戦国の鬼狩り、呪うは己   作:みくりあ

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今回は書きたいものを詰め込んだ。悔いは無い。


第漆話 十種影法術

「恵、逸れるな」

「うん」

「逸れたら悪い鬼に食べられちゃうぞー? 特に津美紀ちゃんは美味しそうだからねぇ」

「きゃー!」

「当て付けか?」

 

 祭囃子の音が聞こえるこの場所は夏祭りの舞台。数百年前、この辺りに住み着いた悪鬼を誅し、鎮めた英雄を称える祭りである。そのような意味があると知っている者はほぼいない。

 巌勝と由基、そして恵と津美紀は近所の夏祭りに来ていた。立ち並ぶ屋台は祭りに浮かれた笑い声に満ちている。浴衣姿の人々が団扇やりんご飴を片手に練り歩いていた。

 

「津美紀ちゃん、わたあめ食べたくなーい?」

「食べますっ」

 

 何故こうなったのかは数刻前に遡る。

 

 ★

 

 夜の帳が降りた住宅街に二人の男女がいた。男の方は着流しを着て女の方はノースリーブの上着と足の長さを見せつけるようなボトムを履いていた。男はさらに刀を背負っており、警察に見つかれば職質は免れない。だが隣を歩く女以外は誰も気にとめない。気が付かない。

 

「散髪したのか。よく似合っている」

「ウルフカットっていうやつさ。これからは伸ばしていくよ」

 

 男、巌勝が褒めると女、由基は慣れたように返した。

 二人は目当ての座標にたどり着く。由基は何の変哲もない道路標識に触れる。途端、周りの景色が無数の正六角形に分かたれ、崩れ去った。開けた視界の先には一軒家があった。

 これは天元の結界術。甚爾は星漿体捕獲の報酬として、金とともに家の秘匿を依頼した。これは守ることではなく隠すことに特化した術。明美、恵、津美紀は難なく通れる。星漿体、若しくは甚爾のような呪力が完全にゼロな存在もまた通れる。しかし破るとなれば天元より高い結界術の練度を要求されるだろう。

 巌勝は由基が穴を開けるまで気が付かなかった。

 

「巧妙だな」

「あいつの数少ない取り柄だよ。そういや見た目が……」

「?」

 

 由基は、星漿体との同化に失敗し気だるげボサ髪から四つ目親指になった天元を思い出し、鎌首をもたげた疑問を取り消すようにインターホンを押した。

 

「失礼する」

「たのもー」

 

 間もなくしてどんどんと床を走る音と共に勢いよくドアが開かれる。

 現れたのは伏黒津美紀。姉弟の姉の方であり、血の繋がりはないが明美のような善のオーラに溢れている。そんな彼女は小学二年生。

 

「由基さん! わあ、すっごく綺麗!」

「きゃーっ! ありがとう津美紀ちゃーん! 元気してた?」

 

 津美紀の全体重をかけた飛び込みを受け止めた由基。腕でがっちりとホールドし、マシュマロのような頬へと頬擦りした。暫し津美紀はされるがまま。数ヶ月ぶりの訪問に喜ぶのはお互い様。

 

「いらっしゃい。どうぞ上がってください」

「世話になる」

 

 続けて顔を出したのは明美。くせっ毛の目立つ顔を柔和に綻ばせながら2人を招き入れた。溢れ出る善のオーラ。それだけで呪霊すら祓えそうな彼女は甚爾の妻であり、二児の母である。

 

 リビングでは甚爾が横になってテレビを見ていた。ダボダボのスウェットと死んだ魚の目が中年らしさを醸し出しているが、まだ二十六歳である。巌勝が酒とつまみの入ったビニール袋を投げ入れると見向きもせずに受け止めた。

 

「甚爾、来てやったぞ」

「賭けは?」

「お前の勝ちだ」

「だろ? ……お、その刀」

「ふふん。拝借した」

 

 見せ付けるように黒刀を出すと、甚爾は笑った。

 そして横目に恵を見る。恵は小学一年生。椅子に座り漢字ドリルを黙々としていたが巌勝が来たので手を止めた。足元には二匹の犬がいる。明美にも津美紀にも見えないそれは恵の術式から生み出された式神。

 

「父さん、賭けって何。俺に関係ある?」

「ない」

「うそだ」

「うそじゃねぇ」

 

 恵のジト目をその背に受けながら尻を掻く甚爾。ビニール袋から酒を取り出し一気に呷る。答える気がないことを悟った恵は諦めた。

 

