ヒノモトバトルロワイアル~列島十二分戦記~   作:阿弥陀乃トンマージ

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第5話(2)声かけおじさん

「でもなんで道頓堀に? 学校に行きなさいよ」

 

「それが深い事情があってねえ……」

 

「事情?」

 

「癸組の子ら、不登校気味なんよね~」

 

「は⁉」

 

「落ちこぼれ扱いされすぎて、不貞腐れてるっちゅうかなんちゅうか……」

 

「そ、そんな……」

 

「まあ、街には繰り出しているみたいやから……これから個別面談やね、屋外で」

 

 無双が苦笑する。

 

「……ないじゃない」

 

「え?」

 

「あなたほどの人がそんな子たちに構うことはないじゃない! 実力に見合わない不当な扱いよ! 私から高校に抗議するわ!」

 

「おっとっと、その気持ちは大変ありがたいんやけど……もう決まった話やしね……」

 

 無双が両手を挙げてリカを落ち着かせる。

 

「それでいいの⁉」

 

「しゃあない、しゃあない……」

 

「しゃあないって!」

 

「リカちゃんが怒鳴り込んだりしたら、事態が余計ややこしくなるし……」

 

 無双が小声で呟く。

 

「なによ⁉」

 

「な、なんでもあらへんよ……落ち着いて……」

 

「これが落ち着いていられる⁉ 州の戦力または防衛に関わる由々しき問題なのよ⁉」

 

「それやねん」

 

 無双が右手の人差し指を立てる。

 

「え?」

 

「その由々しき問題を解決したいと思っていてね。まあ、わてとリカちゃんの考えている問題には食い違いがあるようやけど……」

 

「食い違い?」

 

「わては落ちこぼれも立派に育てなアカンと思うてるんや。陰陽師高校に入るということは、それなりの素質があるということ……それをむざむざとゴミ箱に捨てるような真似をしたらもったいないわ」

 

「一理あると思うけど……それはあなたがすることかしら? あなたはいわゆる“エリート”の更なる飛躍に手を差し伸べるべきだと思うわ」

 

「そういう連中は放っておいても勝手に育つよ」

 

「そうは言っても……」

 

「それに……」

 

 無双は何かを言いかけてやめる。

 

「それに……なによ?」

 

「いや、なんでもないわ……」

 

 無双は首を左右に振る。

 

「なんでもないってことはないでしょう」

 

「まあまあ、リカちゃんも忙しいんやろ、わてもそろそろ行かんと……」

 

 無双が立ち去ろうとする。リカが呼び止める。

 

「ちょっと!」

 

「久々に会えて良かったわ。ほなね」

 

「! あ……!」

 

 風が吹いたかと思うと、無双の姿はリカの前から消えていた。

 

「……」

 

「随分とレトロなゲームをやっているんやね」

 

 ある古びたビルで、旧世紀の遺物とも言える、ゲーム筐体に向かってゲームをする。金髪で短髪の少年に無双が声をかける。青年が怪訝そうな顔で無双を見る。

 

「おっさん、誰やねん?」

 

「おっさんとはご挨拶やな、気持ちはまだ十代やで?」

 

「そんなんどうでもええねん。学校やったら行かへんで」

 

「おっ、よう学校関係者って分かったね? 初対面のはずやけど」

 

「……烏帽子に狩衣でうろついてたら陰陽師高校やろ、それともあれか? 不審者か?」

 

「なかなか鋭いな……」

 

「馬鹿にしとんのか」

 

「馬鹿にはしてへんよ、君の担任になったから挨拶にね」

 

「担任?」

 

「うん、授業に出ようか」

 

「せやから行かへんって言うてるやろ」

 

「よし、このゲームに負けたら、勝った方の言うことを聞くことにしようか」

 

 無双が少年の真向いの席に座る。

 

「勝手に決めんなや」

 

「なんや、自信がないんか?」

 

「……秒で終わらせたるわ」

 

 数分後……。

 

「わての勝ちやね」

 

「そ、そんなアホな……」

 

「それじゃあ、ついてきて」

 

「ちっ……」

 

 無双は少年についてくるよう促す。続いて同じビルでエアホッケーに興ずるサラッとした黒髪で、赤いスカーフで口元を覆った少年に無双が声をかける。

 

「君……」

 

「……おやじさん、どなたですか?」

 

「お、おやじって……」

 

「学校なら行きませんよ」

 

「それは困るっちゅうねん。エアホッケーでわてが勝ったらついてきて。君どいてくれる?」

 

 無双は少年の友人をどかし、少年と向かい合う。

 

「何を勝手に話進めているんですか……」

 

「やらへんの? おやじに負けたら恥ずかしいもんな」

 

「! ……まあ、良いでしょう」

 

 それから数分後……。

 

「うん、わての勝ちやね」

 

「そ、そんな、俺の反射神経を遥かに凌駕する……?」

 

「じゃあ、君もついてきてね」

 

「くっ……」

 

 無双は二人の青年を連れて、隣のビルにあるカラオケボックスの個室に入る。そこにはミディアムボブの黒髪に青いメッシュを入れた少女が座っていた。

 

「邪魔するで~」

 

「邪魔すんねやったら帰って~」

 

「ああ、ごめん……って、そうやなくて!」

 

「……おじさん、誰?」

 

「お、おじさん……」

 

「学校なら行かへんよ」

 

「そういうわけにはいかん。カラオケの採点でわてが勝ったらついてきて」

 

「は?」

 

「自信ないん?」

 

「おもろいやん……」

 

 そして、数分後……。

 

「……わての勝ちやね」

 

「な……なんちゅう歌唱力……」

 

「ジュリーの再来とはわてのことやで」

 

「ジュリーって誰?」

 

「……ジェネレーションギャップやね……」

 

 無双は軽く頭を抑える。

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