ほんの少しだけ、ライブに誘ったのを後悔していた。おねーちゃんにとっての音楽を、あたしが壊してしまったんじゃないかって。
あのおねーちゃんの事だから、自分のことよりも変にあたしの事を優先してしまいそうで、それが恐ろしかった。
ステージの上で、そんな懸念は弾け飛んだ。あたしが奏でるベースラインの上を、おねーちゃんのギターが跳ねてゆく。気持ち悪いくらいに呼吸が合った。あたしが合わせてるんじゃなくて、おねーちゃんが完璧に寄り添ってくる。
家でのセッションどころか、リハーサルともまるで違うおねーちゃんの表情。ようやくわかったおねーちゃんとの距離は、思っていたよりもずっと遠くて。それでもおねーちゃんは、楽しそうに笑っていた。
おねーちゃんは1人で音楽に浸るのが好きだと言っていたけど、多分嘘だ。あれはきっと、慰めているだけ。
だってこんな下手なあたしとのライブでさえ、あんなにも楽しそうに笑っている。確信した。おねーちゃんはきっと生粋のバンドマンで、ライブでこそ輝く人種だった。
遠い、遠い、遠い。おねーちゃんに合わせるどころか、1か月前のリサちーにすら遠く及ばない。なのに、こんなにも楽しい。
体温と馴染んだフレットが、張り詰められた弦が、思い通りの音を出す。おねーちゃんと目が合う。呼吸が噛み合う。恋を紡ぐ歌から王道のロックサウンドへと移り変わって、おねーちゃんの紡ぐ旋律が鋭さを増す。こういったテクニックも、遥かに及ばないなぁと実感させられるけど、やれることをやるしかない。
観客も盛り上がっているのがわかった。眩しくてよく見えないけれど、それくらいは分かる。
こんなに自分の実力が口惜しいのは、久しぶりだった。
♦
「日菜は、楽しかった?」
「……うん」
ライブが終わったあと、対バン相手のライブを眺めながら、おもむろにおねーちゃんが口を開いた。あたしは少し放心していて、多分上の空な返事をしたんだと思う。
「おねーちゃんのこと、ちょっとは分かったよ」
「そう?」
「うん。ライブに誘ったの、間違ってなかったんだね」
半分は自分に言い聞かせていた。おねーちゃんの表情を見れば、このライブがいい方に傾いたのは間違いない。けれどあたしの我儘でおねーちゃんを連れ出したのは事実だし、迷惑というか面倒をかけている自覚もあったから。
「それは前からそうだと言っていたでしょう」
「実はあんまり信じてませんでした」
おねーちゃんのことを、この世の誰よりも深く知っているという自信がある。言葉を交わさずとも言いたいことが分かるくらいには。
でもおねーちゃんの隠し事に関することだけはどうにもならない。巧妙に隠されたときのおねーちゃんの本心は読み取れないし、嘘をつかれてもきっと分からない。だから最近は、あんまりおねーちゃんの言葉を鵜呑みにしないようにしていた。
「……でも、ライブはしばらくお預けかなぁ」
「どうして?」
「あたしが下手過ぎるんだもん。このままおねーちゃんと弾き続けても上手くなるとは思うけど、今日みたいにおねーちゃんに甘えた弾き方になりそうだし」
「……色々な人と弾く経験をした方が上達するのは確かね」
「それもそうだし、あたしはおねーちゃんに寄り掛かりたいんじゃないんだよね。おねーちゃんに認められたいの」
今日が楽しかったのと同じくらい、自分の下手さに凹むことにもなった。楽しくライブをするだけならこのままでもいいけれど、あたしはおねーちゃんに頼られたいし支え合いたい。
正直なところ、舐めていた。あたしが見ていたよりもずっと音楽の世界は深くて、おねーちゃんは遠くにいる。
