ヒノモトバトルロワイアル~列島十二分戦記~   作:阿弥陀乃トンマージ

11 / 50
第3話(2)山の中での問答

「おい、十市(といち)!」

 

 ある山の中で、白い法衣に身を包んだ大柄な男が、寝そべって川の流れを見つめている痩身の男に声をかける。

 

「うん? なんだ、法慶(ほうけい)さまか……ふあ~あ……」

 

 十市と呼ばれた男は大柄な男を一瞥すると、欠伸をしながら、川に視線を戻す。

 

「無視するな!」

 

 法慶と呼ばれた男が怒る。十市が応える。

 

「無視はしとらんでしょう……」

 

「無視したようなものじゃ!」

 

「視無いと書いて無視……ちゃんとそっちを視ましたよ」

 

「ぐっ、屁理屈を……」

 

「屁理屈は坊さんの方が得意でしょうに」

 

 十市はくくっと笑う。

 

「むう……まあ、そんなことはどうでも良い!」

 

「どうでも良いんですか。それじゃあ、お休みなさい……ぐう……」

 

 十市が寝息を立て始める。法慶が声を上げる。

 

「寝るな!」

 

「……なんですか?」

 

 十市が面倒臭そうに視線を法慶に向ける。

 

「こっちを向け!」

 

「向いているじゃないですか」

 

「ちゃんと体ごとだ!」

 

「はいはい……これで良いですか?」

 

 十市が体の向きを変えるが寝そべったままである。

 

「体を起こせ!」

 

「え~」

 

「え~じゃない!」

 

「しょうがないなあ……」

 

「しょうがなくない!」

 

 十市が法慶の方を向いて、胡坐をかいた姿勢になる。

 

「これでよろしいんでしょう?」

 

「……まあいいだろう」

 

「それじゃ……」

 

 十市がまた寝そべろうとする。

 

「だから寝るな!」

 

「うるさいな~なんですか……」

 

「うるさいとはなんだ!」

 

「だってうるさいんですもん」

 

「お前のせいだ!」

 

「えっ、俺のせいですか?」

 

「他にいないだろうが!」

 

「それはすみませんでした……」

 

 十市が頭を下げる。

 

「いや、分かれば良いのだが……」

 

「それじゃ……」

 

「だから寝るなというに!」

 

 法慶が声を荒げる。

 

「もう~なんなんですか……」

 

「聞きたいことがある!」

 

「さっさとそれを聞けば良いでしょうに……」

 

「御曹司はどこだ?」

 

「え?」

 

「どこにもいらっしゃらないぞ!」

 

「いや、それは……」

 

 十市が口ごもる。

 

「知っているのか⁉」

 

「知っているというかなんというか……」

 

 十市が顎をさする。

 

「どこだ⁉ どこにいる⁉」

 

「この近くに古い小さい無人のお堂がありまして……」

 

 十市が指を差す。

 

「そうか!」

 

 法慶は頷き、十市が指を差した先に向かおうとする。

 

「ちょ、ちょ、ちょい待ち!」

 

 十市が法慶の服を思い切り引っ張る。

 

「な、なんだ⁉」

 

「く、空気を読みなさいって!」

 

「空気を読む?」

 

「そうです」

 

「空気は吸うものであろう」

 

「マジか……」

 

 十市が天を仰ぐ。

 

「なんだというのだ⁉」

 

「だから、御曹司は今あっちにいるんですよ」

 

「ああ、そのお堂にいるのだろう?」

 

 法慶が向かおうとする。十市が慌てる。

 

「待った、待った!」

 

「なんだ?」

 

「分からない人だな~」

 

「なに?」

 

「今、御曹司にはあの娘がついています……」

 

「ああ、あやつがついておるのか、それならば幾分安心だな」

 

「そうですよ」

 

「では……」

 

「だから何で行こうとするんですか⁉」

 

 十市が法慶の肩を掴む。

 

「む⁉」

 

「む⁉じゃないですよ! 良いですか? 小さいお堂、無人、若い男と女、何も起こらないはずもなく……」

 

「?」

 

 法慶が首を傾げる。

 

「いや、なんで分からないんですか⁉」

 

「さっぱりだ……」

 

「とにかく邪魔をしないことです!」

 

「邪魔? なんのだ?」

 

「も~わざと言ってんのかな、この筋肉坊主は……?」

 

「拙僧はどうすれば良いのだ?」

 

「ここで待っていれば戻ってきますから!」

 

「戻ってきたよ~」

 

 若い着物姿の女の子が十市たちに声をかける。

 

「ああ、ほら、戻ってきた……って、(にぎやか)⁉ 御曹司は⁉」

 

「え? 知らないけど……」

 

 賑と呼ばれた女の子は首を傾げる。

 

「マ、マズい! 御曹司が行方不明だ!」

 

 十市が慌てる。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。