戦国の鬼狩り、呪うは己   作:みくりあ

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丗壱話 東京第一結界

「え? ……うおっ!? 

《よう! 俺はコガネ!》

 

 東京第一結界の空中。さらに言えば落下開始。

 眼下に広がるビル群に都会の威圧感を感じる。ところどころ煙が上がる様はまるで世紀末。重力に引かれると同時に、耳目を刺す風。悠仁は顔を覆った。

 なおコガネ(?)どころではない。

 

「えぇえええ!?」

 

 初見殺しがすぎる。高所落下の対策をしていなければ術師とはいえ落下死する。

 

(なんとか……ビルの……壁面に)

 

「落ち着け悠仁!」

「脹相!?」

 

 背中に手が添えられる。そして互いに両手をつかむ。さながら千と千尋。

 彼も初めての経験に動揺しているが、弟の手前そんな姿は見せられない。ただ声を張り上げないと聞こえない。

 

「他のみんなは!?」

「恐らく、結界を通ればランダムに配置される!」

「じゃあなんで俺たちは同じ場所なんだ!」

「兄弟だからにきまっているだろう!」

「ふはは、何それ!」

 

 ❝赤血操術 赫翼❞

 

「お兄ちゃんに掴まっていろ!」

 

 コウモリのような羽が展開される。骨組みは硬く。膜は柔らかく。ただ落ちるだけではなく推進力を得た。いわば滑空。

 

「かっけぇ!!」

「そうだ! 落ちているだけだ! カッコつけてな!」

 

 落下速度が緩やかになり周りを見渡す余裕が出来る。黒煙が所々上がっているが、人気はない。死滅回游が始まってはや数日。それは世紀末という言葉がふさわしい。

 視界の端にきらりと光る人工光。

 

(誘導灯?)

 

 直後、悠仁のすぐ横を通過する飛翔物体。脹相の❝赫翼❞が砕ける。だがそれが盾となり二人を守った。

 悠仁を脇に抱え、術師を睨みつける。攻撃してきたのは頭髪がプロペラになった男術師。見た目はコミカルだが、殺傷力は本物。赫翼はそう簡単に砕けるものではない。

 

「悠仁構えろ!! 初心者(ビギナー)狩りだ!!」

 

(由基さんの言ってたスポーン狩り!)

(誘導灯はこいつへの目印。あの顔覚えたぞ!)

 

 方向転換し再び迫る術師。虫の羽音を何倍にも大きくしたような音が迫る。プロペラで細切れにするつもりだろう。

 

「悠仁!!」

「脹相! 俺はいいから!」

 

 ❝赤血操術 赫翼❞

 

 再び翼を展開。今度は上手く受け流し、翼は破壊されなかった。

 

「よくないっ!! お前はいつも自分を軽視する! 悪い癖だ! 治してやる!」

 

 渋谷事変を経て、虎杖悠仁の心は鉄心と化した。全て背負う男。自分と関わる全てが不幸になると信じてやまない。

 ただ、少しは軽くしてあげたいと思う仲間。互いに互いのことを考えているのにすれ違う。そんな遠慮など兄は知らない。容赦なく心の壁をぶち破る。なんなら悠仁ごと背負う気満々。

 

「悠仁! 少し待ってろ!」

 

 ❝赤血操術 百蘞❞

 

 手を合わせ狙いを定める。もちろん指の先は脳天。空中ゆえの気流がそれを乱す。重要なのはタイミング。近づけば近づくほど精度は上がる。

 

(来い。❝穿血❞を脳天に食らわせてやる)

 

「ぬおっ!?」

「うわっ!?」

 

衝撃。バランスを崩す。新手の登場である。それは頭にジェットと両翼が着いている女だった。敵はコンビで攻撃を仕掛けてきた。

 とうとう二人が空中で離れる。

 

(二人目だと!?)

 

「悠仁ぃ!!」

「あんたはあっち。私はこっち」

「おうさ!」

 

 かろうじて着地の姿勢に入った悠仁の姿が、ビルの巨影に消えていく。脹相は弟の頑丈さを祈るしか無かった。

 無駄なく屋上に着地する。展開していた赫翼を解く。見上げれば浮かぶ敵。それは頭髪がジェット機の女だった。

 

「お仲間を気にして勝てるの?」

「御託はいい」

 

 ❝赤血操術 赤鱗躍動❞

 

 脹相が赤く染まった拳を構える。

 

「弟を殺そうとした。それだけでお前は万死に値する」

「まぁ待ちな。抵抗しなければ楽に殺」

「遺言か?」

「話通じねぇ」

 

