戦国の鬼狩り、呪うは己   作:みくりあ

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明けましておめでとうございます。
映画も見ました。アニメも見ました。追いつかれる


丗参話 魔虚ー羅

「すんなり殺れたな」

「ああ。あれが本当の使い方だ。何がパチンコだクソが」

「は? パチンコ?」

 

 人の居ない渋谷を悠々ドライブ。破壊された窓ガラスから風が流れる。遭遇した呪霊は並走する白き巨人が祓う。雷迸る『退魔の剣』は遺憾無くその力を発揮した。

 八握剣異戒神将魔虚羅()()()

 魔虚羅以外の全ての式神の能力が継承された姿。暴君の片翼を奪った姿ではない。まるで十種影法術そのもの。

 ハニートラップ係であり、罠にかけようとした麗美。

 麗美を操り、待ち構えていたレジィとその取り巻き。

 レジィと目的は一致していた黄櫨。

 狡猾に口を開けていた彼ら。時代に裏付けられた老獪さすら、しぶとさでしかない。最強の式神とそれを屠った暴君の前では瞬殺だった。恵が受け、魔虚羅が適応。そして叩き潰す。レジィの術式は相手をじわじわと追い詰めていくものであるために、適応は滞りなく進んだ。

 彼らの敗因は恵が一人だと思い込んだことと、様子見して魔虚羅に適応の隙を与えたこと。道中で甚爾は一時離脱しており、麗美自身も二人いる時は一人にしてこいと言われているためわざわざ報告しなかった。戦闘が始まり、適応を肩代わりした恵を速攻ではなく様子見に徹した事が仇となった。

 なお、黄櫨は甚爾が担当した。

 

(魔虚羅がタフすぎる。今更だが、今の俺が従えていい強さじゃない)

 

 十種影法術。その真骨頂は最強の式神と、それを1VS1で下した術師のタッグ。相手にとっては悪夢だろう。魔虚羅が二体いるようなものだ。それは恵が目指すゴールである。もちろん魔虚羅を支配下に置いている時点で既に圧倒的強者に値する。だからこそ、一人で百点捕れる。

 甚爾は助手席を倒した。頭の後ろに手を回す。

 

「さっきのはこっちの人間がルールを追加させたとみていい」

「虎杖な。泳者間でポイントを回していけば、強制脱落は避けられる。生きるために殺人を犯さなくていい」

「へー。おい車線由良由良してるぞ」

「うるさい」

「どうするよ。お前の息子が十種持ちで、父親の真似してすぐ由良由良するやつだったら。俺は達磨なんて御免だぞ」

 

 恵は眉をひそめた。やる気があるのかないのか分からない。それでも家族が行方不明でも冷静なことには驚かない。

 思うのは家族のこと。父は殺し方を、子は救い方を。それぞれ考える。

 

「その時は俺の魔虚羅が勝つ。話を戻すぞ。虎杖達と合流する。吐いた情報が正しければ今頃池袋だ」

「目の前で男殺されて嘘つくやつが居るかよ……ん?」

「不覚を取りましたわ。品のない呪霊如きに」

 

 甚爾が片目を開ける。はるか数キロ先、路上に人がいる。片脚を引きずる様は痛々しい。だがその服装がおかしい。まるで中世から飛び出したようなお嬢様。白や紫のフリルの着いたそれと、黄金の縦ロールが荒廃した道路に似合わない。

 

(囮にしてはあからさますぎるが)

 

「道の先に人がいる。十中八九受肉体。片足負傷だ」

「親父」

「いや演技だろ。アクセル」

「ああ」

 

 武器を取り出しながら甚爾が言う。恵は踏み込んだ。家族のこともあってか、もはや善悪の区別などない。恵一人なら踏みとどまるようなことも、隣の暴君にあてられて侵食する。強者なら誰もが持つカリスマ。

 見えてきたお嬢様が振り返る。どう考えても殺す顔の二人組に顔を白くした。

 

「ちょっ、おまちになって!?」

「待て。魔虚羅にやらせろ」

「⬛︎⬛︎⬛︎」

 

