終末のワルキューレvs若き戦士達   作:ちいさな魔女

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何も最強の存在は、分かりやすくする必要は無い。一々宇宙を破壊する必要が無い。それをやるのは力の無駄だ。本当の強者は力を見せびらかす真似はしない。

故にヘカテーは、宇宙を破壊しない。


地獄の女神VS新米錬金術師 その8

サラサは笑う。

 

それを見たヘカテーは、突如として全身から込み上げてくる物があった。寒気、体の震え、冷や汗、逃げたくなる衝動、その総てがヘカテーに走る。

 

それは、“恐怖”だった。

 

ヘカーティア・ラピスラズリだった頃に何度も経験していたが、それは本来の名前を取り戻した頃に克服したかに思えた。しかし、“ヘカテー”として初めて感じたのだ。

 

四肢を失い、新たな身体を創っても再び壊せる程に速く動け、何処にも逃さず、殴ればサラサの生涯に幕引きを与える、つまり殺せるにも関わらず。

 

ヘカテー『だが!お前が何をしようと、お前が如何に覚醒しようと、私はお前の先を行く!!此れで、幕引きだ!!』

 

ヘカテーは再び拳に力を込める。

 

ヘカテー『『人世界・終焉変生(ミズガルズ・ヴォルスング・サガ)』!!』

 

ヘカテーの拳がサラサを捉える。サラサは頭を殴られ、そのまま全身が砕け散った。

 

 

 

 

 

 

 

 

かに思われた。

 

 

サラサ「『だからこそ』………だったよね?」

 

その瞬間、ヘカテーは突然サラサに胸のみぞおちに、拳を当てられた。

 

ヘカテー『があっ!?』

 

ヘカテーは突然殴られ、対応出来ずに後方へ吹き飛ばされてしまう。

 

ヘイムダル『な、なんだとぉ!?ヘカテー様が殴られた!?サラサの身体が、いつの間にか復活しているぅー!?』

 

ヘイムダルの言う通り、サラサの体は歴史諸共消滅した筈だった。

 

にも関わらず、サラサの体は何事も無かったかのように復活していた。

 

ヘカテー(何をされた?今のは私の言葉の力による“逆説”だった。だが、奴に伝達させていない。まさか、私の言葉の力を学習し、会得したのか?それもあり得ない。その伝え方は私しか知らん。だとしたら、何が起きた?)

 

ヘカテーは目の前に居るサラサを見た。

 

サラサ「錬金術って、本当に面白いね。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

その言葉を聴いたヘカテーは、全てを確信した。

 

だってそれは、人の身では会得出来ない究極の錬金術なのだから。

 

ヘカテー『まさか………金色の黄金錬成(アルス・マグナ)!?』

 

その瞬間、殆どの神々は驚愕のあまり、言葉を失った。

 

ほむら「黄金錬成(アルス・マグナ)ですって!?」

 

まどか『嘘………アレをこの土壇場で発現したの!?』

 

フリーレン「アルス・マグナ?」

 

フリーレンがほむらに尋ねた。

 

ほむら「世界の全てを呪文と化し、それを詠唱完了することで行使可能となる錬金術の到達点とされる大魔術の事よ。でもアレは唱え切るにしても数百年の時間が掛かるし、この土壇場で発現出来るような力じゃないわ」

 

フリーレン「数百年か。私なら出来る気がするけど 

 

ほむら「そりゃ貴女はエルフだからよ。普通の人間なら唱えるのはほぼ不可能よ」

 

まどか『うーん………もしかして、ヘカテーさんの力を使ったのかも』

 

ほむら「ヘカテーの?」

 

まどかは何やら、核心を突いたようだ。そしてもう一人、サラサが黄金錬成(アルス・マグナ)を発現した理由を見抜いた者が居た。

 

サンズ「どうやら彼奴、ヘカテーの“逆説”を利用したらしいな」

 

ゲル「逆説を?どうやってっすか?」

 

ブリュンヒルデ「ええっ……サラサさんがあの無敵の錬金術を会得するのに、ヘカテー様の力を利用したとは?」

 

ブリュンヒルデもまだ把握しきれてないようだ。

 

サンズ「黄金錬成(アルス・マグナ)を唱える呪文は、実はそれ自体はこの時に思い付いてたんだ」

 

サンズは説明しだす。

 

――――――――――――――――――――――――

 

ヘカテー『未熟な錬金術師よ。お前の力はそんなものか!!』

 

