ヒノモトバトルロワイアル~列島十二分戦記~   作:阿弥陀乃トンマージ

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第12話(2)六道すら外れしもの

「おい、急ぐぞ!」

 

「分かっているよ!」

 

 薄毛の男が禿頭の男に言い返す。

 

「警備が回ってこないとも限らないんだから!」

 

「だから分かっている!」

 

「おい、言い合いしている暇があったら、早く運び出せ!」

 

「うるせえ!」

 

「お前が仕切るな!」

 

 薄毛の男と禿頭の男がもじゃもじゃ頭の男に言い返す。

 

「……なんか、妙に俺に当たりがきつくねえか?」

 

「気のせいだよ!」

 

「そうだ、気のせいだ!」

 

「そうか……?」

 

「おい、バッグに出来る限り詰め込んだぜ!」

 

 角刈りの男が告げる。

 

「俺もだ! これくらいで十分だろう!」

 

 ロン毛の男が頷く。

 

「よし、この辺でずらかるぞ!」

 

 もじゃもじゃ頭の男を先頭にして、男たちが店を出る。

 

「ずらかるだって、品がないわねえ……」

 

「むっ⁉」

 

 男たちが視線を向けると、着物をわざと着崩して、虹色に染めた長髪で片目を隠している痩身の男性が歩いてくる。

 

「見~ちゃった、見~ちゃった♪」

 

「ちっ! 警備の兵か⁉」

 

「ちょっとお待ちよ、あたしが警備の兵に見えるかい?」

 

「い、いや、見えねえな……」

 

「でしょ?」

 

「あ、ああ……って、見られたんじゃただじゃおかねえ!」

 

「ただじゃおかねえってどうするのさ?」

 

「こうするんだよ!」

 

 もじゃもじゃ頭の男が銃を取り出して瘦身の男性に向ける。男性が呟く。

 

「……交渉しない?」

 

「交渉だと?」

 

「そ。そこのお店は街の外れにあるわりには品揃えが良いっていう評判なのよ……アタシは宝石の類には目が無くてね……」

 

 男性が自らの指を見せる。派手な指輪を何個かはめてある。

 

「ふむ……」

 

「どうだい? いくらか分けてくれたら、見なかったことにしてあげるよ」

 

「なるほど、悪くねえ話だな……とでも言うと思ったか!」

 

 もじゃもじゃ頭の男が一度下ろしかけた銃を再び男性に向ける。

 

「冷静になれ!」

 

「そうだ、銃声なんてしたら、それこそ警備兵が飛んでくるぞ!」

 

 角刈りの男とロン毛の男が声を上げる。

 

「それもそうだな……取り囲め!」

 

「だから仕切んな!」

 

「まったくだ!」

 

 薄毛の男と禿頭の男が瘦身の男性の後方に回り、ナイフを取り出す。

 

「……交渉決裂ってこと?」

 

「そもそも交渉する権利がてめえにはねえんだよ! おい、やっちまえ!」

 

 薄毛の男がナイフを振りかざしながら、瘦身の男性に襲いかかる。

 

「うおおっ!」

 

「おお、怖い怖い……」

 

「が、がはっ……」

 

 薄毛の男が倒れる。

 

「ど、どうした⁉」

 

「首に針が刺さっていやがる!」

 

 もじゃもじゃ頭の問いに禿頭の男が答える。

 

「吹き矢を少々……」

 

 瘦身の男性が短く細い木筒を片手に持って、小首を傾げる。

 

「は、針を抜いてやれ!」

 

「無駄さ。即効性の毒が塗ってある。十中八九助からないわ……」

 

「て、てめえ! ⁉」

 

 激昂した禿頭の男がナイフをかざして瘦身の男性に襲いかかるが、数歩歩くと、その首がすっぱりと落ちる。禿げた頭がころころと転がる。瘦身の男性が笑う。

 

「ほほっ、よく転がるねえ……」

 

「な、何をしやがった⁉」

 

「いや、硬くてよく斬れる糸をその辺に張っていただけさ……」

 

「い、糸だと……⁉」

 

「あ、こっち側には張ってないから、安心してかかってきていいよ?」

 

 瘦身の男性が自分の前方に向けて両手を大げさに振ってみせる。

 

「そ、そんな口車に乗るかってんだ!」

 

「そ、そうだ!」

 

 角刈りの男とロン毛の男が銃を取り出す。

 

「飛び道具? 興醒めだねえ……」

 

「吹き矢使った奴に言われたくねえ!」

 

「まったくだ!」

 

「はあ……」

 

「ぐ、ぐはっ……」

 

「ご、ごはっ……」

 

 角刈りの男に向かっては鉄製の扇が投げつけられ、顔面を半分えぐり取られた。ロン毛の男に向かっては鎖鎌が投げつけられ、頭を貫かれた。痩身の男はブーメランのように戻ってきた扇を左手で受け取り、鎖鎌を右手で引っ張って回収する。

 

「さて、残りはアンタだけよ……」

 

「ひ、ひぃ……!」

 

 もじゃもじゃ頭が腰を抜かして、尻餅をつく。その顔は怯えに怯え切っている。

 

「なに? ビビっちゃったの? ますます興醒めねえ……」

 

「い、命だけは……なんでもしますから……」

 

「なんでも……ねえ」

 

 瘦身の男性が鉄扇と鎖鎌を懐に納め、鞭を取り出す。

 

「ひ、ひぇ……」

 

「アタシを楽しませてくれる⁉」

 

「ぎゃあ⁉」

 

 瘦身の男性が鞭を振るい、もじゃもじゃ頭の頬を叩く。

 

「それっ、それっ!」

 

「うぎゃ! むぎゃ!」

 

「退屈ねえ! もっと楽しませなさいよ!」

 

「……そこまでだ」

 

 亜嵐が瘦身の男性の右腕を掴み、攻撃を止める。

 

「あらあら亜嵐ちゃん、どうしたの?」

 

「からかっているだろう……。まあいい、あのもじゃもじゃ頭は事情聴取で連行する」

 

「え~つまんないの~」

 

 瘦身の男性がその場から離れる。亜嵐が尋ねる。

 

「……あの方を知らないか?」

 

「アタシも探してんのよ。他を当たってみるわね~」

 

「『六道すら外れしもの』、夜明希望(よあけのぞみ)……相変わらず絶望しか残さないやつだな……」

 

 亜嵐が希望の背中と怯えきったもじゃもじゃ頭を交互に見ながら呟く。

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