 完全体魔虚羅が主の意志を受け、飛び出した。ゾウのような巨体が車以上の大きさと速さを持って突進してくる。踏み込めば道路が割れる。バチバチと雷霆を纏った剣が明確な殺意をもって振り下ろされた。

 

(あっ、死)

 

「あぶなーい!!!」

 

 何かがお嬢様術師の前に立ち塞がる。魔虚羅が大の字で回転しながら吹き飛んでいく。遠方に聳える灰色のビルに突き刺さった。土埃が上がり、倒壊する。

 

⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎(ま──ーこ──ー)

「「!?」」

 

 堪らずブレーキを踏む。シートベルトをしていなかった甚爾の顔面がフロントガラスに突き刺さる。魔虚羅を戻して再顕現させるのは呪力のロスがとんでもないので、飛んで帰ってくるのを待つしかない。距離による強制解除が機能しなかったが、気にもとめない。

 

「マドモアゼル。お怪我は?」

「え、ええ。大丈夫ですわ。足は本調子とは行きませんが…………あーら、あなたは頭が本調子じゃありませんわね。なんですのその格好。私を馬鹿にしていますの?」

 

 目の前にいるのは変態だった。右半身裸、左半身着衣。どう考えても正気じゃない。隣にいる縦ロールゴスロリが普通に見えてしまう。本人も若干引いているが、お前が言うなと誰もツッコまない。

 それよりも魔虚羅を吹き飛ばしたという事実が相手の実力を示す。術式に違いない。しかし分からない。格好も立場も。二人は車を降りた。

 

(こんなのに吹き飛ばされたのムカつくな)

(こんなのに吹き飛ばされたやつに片腕持ってかれの腹立つな)

 

 見れば女も奇怪。白目のない瞳が異質感を醸し出している。怪我をしているのに生きているのは強者である証拠。

 

「もし。紳士…………殿方。私はリリクシーラ・フォン・ヴェルンシュタインですわ。宜しければ共闘しませんこと? あの不埒な下人共に己の愚かさを知らしめてあげますわ」

「俺は髙羽史彦。芸人だ」

「まあ素敵な名前」

「お前もな」

「馴れ馴れしいにもほどがありましてよ!?」

 

 プライドよりも利害の一致をとる。高貴たる己が横に立つ姿としてあまりにも残念だが、自分は手負いで相手はタッグ。しかも冷酷無比。

 

「共闘の話ですが、もちろん、礼は弾みますわ」

「うん」

「あなたと私ならばコテンパンにできますわよ!」

「はいはい」

「さあ、紅茶が冷めるまえに決着ですわよ。ポイントは山分けですわー! 「あっはっはっは!」…………ちょっと何言ってるか分からない」

「なんでわかりませんの!?」

 

 気まずそうに立ち去ろうとする高羽をリリクシーラが引っつかむ。

 

「⬛︎⬛︎⬛︎!!!」

「ヒュッ」

 

 そこに青筋を浮かべた魔虚羅が帰ってくる。これで3対2。適応も済ませたようで、確かな殺意を迸らせた。恵達の脳内に戦うという選択肢ができる。

 ただし───

 

(……適応させたら絶対面倒臭い術式だな)

 

 魔虚羅の頭の上にどう考えてもコミカルな()()()()がある。白いバッテンになった絆創膏。しかも心做しか青筋が怒りマークにみえる。

 恵の直感が働いた。すでにパチンコで1敗している。

 父親に向けて首を振る。甚爾はつまらなさそうに呪具を収めた。吊られたように片手をあげる。

 

「あーすまん。敵意がないのなら謝る。みろ、腕を持ってかれたばかりだからよ。敵だと思ったんだ」

 

 仁王立ちで笑う高羽。姿勢を低くして構えるリリクシーラ。ただし高羽の影に隠れて。

 

「…………まあ、そういうことにしておいてあげますわ。殺し合いには飽きてきましたし、ふん、命拾いしましたね」

 

 潔く受け入れたのは分が悪かったから。連戦が当たり前の中で怪我したまま戦うのは悪手も悪手。それでも髙羽の影から出てこない。もちろん半裸の方ではなく、半装の方から顔を覗かせている。

 

