激しくぶつかり合う金属音が響く。足場が崩壊した闘技場を2つの閃光が交差しあい、ぶつかり合う度に金属音が響く。
可奈美「『一刀流・杓死』!」
可奈美は音もなく走り出す。
ハデス「ッ!!」
ハデスは目の前の可奈美が消えた事に驚いた。
この杓死はとある海賊が編み出した技なのだが、その速さのあまり本人すら周りが見えない為、斬る時は敵味方も問わず斬り裂いてしまう。
しかし、可奈美はそんな海賊よりも強く速い上に、見聞色の覇気によってハデスの居場所が直感的に解るのだ。
ハデス「ッ!其処か!」
しかし、相手はハデス。可奈美が何処から来るのか理解し、可奈美の振り下ろす刀を素手で掴み取り、槍の尾を振り被って可奈美の頬を叩く。
可奈美はハデスの一撃を受けてしまい、写シが解けてしまうが、ハデスの追撃は止まらない。写シが解けた可奈美の頬に、槍の尾が当たってしまう。可奈美は鼻血や血反吐を吐き出しながら吹き飛ばされて、そのまま闘技場の壁へ叩き付けられてしまう。幸い床が残っており、そのまま床に肩から落ちて横向きに倒れてしまう。
ヘイムダル『ちょ、直撃だぁー!!衛藤可奈美の頬に、ハデス様のカウンターが直撃ィー!!』
姫和「可奈美!!」
舞衣「可奈美ちゃああん!!」
可奈美は鼻血を垂らし、目から血の涙を流している。口からは咳込みながら血を吐き出していく。
可奈美「っつぅ!」
可奈美は頬を擦りながら舌で口内を探る。その際に舌で感じたのは、何本か折れて舌の上に乗る複数の前歯と奥歯の感触だった。
可奈美「ぺっ」
可奈美は折れた前歯や奥歯を吐き出す。前歯2本と奥歯が3本。上と下から感じる舌の感触からして、上の前歯が2本、左側の上下合わせて4本の奥歯が折れた。
可奈美(歯が折れちゃった。此れからどうやって皆とお菓子食べたら良いんだろ?)
可奈美はふとそんな考えを過ぎらせる。幼い頃に歯は既に生え変わってるので、折れた歯はもう取り返しが付かない。此れからどんな顔をして皆の前に出れば良いのだろうか。
可奈美「まあ、勝ってから考えるよ!女の子の歯を折った罪は重いよ!」
可奈美は再び駆け出した。空中を浮遊する数少ない足場を跳んでハデスに迫る。
ハデス「来い!」
ハデスは再び刺突を放つ。今度は振動を加えて放つ一撃だ。
可奈美「巨人族の槍!『覇国』!」
可奈美は特殊な構えを取った途端、ハデスに向けて刀を振り翳す。その瞬間、ハデス目掛けて不可視の衝撃波が襲い掛かった。
ハデス(ぐっ!?)
突きを中断したハデスは、覇国を受けて後方に吹き飛ばされる。ハデスの背後にある闘技場の壁に、一瞬にして巨大なトンネルが形成された。その衝撃波は闘技場を貫通し、滅びて無の空間と化した宇宙の彼方へ消えて行く。
しかし可奈美は追撃を続けた。刀を武装色で黒刀に変えて、桃色のオーラを刀から放つ。
可奈美「フゥゥゥッ!!武装色・黒刀!!『花の呼吸・肆ノ型:
そして、可奈美は衣のような軌跡を描く斬撃を放つ。
ハデス「ふん!」
ハデスはバイデントを振り被って斬撃を無力化するが、可奈美の攻撃は止まらない。
可奈美「『伍ノ型:
前方に放たれる9連撃の斬撃。ハデスは一振りで相殺した。しかし、可奈美は風の呼吸へと再び切り替えて攻撃を続ける。
可奈美「シイアアアア!!『風のこ―――」
ハデス「冥界の冷気よ伝われ」
ハデスはバイデントに冷気を纒わせ、振り上げて可奈美へ向けて放つ。ポセイドンの持つコズミックパワーと比べて出力は弱いが、それでも地球の自然の力たる冷気だ。人間に対して有効だ。
可奈美「きゅ――ゲホッ!!ゴホッゴホッ!!」
可奈美は冷気を吸ってしまい、胸の苦しさや咳込みを起こしてしまう。
肺に冷気が入り込んだのだ。
ハデス「お前の呼吸はこのように封じ込められる。肺が凍れば意味もあるまい」
可奈美「ッ!!」
ヘイムダル『こ、呼吸を封じた!?これでは全集中の呼吸を繰り出せない!!』
実際、この方法は鬼殺隊においても致命的な弱点だ。呼吸を封じられれば、全集中の呼吸による身体能力強化も封じられてしまう。呼吸を利用して相手を弱らせるという、正に全集中の呼吸対策としてはバッチリだった。