「トロフィー増えてるじゃん。へぇ、運動会あったんだー。うわ、親子リレーで優勝しちゃってえ。パパすごーい」

「うるせぇ」

 

 煌々と輝くメッキのトロフィーを指さしてニヤつく由基。そこへお茶を持った津美紀が現れた。巌勝達はテレビを見る甚爾の後ろで机を囲む。

 

「父さん、先生に目を付けられてた。怖い人がいるって」

「無理もないさ。笑う顔だって怖いからね」

「でもでも私のクラスはイケおじが居るってウワサしてたよ」

「へぇ。甚爾くん、私それ初耳なんだけど」

「どうしろってんだ」

「最近の小学生は物好きだな」

「どういう意味だ」

 

 甚爾は長い溜息をついた。彼だって自分の悪人面は自覚している。ただ頬の生傷を隠すためにマスクをし、顔そのものが見えないようにフード付きのパーカーを被り、体格で威圧しないように猫背で歩いただけ。

 その全ては裏目に出た。どう考えてもカタギの人間では無い。

 

「巌勝、恵クン」

「なんだ」

 

 由基はボールを空いた窓から投げた。呪力が込められており、瞬く間に夜の闇へと消えていった。

 

「取ってきて」

「は?」

「取ってきて」

「いや」

「取ってこい」

「……恵、散歩するぞ」

「ん」

 

 巌勝と恵は家を出ていった。それに二匹の犬がついて行く。由基は明美にアイコンタクトする。それは二人だけの暗号。

 

「甚爾くん2階の荷物、お願い」

「……はいよ」

 

 空気を読んで明美は夫に席を外させる。気怠そうに二階に上がっていく甚爾。強引に男達を追い出し、リビングには女性三人のみ。満を持して由基は口を開いた。

 

「明ちゃん、津美紀ちゃん。恵君を取り巻く環境について何か気づいてる?」

「うーん。えっとね、甚爾君達の世界からすると強くなりやすい素質を持ってたってことぐらい?」

「私はだいたい分かってるよ。最近恵の足元で物音するもん。魔法使いみたいな感じ?」

 

 明美も津美紀も見えない。甚爾達も極力隠すようにしている。それでも伏黒家の男は隠すことに向いていないらしく、しっかりとバレていた。

 

「まぁだいたいあってるよ。大丈夫、私達は恵を外から守る。明ちゃん達は中から守ってあげて。恵君は凄く才能があるけどまだ小学生。こっちのこと以外にも悩み事はあるだろうからさ」

「うん……私頑張る」

 

 疑問はいくらでもある。何故余命宣告すらされた明美がこうして五体満足で息をしているのか。包丁で指を切った時、何故恵が影絵を作れば治ったのか。何故夫は恵に自衛手段を求めるのか。

 知らない方がいいこともある。深淵をのぞく時、深淵もまたこちらをのぞいている。呪いを知ることはそういうこと。

 

「なんて言ってみたけど、私は近くに居てやれないからね。甚爾が請け負う筈の仕事を代わってやれることしかできないさ。もし何か見えたとしても見えないふりをしてね」

「で、でもね、悪いことばっかじゃないの。この前包丁で指を切ったんだけど、()()()()()()()()()()魔法みたいだった」

 

 明美の言葉に由基は目を見開いた。コップを持つ手が止まる。

 

「ん? 傷を治したのか?」

「そうだけど?」

「明美ー」

「はーい」

 

 明美は甚爾に呼ばれる。ごめんね、と一声かけてから二階へと上がっていった。

 

「戻ったぞ」

「おかえり。報酬としてそのボールを進ぜよう」

「いらん」

 

 間もなく巌勝と恵が帰宅する。恵は機嫌が良かった。

 そして二人が二階から降りてくる。甚爾はスーツケースを片手に現れた。ラフだがよそ行きの格好をしている。

 

「ってことで俺は嫁と温泉旅行に行ってくるから、恵達を頼んだ」

「は」

「え」

「……甚爾くん、お二人に頼んだんじゃ……」

「あー。なら、今言った」

「「こいつ……」」

 

 結局、甚爾は明美を盾に逃れた。甚爾に振り回された形になったが、巌勝達も必死に頭を下げる明美に対して強く言えなかった。明美の謝りようは旅行を中止する勢いだったので、巌勝達が遠慮した。

 

「何しよっか」

「俺はなんでもいいよ」

「私もー」

「うーん。巌勝は明日暇?」

「すまないがこの刀の性能を」

「暇だね。私も暇なんだよねー。温泉……はこいつの痣がタトゥー判定受けるか」

「悪かったな」

 

