戦国の鬼狩り、呪うは己   作:みくりあ

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我ながら東堂をキショくかけてると思っていましたが、アニメで遥かに上をいかれました。かっこいいよ東堂


第拾壱話 姉妹校交流戦 前編

「しもしも〜」

『……無事に飛行機が着いたことを報告します』

「相変わらず律儀だね。おっけー」

『……虎杖君の容態は』

「乗り越えたよ。そんでもって一皮むけたって感じかな。ありがとうね」

 

 悟の電話相手は七海建人。元二級術師かつ、彼の一つ下の後輩である。

 七海は呪術高専を卒業後、最低限の荷物を持ってマレーシアへと旅立った。高専時代に稼いだ莫大な金銭は全て灰原家の口座へと振り込まれたという。

 呪術師としての責務。人としての幸せ。

 二つを天秤にかけ、それが傾いただけの事。誰一人として止めるものはいなかった。人が普通を享受しようとすることを誰が止められるというのか。

 

『あなたがお礼を述べるなど、

 偶然昔のパン屋を味わってみたくなり、偶然日本に帰ったら、偶然五条さんに会った。それだけです。少しでも…………いえ、すいません。なんでもありません』

「それ、自分の贖罪だと思ってる?」

『……』

「七海が逃げたって思ってるやつなんて一人もいねーよ。特級呪霊一匹逃したところで、僕なら確実に祓えるしセンパイ達もいる。オマエは十分役に立ってくれたさ。

 短期間だけど悠仁を任せて正解だった」

 

 それは心からの本心。七海の離脱が悲しくないのかといれれば嘘になる。しかし悟にとっては元青春の1ピースが逃げ出しただけ。なくなってしまうよりずっといいのだ。

 

『しかし』

「雄だって……そう思ってるさ。そんなに後ろ向いてたらあいつに祟られるぞ?」

『その時は呪霊として、しっかりと祓いますよ』

「……あの猟奇的な鉈、空港で引っかからなかったの?」

『格納呪霊を売りにしている業者の方がいらっしゃいまして。少々ぼったくられた気がしますが、背に腹はかえられないので運んで頂きました』

 

 格納呪霊は稀である。呪霊の体質や術式は集まった呪いにもよるが、〝仕舞う〟ことに負の感情は集まりにくい。

 悟の頭に浮かんだ格納呪霊を持つ大男。そして影に呪具を溜め込む教え子。影の中の重さを受けるが、蝦蟇という式神に食わせたまま影の中に顕現させておけばなんとかなるのだ。

 

「…………よく考えたらあの親子、揃ってアイテムボックスじゃん」

『何か言いました?』

「なんにも?」

『そうですか。話は変わりますが、()()()()()()()()()()()() 挨拶に行けなかったものですから』

 

 

「……あー」

 

 

 死んでる。

 そう言おうと口を開き、閉じた。七海はもう一般人。もう、関わらなくていい。

 

「生きてるよ。出張中だけどそのうち帰ってくるっしょ。

 そーだ! 今さ〝虎杖悠仁実はいきていた〟ドッキリするよーん。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

『……ははっ。それは……盛り上がりそうですね。とても』

「でしょー!?」

 

 七海が相好を崩したのを電話越しに感じとり、悟は笑みを深めた。

 

「じゃあねー。マレーシアに飽きたら戻っといで。やることないと思うけど」

 

 返信を待たずにさっさと通話を切る。パタンと音を立てて携帯電話を閉じた。これ以上話すと本心が出てしまいそうだったのだ。七海に帰ってきて欲しいという本心が。

 

 

「問題ない。だって僕た……僕は最強なんだから」

 

 

 こぼした言葉は自戒の意。今まで親友と二人三脚で支えてきた分、孤独が染み入る。

 石畳を下り、喧騒の元へと進む。近づくにつれ、彼は笑みを深めた。

 アイマスク(最強)を被る。

 

