「ぬうっ」
「脆い。柔い。その卑屈さどうにかならんか?」
さながら爆心地。グツグツと煮えたぎるマグマが傾斜にそって流れゆく。赤熱したビルは火山と見紛う。灼熱の地にて無傷の男とそれを作り出した呪霊。
「教えてやろう。お前たちは呪いから生まれた呪霊だ。感じた恐怖はその身に形となって現れる。魂にまで刻まれたトラウマを克服せん限りその腕は治らん。
俺はあの男に人の醜悪と技練の真髄を見た。お前はあの男に何を見た?」
「……」
呪霊は押し黙る。宿儺がむき出しの悪意、純然たる邪悪とすればあの男は〝そういうもの〟としか答えられない。しかしそれを言ったところで殺されるが関の山。
「儂はあれが人だとは思わん。表と裏を完全に割り切るような生き地獄を選ぶやつはな」
「そうか。人間になりたかったのか。呪いのくせに」
「貴様も呪いになりたかったのだろう。人のくせに」
「ケヒっ」
漏瑚の皮肉は死後呪物として時を渡ったことに対してのもの。しかし宿儺にはそれ以上の意味を持つ。
(これほど、これほど差があったとは。すまん。花御。陀艮。儂は)
「ダメだよ宿儺」
呪霊に乗り舞い降りたのは羂索。平安から実に1000年ぶりの再会となるが、宿儺は表情ひとつ動かさなかった。己の受肉も渋谷の惨状も確実に羂索が関わっているという確信があったからである。
「夏油……!」
「羂索か。らしくないな」
「私だって失敗するさ。肩慣らしは済んだでしょ。早く本命に行きな」
羂索がしっしと手で払う。
宿儺が言った夏油の本当の名前。なぜ協力者であるはずの夏油は遅く現れた。それは漏瑚が弱る必要があったことを意味する。漏瑚は己に降りかかる不幸を悟ってしまった。それが結末であれば百年後の荒野で再会も叶わない。傀儡として自我なく生き続けるのは生き地獄と称してもいい。
❝領域展開!! ❞
❝領域展開❞
羂索の呪霊が漏瑚とほぼ同時に領域を展開する。そして呪霊が必中を無効化している間にタッチ。ただでさえ弱っているのに領域展開分の呪力を使用した。つまり無条件で取り込める。
「いいとこ取りで悪いね」
「……」
「あーん」
(嫌……嫌)
漏瑚が漏瑚として見た最期の景色はどす黒い口腔だった。
❝解❞
「何すんのさ」
「……」
「重ねたのかい? 結局人を捨てて復讐の呪いにならざるを得なかった君と、人になろうとした呪いを。彼には悪いけど最初からこうするつもりだったんだ」
「ちっ」
「ありがとう。あ、宿儺。ひとつ頼まれてくれ」
「……」
「君はきっと断らない」
羂索は落ちた腕から呪霊玉を拾い上げ、ごくんと飲み込んだ。
★
甚爾は地面を蹴る。浮いた破片が宙に浮かび落ちるまでに魔虚羅の肉体が吹き飛んでいた。魔虚羅は何をされたか分からない。ただ敵意と攻撃を受けたと判断し、機械的に対象へと目標を定めた。そして与えられたダメージの大きさに歯を食いしばった。
勝敗はいたって単純。魔虚羅が甚爾の『力』そのものに適応すれば負け。その前に殺せば勝ち。
『(> <。) ・~・」々÷^(:\』
「怖い? 知るかよ。あれ出せ」
退魔の剣が掠りでもすれば消滅してしまう呪霊が取りだしたのは牛の生首。見た目はそれ以上でもそれ以外でもない。
特級呪具『牛の首』
牛の首の怪談。それを聞いたものはあまりの恐怖に死に絶えるという。結果、内容は忘れ去られ牛の首=死ぬほど怖い何かという伝承が完成した。
それを認識した対象の死を速める。どのような生物であれ死の運命は決まっている。それに干渉する呪具。つまり最大HPを減らすのだ。呪具の見た目はただの牛の首だが、正体は牛の首では無い何かである。