 巌勝がそう言い終わると同時に、地の唸る音が響く。

 

「花火?」

「北東だ。かなり近い」

「夏祭りじゃないか? だからここに来る時、浴衣の人が多かったんだ」

 

 巌勝と由基は顔を見合せた。恵と津美紀は期待の眼差しを向けている。選択肢はひとつしかない。

 

「行くか」

「そうだね」

「用意してくる!」

「俺も!」

 

 ★

 

 ということがあって話は冒頭に遡る。

 目玉の花火も終わり、比較的盛り下がったとはいえまだまだ屋台は盛況。

 

「やはり人が多いな」

「仕方ないさ、観光地でもあるからね。こう……なんだろう、空でも飛べたらいいのにな」

 

 その言葉を聞いた途端、勢いよく恵が由基の方を見た。心做しか目が輝いている。そして巌勝の着物から手を離し影絵を作った。

 

「ん、❝鵺❞」

「おっと待つんだ少年」

 

 由基が恵の手を掴む。恵は驚いた。

 

「……なんで鵺を」

「由基?」

「巌勝は知らないか。調伏の儀は基本的に一対一でするんだけど、鵺はまぁまぁ強い方なんだよね、今の恵君が勝てる相手じゃない」

 

 鵺は飛行可能な雷を操る式神。落雷や帯電した状態での体当たりを用いて戦う。小学一年生が戦っていい相手では無い。

 巌勝と由基の目線が恵に集中した。

 

「と、父さんが、『頭に思い浮かんだ影絵を全部順番にやれ。牛か鹿でやめる』って」

「やっぱり。じゃあ魔虚羅以外調伏してるの?」

「う……ん。名前だけしか知らないけど、何をすれば出せるのかは分かるよ」

 

 十種の術式は術者本人の脳に式神の情報が影絵と共に刻まれている。唯一、布瑠部の言を詠唱しなければ出せない摩虎羅はまだ恵の手に余ると判断されたらしい。

 巌勝は既に甚爾へと電話を繋いでいた。

 

「絶対出しちゃダメだからね」

「甚爾」

『なんだよ、俺でも土産ぐらい買うぞ』

「違う。恵が多数式神を調伏済みだ。説明しろ」

『ああその事か。まぁ落ち着けって』

「落ち着いていられるか。どういうことだ。よもや恵に無理させたのではあるまいな」

『違ぇよ。この前俺は言ったよな。恵が勝手に調伏の儀を始めたら危険だって』

「ああ」

『俺なりに悩んだ。悩んで悩んで悩みまくった結果、俺は  閃いた! 

 逆に考えれば、摩虎羅以外調伏すれば万事解決じゃ────』

 

 プッ。ツー。ツー。ツー。

 

「……」

「分かるよ。私でも切るさ。多分調伏の儀に異物と認識されなかったんだろう」

「呪力がないというのはほんとうに……何でもありだな」

「ふふ。でも恵君は聡いから力の使い所は弁えてると思うよ。人混みで鵺を選択したのはいいことさ。私だったら貫牛にしてた」

「貫牛?」

「突進する距離が長いほど威力が上がる牛さ。この通りで出せばどんな威力になるのやら」

「……」

 

 恵の十種影法術は十種の式神をそれぞれ調伏すれば使役できる術式である。式神は、玉犬、鵺、大蛇、蝦蟇、万象、脱兎、円鹿、貫牛、そして八握剣異戒神将摩虎羅(やつかのつるぎいかいしんしょうまこら)。小学生の時点で摩虎羅以外調伏済みなのは呪術師として末恐ろしい。

 巌勝が由基にドン引きしていると、くいっと袖を引っ張られる。恵が無言で指を指した方向には駄菓子の山が置かれた屋台。

 

「つかみ取りか?」

「うん。巌勝さん、手おおきいから。お得」

 

(不躾だったな)

 

 今は祭りの席。呪いのことを考えるのは後でもいい。現に恵は呪いよりも祭りに興味を向けている。彼にとって自分の術式よりも祭りの方が大切なのだ。まだ一般人の恵にはそれが普通。

 

「任せておけ」

「それじゃ私は津美紀ちゃんと綿飴買いに行ってくるー」

「なら9時過ぎに入り口で落ち合おう」

「りょーかい」

 

 津美紀を連れて去っていく由基。

 つかみ取りでは恵の期待を上回る量をビニール袋につめた。ほくほく顔で袋を抱き抱える恵。袋から好きな駄菓子を取り出して口に入れる。

 

「次どこ行く?」

「そうだな……あれを買うぞ」

 

