「あぁ…そうだ!やはり…!!」
「博士!大発見ですよ!早く世界中の博士達に伝えなければ…!!…きゃあ!?」
すずんとエスパ二地方の大勢の博士たちが集う研究所が大きく揺れる。それと同時に全てを凍てつくさんと迫る絶対零度が侵食していく。
「うわぁ!!?」
「もうここまで来やがった!」
「た、助けてくれぇ!!」
逃げ惑う研究者たち。迫り来る致死の冷気に戸惑い混乱が広がっていく研究所。その中でも1人、エスパ二が誇るポケモン博士ビオーサは研究データが詰め込まれたUSBメモリを手に研究所内を駆け回っていた。
「これは…これだけは伝えなくては…!!全世界に!!」
無情にも冷気はビオーサを追うように迫って来ている。
もう既に他の人間の声は聞こえない。1人、たった1人、ビオーサを残し全員が氷漬けにされてしまった。
「3000年前だ!3000年前に全てがある!!」
3000年前。それはこの世界の歴史におけるターニングポイント。
全世界で同時に起きた、生命を吸い取る最終兵器まで用いられた世界大戦。
ガラル地方で起きたムゲンダイナによるブラックナイト。
当時神として崇められたメルタン、メルメタルの唐突な絶滅。
イッシュ地方の古代文明の滅亡。
アローラ王朝の消滅と2匹の異界の獣の襲来と守り神の誕生。
挙げればキリがない。
更には今現代の研究で明らかになった2000年程前の超古代ポケモン、グラードン、カイオーガの争いに影響を齎した何か。
3000年前に起きた何かに影響されたのだろう。
太古から生きるネンドールに記憶されていた脳の周波数。それを遡れば丁度3000年前に大きく乱されていることが分かった。
何かだ。何かが3000年前という時代に起きたのだ。
最近でも予兆が起きている。
1つはフェアリーと呼ばれるタイプの台頭。まるで突然、最近見つかったはずのフェアリータイプは極自然と全世界のポケモンに広がっていった。
昨日までドラゴンタイプの技を受けて瀕死になっていたポケモンが、今では平然とそれを無効化している。
しかも、シンオウ地方がヒスイと呼ばれていた時代、ラベン博士が残したポケモン図鑑には既にフェアリータイプへの記載が成されている。
唐突に現れたタイプが、極当たり前のように世界に浸透していったのだ。今では殆どの人間、ポケモンはそれが当たり前のように受け入れている。
そして2つ目は近年立て続けに起きる大事件の数々。
ホウエンの超古代ポケモンの復活。
シンオウの神話ポケモンの人為的に引き起こされた暴走。
イッシュの神話ポケモンの復活に英雄の誕生。
カロスの最終兵器起動。
アローラのウルトラホールの活性化。
ガラルのブラックナイト。
架空と思われていた伝説が次々と現代で再現されていく。
3つ目はパラドックスポケモン、UBによる異世界、平行世界の証明。
この騒動で、平行世界の存在は確固たるものと証明されてしまった。それも3000年前が境となっている。
最終兵器における影響でメガシンカが生まれた世界線と生まれなかった世界線。そしてそれが今、1つへと戻ろうとしている。
1つ目のフェアリータイプについても、フェアリータイプが存在する平行世界がこの世界と融合した影響と言っても何らおかしくはない。
そして何より現在、ネンドールから読み取れた周波数と、全く同じ周波数が宇宙よりこの星に降り注がれている。
「がぁ…!これだけは…!これだけは!未来へ繋げねば…!世界に…未来は無い…!」
冷気が遂にビオーサの脚を捕らえた。
かつてのソウリュウシティを襲った寒波のように、世界が白銀の世界へと様変わりしていく。
「くっ…」
「コータス!オーバーヒート!」
突如放たれた熱気がビオーサにまとわりついた氷を溶かす。
「あなたは…」
見上げた先には、ビオーサが2人いても届かないであろう巨体を持つ大男。みすぼらしい、ボロボロの衣服を身にまとった白髪の大男が、険しい表情で佇んでいた。
「この声だ…最終兵器を創る引き金となった…私の歪んだ、妄執に囚われた果てに世界を滅ぼさんとした私を後押しした元凶…」
男の隣にふよふよと漂うフラエッテの破滅の願いが迫る冷気を相殺する。
「私が…世界を変えてしまった私が…犯してしまった業を精算しなければならない…!」
男はビオーサの手を掴み、立ち上がらせる。
「我が名は…古代カロスの王、AZ…待っていろ…この私が…1度世界を破壊してしまった私が、あの子供たちのように世界を救ってみせる…!それがこの時代まで行き続けた私の定めだ!調停者よ!今一度、私に力を貸してくれ!」
AZの背後が蠢き、今此処に世界の調停者が顕現した。