このまま一生距離が縮まらないんじゃないかという危惧もあって、おねーちゃんに拠らない経験を積もうと考えた。おねーちゃんと一緒にいると、大抵おねーちゃんの下位互換で終わるのをあたしはこの16年ほどで嫌という程思い知っている。
おねーちゃんへのアプローチとして音楽に触れたのは間違いじゃなかったと思う。前よりもずっと、おねーちゃんとの心の距離が近づいているのを体感している。
ただ、あと一歩。
「……私が全て打ち明けてしまえば、あなたは
そんなことを考えていた矢先に、衝撃が走った。
それは、望んでない。そんなに苦しそうな顔で打ち明けて欲しいわけじゃない。
「心苦しいのよ。どうして私のために貴方が人生を費やそうとするの?」
「どうしてって、おねーちゃんが好きだから。何度も言ってるじゃん。あたしはおねーちゃんが好きだからおねーちゃんのことを知りたいし、おねーちゃんにもあたしの事を知ってもらいたいの」
「……そう、言うわよね」
「でも罪悪感から話してもらいたくはないかな。我儘だけどね。あたしはやりたいことをやっているだけなんだから、それでおねーちゃんに気負って欲しくない」
「……私が貴方を好く想う度にこの秘密は重くなるのよ。貴方が私に何かをくれる度に苦しくなるの」
努めて明るい声音を吐いた。
あたしが苦しめていた? おねーちゃんを?
あまり認めたくないけど、確かにおねーちゃんはそういう人だ。押し付けがましく努力を見せつけたつもりもないし、きっとそこは関係がなくて、多分おねーちゃんは自分のために誰かが頑張ることに耐えられない人だったんだろう。
あたしはベースを弾くのも、おねーちゃんとセッションをするのも好きだし、それを苦にしていないけれど、おねーちゃんにとってはあたしの動機に自分が据えられているのが受け入れ難かったのかもしれない。
「──うん、終わりにしましょう。私の苦しみも、貴方のもどかしさも」
ああ、失敗した。
何が悪いって、密かに喜んでいる自分がいるのが最悪だ。
♦
お母さんの運転で家に帰って、寝る準備を済ませてから、久しぶりにおねーちゃんの部屋の前で立ち止まった。
「おねーちゃん、入ってもいい?」
「ええ」
さすがにノックまではしなかったけど、中に入るのには少しだけ躊躇って。結局おねーちゃんの許しを得てから入ることにした。この緊張もまるまる見抜かれているとは思う。
「……貴方が望んでいたことじゃないの?」
呆れたような声。失望させちゃったかな。
「怖気付いちゃって……それに、あたしがやってきたことがおねーちゃんのプレッシャーになっていたってことなんでしょ? それはあたしの本意じゃなかったから」
「貴方に全幅の信頼を置いているから話すわけじゃないわ。そこは認めるけど、比重が抱えた秘密よりも貴方に傾いたから話そうとしているのには変わりないのよ」
慰めのつもりではあるんだろう。でも、本心でもある。わざと気を遣わないでくれているんだと理解できた。本音のまま語ってくれた方が、幾分か真っ直ぐに受け止められる。
座りなさい、と促されるままベッドに腰掛けた。
「私には違う世界で27年間を生きた別人の記憶があるの。俗に言う、『前世の記憶がある』というやつね」
それは、ちょっと予想だにしない内容だった。しばらく前に冗談交じりで考えたタイムスリップが少し、近いかもしれないけど。
ぐるぐると思考が回る。
「名前は◼️◼️◼️◼️。性別は男。家族構成は父と母と、二つ下の弟がいたわね。笑えるでしょう、前の私は本気でプロのギタリストを目指していたのよ。メジャーデビューを目指してバンドをやって、大学を卒業する頃になっても芽が出ないまま卒業して、普通の企業に就職して、そして──死んだ。死因は分からないけど、突然身体が動かなくなって倒れ伏したのは覚えているわ。そして気がついたら自分が氷川紗夜という赤子になっていた」
