ヒノモトバトルロワイアル~列島十二分戦記~   作:阿弥陀乃トンマージ

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第1話(4)巫女、大暴れ

「な、なんだ⁉」

 

「どうした⁉」

 

「い、いや、戦場に巫女さんが!」

 

「巫女だあ~? そりゃ神社の境内にはいるだろう!」

 

「どうしますか?」

 

「どうするもこうするもない! まとめて殲滅する!」

 

「ええっ⁉」

 

「何を驚く必要がある。反乱分子をかくまう動きも見せた! 証拠は十二分だ!」

 

「りょ、了解しました!」

 

「……」

 

 敵兵たちが国崩しを連続で発射する。そこには伊那の姿もあった。

 

「御神楽さま! 避けないと!」

 

「いや、甘い、何らかの術で防ぐんだ!」

 

「駄目だ、間に合わんでごわす!」

 

「御神楽さまー! ……⁉」

 

「おらあああ!」

 

 鍋釜たちは自分の目を疑った。ついでに常識も。伊那は素手で砲弾を殴り次々と相手に向かって打ち返していく。鍋釜らは驚く。

 

「し、信じられんたい……」

 

「な、なんということばい……」

 

「まず思うことと言えば……」

 

「「「術は⁉」」」

 

「え?」

 

「いや、え?じゃなくて……不可思議な術を期待していたのですが……」

 

「あれは面倒だからな……」

 

「面倒?」

 

「そう、色々と読み上げないといけないからな」

 

「時間がかかってしょうがないと」

 

「そういうこと!」

 

 鍋釜の言葉に伊那が反応しビシっと指を差す。

 

「相手は混乱状態です……」

 

「だろうな。だが、神聖な境内を滅茶苦茶に荒らした罰はこんなもんじゃないぜ、徹底的にやってやるからな、覚悟しとけよ」

 

 伊那はゆっくりと、敵兵たちの下へ歩み寄る。

 

「御神楽さま! いや、大丈夫か……」

 

 鍋釜は伊那の戦いぶりを見守る。

 

「ふふっ……」

 

「巫女さんが向かってきます!」

 

「あ、あんな巫女がいてたまるか!」

 

「で、では巫女らしきもの?」

 

「ああ、そうだ!」

 

「ど、どうしますか?」

 

「砲弾を撃って、撃って、撃ちまくれ!」

 

「はっ!」

 

「おらあ!」

 

「! まだだ!」

 

「ははっ!」

 

「うらあ!」

 

「‼ まだまだ!」

 

「は、ははっ!」

 

「そらあ!」

 

「⁉ ま、まだ……!」

 

「ほ、砲弾がもう尽きました……」

 

「な、なんだと⁉」

 

「ど、どうしましょうか?」

 

「て、撤退だ!」

 

 砲撃部隊が撤退を始める。伊那が笑う。

 

「そうは……いかねえよ!」

 

「なっ⁉」

 

 相手は驚く、伊那がすぐそばまで迫ってきたからである。

 

「み、巫女らしきもの、接近してきます!」

 

「な、なんだ、この距離を一瞬で詰めた……! ば、化物か⁉」

 

「随分な言われようだな……」

 

「ひいっ⁉」

 

「ひ、怯むな、数では多い! 囲んで捕らえろ!」

 

 部隊長が刀を抜く。部下たちもそれに従い、伊那を包囲する。

 

「まだ戦意を完全に失っていないのは大したもんだ……」

 

「か、かかれ!」

 

「一気に片付ける!」

 

「⁉」

 

 伊那が火を纏った拳を振り回す。その不可思議さと強烈な威力に砲撃部隊は大混乱に陥り、ばったばったと倒されていく。伊那が振り返って鍋釜に問う。

 

「おーい! こいつら倒したらどうするつもりだ?」

 

「え?」

 

「見事に三勢力まとめて敵に回すことになっちまいそうだが……」

 

「ああ、まずこの近くにある『火京(かきょう)』へ向かいます。ご存知の通りこの九州の州都です。三勢力ともそこを狙っています」

 

「迫ってくる敵を迎撃か?」

 

「いえ、火京を抑えたとなれば、味方も増え、敵の離反者も増えます。一石二鳥の策です」

 

「ほう……」

 

「もちろん、体勢が整い次第、こちらから打って出ます!」

 

「おっ!」

 

「守るより、攻める方が御神楽さまの性に合うようなので」

 

「分かってんじゃねえか、お前ら気に入ったぜ!」

 

「!」

 

 伊那はそこからほとんど一瞬で残存の敵部隊を沈黙させた。伊那は鍋釜に声をかける。

 

「よっしゃ、行こうか、火京へ」 

 

――これはあり得るかもしれない未来の日本の話――

 

 日本は十の道州と二つの特別区に別れた。

 

 十の道州の内の一つ、九州は戦国時代にタイムスリップしたかのような状態になり、高島津、大友部、竜勝寺の三氏が鼎立する『九州三国志』の様相を呈していた。

 

 終わりの見えない争いに疲弊した民衆の声を聴いた有力家臣たちの子は争いを集結に導ける可能性を秘めた巫女を探し求め、ついに見つけた。

 

 あるいは、古代の大国が女の王を立てたことにより、平和を取り戻したという言い伝えを信じたのか、それを踏襲しようとしたのか。いずれにせよ彼らは女王の代わりに不思議な存在感を持つ巫女を求めた。

 

 そんな彼らの思惑はまんまと外れてしまった。いや、外れた方が良かったのかもしれない。

 

 齢不詳な少女は不可思議な術を使う。

 

 形代に息を吹き込んで意思を持った人形のように扱える。

 

 ただ、戦いにおいてはそのような術はまず使わない。

 

 神秘性と暴力性の天秤は後者に傾いた。彼女にとってはそれこそ望むところだった。

 

武闘派巫女(ぶとうはみこ)

 

 御神楽伊那(みかぐらいな)

 

 かつて火の国と呼ばれた土地から立ち上がる。

 

 最後に笑うのは誰だ。

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