「ただいま歌姫ー。そしてみんなおっまたー」

「ただいまじゃない! 大遅刻よ! ってか何その箱」

「ふっふー。まぁ先に海外のお土産をば」

 

 ちなみにこの直後行われた、五条悟命名〝虎杖悠仁実は生きてましたドッキリ〟は失敗に終わった。そして七海にお別れを言えなかった悠仁は少しへこんだ。

 

 ★

 

 俺達は準備を怠らない。使えるものは全て使う。妥協は命取り。数少ない同年代との勝負。モノにしなければ今死せずとも、呪詛師に殺される。

 

「緊張しすぎ」

「……痛い」

 

 後ろには真希先輩。木刀を逆手に持ち、鍔で叩いたようだ。普通に痛い。

 

「生意気にも気合い入ってんのはいいことだがな」

「当たり前ですよ。絶対に足は引っ張りません」

「おう。今に分かるぜ。自分がどんだけ強ぇのかよ。

 これから作戦会議だが、作戦の大前提として、真依は私がやるからな。手ェ出したら作戦違反として私が京都校より先に潰す」

「……」

 

 真希先輩。本名禪院真希。深緑の髪をポニーテールに纏め、呪霊が見える眼鏡をかけている。京都校の真衣先輩とは双子。親父とおなじ天与呪縛のフィジカルギフテッドだが、本人が言うには完全に下位互換らしい。

 パンダ先輩曰く、シスコンバーサーカー。あと憂太の嫁。

 

「高菜(呼びかけ)」

「狗巻先輩」

「昆布(心配)」

「大丈夫ですよ。さっきは少し気合い入りすぎていましたが」

「明太子(やる気)」

「先輩もやる気ですね。作戦的に先輩は遊撃部隊でしょうか。いるだけで相手は警戒せざるを得ないので」

「しゃけ(肯定)」

「ですよね」

 

 狗巻先輩。呪言師。灰色の髪と口元の痣が特徴。言葉に呪いが篭もり、聞こえた相手を強制的に支配できる危険な術式。普段は語彙をおにぎりの具に絞っている。

 

「おい。私は何から突っ込めばいいんだ」

 

 釘崎野薔薇。同級生。芻霊呪法を使う田舎出身の術師。祖母には入学に反対されたと言っていたが。

 五条先生が学生時代の時も学生が一人死んだ。常に命を狙われ続けている五条先生の教え子になる。東京の呪いは田舎のそれを比べても桁違い。教師が一人失踪している。2年くらい前に特級過呪怨霊に呪われた学生がいる。

 そんなところに入れたがらないのは普通だろう。

 

「先輩は呪言師だから。語彙を抑えてるんだ」

「じゃななんでおにぎりの具なのよ。もっとあるでしょうが。色でも記号でも」

「こんぶ(拒否)」

「なんて?」

「こっちの方が個性溢れるからって」

「パンダに勝てるわけないでしょ」

「米(絶望)」

「まさか米を具だと思ってる?」

 

 パンダ先輩。パンダ。

 あと乙骨憂太先輩がいる。今年は不参加だが、貫牛を片手で止めた衝撃は忘れられない。

 

「東堂葵は馬鹿だが、馬鹿強い。あいつを何とかしないことには私たちは勝てねぇ」

「最善は狗巻と誰かを組ませて速攻だな」

「私もそれがいいとは思ってるんだが」

「虎杖を東堂に当てます」

「ほぅ。やれんの?」

「東堂と同じぐらい」

「決まりだな」

 

 ★

 

「ここで歌姫先生から、ありがたーい激励の言葉を頂きまーす」

「は!? ……えー……まぁ、みんな仲良く。でもって手を抜かずに。それでも怪我のないように心がけましょう……?」

「あざーっす」

「五条!!」

「では姉妹校交流戦開始ー!!!!!」

 

 開始の合図。

 姉妹校交流戦は建物もあるが主に森の中がメインステージ。放たれた呪霊を祓えば得点を得る。得点の多い方が勝ち。ちなみに得点の高いボス呪霊は両校のスタート地点中間あたりに配置される。