 巌勝が指したのは屋台ではなく、店舗兼住宅の土産屋。そこに売っていたのは木刀だった。祭りとは何の関係もないが置いてあるということは購入する酔狂な客もいるということ。特に中学生に人気の品。

 

「買ってくれるの!?」

「練習用にな」

「やった!!」

 

 巌勝は顔を綻ばせる。かつて己が一人の男として侍に憧れたように、恵も刀に憧れている事が単純に嬉しかった。

 この経験は後に恵が小学校の修学旅行で何の変哲もない木刀を買うという黒歴史に繋がった。帰宅後、母親に叱られ、父親に爆笑されることとなる。

 恵は手に入れた木刀を構えた。迷惑にならない範囲で振り回す。

 

「痛っ!」

「ささくれか。柄に布をまく必要がありそうだな」

「あ、見てて! ❝円鹿❞」

 

 恵が影絵をすると、足元から四つ目の鹿が現れた。しかし体が大きすぎるのか頭部だけを顕現させている。鹿は鼻先を恵の指に差し出す。瞬く間に傷は消え去った。

 

「家でも使っていたな。傷を治す式神か」

「う……ん」

「む」

 

 ふらつく恵を巌勝は支えた。恵は円鹿を巌勝に見せたくて顕現させたのだが、玉犬以外はまだ慣れない。巌勝は全く驚かなかったので恵は意気消沈した。

 

「大丈夫」

「影絵をしなければ式神は出ないのか?」

「そうだよ」

 

(刀は手が塞がる故、向かないのでは? 否、得物を持つ方がマシか。儘ならぬものだ)

 

 巌勝は逡巡した。しかしすぐに答えは出た。刀で影絵が出来なくなる点は後々考える。逆に拳で戦う方が指を負傷しやすい。それぐらいなら、得物を持った方がいい。

 既に恵にとって、腕は命と等しい。一本でも指が落ちれば円鹿を召喚するどころか術式そのものが死ぬだろう。

 

「もっとかっこいい術式が良かった」

「持って生まれたものを捨てることは出来ん。どう足掻いてもな。だがいつか感謝する時が来る」

「どういうこと?」

「いずれわかる」

 

 恵が自身の術式でしか出来ないことを見つけられるよう願った。そしていつの日か己や五条悟を越えて欲しいとも願った。巌勝は縁壱が感じた未来の可能性を理解出来ていた。恵が巌勝を超えた時、それはきっと心地の良いものであることだろう。

 

「もう少し回るぞ」

 

「わぷ」

 

 体を傾けた巌勝に一人の女性がぶつかる。弾き飛ばされるようにしてその女性は倒れ込んでしまった。慌てて手を差し伸べる。

 

「すまない」

「こ、こちらこそ申し訳ない……前を見ていなかったから」

「お前は……」

「天内ー。はしゃぎすぎると頭についてるパンツ落とすぞ」

「じゃから! これは! ヘアバンだと言っておろうが!!」

「ほら、謝……げ。なんでいるんだよ」

「わー。冥さんみたいな髪型」

 

 天内理子と五条悟、そして家入硝子。巌勝の呪力に気が付かなかったのは周りに人が大勢いたことと、任務でもないので気が抜けていたことによる。

 

「祭りの席だ。無礼講だろう?」

「なんじゃ悟。知り合いか?」

「……お前は気絶してたからわかんねぇか。お前を捕まえたやつはコンビで俺らを襲ってきてて、こいつはもう一人の方」

「ひえっ……」

 

 理子が謎の構えをした。しかし指先は震えている。

 

「申し遅れた。継国巌勝だ」

「伏黒恵です」

「知ってると思うけど五条悟と」

「家入硝子でーす」

「天内理子じゃ、です」

「ぷ、天内が標準語喋ってるのじゃ」

「売っとるんか白髪!!」

 

 悟と理子は巌勝達そっちのけでギャーギャー騒ぎ始めた。二人を見る恵の目は死んでいる。

 

「呪霊操術の少年は?」

「天内のメイドさんが下駄の鼻緒切ったからおぶって来ると思いますよ」

「何故だ、其方は反転術式を使えるだろう?」

「「ふふふ」」

「?」

「あー。私が治そうとしたら、こいつらに止められたんですよ。なんでもイイ感じらしいです」

「成程」

「そっちこそあいつは?」

「甚爾か? あいつは今嫁と旅行だ」

「よ、よかったのじゃ」

「悟、甚爾ってだれ」

「あー。傑曰く、音速で殴ってくる透明なゴリラ」

「麻酔銃も使ってくるぞ! これをみろお! 首にぶっとい針を刺されたんじゃ! 」

 