(効果が確定すれば適応もクソもねぇよな)
甚爾は魔虚羅を見る。想像以上の怪物。適応だけなら珍しい式神で終わる。問題はその圧倒的なタフネスとフィジカルである。適応能力を持った小鳥であれば誰にでも調伏可能。
《▂▅▇█▇▅▂!!!》
甚爾はビルの側面を己が脚力のみで垂直に駆け出す。痺れを切らした魔虚羅の蹴りが甚爾を捕らえた。甚爾の倍はあろうかという肉体。それから放たれる蹴りは凄まじい威力を持つ。
「は」
しかし相手の肉体は普通に非ず。甚爾の足はコンクリートにめり込むが不動。笑みは絶えず。足を掴めば逆に魔虚羅の体が浮く。『天与呪縛のフィジカルギフテッド』だけでは説明不足。存在の重みが違うのだ。
「浅いなあ。蹴りってんのはよ」
甚爾が一回転。
「こうすんだ」
後ろ回し蹴り。魔虚羅の胸板が凹み、肋骨が解放骨折する。虫の体液かと見紛う液体が口から零れた。投げられたボールのようにビルのガラスを割り、ビル自体を突き破る。
ガコン。方陣が回る。魔虚羅の肉体が回復した。
もちろん追撃は欠かさない。魔虚羅は蹴りの威力からあらゆる攻撃が致命となり得ると判断し、呪具との間に剣を挟む。
「馬鹿が!」
鍔迫り合うが、力で甚爾が勝る。魔虚羅はまだ肉体を完全に治癒できていない。
「⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎!!!!」
ロケットランチャーを撃つ。捨てる。銃を乱射する。車で防がれる。車ごと殴り飛ばす。車を大量に投げられる。それらを足場にして肉薄し、両足を切り落として川にも落とす。
ガコン。両足が回復する。鰓を生成。
「二回」
鰓の生成はただ弱点が増えただけ。いかに最強の式神とはいえ呼吸は必要らしい。形だけの可能性も十分にある。再び肉薄し手にした大剣で叩き潰す。手札の数でいくら適応されようが押して押して押し続ける。御三家ですら手に入りにくいような呪具が湯水の如く壊され、捨てられる。
ガコン。
「三回」
特級呪具 『瓊杵ノ悲涙』
見た目は杵。突いた箇所に溢れんばかりの活性化を強制する。反転術式ですらないただの治癒である。切断された腕に使用すれば瞬く間に腕が生え、そして寿命を飛び越え腐り落ちる。
それはきっと、瀕死の誰かを助けたかった一心で手に入れたものだろう。
「傷は治っても、適応はできねェよなあ」
杵で突いた傷が爆発した。
『!!!!!』
治癒力の向上という適応を逆手にとる。肉体が呪力で作られていない以上反転術式により肉体を再生させているのは確定。何度も体を壊し裂傷を作ることでわざと適応させる。そこに治癒の術式を持つ呪具で切り付ける。過ぎた力は身を滅ぼす。過剰なまでの治癒力は傷口の細胞分裂を加速させ、巨岩のような腫瘍を発生させる。
魔虚羅はまず、自分の適応に適応しなければならない。つまり、甚爾に与えられた猶予は三回分の適応。道筋さえ出来ればあとは進むだけ。
「削る」
特級呪具『天逆鉾』
能力は発動している術式の強制解除。シンプルながら強力。甚爾と幾度となく死線をくぐり抜けた相棒とも言える。
退魔の剣と、甚爾の鉾が鍔迫り合う。
ガコン。方陣が巡る。特に目立った変化は感じられない。
(今更)
「っ」
『ヒィ』
甚爾の腕が切断された。退魔の剣が甚爾の真横にクレーターを作る。魔虚羅が初めて口を釣りあげて笑った。
(意図的な適応の同時進行。そして速さ。恵まれてるな。誇らしいぜクソガキ!)
