぞれ丁寧に武器を返すと、ハンターは再びポーチの中身の点検を行う。

 次から次へと明らかにポーチの大きさに見合わないアイテムを取り出すハンターを見るガガーランは少しずつ、驚きや困惑の顔に変わる。

 

「・・・・・・なあ、今ポーチからそれ出したんだよな?」

 

 ハンターが抱えなかれば持てないほどの樽を、ガガーランが見ながら言う。

 それ以外の方法に何があると言うのだろうと、頭を傾げながらハンターは黙々と作業を続ける。

 

「マジックアイテムじゃないか?軽量化魔法や空間魔法を織り交ぜて作られた、どんな物でも入れられるバックの話を聞いたことがある」

「ほーん、いいモン持ってんじゃねえか」

 

 成る程、魔法とは便利な物である。

 聞いた話では火竜の如く火球を生み出してそれを射出して攻撃したり、植物を操って敵の行動を阻害できるらしい。

 個人的には軽量化魔法が気になるところだ。この魔法があれば武器や防具の開拓が今以上に進むであろう。

 

「・・・・・・その反応からして違うようだがな」

「じゃあ、どうなってんだよ!?」

 

 これは謎多き種族アイルーからハンターへ伝授された技術『ネコの収納術』である。

 元より小さく脆弱なアイルーは道具を使い、この厳しい生存競争の中で生きながらえてきた。それも道具の有無が生死を分けるとも言えるほど。だが、アイルーの小さな体では沢山の物を運ぶことはできず、モンスターとの戦闘では直ぐに道具が尽きてしまう。そこでできたのが『ネコの収納術』である。アイルー自身の体の大きさを超える爆弾や、ブーメランなどその小さな体に様々な道具を隠し持っている。極めれば手のひらに馬車を収納することも可能らしいが、これに関しては真相は定かではない・・・。

 因みにこれは魔法の類ではなく、列記とした技術であだ。

 今度は出した物をポーチに次々に入れていると、馬車の前部席から御者の声が聞こえる。

 

「お客様方、目的地近くになりましたが、これ以上進めないですよ」

「おいおい、まだ平野に入ってないのにこの霧かよ!」

 

 周囲の景色は先程見渡した時よりも霧が濃くなっていた。

 視程約50m。話では平野全体を霧で覆っていると言う話であったが、どうやら今日は霧が濃く、平野の外にまで出てきるようだ。

 

「仕方がない。大丈夫だここで降ろしてくれ」

 

 イビルアイがそう言うとラキュース、ポルカ、ガガーラン、ハンター、最後にイビルアイの順で馬車から降りる。

 ガタガタと音を音を立てて遠ざかって行く馬車を見送り、青の薔薇とハンター一行はカッツェ平野に向かい歩き出す。

 

「常に何かの気配がするのに何もいない・・・・・・凄く不気味ですにゃ」

 

 風もなく、静まり返った白色の空間の中でポルカが呟く。

 本当に不思議な場所である。

 ハンターも事前にギルドからの情報で地形の調査をしたが、湖や池、海などが周囲に存在せず、周囲に気温の高低差もない。盆地のように山に囲われた地形でもなければ、風が穏やかとも言えない。霧の発生する条件が全く当てはまらないのだ。

 

 暫く歩くと草木が茶色に枯れた大地が現れる。

 そこには複数の倒壊した塔のような建造物や、瓦礫が落ちていた。

 

「着いたぞここがカッツェ平野だ」

 

 成る程。これがカッツェ平野か、と言いたかったが周りの霧でこの瓦礫以外の情報がない。もしまたここに来いと言われたら間違いなく迷子になるだろう。

 ハンターはノートを取り出して周囲の状況や景色などを書き留める。

 

「こんなに霧が濃かった覚えないわ」

「・・・・・・強力なアンデッドが現れる時、霧が濃くなるという話を聞いた。気をつけて進め」

 

 強力なアンデッドが現れるということは、弱くとも沢山のアンデッドが集まっているということになる。だが、ここまで歩いてきてその痕跡は一つたりともなかった。であれば、複数のアンデッドによって生まれたという状況は考えられにくい。

 ハンターは強力なアンデッドが出現する条件が他にも存在するのか尋ねる。

 

「ない・・・・・・筈だ。これは断言できん。というのもアンデッドは謎が多い。アンデッドを取り扱おうとする者が少ないというのもあって、文献や書籍などの情報が全くないんだ。一説によると不死を探究せんとする謎の団体の手によって一部記録が抹消されているというのがあるが、それは今は置いておこう。まずアンデッドの出現は魔法的要因が殆どであるとされていてーー・・・」

