戦国の鬼狩り、呪うは己   作:みくりあ

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アニメ見て筆が進まねぇやついる〜?


第肆話 星の怒り

 拘束した悟と傑の身柄を高専に引き渡した巌勝と甚爾。学長らしき人物が土下座しそうな勢いで頭を下げてきたので巌勝は辟易した。甚爾は報酬さえ貰えれば高専に用はない。学び舎という環境に興味を持った巌勝を引っ張り、見学もせずにそそくさと二人は東京の町へと繰り出した。

 甚爾は巌勝を連れ、贔屓にしている呪具師を訪ねた。路地裏のゴミが散乱しているような小道の先にある、いかにもな店。そしてその呪具師から長大なアタッシュケースを受け取った。店を出て、呪具を箱から取り出す甚爾。

 

「なんだそれは。銃か?」

 

 ん? と、怪訝そうな顔をして甚爾が自分の手元に目を落とす。そこには武骨な一丁の銃があった。数十キロあり、長さは甚爾の背丈に並ぶほど。重厚なそれは見るからに偽物では無いことが素人にも分かる。持って往来を歩けば、3歩と経たずに警察が駆けつけるだろう。

 

「スナイパーライフル知らねぇのか?」

「……聞いたことがある。狙撃専用の銃か」

「当たり。禪院お抱え呪具師特注、余程硬くねぇ限りは一発で殺せる。誰が一キロ先から音速で玉が飛んでくると思う?」

 

 ただのスナイパーライフルではなく、れっきとした呪具。星漿体案件で纏まった金()入ったので買えたのだ。あとは全て彼の崇高な趣味に投資された。

 

「なるほど、素晴らしい武器だな」

「心が籠ってねぇぞ」

 

 甚爾は見せびらかしは済んだとばかりに武器庫呪霊にスナイパーライフルを飲み込ませる。明らかに飲み込める大きさでは無いそれをゆっくりと飲み込んでいく呪霊。巌勝は純粋に羨ましいと思った。

 かなり後に関西弁を話す特級芋虫が手に入るのはまた別の話。

 

「やっぱりあれか、武士は刀こそってやつか?」

「思うところがないと言えば嘘になる。卓越した技術も鉄の弾には無力など、認めたくないものだ」

「割り箸で銃弾捌けるヤツが何言ってんだ」

 

 手ぶらになった甚爾はポケットに手を突っ込み、ぶらぶらと歩き始める。

 大通りに出れば、そこは一般人の世界。呪いが蔓延ることすら知らない泰平の世。歩いているだけで職務質問されることが多い二人はさっさと都心から離れることにした。

 

「で、狙撃銃を私にみせた理由はなんだ」

「的が欲しくてな。動き回れて反転術式使えるやつがいい。ってことでいい感じに逃げ回ってくれ」

 

 ニカッと笑い、サムズアップする甚爾。笑顔だというのに大の男も裸足で逃げしそうな迫力を纏っているなどと、場違いなことを巌勝は考えた。

 

「ここはただの市街地だ。帰れ」

「無理。恵と喧嘩した」

 

 ノータイムで返す甚爾。げんなりとした顔の巌勝。甚爾はふいと顔を逸らした。ジト目が刺さって抜けない。頭を掻きながら大きくため息をついた。

 

「恵の歯が取れかけでよ、糸で括って抜こうとしたら糸の方が切れた。泣きながら追い出された」

「……痛み止めの呪符とかは無かったのか?」

「………………そーいやあったわ」

 

 巌勝は思う。甚爾が結婚に加え、逃げた別の女の子供を引き取ると言うので由基と二人して笑った夜。この前のことのように思い出せる。だというのにもう歯が生え変わる年齢。子の成長は早いものである。

 

「あーあと、恵は見えてるし持ってる。津美紀はわからん」

「ほう。ならば育てるが吉よ。才能が埋もれたまま消えていくのは嘆かわしい」

「……それがよ。一昨日、勝手に調伏の儀ってやつを始めやがった。あんとき俺がいたから良かったものの、また始めるかもしれねぇ。はやいとこ預け先をきめなきゃなんねぇ。

 そこで二択だ」

 

 甚爾は片手をポケットから出し、二本の指を掲げた。

 

「禪院に預けるか、高専に預けるか」

「何故お前が育てない。曲がりなりにも父親だろう?」

「冗談言え。呪力無しの猿がどうすんだよ。なんならお前が見てくれてもいいんだがな」

「私の方が疎いぞ」

「でもマシだろ。俺よりかは」

 

 どんよりと暗いオーラを漂わせる甚爾。妻も悪友達もいなかった原作と比較して、彼は少し豆腐メンタルで、自信がない男になっている。

 逆にこうして目の前で落ち込めるほど心を許せる相手がいるのは、天から見放された彼にとって幸運でもあるのか。

 

