ヒノモトバトルロワイアル~列島十二分戦記~   作:阿弥陀乃トンマージ

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第2話(3)恐竜の実戦テスト

「じ、実験?」

 

「なんだよ、聞いてないのか?」

 

 女性が首を傾げる。ダテが声を上げる。

 

「マル!」

 

「こ、これから説明をしようと思ったのですよ!」

 

「おいおい、なんなんだよ?」

 

 イロが尋ねる。マルが答える。

 

「……新たな恐竜たちの育成に成功しました」

 

「!」

 

「いつも思うけど早くね?」

 

「遺伝子情報の解析などがスムーズに進んだことによって、卵の孵化から成長までのプロセスを一挙に短縮することが出来ましたから」

 

「ほう、なるほどね……」

 

「……分かっていないだろう、イロ」

 

「う、うるせえなあ、ダテ。そこは雰囲気で流せよ」

 

 イロがダテに対して肩をすくめる。

 

「今回はその恐竜たちの実力を測る為にこうして竜京まで来てもらいました」

 

「実戦テストというわけか」

 

「そういうことです」

 

 マルが頷く。イロが首を傾げる。

 

「どこでやるんだ?」

 

「ここから見えるそこの広い実験場です」

 

 マルが指し示した先に、一面が壁に覆われた大きい部屋がある。マルたちがいる部屋とは隣接していて、ガラス窓からのぞくことが出来る。

 

「へえ……」

 

「さあ、最初は誰が行く?」

 

 女性が笑みを浮かべながら尋ねる。イロが手を挙げる。

 

「俺が行きますよ」

 

「イロか、お手並み拝見といこうか」

 

「どうぞお楽しみ下さい」

 

 イロが実験場に移る。マルが尋ねる。

 

「準備はよろしいですか?」

 

「ああ、いつでもいいぜ」

 

「それでは……」

 

 マルが助手に目配せをする。助手がスイッチを押すと、壁の一部が開き、恐竜が登場する。その恐竜は四足歩行で頭部の後ろに大きな襟飾りがついている。

 

「トリケラトプスか?」

 

「いいえ、あれは『トロサウルス』です」

 

 ダテの問いにマルが答える。女性が楽しげに声を上げる。

 

「デカい頭してんな!」

 

「全ての陸棲動物の中で最大の頭を持っていますから……」

 

「あの頭で頭突きを喰らったら堪らねえな!」

 

「おっしゃるとおりです。トロサウルスの名前の意味は『突き通す爬虫類』……あの角で貫かれたら……む!」

 

 トロサウルスがイロに向かって突進する。ダテが声を上げる。

 

「イロ!」

 

「へっ、心配ご無用!」

 

「……!」

 

 イロとトロサウルスが交差したかと思うと、トロサウルスが倒れ込んだ。イロがいつの間にか取り出した刀をポンポンと手のひらで叩く。

 

「どんなにパワーがあっても、俺のスピードの前では無力だぜ……」

 

「ちょ、ちょっと、イロさん⁉」

 

「心配すんなって、峰打ちだよ」

 

 イロがマルに応える。ダテが感心する。

 

「すれ違いざまに高速で何度も斬りつけたな……さすがの速度と言える……」

 

「いいじゃねえか、イロ! お次は誰だ?」

 

「私が行きます……」

 

 ダテが女性の問いかけに答える。助手がマルに伝える。

 

「……トロサウルスの回収完了……準備、整いました」

 

「ダテさん、よろしいですか?」

 

「ああ……!」

 

「それでは参ります……」

 

 壁が再び開くと、二足歩行で鋭い鉤爪を持った恐竜が現れた。イロがマルに聞く。

 

「なんだよ、あいつは?」

 

「あれは『デイノニクス』です」

 

「あの爪で切り裂かれたらヤバそうだな!」

 

 女性が声を上げる。マルが説明する。

 

「あの鎌のような爪、シックル・クローは斬撃に適したもので……あ!」

 

 デイノニクスがダテに向かって突進する。イロが声を上げる。

 

「結構早えな!」

 

「時速40キロほどで走ることが出来るのです! ダテさん!」

 

 マルがダテに呼びかける。

 

「……慌てることは……ない!」

 

「‼」

 

 ダテが両手に持った銃で発砲し、デイノニクスは崩れ落ちた。

 

「~♪ やったのか?」

 

「実弾ではない、強力な睡眠薬だ。心配するな……」

 

 イロの問いにダテは淡々と答える。マルが感心する。

 

「速度には高い技術で対応……さすがです」

 

「いいねえ、ダテ! さて、お次は?」

 

「次で最後になります……僕が出ます……」

 

 マルが実験場に入る。しばらく間をおいてから、助手に目配せする。

 

「……デイノニクス回収完了……では、投入します」

 

 ひときわ巨大な首の長い恐竜が入ってくる。イロが驚く。

 

「デ、デカっ⁉」

 

「ブラキオサウルスか?」

 

「いえ、あれは『ドレッドノータス』です……」

 

 ダテの問いに助手が答える。女性が笑う。

 

「ははっ、こいつはデカいな! おっ!」

 

 ドレッドノータスがマルに向かって突進する。

 

「ふん!」

 

「⁉」

 

 マルが手を振ると、ドレッドノータスの体が吹っ飛ばされる。息を切らしつつマルが呟く。

 

「はあ、はあ……どれほどの巨体であっても僕の念力の前では意味をなしません……」

 

「へっ、相変わらず厄介なサイキックだぜ」

 

「科学者然とした恰好とはミスマッチだがな」

 

 イロとダテがそれぞれ素直な感想を口にする。

 

「……ドレッドノータス、回収完了しました、主任」

 

「はい……以上をもって、実戦テスト形式の実験を終了します」

 

「ははっ、良いものを見せてもらったぜ!」

 

 女性が実験室に入ってくる。マルが居住まいを正して話す。

 

「戦闘能力に改善の余地がありますが……」

 

「お前ら相手だったらこの結果も無理はないだろう」

 

「それでは……?」

 

「このまま進めてくれて構わないぜ」

 

 女性が頷く。

 

「それでは、実戦配備に向けて準備します。ん⁉」

 

 その時、実験場に凶悪そうな面構えの恐竜が入ってくる。

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