吐き捨てるように言ったおねーちゃんの声音が、いつもと違って聴こえた。ニヒルで、自嘲交じりの言葉。
「最初は困惑して、それから私が抱いたのは危惧だった。成人が赤子の振りをするなんて不可能でしょう? 気持ち悪がられでもしたらどんな目に遭うか想像もつかない。そんな時に都合が良かったのが双子の妹、つまり貴方の存在だった。貴方の真似をしていれば幼子として不自然じゃなくなる。貴方の面倒をみていれば多少大人びていてもそういうものかと流される。きっと貴方が私に抱いている幼き日の私への憧憬は、そんな打算に塗れた偽りの姉妹愛に過ぎないのよ」
あたしの中のおねーちゃんの全景にあった空白がにわかに埋められていくのを感じた。それと同時に、あたしが抱いていた原体験が汚染されていくのも。
「言葉を覚えるのが早かったのも、小さい頃からずっと頭が良かったのも、大人びて落ち着いた性格だったのも、そして始めたばかりのはずのギターをここまで弾けているのも全部、そんな記憶があったから。貴方が私に勝てないと思っていたのも当たり前よね、だって小学生が真面目に勉強し直した大人に学力で勝てるわけがないじゃない。私の自己評価の由来も、分かったでしょう?
あたし達の初めては、あたしだけの初めてに。あたしにとっては得難い経験となった記憶も、おねーちゃんにとっては2周目のつまらないものに過ぎなかったらしい。
あたしが今まで全然おねーちゃんに及ばなかったのも当たり前だ。確かにおねーちゃんの言う通り、『ズル』ではある。
「母さんも父さんも、可哀想ね。腹を痛めて産んだ我が子が、どこの誰ともしれぬ人間の記憶を引き継いで生まれてきたなんて。私さえいなければ、この家は普通の幸せな家族だったのに」
弾劾して欲しいと、その目が語っていた。否定してくれと、罵ってくれと、拒絶してくれと、心で叫んでいた。
「貴方は分かっていたみたいだけど、私の性自認は男のままなのよ。この口調も、女らしい所作も、母さんの真似をしてそれっぽく誤魔化してはいるけれど、根底は変わらない。貴方に対しても──それって、姉として正しくないでしょう? 貴方が姉として慕ってくれている氷川紗夜は、こんなにも虚構で満ちている」
確かに、虚構だ。おねーちゃんに貰った思い出の全てにノイズが走って、あたしが大切にしていた記憶には全てヒビが入った。尊敬も、思慕も、憧れも、揺らいだ。でも、でも。
「……ダメだよ、
それよりも、見ていられなかった。
「自分の苦しみを無視しないで。いちばん辛かったのはおねーちゃんでしょ?」
血を吐き出すように、罪を告白するように、ぽつぽつと感情を滲ませながら告げるおねーちゃんに何よりも耐えられない。
「世界に自分のことを知っている人が独りもいないのって、家族や友達と二度と会えないのって、周りの人全てから自分を隠すために嘘をつくのって、──死ぬのって、どれほど苦しいの?」
「苦しくなんて──」
「嘘つくの禁止。だいたいわかったよ、おねーちゃんのこと」
孤独が苦しいのも、嘘をつくのが後ろめたいのも、少しは知っている。おねーちゃんが抱え続けたものがどれほどの苦しみを与えていたのかは想像さえもできないけれど、辛くないわけが無い。もし痛みを感じていなかったのなら、こんな、罰を求めて懺悔をするような話し方になるはずもない。
「おねーちゃんが内心どう思ってあたしの面倒を見てくれてたとか、よく考えたらあたしには関係ないもん。あたしがどう感じるかが全てでしょ?」
関係なくは無いけど、一旦棚上げできるものではある。どうせ今は整理がつかないし、おねーちゃんがくれたものが全てだ。あたしが勝手にそれを特別扱いしていただけで。
