ヒノモトバトルロワイアル~列島十二分戦記~   作:阿弥陀乃トンマージ

38 / 50
第10話(1)仁義なきオーディション

                  拾

 

「う~ん……」

 

 中国州の都市、広島の街中にあるビルの一室で、スキンヘッドに派手なメイクをして、大柄かつ屈強な肉体をノースリーブとロングスカートで包んだ男性が腕を組んでいた。

 

「い、いかがでしょうか、レオナルド(ひのき)先生……?」

 

 スーツ姿の男性が汗を拭きながら問う。レオナルドと呼ばれた男性が口を開く。

 

「……今のところは全部外れね」

 

「ぜ、全部外れですか……」

 

「そう、外れも外れ、大外れよ」

 

 レオナルドは持っていた端末をテーブルにドカッと置く。

 

「お、大外れ……」

 

「州都の『山京(さんきょう)』に連れて行きたくなるほどの人材は見当たらないわね」

 

「そ、そうですか……」

 

「そうよ、大都会岡山なのだから……そこで活動するには、並大抵の子じゃ困るのよ」

 

「ここ広島を中心に、若者などにちょっと話題の存在を集めてみたのですが……」

 

 男性は再び汗を拭う。レオナルドが苦笑する。

 

「ちょっと話題とかじゃあダメなのよ」

 

「ダ、ダメですか……」

 

 レオナルドは立ち上がり大げさに右手を掲げる。

 

「求めているのは抜群のスター性!」

 

「ば、抜群……」

 

 レオナルドは右手を下げ、左手を掲げる。

 

「そして、類を見ないタレント性!」

 

「る、類を見ない……」

 

 レオナルドは一旦左手を下げ、両手を掲げる。

 

「さらに圧倒的なまでのカリスマ性!」

 

「あ、圧倒的な……」

 

「……他にも求めていることはあるのだけど……」

 

「え?」

 

「いいえ、なんでもないわ」

 

 レオナルドが首を振って、席に座る。

 

「はあ……」

 

「ふう……どうやら今回のオーディションは空振りだったようね……」

 

 レオナルドがテーブルに頬杖をつき、ため息交じりで呟く。

 

「ちょ、ちょっとお待ち下さい!」

 

「ん?」

 

「まだ五組ほど残っています! それらを見てからでも判断は遅くないはずです!」

 

「五組?」

 

「ええ、二組ほど遅れておりますが!」

 

「既に遅いじゃないの……」

 

 レオナルドが呆れる。

 

「と、とにかく見て下さい!」

 

「分かったわよ……」

 

 レオナルドが一応姿勢を正す。

 

「よろしいのですね?」

 

「いいわよ……それじゃあ次の方どうぞ」

 

「はい!」

 

 あまり綺麗とは言えない身なりの男性三人組が入ってくる。

 

「ふむ……」

 

「よろしくお願いします!」

 

 男性たちが頭を下げる。

 

「細かいことは良いわ、パフォーマンスをどうぞ」

 

 男性たちの中で最も太っている男性が手を挙げる。

 

「はい! 自分は『平和』を愛する者です! 今から矢を三本同時に折ります!」

 

「平和を愛しているからね、武器は要らないわよね」

 

 レオナルドが相槌を打つ。

 

「そうです! 見ていて下さい! うおおっ! お、折れない……」

 

 男性たちの中で最も痩せている男性が太っている男性を小突く。

 

「お前な、そういうのはまず一本、二本と折ってからやるんだよ!」

 

「ネタフリとしてはそうね」

 

「そうです! 自分は『正義』を愛する者なので! 曲がったことが許せないんです!」

 

 痩せている男性がレオナルドに応える。太っている男性が矢を二本置く。

 

「それではまず、一本から! ……お、折れない!」

 

「そもそも非力じゃねえか! ……はい!」

 

 瘦せている男性が太っている男性の頭を叩き、レオナルドを見る。レオナルドは戸惑う。

 

「こ、ここにきて、お笑い志望とは……聞きたいことがあるのだけど?」

 

「はい! なんでしょう⁉」

 

「……彼は?」

 

 レオナルドが三人の中で中肉中背の男性を指差す。瘦せている男性が答える。

 

「はい、こいつは『自由』を愛する者なので、自由に振る舞っています!」

 

「ボケ、ツッコミ、フリーマンって組み合わせは斬新にも程があるのよ! もういいわ!」

 

「そ、そんな……」

 

「とにかく控室に戻って! ……次の方どうぞ」

 

「は~い♡」

 

 それぞれギターを抱えたビキニ姿の女性二人組が入ってくる。レオナルドが促す。

 

「パフォーマンスをどうぞ……」

 

「はい♡ ラララ~♪」

 

「ヘイ! ヘイ! ヘイ!」

 

 片方の女性が歌いながら横に揺れ、もう片方の女性が手拍子しながら縦に揺れる。レオナルドが思わず立ち上がる。

 

「いや、ギター弾かないんかい!」

 

「あ、前奏代わりです。五分ほど」

 

「長いわね!」

 

「結構皆さんの注目は集められますよ」

 

「それは違う部分に注目しているんじゃないの?」

 

 レオナルドが女性たちの揺れる胸を見ながら呆れ気味に尋ねる。

 

「私たちは『夢』と『希望』を愛する者なので……」

 

「ある意味夢と希望ではあるわね……もういいわ、控室に戻ってちょうだい」

 

「あ、は、はい……」

 

「次の方どうぞ」

 

「イエーイ‼」

 

 白黒のタイツに身を包んだ男性が部屋に元気よく入ってくる。レオナルドが呟く。

 

「パフォーマンスをどうぞ……」

 

「はい! アイラブユーからの~」

 

 男性が両手でハートマークを作り、レオナルドに向かって突き出す。

 

「……」

 

「ユーラブミー~」

 

 男性がハートマークをゆっくりと自分の胸元に戻す。レオナルドが声を上げる。

 

「何よそれ!」

 

「『愛』のキャッチボールです」

 

「それはもはや壁当てよ! もういいわ! 控室に戻ってちょうだい!」

 

「は、は~い……」

 

「はあ……次の方どうぞ……って、遅刻してるんだっけ?」

 

「いや、来たようです……」

 

「……失礼します」

 

 楽器を持った若い女性三人組が入ってくる。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。