「貴様が今度の賭けに勝ったら……刀の扱い方だけなら……考えてやらんでもない」

「はい縛り。言ったな?」

「武士に二言はない」

「へへ。ありがとさん」

 

 武器は兎も角、体術は甚爾が教えた方がいいだろう。という言葉は結局、巌勝の喉を通り過ぎなかった。少し肩の荷が降りたように前を歩く友が信頼してくれているのなら、ただ応えるのみである。

 そうして歩いているうちに郊外の森へとたどり着く。鳥の囀がけたたましい。森は道路を挟んで田んぼに面しており、車通りも少なかった。

 

「ここならいいだろ」

「森か。ここはまだ道路に面している。奥に行くぞ。あと念の為に言っておくが……」

「へいへい。首はダメなんだろ?」

「ああ。許可は?」

「知らん。九十九が何とかするだろ」

「お前はあいつを便利屋か何かだと思っているのか? ……まぁいい。得物を貸せ。……出刃包丁を仕舞え。それはさっさと明美殿に返してやれ。あとせめて呪具を貸してくれ」

 

 結果、巌勝が受け取ったのは『游雲』。三節棍の特級呪具である。何回か借りた経験があるので扱いは慣れている。どうせならスナイパーライフルという銃の頂点に刀で挑みたかったと彼は思った。ギリギリ刀と呼べる釈魂刀は現在メンテナンス中であった。

 甚爾はライフルに弾を込める。カチャリと小気味のいい音がした。

 

 

 

 

ブゥゥゥゥゥウウウウウ

 

 

 

 

「嗚呼、刀が欲しい……」

 

「ってかよ、あのゴリラ女もう既に刀を──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────────ごっ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「と、甚爾ぃ──!?」

 

 

 

 

 

 

 

「やぁ、久しぶり」

 

 視界から消える甚爾。彼と入れ替わるようにして、突然現れたバイクにまたがる金髪の美女。ゴーグルを外し、ヘルメットを取ると金色がたなびいた。彼女を取り巻くように式神が空を泳ぐ。美女・九十九由基は続けざまに投げキッスを巌勝に飛ばす。

 由基目掛けて飛んできたナイフは式神が弾いた。

 

「てめェ九十九ォ、俺じゃなかったら死んでたぞ!」

「レディの秘密をばらすような奴は轢き殺されて然るべきだと、私は思うね」

「お前が調べてんのは誰の体だ?」

「そっちこそ、巌勝の金でギャンブル三昧できているくせに。あと今日津美紀ちゃんに会いに行くから」

「断る」

「やだー。津美紀ちゃんに会いたいー」

「ゴリラが伝染るだろ」

「あ?」

 

 二人の間で火花が迸る。巌勝は蚊帳の外。

 由基は反転術式を使えるので甚爾は本気で殴れる。対して甚爾も自然治癒が早く、部位を欠損したとして研究サンプルが増えるので由基にとっては御の字。彼女はそろそろ内臓が欲しい。

 

「……」

 

『何、私の顔になにかついてる?』

『私の術式言いふらしたら殺すから』

『あーもう! ぺらぺら戯言垂れやがって! 私はお守りされるほど雑魚にみえるか!』

『静かな女がタイプかよ、ド陰キャが! なら、私という存在を刻みつけてやる!』

 

 互いに若く、由基に至ってはセーラー服を着ていた頃。

 初対面があんなものになったというのに、今では友となったのだ。巌勝はおかしくて少し相好を崩した。

()()()()()()()()()()()。自らの内に燻っていた未練は由基によって祓われた。

 

「久しぶりだな由基、刀は?」

「ごめーん。忘れちゃった」

「そういえば甚爾、星漿体の報酬は?」

「使った。おい、ライフル飲み込んどけ」

「鳳輪。手を出すな」

 

 二人は適当に答える。呆れる巌勝を置いて二人がぶつかる。互いに満面の笑みで拳を振りかざす様は紛れもなくゴリラ。甚爾のスタイルと由基の術式からして、二人の戦いは小細工無しの殴り合いとなる。

 

「ラァッ!!」

「シャアァ!」

 

 甚爾の放つ掌底が由基の髪を数本消し飛ばす。カウンターの蹴りが炸裂するも、屈むことで避ける。甚爾は由基の振り切った足を掴み、投げ飛ばそうとするが術式で質量が付与され手を離さざるを得なくなった。

 

『……×:=→¥@).「!  ( ◜ω◝ )』

『〒:=:>>──++(〆<・ (*´ `*)』

 

 二人が喧嘩するのはいつものことなので、甚爾の芋虫呪霊と由基の鳳輪が親しげに話し始める。言語が分からない巌勝はまだ蚊帳の外。気晴らしに遊雲をブンブン回して体を動かし始めた。