おねーちゃんがあたしの手を引いてくれた事実は、あたしの前を歩いてくれた事実は、手を差し伸べてくれた事実は揺らがない。
「あたしだっておねーちゃんを神格化し過ぎてる面もあるし、そもそも姉妹なんて綺麗な感情だけで成立するわけないじゃん」
勝手に押し付けた理想を剥がされただけ。
いつかおねーちゃんに言ったことが返ってくる。等身大の氷川紗夜を見れていなかったのは、あたしも同じだ。
「嫌ったことも、嫉妬したこともあるよ。もっと汚い感情を向けていることだってある」
お母さんに褒められるおねーちゃんが妬ましかったことも、疎ましかったこともあった。今だって薄汚れた感情を抱いている。
唯一無二の秘密の共有者になれたことに仄暗い喜びを覚えて、自分の独占欲に呆れ果てる。こんなに浅ましい人間だったかと思い返してみれば、わりかしこんなものだった。
「おねーちゃんはね、潔癖症過ぎ。……もちろん、ショックだよ? 今まで信じてたおねーちゃんの像が崩れたのは事実だし、もっと早く話してくれたって良かったじゃんとも思ったけど──あたしの「好き」って感情は揺らいでない」
ああ、気が付いてしまった。あたしがショックを受けているのは、あたしの醜い独占欲が否定されたからだ。
おねーちゃんの前世の記憶という存在が示されて、氷川紗夜という人間を構成している氷川日菜の割合が著しく下がってしまったことに拒否反応を示している。
唯一のキョウダイでさえなくなって、唯一の家族でもなくって、双子という名の同位体であることさえ否定されて。
あたしがおねーちゃんによって形作られたように、おねーちゃんもあたしによって形作られていて欲しかったという自分勝手な願望だ。
「おねーちゃんはあたしのこと、妹じゃなくて他人だと思ってるの?」
「そんなこと無い、けど」
「じゃあそれで十分だよ。あたしにとっては」
十分なんかじゃない。あたしのおねーちゃんなのに、遠くへ行かないで。
意思に反して口から出るのは、取り繕った都合のいい文言だけ。
「おねーちゃんにとっての秘密は、確かに重いものだけど。でも、それでおねーちゃんがあたしの感情まで考慮しなくていいんだよ。だってあたしが勝手に『おねーちゃんはこういう人間だ』って決めつけて、勝手に信奉してるだけなんだもの。それに、『隠して』はいても『騙して』はいないんじゃない?」
「……」
「自分を許してあげて欲しいの。だって、仕方ないことだもん」
「難しいわ」
「それじゃああたしが許すよ。ただし罰として今日はあたしと一緒に寝ようね」
秘密の共有に喜ぶ自分がいて、クオリアの否定に泣き叫ぶあたしがいて、感情がぐちゃぐちゃになっていた。
いっその事おねーちゃんを責め立てたら、あたしだけを見てくれるんだろうか。それはおねーちゃんの信頼に背くことになるから絶対にできないんだけれど。
「性自認の話はしたでしょう」
「うん。でも今更じゃない?」
「……はぁ」
あたしだっておねーちゃんに同じだけ、いやそれ以上に
妹でいることが苦しい。あたしにとっておねーちゃんは全てなのに、おねーちゃんにとってはただの妹でしかない。それが酷く苦しくて、冷たくて、寒い。
「前に言ったよね。あたし、おねーちゃんが思っているよりもずっとおねーちゃんのこと好きだよ」
「本当に、理解不能だわ」
「おねーちゃんの自己評価が低い分もあたしが補ってるからね」
きっと伝わっていないのに、何度も未練がましく口に出す。
おねーちゃんの首元に添えたこの手を、思い切り締めてしまえば。そうしたらおねーちゃんはあたしのものになりはしないだろうか。おねーちゃんの秘密も、苦しみも、未来永劫あたしだけが抱えて死ねる。なんて、馬鹿みたいだ。