それは紛れもなく魔虚羅が適応を終え、甚爾に力で押し勝った証拠。
歴代十種影法術の使い手でもこれ程適応の早い魔虚羅を呼び出せた術師はいない。理由としては、幼い頃に魔虚羅を一度召喚したことによる繋がりの強化。伏黒恵という素体の優秀さ等が挙げられる。
『▂▅▇█▇▅▂!!!!』
勝利を確実なものとするため、胴体を狙う魔虚羅。
「違う。違うな。こういう死に方は笑えねぇだろ」
それは等身大の自尊心。積み上げた経験と重ねた努力。そして友の後押しが裏付ける。甚爾は知っている。下手に神の子、星の子としてまつろわぬ運命に翻弄された人間を知っている。その神に喧嘩を売り、権能を剥ぎ取り、信仰を滅し、神戮に抗ったのは自分たち。
なればこそ、神程度に屈してはならない。そして子の術式に殺されるなどあってはならない。
『████████████████!!!!』
「お前はァ」
腕は断たれても、断たれたその手に天逆鉾は握ったまま。切り飛ばされた腕を空中でキャッチ。筋肉を握り潰し骨を捕える。いわば即席の武器。
「死ねカス!」
断たれたとて固く握られた剣が魔虚羅の脳天に突き刺さる。勢いそのまま口から肺へ振り下ろした。やがて膝をつき動かなくなくなる。
「安いもんだ、腕の一本ぐらい……なわけねぇよ。ばか高ぇよ。つーかクソ痛ぇ。くっつくか?」
巨体から降り、血の滴る肩を筋肉で無理やり止血する。指の形に変形した肩付きの腕をうへぇと見つめる。
「めぐ……」
ガコン。方陣が回る。その身に刻まれた刀傷は全て消え失せた。イラついたように、突き刺さった天逆鉾を甚爾の腕ごと叩き折る。再び魔虚羅が笑う。
「死んだフリ?いや、
振り出しに戻る。否。魔虚羅は適応により甚爾以上の限定的な身体能力を獲得した。しかし甚爾の片腕は欠損。戦闘能力の差が顕著に現れる。決定打に成りうる呪具はいくつか浮かぶ。しかし最強の式神を一撃で葬ることが出来るかと言えばそれは不可能。でなければまた適応されて先に甚爾の体力が尽きる。
唯一、狂った威力の武器はあるが、もしそれが通用せず適応された場合。恵と甚爾の死が確定する。
必要なのはもう一枚のイレギュラー。調伏は諦めて巌勝を呼ぶか。恵と呪詛師の死を確定し儀式を終わらせ、巌勝に鬼として蘇生させてもらうか。呪術師として、何より父として決断を迫られる。
❝領域展開❞
❝嵌合暗翳庭❞
『▂▅▇█▇▅▂!!』
雷撃。
「父さん……!!」
「……っは! 畳み掛けるぞ恵ィ!」
甚爾は呪力がない故に調伏の儀に乱入することを許されている。無論、術者本人が調伏に参加することはなんの問題もない。
父子並び立ち、戦いは第2ラウンドへ。
「……」
己が父は無敵である。肉体的な弱さは感じられなかったし、逆に自分達の普通が彼にとっては貧弱すぎて辟易していたこともあった。
地の底に落ちた人間性と倫理観。それでも母への愛は本物であったし、母までとは行かずとも自分や姉は愛されている。というのが恵の父親像である。
一時期、二人が全く喋らなかったこともあった。今考えて見れば巌勝や由基になついているため拗ねていたのだろう。
(腕が)
恵がこれ程憔悴しきった父親を見るのは3度目である。一度目は明美にボコられた時。二度目は家が魔虎羅に破壊された時。
あまりに大きすぎる背中にどれだけ背負わせたのか。あまつさえ自分の式神が片翼を捥いでいる。
(でも)
不思議と負ける気がしない。自分の隣に立つ手負いの獣がどれほど心強いかを彼は一番知っている。
「力はあっちが上だ。それでもまだ俺の方が速い」
「……」
「俺が殺す。お前は注意を引くだけでいい」
