ヒノモトバトルロワイアル~列島十二分戦記~   作:阿弥陀乃トンマージ

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第12話(3)夜のぶとう会

「おい、急げ!」

 

「分かっているよ!」

 

 モヒカンヘアーの男に対し、アフロヘアーの男が言い返す。

 

「警備の兵が来るぞ!」

 

「だから分かっているよ!」

 

「お前ら、落ち着け! 騒ぐな!」

 

「お前こそ落ち着け! 大声を出すな!」

 

「なんだと⁉」

 

「なんだよ⁉ やんのか⁉」

 

 ドレッドヘアーの男とコーンロウヘアーの男が睨み合う。

 

「……お前ら、いいから早く作業してくれないか」

 

 店の外で見張り役をしていたヒッピーヘアーの男が店の中に呆れ気味に声をかける。

 

「オッケー!」

 

「分かったぜ、ヘッド!」

 

 ドレッドとコーンロウが笑顔でヒッピーに返事する。

 

「ヘッドはダサいからやめてくれ……お前らも頼むから静かに作業してくれよ」

 

「ラジャ―……!」

 

「任せてくれ、ヘッド……!」

 

 モヒカンとアフロが静かに頷く。

 

「ヘッドじゃねえって……なんで俺のいうことにはわりと従うんだ、こいつら? 意味分かんねえよ……これが終わったら、足を洗うとするかな……」

 

「それは出来ない相談です……」

 

「うん?」

 

 ヒッピーが声のした方を見ると、立派なスーツ姿に身を包んだオールバックの髪型をした褐色の男が立っていた。男は告げる。

 

「何故なら……ここで貴方たちの命運は尽きるからです」

 

「ああん?」

 

「どうした、ヘッド⁉」

 

 モヒカンが店の中から出てくる。ヒッピーが問う。

 

「いや、てめえ……警備の兵じゃねえよな?」

 

「違いますが……大体似たようなものだと認識して頂いても結構です」

 

「なんだ、こいつ! どうするヘッド⁉」

 

 外に出たアフロがヒッピーに問う。

 

「気は進まねえが……見られちまったからには仕方がねえな……おい!」

 

 ドレッドとコーンロウも店の外に出てくる。ヒッピーが告げる。

 

「作業は一時中断……このオールバックを始末する」

 

「おうよ!」

 

 コーンロウが拳銃を取り出す。ヒッピーが注意する。

 

「馬鹿野郎……銃声なんてしたら、警備兵に感付かれるだろうが……」

 

「あ、そうか……」

 

「これでやれってことだな!」

 

 モヒカンがナイフを取り出す。それを見て男が呟く。

 

「……別にどちらでも構いませんよ?」

 

「なんだと?」

 

「銃声がして、警備兵が飛んでくるころには全てが終わっているからです……」

 

 男が両手を広げて呟く。モヒカンが叫ぶ。

 

「終わるのはてめえだよ! 丸腰で何が出来る!」

 

「~♪」

 

「ばはっ⁉」

 

「!」

 

 モヒカンが壁に打ち付けられ、動かなくなる。ヒッピーたちが視線を戻すと、そこには逆立ちしている男の姿があった。

 

「ふむ、まず一人……」

 

「な、なんだ……足技使いか?」

 

「こ、この野郎!」

 

「~~♪」

 

「なっ⁉」

 

 男が靴の裏でアフロの振るったナイフを器用に受け止める。

 

「~~~♪」

 

「びはっ⁉」

 

 男がナイフを受け止めたのとは別の足で、アフロを蹴り飛ばす。アフロは派手に吹っ飛び、地面を何回かバウンドして、動かなくなる。男が呟く。

 

「二人目……」

 

「う、嘘だろ……て、てめえ!」

 

 ドレッドが逆上する。

 

「ま、待て! あのキックはやべえ! 接近するのは危険だ!」

 

 ヒッピーが慌てて止める。

 

「なら、やっぱりこれだろ! 頭をぶち抜いてやる!」

 

 ドレッドが拳銃を取り出す。

 

「ほう……」

 

 男が逆立ちの姿勢から元の体勢に戻る。ドレッドが笑う。

 

「焦っても遅えよ! おらあっ!」

 

「~~~~♪」

 

「んなっ⁉」

 

 男がくるくると回転したかと思うと、その回転はすぐに高速になり、放たれた銃弾の弾道を風で逸らせてしまった。

 

「アン♪」

 

「あん?」

 

「ドゥ♪」

 

「どぅ?」

 

「トロワ♪」

 

「ぶはっ⁉」

 

 リズムよく飛んできた男のつま先がドレッドの鳩尾に深く突き刺さる。ドレッドは血を吐いて膝から崩れ落ちる。

 

「三人目……」

 

「うおおっ! その脚を撃ち抜いてやる!」

 

 コーンロウが銃を撃とうとする。

 

「~~~~~♪」

 

「うおっ⁉」

 

 さきほどとは違ったリズムで男がコーンロウの懐に入る。

 

「~オレ!」

 

「べはっ⁉」

 

 男の手の甲を上にした平手打ちがコーンロウの頬を激しく打つ。首が曲がったコーンロウが力なく倒れる。男が指折り数える。

 

「四人目……」

 

「て、てめえはあいつか! 舞踏が得意だとかいう……」

 

「ええ、上様にお誉めいただきました“ぶとう”です」

 

「てめえのイントネーションは武闘だろ! ぼはっ⁉」

 

 ヒッピーが倒れる。亜嵐が首に手刀を食らわしたからである。

 

「そこまでだ……一人は事情聴取で残せ。裏で手を引く連中を突き止めねばならん」

 

「ふむ……」

 

「お前は手加減が出来んのか、『天下一の舞踏家』志摩雄(しまお)?」

 

「志を磨く男になれと上様から頂いたお名前に恥じないようにしているだけであります。上様はまだ行方知れずなのですね? 私も他を探してみます……」

 

「単に志摩半島で遭難していたからついた名前だというのに、よくもまあ、そう都合の良い解釈が出来るものだ……おい待て、夜明がこの先にいる。合流して探すぞ」 

 

 亜嵐は志摩雄に声をかける。

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