鋼 威力100 命中90
体内で生成した鋼のエネルギーを集約させて撃ち出す。
メガランチャーの補正が乗る。
「ほしぐもちゃんッ!!メテオドライブッ!!」
「ほしぐもッ!!シャドーレイッ!!」
2匹の獣が吼える。太陽を喰らいし獣が太陽の如き煌めき放ち、月を誘いし獣は月光の如き神秘を身に纏う。
太陽が獣と共に落ちる。
獣が月光を放つ。
直後、空間が歪む程の衝撃が発生し、周囲のウルトラホールが掻き消える。
だがそれでも…
届かない。
ウルトラネクロズマの周囲にまた新しくウルトラホールが開く。
その数は……数え切れない。
光が漏れる。光が溢れる。極光がウルトラホールからこの世界に流れ込む。神聖な、神秘的な、暖かで、生物としての本能的な恐怖を掻き立てる眩い光が次々とウルトラネクロズマに集約していく。
「嘘…でしょ?」
異世界からの来訪者、ソルガレオと共にこの世界に舞い降りたコウミが絶望の色を見せながら呟く。
彼女は知っている。あの姿を。
思い返すは次々と圧倒的な力で自身の相棒たちが蹂躙されていく様。平行世界のアローラから来たコウタが来なければ手も足も出なかった光の略奪者。
「ラリオ…」
「マヒナベ…」
2匹の獣が光に反応する。吸収された光には2匹と酷似した光が含まれており、それに酷く郷愁を感じ悲しげな声を上げる。
それは神だった。
あのウルトラメガロポリスでの戦いの時とは姿が違う。巨大な肉体はさらに強大に。神々しい光を纏ったそれはこの世界のアローラチャンピオン、ヨウと来訪者のコウミを見据える。
プリズムアーマーとファントムガード、光の水晶と幻影の鎧を身に纏う。
光は膨張し、姿を変える。まるでそれは…ポケモンの進化のようだった。
シ…シ…シカリ…!
かがやきさま
▽▽▽
俺はエスパニ地方のチャンピオン、カイラ。
元々仕事の疲労とストレスで草臥れていた俺は、背後から近づいてくる居眠り運転をしたトラックに気づかなかった。
俺はその異世界トラックに轢かれ、目が覚めたら……体が縮んでしまっていた!?
というわけで転生したと自覚したのは5歳の時だった。
今まで色々あった。
ポケモンの世界に転生したと気づいた俺は10歳でジムに挑戦し、その傍らに特殊個体ポケモンに力試しをしに行ったりして、何やかんやあって殿堂入りし、本気のチャンピオンを下し、晴れて旅の終わりと共に俺が正式なチャンピオンとなった。
特殊個体ポケモンとはゲームでは存在は示唆されていたが登場することは無かったポケモンのことを指している。例えばハガネールに進化することなく独自の進化を遂げた黒曜石のイワーク、脱皮しなくなり、まるでドダイドスのような大陸を彷彿とさせる苔むした巨大な岩を背負ったゴローニャ、エスパニボスゴドラの金属で出来たハンマーではなくギルガルドをわざわざハンマーに加工して武器にしたエスパニデカヌチャン等、通常個体とは異なる生態を持つ、アローラで言うヌシポケモンに近い、その地域の生態系のトップに君臨するポケモン達である。
本当に何やかんやあった。ゲームのような悪の組織や世界の危機のようなものは無かったが、初めての旅に冒険心を燻らせたり、相棒と友情を育んだり、ライバルと競い合ったりと、涙あり笑いありの物語が数知れず存在した。死にかけたりもした。
この世界を元は創作の世界だと思っていたが、今はそう思わない。ここは現実であり、今俺が生きる世界なのだと思うようになった。
来るかは分からないが、新作の主人公が現れて俺の前に立ち塞がったとしても、俺は止まらない。この地方で成長し続けてよう。そう覚悟したのだ。
だから…
「チャンピオンッ!!ウルトラホールから新たに伝説のポケモンが…ッ!!」
「ホウエンチャンピオンのとは別個体のレックウザがゲンシカイキを…!!」
「ムゲンダイナがムゲンダイマックスしましたァ…!!」
もうやめてくださいアルセウス様…もう僕は限界です…
これらの異変の兆候はおよそ1年ほど前、ほんの些細な出来事から始まった。