「また始まったわ・・・・・・。ごめんなさいねハンターさん。イビルアイったら自分の得意分野になるとすごい饒舌になるのよ」

 

 ハンターはサムズアップをして大丈夫であるという意思を見せる。こういうのは慣れっこだ。今までに何度かこのような場面に遭遇したことがあり、ひどい時にはいつの間にか日が暮れていたこともある。その時は確か、知り合いに持ち武器のメンテナンス方法を聞いたところ、いつのまにかハンターギルド設立までの歴史を聞かされていた。

 アンデッドについて調査するのもいいかもしれない。そうハンターが考えていると、霧の先に影が現れる。

 

「・・・・・・っ!おいおいおい!初っ端から骨の竜(スケリトル・ドラゴン)かよ!」

 

 霧から姿を現したのは、大きさおよそ5mの竜の形をした骨の塊だった。

 4つの赤い眼光と、4本足におまけとばかりについている背羽。自然界の法則を無視した、まさに異形の存在である。

 面白い、非常に面白い。これは早急に討伐して、是非調査したい。

 気づけばハンターは骨の竜(スケリトル・ドラゴン)の元に駆け出していた。

 ハンターは片腕につけている小さなクロスボウのような道具に、ペイントボールと呼ばれる撃った相手の位置を把握できるようにするピンクの球体を装填する。

 

「にゃ、支援しますにゃ!」

 

 ポルカはどこからともなく大きな角笛を取り出すと、大きく息を吸って吹く。ポルカの笛からは独特の音色が聞こえてくる。

 

「これは・・・力が漲ってくる?」

 

 ラキュースは体の奥底から力が溢れてくるのを感じる。

 音楽で味方を支援する職業の存在を聞いたことはあったが、まさかそれなのだろうかと考える。しかし、その考えは骨の竜(スケリトル・ドラゴン)の咆哮と共に離散する。

 

「ハンターの援護に向かうわ!イビルアイは魔法で骨の竜(スケリトル・ドラゴン)の攻撃を防いで!ガガーランはあいつの気を引いて、ハンターへの意識を分散させるのよ!私は中距離の攻撃を仕掛けるわ!攻撃を受けたら無理せず私に言って!」

「よっしゃあ、了解!イビルアイ任せたぞ!」

「本調子じゃないくせに無茶するんじゃないぞ!」

 

 ハンターの腕につけられたクロスボウから縄のついた鉤爪が射出される。その鉤爪は骨の竜(スケリトル・ドラゴン)の左頬に引っかかると、縄が張ってハンターの体が引き寄せられる。

 ハンターは引っ張られる力に身を任せて骨の竜(スケリトル・ドラゴン)の頭部に張り付くと、鉤爪を外し今度は事前にセットした弾の射出準備をする。

 それを見たポルカは蒼の薔薇のメンバーに注意を促す。

 

「皆さんお気をつけて、吹き飛びますにゃ!」

「吹き飛ぶ?そりゃ一体・・・・・・」

 

 そしてハンターは狙いを定め、セットした特製ペイントボールを至近距離で全弾発射する。

 発射された弾は全て頭部に当たり、その勢いで骨の竜(スケリトル・ドラゴン)は大きくバランスを崩し、凄まじい勢いで崩れ掛けた塔にぶつかると転倒する。

 その隙を狙ってハンターは抜刀状態でハンマーを構え、渾身の一撃を骨の竜(スケリトル・ドラゴン)の頭部にへ振り下ろす。

 

 まずは一撃。相手の頭部の感触を確認する。

 ニ撃。弾かれる力から振りかぶるのに必要な力確認する。

 三撃。次の打撃のために狙いを定める。

 そしてハンマーを一周二周と大きく振りかぶり、ありったけの力で叩きつけた。

 

 ずんと腹に響くような音と共に大地が揺れる。

 骨の竜(スケリトル・ドラゴン)の右半分に当たる骨が崩れ落ち、ミシミシと音を立てて骨の塊が折れる。

 しかし、何事もなかったように骨の竜(スケリトル・ドラゴン)は骨の残骸を落としながらゆっくりと体を起こす。

 頭を殴りつけられたのにも関わらず、復帰するのが異様に早い。やはり既に死した存在だからだろうか、気絶しそうにもない。 

 果たして気絶させられないハンマーに意味はあるのだろうか。そう考えるハンターだったが今ここに存在価値があることが証明できそうである。

 ハンターはゆっくりと息を吐き、骨の竜(スケリトル・ドラゴン)に向かって歩み出す。

 ハンマーを持つ手に段階的に力を溜め、今度は右前脚に振りかざす。

 あまり力を込められなかったため、あまりダメージは与えられなかったが、気を引くことができた。骨の竜(スケリトル・ドラゴン)の左脚がハンターを潰さんと迫り来るが、ハンマーを背に納めると共に、納めるために担ぐ動作で迫る脚をを逸らして攻撃をいなす。