 

 

ヘカテーは人差し指から光線を放つ。その光線はサラサの心臓部を貫通した。

 

 

 

貫かれた箇所から、サラサは人体の大半から飛び出たかのような出血を起こし、サラサの背後の壁に血のプラネタリウムを描く。

 

 

 

ロレア『い、いやぁぁああああああああああああああああああああああああああ!!』

 

 

 

アイリス&ケイト『『サラサッ!!』』

 

 

 

人類『『うわああああああああああっ!!』』

 

 

 

ヘイムダル『ちょ、直撃!!サラサの身体を光線が貫く!!これは決定的だああああ!!』

 

 

 

神々『どうだ!!此れがヘカーティア様の力だ!!』

 

 

 

神々『何だよ思ってたより大した事ねぇな!!』

 

 

 

神々『弱え奴だぜ!!』

 

 

 

神々はヘカテーの勝利を確信する。人類側は、サラサの敗北を確信してしまう。

 

 

 

アフロディテ『あらあら、思っていたより大した事ありませんでしたわ』

 

 

 

フレイヤ『あらあら、もう闘いは終わりかしら』

 

 

 

美の女神達は、呆気なく終わったと思っている。

 

 

 

ヘカテー『勝ったか』

 

 

 

ヘカテーも確信していた。此れならオーディンにわざわざ名を返し貰う必要も無かった。そう思ったヘカテーであった。

 

 

 

誰もがサラサの敗北を確信する中、サラサは…………。

 

 

 

サラサ『……ふっ』

 

 

 

笑っていた。

 

 

 

 

ヘカテーの光線がサラサの胸を貫き、勝負は一瞬にして終わったと思われた。

 

 

 

しかし、誰もが予想していなかった事が起きた。

 

 

 

サラサ『コズミックパワー、起動!』

 

 

サラサの胸元から全身に宇宙が広がった。すぐに元のサラサに戻った後、サラサの出来た傷や服の穴は、一瞬にして塞がった。

 

サラサ(金色の黄金錬成(アルス・マグナ)……詠唱は長いけど、何とか隙を突いて唱えないとなぁ。どうしよっかなぁ)

 

 

――――――――――――――――――――――――

 

サンズ「……この時、死を間近にして、コズミックパワーを発現した時にはもう、詠唱するのに必要な文は頭に浮かんでたんだろうな」

 

ゲル「ええええぇぇっ!?」

 

ブリュンヒルデ「まさか、あの時に!?」

 

ゲルもブリュンヒルデも、驚愕していた。まさか心臓を貫かれ、コズミックパワーを起動した時点で考え付いていた等、誰が予想出来るのだろうか。

 

3人は再び闘技場を見る。いつの間にか戻って来ていたサラサとヘカテーは、共に拳同士をぶつけ合って肉弾戦に入っている。

 

サンズ「とはいえ、その時点ではまだどうやって詠唱するのか考えてなかったんだろうな。やり方は分かっても、詠唱を省略して唱え終わる暇が出来ない。況してやヘカテーは最強クラスの神だ。そして、言葉の力は力の上下関係無く誰にでも効いてしまう」

 

サラサは蹴りを放つ。ヘカテーは蹴りを二本の手で受け止めて、サラサを蹴り飛ばした。

 

サンズ「だが、ヘカテーの力は使えると考えた。あの音元爆弾の牽制で、ヘカテーの逆説を利用した時点で、それを利用する事を考えた。そして、ヘカテーに殴られた瞬間に、呪文を唱えた。数百年も掛かる詠唱『だからこそ』須臾の時間で唱え終える事が出来る。そして、黄金錬成(アルス・マグナ)の発現完了。サラサの歴史は元通り、そして言葉の力を会得した。こんな所か」

 

ゲル「な、成る程………」

 

ブリュンヒルデ「ヘカテー様の言葉の力を利用するとは。今までの行動一つ一つが、サラサさんの計画通りだったのですね」

 

過去に悪徳貴族や悪徳商人を破滅に追いやった時も、サラサは持ち前の策士ぶりを見せていた。

 

ヘカテー『くそ!』

 

ヘカテーはらしくない言葉を吐いた。まさか先程まで格下だった人間の少女が、此処まで抗うとは思わなかったのだ。

 

一方でサラサは、頭の中で思い描いたシミュレーションを構築していた。ある男達から教わったプリショットルーティーンを使い、実質思想通りに動くアンコントローラブルな力を制御している。

 

サラサ(そう!!!『使いたい時に強い意思を込めて言葉を放つとその通りに現実を改変出来る』!!!それがこの錬金術なんだ!!!)