(俺は)
(無いんだろ、呪力)
対して甚爾は息子の呪力が底を尽きかけていることを知っている。十種を持っていると判明した時は彼に禪院が重なり言葉を失ったのを覚えている。ああはならないように努力もしたが結局怠惰な父親としてレッテルを貼られた。反面教師としてまともに育ったのは今でも不思議に思っている。調伏の儀は嫌々やっていない。むしろ何も持っていない自分に与えられることが出来て嬉しいとも思っている。
そんな息子がここに来て領域を展開した。脱兎が使えれば奇跡と思っていたところに領域展開。端々に満ちる呪力は懲罰房に放り込まれた時に感じたものではない。むしろその逆。
しかし───
「あ」
滴り落ちる鼻血。第2ラウンドなどすらない。限界は既に超えてしまっていた。短時間で2度目の領域展開。肉体も消耗している。魔虚羅には意思がある。調伏の儀は弱い方の男が始めたことだと理解した。動けない主など魔虚羅にとっては絶好の餌。
『▂▅▇█▇▅▂!!!!』
「████████████████!!!!」
恵の前に立ちはだかる顎斗。雷の防壁も異形の肉体もフィジカルギフテッドの前にはなんの意味もなさない。肩から袈裟懸けに斬られ、致命傷を負う。たまらず片膝をついた。
「ダメだ。戻れ顎斗」
顎斗は顕現条件の変更と引き換えに、破壊されれば集めた九つ全て式神も顕現できない。それによって強力になってはいるが顎斗は本来、「大蛇」「円鹿」「虎葬」を破壊し「鵺」に継承させることで生み出す式神なのだ。
「▂▅▇█▇▅▂」
「あぎと?」
だが、主の親を守らんと自ら主の命に背く。
玉犬の、蟆の、脱兎の、万象の、貫牛の、大蛇の、円鹿の、虎葬の、鵺の心はひとつ。
血の吹き出す肉体を持ち上げ───恵へ一瞬振り向き───雷霆を練る。
瞬雷が影の世界を迸る。
魔虚羅の肉体に亀裂が走る。
式神という傀儡が一瞬得た主への忠誠。有り得るはずがない。だがそれは命をかけた縛りという形となって現れた。
「注意を引くだけでいいつったのに」
魔虚羅は呪力の起こりから甚爾を認識した。呪力のない男から呪力の起こりを感じる違和感。それを払拭する。避けるよりも先に殺すことを選択した。それは決して間違いでは無い。
構えているのは『七支刀』。
呪詞の詠唱により法則も条件も無視して振るわれた威力を『七倍』する出鱈目な呪具。しかし発動前に七秒の溜めと発動後に七分間の硬直を強制する。当たれば勝ち。外せば負け。
『聖音。侯王に幸い。淳陽日中の時』
甚爾の代わりに赤子呪霊が流暢に呪詞を発する。
『牛の首』により、事前の溜めは7秒も要らない。二秒あれば、魔虚羅の破壊は運命により確定できる。
その二秒が重い。
明らかに尋常ではない呪具を構えた魔虚羅は亀裂の入った肉体で甚爾に肉薄した。顎斗を失った恵は格好の餌だが、天秤は既に傾いている。領域がまだ崩壊していない上に、適応で影の能力を知る魔虚羅は恵が影の分身を作れることを知っている。肉薄するも構えをとかない無防備な甚爾。その隙を逃す魔虚羅ではない。甚爾の肉体を下から上へと両断した。
「馬鹿め、それは本体だ!」
しかし甚爾は胆狭浅蒲黄によりコピーを作り出している。どのような存在であれ殺したと確信した瞬間に必ず気を抜く。確かに甚爾は猶予を得た。
だが足りない。コピーを刻んだ剣が振り下ろされる。片手は切り落とされた。片手は七支刀を握っている。
「
人外の咬合力が退魔の剣を噛み砕く。
「ああああああ!!!」