 

 

「ブラザー!!! 娘ちゃんは元気かぁああ!?!?!?」

 

 

 一分と経たずに現れたのは、謎の勘で一直線に東京校へと向かってきた葵。ほかの京都校は着いてきていない。彼単独。

 悠仁は初対面だが、怯むことなく飛び膝蹴りを顔面に炸裂させた。真希と恵は頷き合う。想定通り、葵は悠仁に任せる。フィジカルなら負けておらず、体術センスは悟のお墨付き。

 

どりゃァァァァァ!!  ……って、伏黒結婚してたの!?」

「してるわけねぇだろ! 東堂は任せたぞ!」

「へへ。任されたァ!!」

「よし散開!!」

 

 真希の合図と共に全員が散らばる。単独行動の葵を袋叩きにしてもいいが、少しでも手こずれば袋叩きに会うのは東京校のほう。

 恵の担当は加茂先輩。加茂憲紀。御三家がひとつ、加茂家次期当主。術式は赤血操術。

 同じ御三家の相伝術式を持つ恵が、術式の質的に対処しやすいというわけだ。

 

「……」

 

(妙だ。何故ここまで接敵しない? ほかの京都校も東堂を追いかけてくるはずじゃ……)

 

 恵が懸念しているのは、京都校が悠仁を狙うこと。保守派が多い京都校が宿儺を宿す爆弾をそのままにしておく道理はない。

 だが悟がいるのに仕掛けるほど愚かではない。ちなみに今はまだマシになった方。数年前は傑とつるんでそれはもう手がつけられなかった。

 ただ抜け穴はいつくかある。

 

 例えば、五条悟に見つからなくすること。

 

 例えば、事故にみせかけること。

 

 例えば、────

 

 

 

 

 

「お。恵君やん」

「誰ですか」

 

 

 

 

 

 ────五条家が文句を言えない立場の人間を送り込むこと。

 

 

 

 

「覚えてへん? 禪院直哉。真希ちゃんの親戚や。改めてよろしゅうなー」

「……なんでここに禪院家の方がいるんですか。学生しか入れないはずですよ」

「ちょいと遊びに来たねん。ついでに虎杖君殺そかなーって。ちゅーか、恵君も禪院家みたいなもんやろ」

「……違います。それに虎杖は殺させません」

「強がりも可愛ええなあ。まぁ。邪魔せんとってくれる? ぶっちゃけ君、あんまし強ないやろ」

「……」

「その目やその目。やっぱしお子さんやなあ」

 

 ニタニタと笑う顔はどこか甚爾を想像させる。確かに禪院家らしい、と恵は思った。両手を構え、円鹿を顕現し、影の中に待機させた。

 

(思い出した。十年前の7月、親父と禪院家に行った時に居た。

 禪院家で年上。どう考えても格上。勝てるか?)

 

「あっこであばれてるんは東堂君と虎杖君か。東堂君とやりあえてるならまぁまぁ強いかもな……

 ま、僕程やないけどな」

「っ!?」

 

(間に合え!!)

 

 恵の視界から直哉の姿が掻き消える。

 続いて衝撃。腹を劈く痛みと共に景色がブレる。呪力でのガードが間に合わず、恵は込み上げる嘔吐感を飲み込んだ。

 

 

 ❝玉犬ッ! ❞

 

 

「今ので分かったやろ。

 僕、東堂君より強いねん。君、東堂君に糞味噌にされたんやろ。今ここで土下座するんやったら半殺しで許したるわ」

 

(五条先生が忌み嫌った禪院家。なるほど、親父があんな性格になるはずだ)

 

「……」

「ま、急用ちゃうし遊んだる。影すら踏ませんけどなァ」

 

(『投写呪法』は一秒を区切って動きを刻む術式。次の動きを予測しろ)

 