 二匹は主人の関係で何かと共にいることが多い。故に謎の友情が芽生えている。二匹が置いていかれたということは二人は手加減しているということ。

 手加減しているつもりだった。

 

「来い!」

「鳳輪!」

『:?」? 」( ・ω・)ゞ』

『(@! ,:::」¥((……*)』

 

 

 ★

 

 

 

 

 

 

「……なんで式神使ったんだよ」

「君が私のバイクを粉々にしたからだろ。ハーレーダビッドソンのスポーツスター1200cc。200万しっかり払ってもらうからね」

「チッ」

 

 戦いのほとぼりも冷め、とあるカフェで屋外の席を囲む三人。数年後にとある特級呪霊達によって火災が起き、数多くの死亡者を出す予定のカフェである。三人とも見た目が見た目なだけにかなり目立っている。

 

 結局本気の戦いになり、二人が倒れ込むまで続いた。戦闘の余波で山が二つ。人工林が東京ドーム一つ分消滅。因みに帳は下ろしていない。呪術上層部は九十九を恐れて何も出来ない。カフェのテレビでは、局地的な地震と報道されていた。今頃呪術界の末端が事後処理に奔走しているころである。しかしながら当事者達は優雅に寛ぐのみ。

 

「足を乗せるな。行儀が悪い」

「……」

「えー。恵君達の前でこんなことしてないよね? してたら教育に悪いと思うよ。まああの二人なら大丈夫だろうけどさ」

「してねぇよ」

「巌勝」

「してなかったぞ」

「答え合わせすんな」

 

 背筋を伸ばし、座っているだけなのに威厳を感じる巌勝。対して甚爾は丸い机の上に足を投げ出している。巌勝が窘めるが無駄。

 由基が意味深な封筒から書類を取り出すものだから、二人は興味を惹かれる。そこに写った写真を見て甚爾はうげぇと舌を出した。

 

「オイ。なんでテメェが甚壱の顔写真なんかもっていやがる」

「私ってば美しいじゃん? んで、強い。あとは()()()だろ?」

 

 お見合いと言えば聞こえはいいが、実質はただの政略結婚だ。唯一の女特級術師であるということは、子を孕む胎として最上級であることを意味する。多くの人が蛮習だと思うだろう。しかしそうやって強い呪術師を生み出し、非呪術師が守られてきたのは目を背けようのない事実。一概に悪とは言えない。

 

「なら受けろよ。禪院家が後ろ盾なら理想にも近づくかもしれねぇぞ、義姉様」

「は、受けるもんか」

 

 以前に一度だけ由基は禪院家に近づいた。というのも甚爾がいたから。逆に言えばここに本人がいるので、あの家に価値は無い。何より由基にとっては自分より弱い男に傅くのは御免だった。そして甚壱には既に愛人が数人存在する。

 彼女はケラケラと笑う甚爾を睨みつけ、甚壱の紹介状を握り纏めて甚爾に投付ける。甚爾はそれをさらに小さく纏めてゴミ箱に捨てた。

 由基がもう一枚捲ると、そこには少し幼さが抜けきらない男子がいた。

 

「そんな餓鬼いたっけ」

「禪院直哉君だって。禪院家で相伝持ちって書いてるけど?」

「野郎の顔覚えるのは苦手なんだよ」

「投射呪法。最速の呪術師と同じ術式だ」

「へぇー。巌勝は知ってるんだ」

「同じ術式なら昔一度戦った。甚爾は知っていると思うが」

「あれは爆笑モンだわ。つーかオマエの目があればあんな術式カモだろ」

 

 ああ、あの術式か。と、興味なさげに携帯を弄り始める甚爾。まだ何枚か残る紹介状を全てごみ箱に投棄てる由基。呪具カタログから刀を探し始める巌勝。

 互いが互いに自分のプライベートに干渉することを許容し、沈黙すら気不味くならない。それが今の三人の関係性であった。

 

「ねぇ、二人とも」

「……」

「なんだ」

「三人で呪術界ぶっ壊さないかい?」

「金払うなら」

「強者と死合えるのなら」

「はい。この話は終わりね」

 

 出来ないのではなく、やらない。だって面倒くさいから。

 由基がここまで呪術界を敵に回せるのは領域展開を習得している点が大きい。そう遠くない未来、五条悟も領域展開を習得し彼が最強となる。

 しかし由基への抑止力として期待された彼は、由基と同じ革新派であったので保守派の高専上層部はさらに頭を抱えることになるのだった。

 

「そういや巌勝、ちょっとお前パシられてくんね?」

「は?」




次回、巌勝単体で禪院家訪問。青年直哉君に一瞬でトラウマ植え付けたりとか扇に嫉妬されたりとか。それ以外も付け足すかも

死滅回遊を早く書きたい気持ちともっと三人で馬鹿やって欲しいっていう気持ちが押しあってる。
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