 赫拳が迫る。空に逃げる術師。

 空中は避けられる。開けた屋上は不利。だが、相手の攻撃も当たらない。

 

「テメェの攻撃なんぞ当たるわけないわよ」

「お前こそ降りてこい。一撃で殺してやる」

 

 ❝赤血操術 百蘞❞

 

(相手は遠距離攻撃を持っていない。でなければ不意打ち突進などしてこない)

 

 血が意思を持つ大蛇のように吹き出す。穿血ほどでは無いがそれに迫る速度。

 

 ❝赤血操術 赤縛❞

 

(なんだその血の量は)

 

 脹相は呪霊と人間のハーフ。特異体質として呪力を血液に変換できる。呪力が尽きない限り彼の攻撃が止むことはない。赤血操術は加茂家の相伝。代々使い手が現れるため術式の内容が漏れやすい。

 しかし赤血操術の弱点である貧血や失血。周知の事実となったそれは脹相にのみ通じない。

 

「うぎぃ……!」

「言い忘れていたが、俺の血は人には毒でな」

 

 ❝赤血操術 血刃❞

 

《5点が追加されました》

 

 ★

 

 ビルの内側。空は敵の庭であった。そのためステージを変える。脹相のおかげで大分高度が下がっていたため、特に怪我を負うことなく窓枠からビル内に侵入できた。

 

「いるんだろ。出てこいよ」

「大切にされてんねぇ。家族か?」

「……いつかそう思える日が来て欲しいよ」

「は? 何言ってやがる」

 

 きっとその日が来るのは己が罪を償った時。大量殺人者が幸せになっていいはずがない。ただ、祖父しか知らない家族の形。少しだけ夢は見たい。

 

「俺の術式はな。見ての通りプロペラだ。空も飛べるしなんでも斬れる。

 テメェの術式はなんだ?」

 

 簡素だが術式の開示。悠仁は黙って拳を構える。

 

「…………おい。テメェ、術式ねぇのか?」

「ないけど」

「ぎひ。雑魚が。多少頑丈なのは認めるが、結界に踏み込んだのが運の尽き。さっさと(ポイント)にしてやる」

「……」

 

 悠仁は傷つかなかった。

 なぜなら───

 

 ───────────────────────────────

 

「俺に……術式がない?」

「そ、でも大丈夫! 悠仁のポテンシャルは高いから、なくてもある程度戦えるよー」

「はへぁ」

「溶けた」

「おれだってえ、かめはめ波とかうちたかっ

たあ。みーんな術式強いじゃん。みっちーの術式も先生みたいにとんでもないんでしょ」

 

「とんでもないっちゃとんでもないけど。僕は────

 

『はーい。今日はお前らの嫌いな呪力のないゴリラが臨時体術講師でーす。とりあえず死ね』

『領域ぱーんち』

『私に……刀を抜かせたな』

 

 ────基礎でごり押された方が怖いよ」

「ほんと?」

「ほんとほんと。なんなら素体は僕よりも悠仁の方が上さ。ほら、僕でも宿儺飲んだら死ぬし」

 

 ────────────────────────────

 

 甦るいつかの記憶。

 なぜか分からないがあの五条悟は術式よりも、殴り合いで制される方が怖いと豪語した。悠仁は宿儺の肉体で厳勝の戦いを見ている。術を使わず、技と力のゴリ押し。

 

(あれが俺の目指すゴール)

 

「ミンチになりやがれ!!」

 

 迫るプロペラ。眼前の全てを切り裂く姿は大型船のスクリュー。

 悠仁の誤算は屋内だからプロペラを使った攻撃はできないとタカをくくったこと。術式の開示により威力の上がったそれは鋼鉄をバターのように切り裂く。

 屋内だからこそ逃げ場がない。男術師は勝利を確信した。

 

(頭から離れると術式の効果が弱くなるんだろ)

 

「ふっ!」

「んごっ!?」

 

 プロペラの中心。つまり脳天に正拳突きが炸裂する。

 敵の誤算は虎杖悠仁の肉体強度を見誤ったこと。まさか真正面から向かってくるとは思わなかった。

 気絶した術師。

 

「悠仁」

 

 現れた脹相が首を折る。

 

《5点が追加されました》

 

「厳しいことを言うが、こいつらは何人も殺している」

「脹相。次は俺がやるよ。でもありがとう」

「無理しなくてもいい。それに点が譲渡可能になるまでは今の10ポイントが無駄になる。悠仁が伸して俺が殺す。うむ。いいコンビだろう」

「なにそれ。闇のコンビじゃん」

 

 ふすっと笑う悠仁。思わず脹相も口角が上がる。悠仁の目の前で殺人を犯した。これで同罪。

 