 骨の竜(スケリトル・ドラゴン)は足元を執拗に狙うハンターを煩わしげに、その長い尻尾で叩き潰そうとする。しかしハンターはその攻撃を待っていたのか、骨の竜(スケリトル・ドラゴン)の尻尾が当たるその刹那、すり抜けるように体を捻って回避し、そのまま勢いを殺さず脚に反撃をお見舞いする。

 その勢いと武器から噴き出る炎は凄まじく、その攻撃を受けた後ろ脚の一部は吹き飛び、崩れ落ちる。それによりバランスを崩し、首を垂れるようにして倒れた。

 それを見たハンターは勝機とばかりにハンマーを背中に納め、再び頭に向かって走り出すと、骨の竜(スケリトル・ドラゴン)の首元に登る。

 ・・・・・・流石に首が折れれば動かなくなるだろう。

 そう判断したハンターは再び武器を手にすると、息をゆっくりと吐きながら、ハンマーを持つ腕に力を込める。ハンターの体内の血液が急速に巡り、腕の筋肉が膨張していくのを感じる。そしてハンマーを縦に回転させるように振り回し、勢いをつけて最高潮にまで達した力を解放する。

 炎を纏いながら振り下ろされるハンマーはまるで隕石のようであった。

 

 

 -◇-◇-◇-

 

 

「・・・・・勝ったな」

「素材回収の時間ですにゃ!」

 

 遠巻きに見つめるイビルアイはそう小さく呟くと、小さな隕石は骨の竜(スケリトル・ドラゴン)の首を撃ち抜く。

 それを見たポルカは急いでハンターの元に向かう。

 

「おいおいマジかよ!骨の竜(スケリトル・ドラゴン)を一人で瞬殺か!?」

 

 ハンターのトドメの一撃により、骨の竜(スケリトル・ドラゴン)が力なく体を地に伏せると、イビルアイは絶命したのを確認する。

 

「・・・・・・これはティアにも聞いたんだが、お前たちはハンターのことをどう思う」

 

 イビルアイの声は平坦で、ラキュースとガガーランにはその言葉にどのような意図があるかは分からなかった。また、彼女があのハンターに対しどのような念を抱いているか、どのような考えを持っているのか。

 

「間違いなく言えることは一つ。・・・・・・あいつは俺より強いだろう」

「ガガーラン!?」

 

 ガガーランが珍しく気弱な雰囲気でその言葉を口にすると、ラキュースは驚きと困惑の入り混じった声を上げる。

 

「ふむ、ラキュースは?」

「・・・・・・やっぱり目を引くのは圧倒的なパワーね。あとは立ち回り。あれは技術というより、磨き上げられた基礎の塊よ。一つ一つの動作が一つの形から派生していったような技で、その中からその場にあった最適解を導き出されるような動きだったもの。そう考えると、応用力と技術でここまで強くなったガガーランと比べるべきではないわ。・・・・・・突然どうしたのよ」

「何、剣技に関してはさっぱりだからな。あいつの評価を知りたかっただけだ。これから一緒に戦う仲の事を調べるのは大切だろう?」

 

 一緒に戦う仲、という言葉を聞いたガガーランは目を大きく見開いていう。

 

「おい、ちょっと待ってその話初めて聞いたぞ!?」

「詳しい話は聞いていなかったけど、ようやく話が見えたわ。・・・・・・例のモンスターを倒すためね?」

 

 ラキュースの言葉にイビルアイはゆっくりと頷いて、その言葉を肯定する。

 ラキュースとは違い、ガガーランには事前に聞かされていない様である。もっとも、今日来ないはずの人物がここにいるからであるが。

 

「何でそこで例の奴が出てくるんだ?」

「これを見ろ」

 

 ガガーランに手渡されたのは、冒険者組合のマークが描かれた羊皮紙。宛先はハンターの物だ。巻かれた羊皮紙を止める役割を担う、蝋燭のスタンプである封蝋がしてあった様だが、既に開けられた形跡がある。

 ガガーランの頭に、これは送られた本人以外見てはいけない書類何では、という疑問が思い浮かぶが、今はあえてそこには触れなかった。

 そこに書かれているのはギルドによって秘匿された様々なモンスターの討伐記録。それがつらつらの書かれた先にあったのは、冒険者のランクを上げようとする提案の書かれた文章であった。

 