 伏黒恵は少し楽観視するきらいがあった。驕りと言ってもいいだろう。

 かの六眼と無下限の抱き合わせを道連れに追い込んだ術式。五条悟とまでは行かないが、十分な天才肌。そしてほぼ一切苦労することなく手に入れた九種の式神。満ち足りた家庭環境。

 原作よりも文字通り恵まれた境遇が、仇となった。

 

「欲張りすぎや」

 

 恵は攻撃を置いた。それは覚醒した禪院真希が投写呪法を破った時と同じやり方。加速し続ける以上、追いかけず攻撃を置くことで必ず当てる。

 しかし読みは外れた。その破り方は直哉も熟知している。

 直哉は1フレーム静止を挟むことでタイミングをずらし、虚を衝く。拳を振り切った無防備な恵。そこへ、直哉の回し蹴りが炸裂。上腕、指に小さくないダメージを受けた。続けて五回、傷ついた指へと執拗に攻撃する。殴る、蹴る、叩く。

 

「……っ」

「甚爾君の息子さんとか聞いたからどんなんかと思ったけど。カスやったな。式神の特徴もまるで理解し取らん。ぬくぬく育ったからやで」

「円鹿」

 

 反転術式により指が癒される。恵は円鹿を戻し、渾を出した。

 

「その術式の弱点教えたろか。

 今みたいに指折れたら終いや。ギリ鹿出せるからよかったみたいやけど、出んかったら君、真希ちゃんにも劣るゴミなってたで」

「知ってますよ」

「ほな避けろや。ひひ、知らんかったから避けられんかったんやろ。まあそんで唯一指がほぼ要らん摩虎羅は一生かかっても無理やろ。わかる? 詰みや。オマエは向こう側なんぞに行かれへん」

「向こう……側……?」

「君とは縁のない世界や」

 

 手加減されて尚届かない。また壁。直近の宿儺にもやられたというのに次は直哉。だが、これまでの壁の中でもいちばん脆い。越えなければならない。

 

「教えといたるわ。数年前、巌勝君と悟君は1回本気で戦っとんねん。

 なんか摩訶不思議な縄使って悟くんの術式無効化した巌勝君が切り刻んで出血多量にさせたんや。

 そしたらなんか死の淵を見たとか言いながら復活した悟君が巌勝君の土手っ腹に大穴開けて終わりや」

「良くもまぁ……二人とも五体満足ですね」

「せやろ。まぁ終いや。

 安心しー。君の姉ちゃんは俺が娶ったる。術式ない猿やけど孕み袋にはなるやろ。乳もまぁまぁデカいしおまけに清楚。ひひ、壊しがいあるわ」

「あ?」

 

 ❝嵌合獣────

 

 

「させんで」

 

 

 直哉が締めの一撃を見舞う。怒りにぶれた呪力は防御に向かない。況て、激怒とまでいけば攻撃偏重。

 恵は行き場のない怒りを抱えたままに倒れた。

 

 ★

 

 時間は少し遡って、姉妹校交流戦が始まる少し前のこと。

 監督室には二人の教師の姿があった。わざと人が集まらない時間を選んだのだ。言わば密会という形。

 だが教師の顔は取り払われ、湯呑みが投げられるほど無礼講。

 

「私の!! 方が!! 先輩なんだよっ!!!」

「ごめーんちゃい」

 

 軽快な音を立てて湯呑みが落ちる。こぼれた液体は無限に押しつぶされ、消滅した。

 

「あんた、冥さんやあの謎侍には敬意払ってるくせに! 私だけぞんざいなのよ!」

「どうどう」

「私は牛か!!」

 

 二人は十年前からの付き合いである。ことある事に歌姫を悟が煽り、歌姫は悟に激昂する。以前は傑が緩衝材になっていた。

 

「もう我慢ならない! お前なんかこうして……っ!!」

 

 歌姫は鬼のような風貌で悟に掴みかかった。無限に阻まれようともアイアンクローをかます。彼はにやにやと歌姫を馬鹿にしたように笑う。

 