 

サラサはそう強く思い込んだ。そうする事で、言葉の力と組み合わせて強くする為に。

 

ヘカテー『私は………ッ!!』

 

ヘカテーは見た。VIP席で椅子に座り、ヘカテーを信頼する目で見守るハデスの姿を。そしてその隣に居る、クラウンピースの姿を。

 

クラウンピース「ママァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」

 

クラウンピースは涙を滝のように流し、鼻水を流しながら、育ての母であるヘカテーに呼び掛けた。

 

ヘカテー『………クラピちゃん。旦那様………』

 

そうだ。

 

サラサが覚醒したからなんだ。

 

どれだけ強くなろうと、関係ない。

 

ヘカテー『私は………………』

 

自分にだって、帰りを待ってくれる家族が居る。

 

信じてくれる友人が居る。

 

ヘカテー『負けるわけにはいかないんだあああああああああああああああああああ!!!!』

 

ヘカテーは全身から力を解き放つ。

 

エイル『エイルも感じるよ。此れが最後になるね。サラサはどう?』

 

サラサ「大丈夫。怖くないよ」

 

最後の闘いだ。

 

ヘカテーとサラサ・フィード。

 

地獄の女神と、新米錬金術師。

 

次回、決着。




『必殺技』

黄金錬成(アルス・マグナ)
元ネタはArs Magna=「大いなる術」。そしてとある魔術の禁書目録に登場する錬金術。
錬金術における思想の一つ。実在した錬金術師ライムンドゥス=ルルスが始祖のようだ。中世15世紀辺りに考え出され「アルス=マグナを得た者は超人となり神に等しい智恵と力を持つ」らしい。
世界の全てを呪文と化し、それを詠唱完了することで行使可能となる錬金術の到達点とされる大魔術。神や悪魔を含む『世界の全て』を己の手足として使役する事ができる。
世界の完全なるシミュレーションを頭の中に構築することで、逆に頭の中で思い描いたものを現実に引っ張り出す魔術。
簡単に言えば、頭の中で思った通りに世界を操ることができるというもの。
相手に対して「砕けろ」と思えば砕け散り、
「忘れろ」と思えば完全に忘却し、
「死ね」と思えば是非も無く即死する。
また「内から弾けろ」と命じても、
「死ね」と思わなければ(もしくは「死なせない」と思えば)即死しないなど、物理的な常識は完全に超越する。

術式そのものは過去の錬金術師達によって既に完成されているが、『世界の全てを呪文と化す』必要があるためにその量は極めて膨大で、まともに唱え切るには数百年単位の時間を要する。
『術式の無駄を省いて詠唱の量を削減する』『詠唱を細かく区切って親から子へ詠唱を少しずつ受け継がせる』
などと言った方法でどうにか発動させようとする魔術師もいるが、いずれの方法にも無理があり、寿命のない吸血鬼にでも詠唱させない限りは実現不可能とされていた。

しかし、サラサとエイルはヘカテーの『逆説』を利用する事で詠唱を極限まで短縮。歴史に幕を降ろされる前に発現し、完全復活を遂げた。

・アルティメットルーティン
「すべてを支配する王の所作」と目される、究極のルーティーン。
一言で言えば、強く思い込むすることでそのイメージを現実にするというもの。

例を挙げるとストレスを感じていると思い込むことで一瞬で胃に潰瘍を作ったり、逆に治療したり、勝つイメージにより技の可能性を引き上げることができる。
また、全てのイメージは体の中だけではなく外にも放たれる。
イライラしている人は周りにイライラを与え、愉快な人は周りの人間をも楽しくするように、強く未来の映像をイメージすることで自分や相手だけではなく周囲にもそのイメージを無理やり押し付けることが出来る。

しかしそれには何が起きても動じない集中力と自己暗示にも似た圧倒的な思い込みと一部の隙もない自信が必要となる。
また、困難なイメージを実現するには莫大なエネルギーを消費する。

サラサはこのルーティンと黄金錬成(アルス・マグナ)を組み合わせる事で、『使いたい時に強い意思を込めて言葉を放つとその通りに現実を改変出来る』錬金術へと改変した。また、このルーティンと錬金術の相性は抜群で、サラサに無限の可能性を与えてくれる。
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