 理子は首筋の絆創膏を指さした。点の形をした赤い染みが滲んでいる。この跡は後に学校でキスマーク等とからかわれることとなった。授業中に乱入してきた白髪イケメンに連れ去られた後にこれなので、ある意味仕方ないと言える。

 

「ついでに言うとエレベーターを知らねぇやつ! 田舎者!」

「絶対女殴ってる!」

 

 二人の被害者から出てくる出てくる恨みつらみ。まるで本人に抗議するかのように身を乗り出して硝子にまくしたてていた。

 

(麻酔銃使えて、音速で動けて、透明で、ゴリラね)

 

「売れないホラー映画?」

「今戦ったら多分ボコボコにできるよ」

 

 悟は虚空に向けてジャブを打つ。巌勝の目にはその動きにキレがなく映り、違和感を覚えた。

 

「まともに寝ていないのか」

「当たりー。上の人間がねー。任務押し付けてきてさぁ。それはそれはウザイのよ」

「頼まれればやるが?」

「え!? 任務代わりにやってくれんの!? マジ助か」

「上の人間とやらを殺してやろうかと、そう言っている」

 

『殺してやろうか』その一言が余りにも自然に聞こえる風格。邪魔であれば殺すという思考。普通ではない。悟は目の前の人間を呪術師と再認識した。

 

「無理だ。異界化して……なるほどね。……いいや、遠慮しとく。それに力で奪い取ってもだーれも着いてこねぇよ。つーか餓鬼の前で殺すとか言っちゃう人?」

「それのことだが、五条悟。ここで会えたのも何かの縁だ、ひとつ頼まれてくれないか」

「何、やんの?」

「どうしてお前はそこまで喧嘩早い」

 

 強気な笑みを見せる悟。平常なら受けて立つが今は祭りの席。部外者もいる。巌勝はひとつため息をつくと、恵の背中を押した。

 

「数年後、この男児が高専に入学する。面倒を見てやってくれ」

 

 悟は恵の存在に気がついていなかった訳では無い。術式はまだ分からないが、弱いから気にもとめなかったのだ。巌勝を認めているからこそ今までの会話は成立していた。

 

「雑魚はオコトワリだよ。って、もしかしてあいつのガキ?」

「そうだ」

「うわぁ。うわうわうわ。そっくりー。木刀はパパの真似でちゅかー?」

「巌勝さん。俺この人嫌い。父さんにやられたくせに生意気」

「はぁあ!? 分からせてやろうかこんのクソ餓鬼! あとテメェの父親にやられたわけじゃねぇよ!」

 

 煽れば煽り返され逆上する悟。とても十歳差の会話とは思えない。ヤンキー座りでガンたれる悟を涼し気な目で睨む恵。

 

「そう言うな。恵、影絵できるか?」

「ん。❝玉犬❞」

「と、十種影法術!?!?」

「悟うるさい」

「かぁあわあいい! 犬じゃ! おっきいもふもふじゃ!!」

 

 澄んだ瞳をかっぴらいて驚く悟。モフりにいく理子。ただの犬ではなく式神なので軽くかみ殺せるが、彼女のモフり方が上手いので懐柔された。腹を見せてされるがまま。主のジト目に気がついていない。

 

「ってことは禪院かー。んじゃ天与呪縛も納得がいく……じゃあなんで育て……呪力ねぇからか。

 恵クンだっけ。キミはどうしたい?」

「強くなりたい。母さんや津美紀を守れるくらいに」

 

 悟の目が光る。恵は冷静沈着故に呪力の流れも滑らか。素質ありと判断した。

 

「いいね。高専からじゃなくてもいいや、いつでも面倒は見るから連れてくる時は連絡して。俺としても仲間が増えるのは嬉しいし」

「ああ。助かる」




五条
この後貫牛まで調伏済みと知ってめっちゃ驚く。

甚爾の妻というキャラクターついて
善人なのは確実。甚爾が己の悪い所を一つ言う度に「そんな君が好き」って付け加える女性。……って思ってる。解釈不一致だったら申し訳ない。

先に謝っておきます。次回はアニメ1期辺りです。はい。すいませんめっちゃ飛びます。百鬼夜行は発生しなかったってことで。乙骨君はなんだかんだ解呪成功して、ミゲルに関しては由基が海外で見つけて仲間にしたってことで。
内容は巌勝の刀とか、十種だいたい使える恵の京都校戦とか。わけるかも
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