(やはり悠仁は笑った方がいい。笑っている方がずっといい)

 

「ハプニングはあったが、改めて俺たち『日車』を探す」

「ああ」

 

 日車寛見。100点泳者(プレイヤー)。平和的に解決するのならばルールを追加させてもらう。だがそう簡単には行かないだろう。戦闘も視野に入れておかなければならない。

 

「虎杖……悠仁か?」

 

 ❝百蘞❞

 

「ひ……!」

「待って」

「誘導灯の男だ。悠仁」

 

 現れたのは先程殺したタッグを誘導した男。つまり彼らの仲間。だが人殺しの目はしていない。それどころか虎杖悠仁を知っている様子。男は死んだ術師の死体をみて息を飲んだ。

 

「や、やっぱり虎杖悠仁だ。俺は甘井。あいつらにいいように使われてたが。ほら西中の虎って呼ばれてただろ」

「西中…………あー。そんな時期もありまシタネェ……」

「ほう。詳しく」

「詳しくじゃないが」

 

 脹相は悠仁の知らない過去を知れてご満悦。甘井は超危険人物らしき脹相の手網を悠仁が握っているのを見て一応胸をなでおろした。

 

「『日車』はここ、池袋にいる。案内するぜ」

 

 ★

 

 同じく東京第一結界。新宿。

 荒廃した都市を練り歩く人影がふたつ。

 

「あー。だる。女の一人や二人いてくれればな」

「……」

「聞いてんのか」

「さっきからうるさい。帰りたいなら帰れよ」

「帰れねぇよ。仲良くおててつないで来たから、訳わかんねぇとこ来ちまったよ。とりあえず百人殺せばいいのかー」

「母さんに顔向けできねぇぞー」

「それもそうか。そうだな」

 

 歯切れの悪い父に違和感を覚える恵。

 悠仁、脹相、恵、甚爾。四人は結界に入った直後、その特性によりランダムワープした。しかし脹相の兄力と甚爾の特異体質により、ツーペアができた。

 なお、《コガネ》という意思持つ端末が泳者(プレイヤー)全員に憑いてるが例のごとく甚爾にはいない。

 

「……車を探す」

「いいねえ。そうこなくっちゃ」

 

 甚爾はドライブについて好きでも嫌いでもない。しかし暇すぎるのだ。

 さっそく歩きながら裏路地を見る。項垂れている女と目が合った。二人は一瞬立ち止まる。立ち止まってしまった。

 

「ああっ! 私の王子様!! しかも二人! 選ばなきゃいけないなんて、なんて罪な女……しくしく」

 

「良かったな父さん。女だぞ」

「待てよ待てよ。俺にだって選ぶ権利ぐらいある」

「選ぶか?」

「まさか。さっさと日車を探すぞ」

 

 甚爾は面倒な女の気配を察知した。それは恵も同じ。加えて偶然出会ったとは言い難い。明らかに待ち伏せされていた。

 見なかったことにして歩き出す二人。

 

「ちょ、ちょっと!? 今さ、日車って言わなかった?」

 

 二人は立ち止まり、振り返る。再び女と目が合う。

 

「日車のところに行きたいんでしょ? 私が連れてってあ・げ・るっ」

「話がはえぇじゃねぇか。嘘だったら殺すからな」

「殺すって……そんな怖いこといわないで。ひどいわ」

 

 恵は疑寄りの半信半疑だが、甚爾は目の前の女が嘘をついていると確信している。わざとらしく日車の名前を出したのもそう。あえて誘いに乗る。

 

(大方待ち伏せだろうな。仲間が何人いるか知らねぇが、全員脅してポイントを貰う。譲渡可能になっていれば殺しも含めて百にはなるだろ)

 

 目的はポイント。手段は日車でなくてもいい。強者からすれば術師も一般人も変わらない弱者。物差しの単位が違う。つまりポイント効率のいい術師を狙うは必然。

 

「麗美って呼んで♥。私があなたの片腕になったげる。あとお子さんの方も、親子で相手してあげるわ」

「布瑠部由良由」

「落ち着け」

「ふふ。仲良くしましょ。『日車』は新宿にいるわ」




初めてですがアンケートを用意しました。なお結果は話の大筋には影響しません。絡む相手には絡みます。例えば桜島以外でも呪霊直哉とは結果的に遭遇します。

兄上は……

  • 仙台(四すくみボスラッシュ)乙骨別結界
  • 東京第二(鹿紫雲その他)秤パンダ別結界
  • 桜島(呪霊直哉その他)真希真依別結界
  • どれでも
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