「知らねえモンスターだ。つまり最近現れる様になったモンスターってわけだな・・・・・・。何で組合はこれを公表しないんだ?」

「まだ情報が不明瞭かつ不確定で、その報告されているモンスターは殆ど既に討伐されているから、冒険者の不安を煽らないためだ・・・・・・というのが組合の見解だ。実際は最近この情報を手に入れたばかりなのもあるが、組合の面子の問題だろうな」

「はん!馬鹿馬鹿しいったらありゃしねえ。・・・・・・じゃあこの討伐調査記録は一体どこからきたんだ?」

 

 一部別の資料から抜粋された様な記録書を見てガガーランが言う。

 いまいち納得していないガガーランに、イビルアイが骨の竜(スケリトル・ドラゴン)の周りで何か調査をしているハンターを見て、無言の返事をする。

 

「・・・・・・なるほどやけに大型モンスター(デカブツ)との戦闘に慣れてやがると思ったらそういうことか。調査から討伐まで全部やっちまったのかよ。それは組合の面子も立たねえな」

「面子というよりかは、組合の信用をなくすと言った方が良いかもな。話が戻るが、この完璧とまで言える仕事ぶりから、突如現れた謎のモンスター達を知っているのではないかとティアが睨んだわけだ。そして直接会って予想が的中した。今日、協力を要請するに足りる人間か調べたんだが・・・・・・」

「足りるどころか、俺が足引っ張らないか不安になっちまったな」

 

 ガガーランが苦笑しながら言うが、それに対してラキュースは相変わらず納得のいっていない様な顔をしたままであった。

 

「でもこんだけのことしてミスリル級か・・・・・・。やっぱ周りの冒険者に配慮してのことか?」

「それは全て組合を通さずに討伐されたモンスターだからだ。依頼を受けていないのに関わらず、ランクが上げられるはずがなかろう」

 

 稀な話ではあるが、冒険者が偉業を成し遂げた時に階級を大きく上げる際、昔から周りの冒険者から妬まれたり、組合を不審の目で見る者がいることから、敢えて階級を低く見積り後から少しずつ上げていくことがあるそうだ。

 しかし、今回に関しては冒険者組合の都合がほとんどだ。

 もし仮に階級を大きく上げたとしても、表向きには調査と称して何処かに行く様な者が何故階級が上がるのかと不審に思うはずだ。

 

「まったく。組合が情報を寄越してくれないせいで、無駄な時間をとってしまった」

「まあ何はともあれ今ここで協力を要請することが、できそうなことが分かったじゃねえか。ほんじゃあ、とっととあいつのところに行こうぜ!」

 

 ガガーランがイビルアイの小さな背中をバシバシと叩く。

 しかし、イビルアイはどこかその力加減がいつもより弱く感じた。

 

 

 -◇-◇-◇-

 

 

 やはりアンデッドは興味深い。死して生まれるという矛盾した特性から、急所などの弱点というものが存在せず、おそらく閃光による目潰しや麻痺毒なども効かないだろう。

 とはいえ今回の武器選択は非常にベストだったと言える。骨を粉砕するハンマーとその粉砕された骨も燃やし尽くす炎の相性は抜群であった。ハンターのノートのアンデッドの情報欄にハンマーと火属性の有用性について記述する。

 骨の竜(スケリトル・ドラゴン)のサイズを測り、身体的特徴などをノートにまとめていると、不自然に大地が凹み枯れ草が折れているのを見つける。

 明らかに先程の戦闘でできたものではない。

 

「ご主人、導蟲が反応しましたにゃ」

 

 ポルカが腰につけた蛍のように緑に光るランタンが光を増す。

 この反応は間違いない。モンスターである。

 アンデッドは生きていない以上、体臭が存在しない。その為モンスターの匂いなどに反応する導蟲と呼ばれる、この緑に光る蟲はアンデッドには反応しない。

 凹みの横幅は3mほどで、それが何処かは分からないが濃霧へと続いている。

 屈んでその痕跡を調べていると、不思議に思ったイビルアイが様子を見にこちらにくる。

 

「まるで重い何かが引きずられたような跡をしているな」

「引きずられていたなら草が進行方向に向かって倒れている筈ですにゃ。そうなると恐らくこれはー・・・」

 

 恐らく、ではなく間違いなく巨大な何かが転がってできた痕跡だ。

 ハンターはゴロゴロと音を立てながら、こちらに向かって近づく何かの方向を見ながら言う。

 





アイテム紹介
ハンター特製ペイントボール:衝撃を与えると弾ける性質を持つカクサンの実と、独特の匂いと着色液を当てた対象に散布させて、相手を追跡することが可能なペイントボールを合わせたハンター特製のアイテム。
スリンガーと呼ばれるハンターの腕につけられた小さなクロスボウで射出すると、強い衝撃で吹き飛ばしつつ、相手を追跡することができる。

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