痣者がひとり現れると連鎖するように痣者が現れる。寿命の前借りに耐えうる天賦の肉体。疲れ知らずで体力を温存する必要は無いが、巌勝の最低限まで無駄を削いだ動き。全て見てきた。竈門炭治郎は二年で呼吸を習得した。甚爾と巌勝は10年以上の付き合い。
条件は十分すぎるほど揃っていた。
甚爾の額に痣が灼き付く。七支刀を大上段に構え、振り下ろす。
方陣を砕き、頭蓋に突き刺さる。脊髄を折り、肝を潰す。だけではとどまらず局地的な地震が発生した。
七分の硬直を強制される。しかしそれは赤子呪霊であり、一応七支刀を振るったのは赤子呪霊という扱いになっている。一応調伏判定にはなったらしい。少しの間、武器は取り出せない。この間に呪具ではなくフィジカルへの適応がされるため本当の最終手段である。七支刀は役目を終え塵になった。もう甚爾に名のある呪具はほぼ残っていない。
静寂。全てが終わった。短いようで長い戦いが終わったのだ。由基の言う通り甚爾一人では無理だった。いつか調伏する羽目になるとは思っていた。しかし思ったよりも早く、かつ隣に並んで戦うのが息子だとは思わなかったが。
「何だこの力」
巡る力に何よりも驚いていたのは本人。渋谷到達直後に感じた衰えの兆しは無くなっていた。全盛期、もしくはそれ以上の力がまるで溶岩のように甚爾の肉体を駆け巡っている。
(今の俺ならあいつらにも、あいつらさえも)
浮かぶ疑問はとりあえず脇に置いた。倒れた恵の髪をわしゃわしゃと撫でる。
「さっきも聞いた気がするが、生きてるか」
「………………」
「よく頑張ったな」
「……また、与えられてばかり」
「貰えるもんは貰っとけ。18? 7? 6? まだガキだろ」
「ガキじゃ……な。い」
「まー何歳なっても俺にとってはガキだ」
「見事。持たざる身でよくやった。お前の苦労をずっと見ていたぞ」
(虎?)
現れたのは最悪の呪詛師。甚爾は武器を構えもしない。本能が告げていた、下手な行動は悪手にしかならないと。ただ恵との間に割って入る。
「ああ。安心しろそれに手は出さん」
「誰だよ、オマエ」
「ケヒっ。やはり面白い体だな。余興の褒美だ。体を治してやるから俺と戦え。勝てたら生かしてやる」
(なんでか知らねぇが上機嫌だ。煽てて何とかズラかるに限る。あれ、あいつ以外の男との話し方って……なんだったっけな)
「えー。もしもし。寄生虫の分際で人間様相手に頭が高すぎやしな…………しませんか?」
「死ね」
上機嫌一転。
宿儺は指を二本立て、甚爾へと構える。しかし彼は無抵抗の仁王立ち。治癒の呪具は先程恵に使用したものでそれっきり。治癒効果のある呪具は揃って高いのだ。逃げることは出来ない。両面宿儺が伝承通りであるのならば、彼は魔虚羅を凌駕する化け物である。それになぜか宿儺は恵を殺すつもりは無い。
『恵と津美紀をお願いね』
(全て問題ナシ)
『は、その肉体で才能なしと言うか』
『お前が産まれてきてくれたおかげで随分と私の理想に近づいた』
(アイツらがいるさ)
「甚爾!!!」
「……マジかよ」
「ひひっ」
現れた侍に宿儺が笑みを深める。今この時、宿儺にとって甚爾は道化だった。救いに来た友へ絶望と無力感を味わわせる起爆剤でしかない。
(違ぇだろ。お友達ごっこは懲り懲りだ。そんな、そんなヤワじゃねぇだろ)
甚爾はカッコつける言葉を決めた。彼は巌勝を見た。そして笑った。
巌勝の下がった眉尻と半開きの口はあまりに弱々しかった。どうしてそこで頼りなくなるんだと。
「ああ。それが中身の表情か」
少し照れ顔だがニタニタと笑いながら、恵を巌勝へ放り投げる。
「待て─── 」
❝解❞
何度も言いますが戦闘パートは苦手です。早くギャグに持っていきたい