その時、その様子を一柱の神が見つめていた。神側の観客席の上にある広い廊下から、闘技場を見下ろしている。
???「………」
『インド神話:暴風神ルドラ』
シヴァと同じく4本の腕を持ち、更に逆立つ髪を持つその男神ルドラは、シヴァを見守っていた。
彼はルドラ。嘗て、印度神界にてシヴァと共に天辺を目指して戦い、踊り合った親友だ。印度神界の世界全体、宇宙全体を巻き込み、銀河を破壊し、星々を突き抜けて、時空間をも歪ませた激しい闘いを乗り越え、二柱は共に戦い、軈て天辺に到達した。
しかし、ルドラはシヴァに挑んだ。印度神界の絶対神は一柱のみで良いと考えており、最強でなくてはならない。印度神界の神々や人間、全種族の為にも。
ルドラの願いを、シヴァは受け入れた。悲しい気持ちになりつつも、シヴァはルドラと最後の喧嘩を始めた。
印度神界の宇宙全体を巻き込むその闘いは、シヴァが勝利した。ルドラはシヴァに印度神界の天辺を譲り、その姿を消した。
シヴァは印度神界の頂点に立った。最高の親友を失う事と引き換えに。
???「やはり来ていたか。そんな所で、何をコソコソしている?ルドラ」
『インド神話:創造神ブラフマー』
そして、嘗てルドラやシヴァと戦ったライバル達が、次々とその場に現れる。
ルドラ「ブラフマーに……あんた等か」
???「しかし、シヴァの奴は変わらんな」
『維持神ヴィシュヌ』
ヴィシュヌ「印度神界の天辺が、無茶な闘いをする」
ルドラ「分かってんだろ?彼奴は、誰よりも優しいくせに、喧嘩が始まると拳で語り合うのを、誰よりも楽しんじまう。それが、シヴァだ」
ルドラはシヴァの元を離れた。長い年月、数万年か数億年か、永く離れていても、シヴァの事を信じていた。
だから信じている。シヴァは誰にも負けないと。
???「でもさ〜、彼奴チョーしつけぇんだよなぁ。オレ様がいくら殴っても、ずっと笑ってんだよ」
『インド神話:水神ヴァルナ』
白鳥を肩に乗せるヴァルナは白鳥の頭を人差し指で撫でながら、シヴァとイングリスの試合を見ながらため息を吐く。
???『後………彼奴……加減……わからない。馬鹿だから』
『インド神話:火の神アグニ』
炎の衣を纏い、二面二臂で七枚の舌を持つアグニが、炎のように逆立ちながら揺れる髪を撫でながら、シヴァとイングリスの試合を見ていた。
???「しかしまぁ………俺等の天辺の喧嘩だ。しっかり見届けようや」
『インド神話:雷と武の軍神インドラ』
タバコを蒸しながら、インドラは試合会場を見つめる。
すると、二柱の女神がその場に現れた。
???「皆様。此処に居られましたか」
『パルテナの鏡:女神パルテナ』
???「おおっ!ルドラもいるではないか!」
『パルテナの鏡:自然王ナチュレ』
ルドラ「パルテナにナチュレか。お前達もシヴァの喧嘩を見に来たのか?」
パルテナ「ええっ。シヴァ様にイングリスが何処まで闘えるのか、見届けに来ました」
ナチュレ「妾を誂うインドの小童相手に、人間風情が何処までやれるか見物じゃ。人間の力が強いのは、幾度も見てきた。じゃから、あのイングリスが勝てるかどうか見届けようではないか!」
ルドラ「ハハハッ!正にツンデレだな!」
ブラフマー「ふっ、そうだな」
ヴィシュヌ「ああっ」
ヴァルナ「ハハハハッ!ツンデレだぜぇ〜!」
アグニ『ツンデレ………可愛い』
ナチュレ「なっ!?お主等もイジるなぁー!!」
そんな光景を、パルテナは微笑みながら見ていた。子供の遊びを見て和む母親のようだ。
パルテナ(ふふっ。良いお友達ですね。シヴァ様)
ルドラ「見届けようぜ。俺達印度神界の天辺の喧嘩を」
パルテナ「ええっ。私は人類が抗う姿を、見届けましょう」
こうして彼等は、再び試合会場を見る。シヴァとイングリスの闘いは、次の段階へ入っていた。
――――――――――――――――――――――――
戦いは、思わぬ方向へ進み始めていた。
シヴァ「ヨッ!ハッ!」
シヴァは………踊っていた。
イングリス「えっ?」
イングリスは困惑していた。シヴァが突然踊り出したのだ。
印度神達『『『キタキタキタキタ……キタアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァッー!』』』
印度神界の神々が歓喜に包まれる。
踊るシヴァ。独特のステップを踏み、独特のリズムを刻む。
イングリス(何だろう………嫌な予感がする)
イングリスはそのダンスを見る内に、シヴァの雰囲気が変わったのを感じた。その舞踊を踊る度に、イングリスは一瞬空を見上げる。
その時だった。
夜空の星々が、高速で移動して線を描いている。宇宙全体が、シヴァに合わせて踊るように、天体の位置や星雲の流れ、天体現象の発生や流星の旋律等、宇宙全体がシヴァの為に踊り、旋律を奏で、シヴァが踊れば踊る程に宇宙が変化する。
シヴァが世界を操っているように見える。しかし、それは違う。
シヴァはただ、踊ってるだけだ。
シヴァが世界を操っているのではない。世界が、シヴァに合わせているのだ。
シヴァは宇宙を再創造するのに必要な破壊神として有名だが、インド神話においては舞踊の神としての側面もある。
シヴァの踊りにおいても最強であり、『
故に、シヴァは踊れば、世界も、宇宙もシヴァに合わせて踊りだす。
イングリス「………来い!!」
イングリスが声を上げる。
シヴァは二本の右腕を上下に揺らした。その後、シヴァは駆け出した。
シヴァ「踊ろうぜ!!今宵のダンスは、もっとアチィぞ!!」
シヴァが踊ってステップを踏みながら、イングリスに迫る。イングリスはボクサーのような構えを取りながら、シヴァに向かって走り出すのだった。