才数多持つ私のヒーローアカデミア 作:スプライト・エルフ
「ふぁぁ...」
少し夜更かししてしまったが、概ね元気な今日この頃。
おはようございます。扇耶です。
朝はマスコミが校門の前にわんさか居て辟易しています。正直迷惑でした。
何事か叫んでうるさかったですが、大方オールマイトの雄英赴任が気になって仕方なかったのでしょうな。
それはそれとして、生徒の通学を妨害するのは如何な物かと思うんだけど...
ただ、ファーブルの才能『観察者』を使えば素通りも余裕だった私としては少し罪悪感があるけれど、最終的には相澤先生が対応してくれて皆ホームルームに間に合ったから結果オーライではある。
相澤先生が教室に入り、そのまま朝のホームルームが始まる。
昨日の戦闘訓練のVTRを相澤先生は全て確認したらしい。そこから爆豪君と緑谷君が注意を受けてそのまま連絡事項に入った。
「急で悪いが、今日は君達に...
私は皆が積極的に手を挙げて立候補する姿を見て懐かしさを感じていた。去年は既に7人も除籍になっていてここまで明るい空気ではなかったから少し羨ましいかもしれない。
手を挙げずに静観していると、少し面白い事が起こった。
「静粛にしたまえ!」
声を張り上げた飯田君に注目が集まる。
「“他”を牽引する責任重大な仕事だぞ...!“やりたい者”がやれるモノではないだろう!」
「周囲からの信頼あって務まる聖務...!民主主義に則り真のリーダーを皆で決めると言うのなら、これは投票で決めるべき議案!」
そう宣言する飯田君だが、彼の手もまた...
「そびえ立ってんじゃねぇか!何故発案した!」
飯田君の近くに座る切島君の言葉通り、その手は真面目な性格を反映するように真っ直ぐ上に伸びており、学級委員長に対する彼の熱意を感じる。
が、彼はその意志の行く末を民意に委ねようとしている。
切島君の言う通り、皆自分に入れるかもしれない。
蛙水さんの言う通り、信用の“し”の字だってまだない。
だけど飯田君は、自分が学級委員長に成れない可能性を多分に含む方法を採ってでも平等を重視している。その在り方を私は少し眩しく感じた。
最終的に相澤先生の許可が出た事で投票が行われ、結果は緑谷君の三票。八百万さんと二票が突出していて、そのまま二人が順当に委員長と副委員長になった。
飯田君は私の分の一票のみ。
悔しがっていたけれど、彼は自分で納得していた。
そういう所も真っ直ぐで強いのだろう。
「まぁ、そこが一番の強みなんだろうな...少し真っ直ぐ過ぎる気がしないでもないけれど。」
今、私は一人食堂の端で食事を摂っている。
既に普通科目の四限が終わり、昼休憩の時間になっていた。
なんだかんだ一人で過ごす事が多くて気にしていなかったが、“アレ”見るとなぁ...
私の目線の先には楽しそうに談笑する緑谷君、飯田君、麗日さんのグループの姿があった。
一匹狼ぶるのもそろそろ止めてクラスメイトと関わりを持つべきなのだろうか、そう考えていた時だった。
食堂内、いや校舎内全域に警報が鳴り響く。
内容はセキュリティ3の突破を知らせていた。
つまり、何者かが敷地内に入ってきた状態、という事になる。
確実に今起きている事を知るために私は手持ちの“才能”を行使した。
“才能”
ノストラダムス…『予言者』
+
ジョン=フォイ=ノイマン…『予測演算』
同時行使。
私は未来を記した書物を手に取り、周辺の環境データから頭の中で計算式を組み立てる。
真作に及ばない贋作とはいえ、ここまですれば自ずと答えがわかる。別のアプローチから未来を覗き見る二つの才能が揃えば的中確率は80%を越す。
結果は...
「なんだ、マスコミか...」
どうやらマスコミが侵入しただけらしい。
息を一つ吐いて『予測演算』を止めた。
更に『予言者』まで止めようとして、気になる文言が書き込まれた。
“
...妙だ。
このままなら数十秒後にマスコミの後追いで侵入する形だ。
だが、同じ記述が“2つある”
記述された未来、その一つ目に横線を引いた。
すると文字がブレた後で元の記述に戻った。私が書いた横線は影も形もない。
二つ目も同様の結果が得られた。
...どうやら虚言の類ではないらしい。
何故『予言者』由来の未来を見る書物に敵による襲撃が記述されたか。しかも時期の違う物が二つ。
・元から侵入計画があった。
...ないな。これは。それなら昨日か一昨日...いやそれ以前に『予言者』で分かっていただろう。これはない。
・短絡的に近々侵入しようとしている。
ありえない事はないだろうが、何故今のタイミング...オールマイトか。
オールマイトに対する個人的な怨恨...有り得る話だ。
しかし、この記述では“近々侵入事件がある”事はわかっても敵の規模も個性も分からない。
根津校長に相談だけしておくか...
新たな問題が首をもたげて来たな。平和が一番なのだが...そうもいかないらしい。
...原因が知りたいとはいえ、周囲のパニックに何もしなかったな...やはり呑まれているのかね、少しづつ。
飯田君が身を呈してパニックを鎮めたのを見て私は自嘲した。
ヒーロー基礎学を終えた帰りのホームルームで緑谷君が委員長の職を飯田君に譲ると言い出した。
クラスは盛り上がっているけど、うーむ...それ...
「緑谷君。少しいいかな。」
「は、はい。」
「君が委員長を辞するなら本来次の委員長はスライドで八百万さんだ。彼女に確認は取ったかい?」
「あ、いや、それは...」
今気づいたらしい緑谷君に代わって八百万さんに尋ねた。
「では、八百万さん。君は飯田君に委員長を譲ってもいいかい?」
私の言葉に数秒掛けて八百万さんは答えた。
「私は...飯田さんにお譲りします。」
「何故だい?」
「彼は委員長に足る実績を示しました。少々不満ですが、扇耶さんが確認をとって下さったので、心残りはありません。」
八百万さんに嘘は無さそうだ。
「ならば良し。飯田君。当選おめでとう。」
「あ、あぁ!」
クラスがまた盛り上がる。
A組の新委員長飯田天哉が爆誕した瞬間だった。
その明るい光景を目にして視線を手元に落とす。
“敵の襲撃にて平和の象徴、死亡”
「やらせると思ったか。」
私はその記述に横線を引いた。
ノストラダムス
『才能』
未来事象への探究心が芽生える。
[予言者]
予言書に浮き出る文字で未来を知る事が可能。
付属する羽根ペンで書き込む事で未来を変える事ができる。
しかし、細かい制約があり、何もかも思い通りの未来を描く事は出来ない。
〈小話〉
ファーブルとの“探究心”繋がりで何となく習得できてしまった才能だが、経緯のせいもあり再現度が低い。
未来予知の的中率は60パーセント未満。
しかし、裏技として、横線を引いて“修正されるか”でその事象の発生確率を更に確認する事ができる。
修正されれば殆ど確定的に起こる
ジョン=フォイ=ノイマン
『才能』
驚異的な計算能力と思考能力が目覚める。
[予測演算]
あらゆる情報を数値化し、未来を予知する。
その精度は未来予知の如しだが、この才能の本来の所有者は未来予知というと2日ぐらい根に持つらしい。
〈小話〉
セイの中で“とある才能”に次いで再現度が低い才能。
ノイマンの本来の計算能力には遠く及んでいない。現状は云わば市販のコンピューターを馬鹿みたいな数繋げた物を量子コンピューターだと宣うレベルの杜撰さである。