「歌姫、マイクONになってる。あと録画も」

「え、嘘!?!?」

「嘘。マイクはともかく、録画はこの設備じゃ無理っしょ」

「⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎!!!!!!」

「ハウリングえぐ」

 

 歌姫は五条悟が嫌いである。一番は五条。次点に夏油がランクイン。一番好きなのは家入硝子。次点で冥冥。両者にそれほど差は無い。

 

「ぐっ………………………………ふぅ。わかったわ。内通者はこっちでも探り入れとく。全く、夏油も見つかってないのに……。アイツも屑だったけど任務は一番こなしてたから空いた穴がデカいわね。

 アンタも過労死しないうちに休みなさい」

「心配してくれるんだ」

「後輩なんだから当たり前でしょ。アンタも夏油も」

「僕最強だよー?」

「違うでしょ。()()()()()()()()()だったでしょ。はぁ、夏油がいてくれれば監督も楽だっただろうなー。覚えてる? 私達の姉妹校交流戦、あんたらは夏油が呪霊放って放置してたら勝ててたじゃない」

「懐かしいね、覚えてるよ」

 

 悟の内に一瞬だが生まれた黒い靄。それの正体を知りながら笑みを深める。歪む前の呪いを曝け出すのは今では無い。そう思って十年。

 最強という立場は弱点を多く抱えることを許さない。たくさん選んでしまえば、その中から選ばなければならない時がいつか来る。

 

「ままならないねぇ」

「……口調、うつってるわよ」

「ほんとだ」

「っていうか。怪しいで言えば、あんたの先輩が断トツよ。もしかして内通者なんじゃないかしら」

「ない。そんな器用な人じゃないし、本人にも確認した」

「確認って、直接聞いたの」

「ピンポーん」

 

 意気揚揚とピースサインを構える悟に歌姫はため息をついた。

 内通者。それが行えるような人物を頭の中に思い浮かべれば、一人。予想した罪悪感。しかし確信めいた勘。

 

「嘘でしょ」

 

 ガラッと戸が開けられる。

 そこに立っていたのは巌勝。ただ、衣服はボロボロ。上半身に至ってはほぼ裸。ただ病人のように白い肌には傷一つない。

 一箇所を除いて。

 

(左手薬指に噛み跡?)

 

「……遅れたことを詫びる」

「な……なっ」

「音信不通だったセンパイが上裸で袴も焼け焦げた状態で現れた僕の気持ち」

 

 続けて悟の目線は巌勝の刀に向けられる。六眼で観測した事実は白。眩い白である。

 

「なんで付喪神持ってんの? なんで神性持ち呪具と主従契約結べてんの? え、なにかのドッキリ? また僕にハンバーガーぶちまけさせる気?」

「これか? 特級呪霊に襲われてな。それが置いていった」

「いやツッコミどころ多すぎでしょ。祓った?」

「逃げられた。だが弱らせた。無い腕を生やすことは出来んだろう。ましてや赫刀ではな」

「……センパイといると退屈しないよ」

 

 その顔は高専時代の五条悟宛らだった。

 

「勝手に納得すんな。説明しなさいよ」

「はいはい。もう話は終わりなのでバイバイしましょうねー」

「肩触んな!」

 

(……ふむ)

 

 巌勝はしげしげと二人を見つめる。そしてひとつの予想を立てる。

 おちゃらける悟。ブチギレる歌姫。その姿が重なる。

 ふざける童磨。殴り掛かる猗窩座。童磨のように冷えきっている訳では無いが気を引きたいように見える。

 つまり、悟は歌姫と仲良くしたいのだ。反応が面白くてやっている線もあるが、十年前からこの調子。ただならぬ想いがあると邪推した。

 

「歌姫殿。改めて継国巌勝と申す。斯様な格好で失礼するが、こうして言葉を交わすことは初めてだと記憶しているが、如何か」

「……え、ええ。ご丁寧にありがとうございます。庵歌姫、準一級術師です」

「宜しく御願い申す。しかし悟はこのように一言どころか二言、三言多い。私も手を焼いている」

「分かります」

「悟、年相応の振る舞いをするべきだ。品性とは、何を言わないかによって纏われる」

「…………」

「!!!」

 

 歌姫は瞬いた。あの悟が不機嫌になっている。あの傍若無人、五条悟が叱られた子供のように。彼女は確信する。愛憎渦巻く呪いの世界で、巌勝はまともに育った大人。

 

 

 

 

(!! ……継国巌勝!!)