「俺は禪院甚爾。受肉体だ。こいつは俺と目的が一致しているから連れてる」

「あら、受肉体であれば羂索の目的もご存知で?」

「慣らしだろ。試すな殺すぞ」

「冗談ですわよ」

「次試したら殺す」

「俺は髙羽史彦」

「俺、禪院甚爾。殺す」

「殺戮マシーンの間違いではありませんの?」

 

 そして恵が甚爾の代わりに出てくる。自己紹介がしたくてそわそわしている(ような)魔虚羅を一度影に戻す。名残惜しそうに親指を立てて消えていった。リリクシーラの顔がすこし色を取り戻す。

 

「伏黒恵だ。俺たちは死滅回遊を終わらせたい。そのために戦っている」

「あら、あなたには名乗りますわ。改めてごきげんよう。リリクシーラ・フォン・ヴェルンシュタインですわよ。死滅回遊を終わらせたい……それはなぜですの」

「俺はこの時代の人間だ。大切な人たちが死滅回遊に巻き込まれている。これ以上このデスゲームを続けることはあいつらを危険に晒す」

「協力してくれるか?」

「ふはは。断らぬ」

「よし、じゃあ乗ってけよ」

「えっ?」

「「「えっ?」」」

 

 リリクシーラとそれ以外。さっきまで殺されそうな己とは違い、何故か協力している。もちろん、主催者が何がしたいか分からない殺し合いを続けるのには限界を感じていたし、仲間も必要だと思っていた。それでも、殺されそうになったのは事実。故の「え」。ドライブ中に寝首をかかれるかもしれない。

 ただしこの大団円で思いの丈を全て話すことはできない。

 

(だって勝ち目ありませんし)

 

「ま、まあ。ご一緒させて頂いても宜しくて?」

「高羽、俺の式神を集めて最強の式神を作りたいんだ」

「私を置いてなに先に車に向かっていますの!?」

「見てみたいかもー! では式神さんに登場してもらいましょう」

「ちょっと話を……ひっ」

 

 影絵を作る。式神が顕現する。しかし恵の呪力は消費しなかった。横並びに影がその形をつくる。

 

「玉犬・渾です」

「鵺です」

「大蛇です」

「万象です」

「脱兎です」

「貫牛です」

「円鹿です」

「虎葬です」

「魔虚羅です」

『こんるしー』

 

 式神が言葉を話すことには突っ込まない。そもそも恵の十種は顎斗を破壊された時点で、魔虚羅以外消滅している筈。リリクシーラは脱兎辺りから引いている。

 

 

 

「合体!!」

 

 

「なぜ破壊されたのに顕現できる!? しかもVTuberが入ってるぞ! 高羽、これは一体! どうなるんだぁ!?」

「恵?」

 

 

 

「八握剣異戒神将魔虚羅マコ。スパチャ寄越せマコ」

 

 

 

「あら可愛らしい。仰ってることは可愛くありませんけど」

「駄目ー」

 

 高羽が跳躍し、空のような青髪とウサミミのついた魔虚羅の頭を引っぱたく。それをこの世の終わりのような顔で眺める甚爾。

 

(うっ……)

 

 しかし恵が十体同時顕現かつ合体で呪力切れを起こし、ぶっ倒れる。魔虚羅は何故か消えない。これで二対二。リリクシーラが活気づく。甚爾が目を見開く。

 

(強制的に呪力を使わせる。この茶番も含めての術式か!)

 

「高羽……強く叩きすぎたんじゃねぇか? こいつ唯一の運転手だぞ」

「なにィ!?」

「まこーら……いつも……ありが」

「歩いて池袋か」

「先鋭的な髪ですわね。……なぜ人参がぶっ刺さってますの?」

「お前たち、シートベルトをするマコ」

「「「!?」」」




本作は二次創作作品です。
原作および実在の企業・団体・人物・出来事とは関係ありません。
風評や誤解を招く意図は一切ありません。
今年もよろしくお願いします

兄上は……

  • 仙台(四すくみボスラッシュ)乙骨別結界
  • 東京第二(鹿紫雲その他)秤パンダ別結界
  • 桜島(呪霊直哉その他)真希真依別結界
  • どれでも
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