「化石ポケモンの大量発生?」
「はい、こちらの資料をご覧下さい」
俺に資料を渡したのは足元まで伸びる青髪を背中付近でリボン結びをしたスーツの上からシスターのような黒いロングコートを羽織る女性、四天王のピレア。
渡された資料には大量発生したオムナイトとカブトが縄張り争いをしている画像が添付されている。
だが俺の脳内にあるオムナイトとカブトの姿とはまた異なる風貌をしていた。
「…通常のオムナイトとカブトとは姿が違うな…」
「古代ポケモンを専門に研究しているタマムシ大学の教授に同じ資料を送ったところ、化石から復元されたオムナイトとカブトの本来の姿なのでは…だそうです」
「つまり…今まで化石化せずに、現代に適応せずに行き続けた個体…ということか…」
俺は手元の資料を再度確認する。
元々、化石ポケモンは様々なポケモンの遺伝子を組み合わせて当時の古代ポケモンを再現し生まれ変わらせている。だから本来の古代の姿とはまた違ったものであるというのは有名な話だ。
ガラルの冠の雪原に生息する化石ポケモンは、何処かの施設から逃げ出したものが繁殖した、ひっそりと生き残っていた古代ポケモンがこの時代に適合して進化した姿が復元した姿と酷似していた…という説が有力である。
だがそんなジーランスよろしく古代から一切姿を変えずに生き残れるのか、他の個体が進化しているのにも関わらずこの古代ポケモン達は一切姿を変えていないのか…。そう考えると疑問が残る。
「もしや過去から送り込まれた…?」
「過去から?」
この世界には時間に関するポケモンが存在する。時を司るディアルガに時を渡るセレビィ。
レジェンズアルセウスにて登場した時空の歪みのようなものが起きている可能性がある。
「そこら周辺で他に変わったことは?」
「ここ周辺では特に何も…ですが、ここから離れたガムリルシティ周辺で見た事がないポケモンが現れた、との通報が」
首を傾げながら答えるピレア。
時空の歪みとは異なる時間軸から様々なアイテムやポケモンが流れ込んでくる空間。外からは光のドームのように見えるものであり、カブトとオムナイトだけが送られてくるとは考え難い。それに発生したなら目撃者からの通報があるはずだ。
それにそこから南東に位置するガムリルシティ。場所としては地方の端から端と今回の場所から真反対に位置する場所で未確認のポケモン。
オムナイト達とは関係はないだろうがまた厄介な事柄が起きそうである。
「カイラさん、大丈夫ですか?」
彼女は次々と起こる問題に頭を抱える俺を案じるように声を掛けてくる。優しいね。でも全然大丈夫じゃないよ。本来この地方に生息しないはずのポケモンが発見されたり、そのせいでアーマーガアが現れたのを本能的に察したデカヌチャン達が、アーマーガアやついでにエアームドの元に大勢で道行く金属を回収しながら侵攻したりとその対策や後処理で眠れていない。
チャンピオンの仕事が辛すぎる。無駄にこの地方が広いせいであちらこちらへと空を飛びもうフラフラなのだ。
ピレアちゃん膝枕して慰めて…
「セクハラですよ」
「まだ何も言ってないが?」
無駄に察しのいいピレアから視線を逸らして立ち上がる。
一応現場に行き確認して起きたい。無理やり連れてこられたのならオムナイト達を保護しなければならない。生態系が激変してしまう可能性もある。正直色々なポケモンが突如生息域から離れた場所に出現してるせいで手遅れではあるが…
チャンピオンの証であるマントを羽織り、部屋を出ようとしたその時だった。
「チャンピオン、国際警察からの明日こちらに訪問するとの電話が…」
「国際警察…?なんでまた…」
職員の男性もまた訳が分からなそうに首を傾げながら答えた。
「機密情報らしくあまり教えては貰えなかったのですが何でもこの地方で何やらの反応を検知したそうで…ハンサムという方がこちらに向かわれたと」
ハンサム…?
ファッ!?ウルトラホール案件やんけッ!?
レインボーロケット団「うわ怖、近寄らんとこ…」