(ちっ……継国巌勝…………)

 

 

 

 

 もちろん悟は反省していない。ただ、想い人の前で目上の人物に正論で怒られるという、小学生でも恥ずかしくなるような出来事に不貞腐れているのだ。

 

「と、とりあえず。服を貸しますので着いてきてください。呪術高専の制服でも?」

「感謝する」

「ちょっと近いよー?」

 

 悟はわたわたと手を振って二人を妨害した。巌勝の予想が確信へと変わる。

 

「何よただ話してるだけじゃない」

「初対面でもないから必要ないっしょ」

「必要ないも何もないわよ」

「夫婦漫才か?」

「ふっ……!?」

「……夫婦漫才? って、なんであんたは顔赤くしてんの!?」

 

 ★

 

 なんやかんやあったが姉妹校交流戦が始まる。監督は呪術高専東京校学長、夜蛾正道。呪術高専東京校教師、五条悟。呪術高専京都校学長、楽巌寺嘉伸。呪術高専京都校教師、庵歌姫。一級呪術師、冥冥。そして巌勝である。

 モニターに戦況が映し出され、拙いが多彩な呪術戦を巌勝は楽しんでいた。

 

 ────

 

 ❝芻霊呪法 簪!! ❞

 

『私は! 釘崎野薔薇なんだよ!』

『っ!?』

 

 東京校釘崎野薔薇が術を放ち、京都校西宮桃を箒から叩き落とす場面が放映されている。追撃に使用したのはピコピコハンマー。

 

「なぜ」

「あれでしょ。金槌で殴ったら怪我するっていう野薔薇なりの配慮じゃない? 峰打ちみたいな」

「だが、木に刺さるほどの威力で釘を打ち続けていたが? あれこそ当たりどころが悪ければ死ぬぞ」

「……」

 

 ────

 

 ❝大祓砲(ウルトラキャノン)

 

 破壊の嵐で冥冥の烏が吹き飛ぶ。メカ丸、与幸吉が放った大祓砲がパンダを飲み込んだ。

 

「あの絡繰」

「メカ丸って言います。本体は別のところにいますよ」

「弟がモデルになったことがある。完成は見れなかったがな」

「んー、からくり人形?」

「ああ、完全自動、半永久機関、等身大、一定の戦闘能力だったか」

「値打ちものみたいだね。一体いくらするのか……ふふふっ」

 

 ────

 

 

「恵は?」

「ちょっと伸されてる」

 

 悟はモニターのひとつを指さす。そこには地面に倒れ伏す恵が放映された。

 

「1回挫折が必要だと思ったんだよねー。うるさいからゴリラには内緒ね。ってことで回収よろしく」

「必要ない」

「……へぇ。結構殴られてたけど」

「必要ないと言った。甚爾の子だ。なかなかにやるぞ」

 

 瞬間、呪符が全て燃える。色は全て赤。呪符と呪霊はリンクしているが、生徒が一度に全て同時に祓ったとは考えにくい。

 悟が巌勝に目をやる。

 

「…………センパイ?」

「イレギュラーの全てが私のせいだと思うなよ。招かれざる客だ」




七海健人
人並みに自己中。原作でももっと自己中になってくれ。『だりぃので休みます』って渋谷行くな。

禪院真希
得物:薙刀→刀

次回、ドブカスVS花御 で、姉妹校は多分終わりかな
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