………相手が可奈美、ましてや弱点を知ってなければの話だが。
可奈美「………それは既に知ってるよ。こんな冷気なら、振り払える!!」
可奈美は構わずに呼吸を繰り出した。
可奈美「『風の呼吸・漆ノ型:
可奈美が繰り出した技。それがハデスの巻き起こした冷気を吹き飛ばした。
ハデス「っ!」
ハデスは冷気が吹き飛ばされたのを見たが、可奈美の動きを既に捉えていた。
背後から迫って来ており、刀を振り下ろす可奈美。しかし、ハデスは可奈美に槍の尾を突き立てた。
可奈美は槍の尾をしゃがんで避けた後、迅移でハデスの懐に入り込んだ。
可奈美の千鳥が炎のような赤い色に染まる。
可奈美「『炎の呼吸・弐ノ型:
炎のエフェクトを纏いながら、下段から真上に円を描く斬撃を放つ可奈美。
ハデスの胸元が縦に斬られてしまう。
アレス「っ!!」
ゼウス「なんと!?」
ヘルメス「っ!?」
そして、ハデスは胸を斬られると同時に背後へ吹き飛んだ。
ハデス「まさか!?」
ハデスは空中を5回転した後に浮いた足場に降り立ち、斬られた胸元を片手で抑える。
ヘイムダル『衛藤可奈美!!ハデス様に傷を与えた!!それも、かなり深めの傷を負わせたぞおおぉぉ!!』
人類『『『『『ワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッ!!!!!!』』』』』
人類は大歓声に包まれた。
結芽「イェーイ!!千鳥の………いや、可奈美おねーさん頑張れえぇぇ!!」
真希「流石だ!!その調子だ衛藤!!」
寿々花「負けたら承知しませんわよー!!」
夜見「衛藤さん。勝ってください」
紫「衛藤!!私は信じているぞ!!お前の勝利を!!美奈都や篝、そして十条が信じたお前を、私も信じている!!」
しかし、ハデスの様子がおかしくなる。
ハデス「〜♪〜〜♬」
鼻歌を歌いながら着ているインナーを破り捨て、胸元から飛び散る血を更に全身に浴びる。
ハデス「………認めよう、我がコズミックパワー、発動する」
そして、ハデスはポセイドンと同じく自らの血を左手の掌に乗せて、頭に被る。そして、前髪や横髪を血で濡れた手で後ろへ上げてオールバックヘアに変える。
その瞬間、ハデスの胸元を中心に宇宙が広がる。
ハデス「………その男は墓に住み、その体に宿すのは無限の死者の魂。あらゆる鎖も、あらゆる枷も、あらゆる総てを以ってしても繋ぎ止める事は出来ない」
宇宙は広がる。ハデスの体全体に広がっていく。
ハデス「彼は縛鎖を千切り、枷を壊し、狂い泣き叫ぶ死者の王。この世の総てを以ってしても、彼を止める事が出来ない」
可奈美「っ?何の話?」
可奈美は質問しつつ動いた。コズミックパワーが発動する前に攻撃しようとした。
ハデス「故に………神は問われた。お前は何者だ?愚問なり。無知蒙昧。知らぬならば答えよう」
しかし、可奈美の目の前に壁が立ち塞がる。それは、無数の骸骨で構成された骨の壁だった。
ハデス「『我はレギオン。我は無限の死者である』」
そして、ハデスのコズミックパワーが起動する。
ハデス「さあ我が『
そして、ハデスを中心に無数の死者が蘇るのだった。
此処でハデスのコズミックパワーを更に解説。
『レギオン・ヴァース』
全ての死者が最後に辿り着き、ハデスの総軍となって従い、そうでなければ不死身である事を利用して闘い合う宇宙。
様々な宇宙、様々な次元の死者を呼び出し、自らの総軍として従える。2次元、3次元問わず、作品内でも死亡した描写があればハデスの総軍(レギオン)に加わってしまう。総軍はハデスが生きている限り不死身であり、殺されても何度でも蘇る。また、蘇る死者は生き物に限らず、高次元の生命体や精神生命体、命を持たない筈の物質、神器や人器、野生の生き物や現存生命とは異なる生命体、規格外サイズの神や獣でさえも、死亡したならば強制的に総軍に加わる。しかし、逆に言えば蘇った死者達は意志や自我に関係無くハデスの戦奴にされて永久無限に戦い続ける為、戦争狂、闘いが好きな者、自我を失った者、殺戮者以外の人間にとっては地獄に他ならない。しかも自我はあっても、拒否も出来ない為、闘いたくない者達にとっては地獄の宇宙その物だ。