「強がりすぎなんだよおねーちゃんは」
「……そうかもね。少なくとも貴方ほど素直じゃないわ」
「えへへ」
あたしほど捻くれた人間もそうはいないと思う、きっと。
沈黙が横たわって、どちらともなく眠る準備を始めた。思考の整理に時間が必要なのは分かっていたし、沈黙を誤魔化すためでもあった。
おねーちゃんと同じベッドに潜り込んで、照明を消す。
セミダブルだからそれほど詰める必要も無いけれど、横を向いたおねーちゃんの背中にぴたりと貼り付いた。
しばらく浅い呼吸音が聴こえてきて、体感で20分もしない内に呼吸音が変わった。いつもはあたしの方が先に寝るのに、おねーちゃんも相当疲れていたらしい。
「おねーちゃん」
返事は無い。
「好きだよ」
「あたしだけのおねーちゃん」
おねーちゃんの本心に、あたしは本心で返さなかった。
隠し事なしに本音で通じ合える二人でいたかったのに、あたしは思わず自分の心を隠した。
あたしのおねーちゃんなのに、どうしてそんなに心が綺麗なんだろう。
それだけの孤独を背負っても腐らずに、打ち明けるのが嫌だった理由のひとつがあたしに気を遣ったからだなんて。
「あたしだけのものでいてよ」
穢い独占欲の発露。細い首筋に噛み跡を残したい衝動に駆られた。
おねーちゃんの匂いに包まれて、それでもこんなに独りぼっち。
♦
隣で動く気配がして、目が覚めた。
「おねーちゃん……?」
「おはよう、日菜」
「おはよ……早いね」
スマホを覗き込めば朝の8時。まだ夏休みなのに早起きだ。寂寥で満たされた胸腔から大きく息を吐いて、寝癖まみれで垂れ下がった前髪をかきあげた。
「もう起きる?」
「……なに、二度寝するの?」
「おねーちゃんが寝るならまだ寝る」
「私は起きるわよ。別に貴方は寝ていてもいいけれど」
「なら起きる」
スマホを覗いた時に連絡が来てたっけ、とチャットアプリを開いたら、リサちーからいくつかの通知。通話で詳しいことは話したいという旨と、銀髪ちゃんがバンドにおねーちゃんを誘いたがっているという話だった。
しばらく考えてから、あたしには引き留められないなと諦める。リサちーのバンドに上手くいって欲しいという思いもあるし、あたしにあまりライブをする気がないのにおねーちゃんを縛りつけるのも嫌だ。……正確には、嫌じゃないけど後ろめたい。自分もいくつかオーディションを受けようと思っているから尚更。
「おねーちゃんに会いたいって人がいるんだけど、取り次いでもいい?」
リビングに降りて、キッチンに立っていたおねーちゃんに尋ねる。なんて言えばいいのか分からなくて微妙な言い回しになっちゃったけど、おねーちゃんになら伝わるだろう。
「いいけど、誰かしら」
「リサちーと、銀──じゃなかった、ユキナちゃん」
ああ、と納得したような顔をした。あたしでも分かるんだから、おねーちゃんにも何の話か想像がつくんだろう。
「貴方はいいの?」
「うん。おねーちゃんに釣り合えるくらいまで積極的にライブする気もないし、あたしも別口で何か考えてるから。待たせる立場なのに操を立てろなんて言わないよ」
「そう」
良くないと言ったら、やめてくれるんだろうか。どうせスカウトの話は行くんだろうけど、断ってあたしの傍にいてくれるんだろうか。
きっとそうだろうと思うから、決して口に出せはしない。縛りたいけど縛りたくない。あたしだけのものにしたいけど、良い妹のままでいたい。
こんなに醜かったっけ、あたし。
「今日でいいよね?」
「そうね、明日からは学校だもの」
「──昼からずっとライブハウスに詰めてるからいつでもいいって」
「じゃあ先に買い出しね」
「はーい」
保ってきた平衡がズレているのを自覚する。
今日も良い妹でいられるだろうか。