会場は盛り上がりを見せる。人類側は6勝4敗。神側は4勝6敗。人類側は後3勝すれば生存が約束される。神側はこれ以上負ける事はプライドが許さない。
試合会場は嘗てない程に熱気に満ちており、ヘイムダルは大歓声に負けじと声を上げる。ヘイムダルは再び鳥の運ぶブランコに跨っていた。ステージは夜の影に覆われてよく見えないが、どうやら都市部のステージのようだ。但し、不思議と水の音が響く。
ヘイムダル『待たせたな野郎共!!第10回戦は人類側の大逆転勝利に終わった!!しかし、まだまだ油断は出来ないぜ!!いよいよ此れから、第11回戦の幕開けだぁ!!!』
神々&人類『『『『『ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!』』』』』
ヘイムダル『今回は何と、神側が人類側に有利なステージを自ら用意してくださった!!そのステージが此れだ!!』
ヘイムダルが指を鳴らす。
月明かりが闘技場を照らし、ステージのビル群の窓から明かりが灯される。
しかし、それはよく見ると、大地に立つステージではなかった。
無数のビル群が並ぶこのステージは、ビルの下が水で満たされていた。まるで水没した都市のようだ。
ヘイムダル『此処は水没した都市を模して創られた、神側代表と人類側代表がそれぞれ有利に戦えるよう設定された水没都市!!神側は人類側の代表について調べた上で、このようなステージを用意された!!』
神々『『『おおっ!!』』』
神々が感心の声を上げる。
つまり、今回のステージは神側が敢えてハンデをくれた。そのように思える神々と人類。しかし、このステージにした本質は其処ではない。
ヘイムダル『だが自惚れるな人類よ!此れはハンデのようでハンデではない!このステージを敢えて創り上げたという事は、神側にとっても有利なステージという事だ!!』
人類『『『ッ!!』』』
つまり、人類側の代表に有利に見えるが、神側にとってもそれは同じという事だ。
人類『ハンデじゃねえって訳か……』
人類『お互いに有利なステージにするなんて、随分公平な神様なんだな』
女神『一体どなたかしら?』
女神『楽しみだわ〜』
女神達も注目する中、いよいよそれぞれの代表の自己紹介に入る。
――――――――――――――――――――――――
遡ること数分前。
ケイローン「やはり来るのですね」
ケイローンは神側の正門に通じる廊下を歩いていると、其処で多くの弟子達や家族
アキレウス「当たり前だろ。先生の戦いを見届けない弟子がどこにいるんだよ」
ヘラクレス「俺達は先生の戦いを見届けたいのです」
アスクレピオス「それが今の僕達の使命だからね」
カストロ「今の俺達のやるべき事だ」
ポルクス「私達の師の戦いを、この目で見届けますよ」
イアソン「俺達の先生は強いからな。期待してるよ」
『ギリシャ神話:ヘラクレス&Fate/Grand Order:アキレウス&アスクレピオス&カストロ&ポルクス&イアソン』
彼等は全員、ケイローンの弟子達だ。ケイローンの健闘を、見届けに来たのだ。哀しげな雰囲気を隠し切れないが、それでもケイローンの奮闘を期待しているように見える。
ケイローン「仕方ない弟子達ですね」
ケイローンは弟子達の見送りを受けて、嬉しさが込み上げる。
アルテミス「やっぱりここに居ると思ったわ」
アポロン「探したぞ君達」
二人分の足音と声が聞こえて、ケイローン達が背後を振り返ると、アポロンとアルテミスが居た。
ケイローン「アポロン様とアルテミス様どうしてここに?」
アルテミス「私達だけじゃないのよ」
アルテミスがそう言った後、奥から足音が聞こえる。すると、ケイローンの妻と彼の子供達が現れた。
???「あなた、応援に来ました」
『ギリシャ神話:カリクロー』
ケイローンの子供達『父さん』
ケイローン「皆……!来ていたのですね!」
カリクロー「ケイローン。貴方が心配で来たのです」
???「大丈夫だよ母さん」
???「そうだよ。父さんは強いもん」
???「私達は父さんを信じるもん」
???「心配しなくて大丈夫だよ」
『ギリシャ神話:オーキュロエ&メラニッペ&エンデイス&カリュストス』
オーキュロエ、メラニッペ、エンデイスの三姉妹、そして息子のカリュトスも、父ケイローンを応援しに来たのだ。かつてオーキュロエは、ケイローンとアスクレピオスの運命を予言しようとして馬に変えられてしまい、メラニッペも神に願い星座に変えてもらったが、ケイローンの功績が認められて人の姿に戻ることができた。
カリクロー「ケイローン出来ることなら貴方にも、貴方と戦う人類代表にも、戦ってほしくない気持ちがあります」
ケイローンは優しく微笑みながら答える。
ケイローン「分かっています。ですが私も代表の一人として、悔いのないように戦いたいのです」
ケイローンの覚悟を決めた目を見て、カリクローも納得する。
カリクロー「ケイローン………分かりました。貴方や、貴方と戦う人類代表の試合を見届けます」
子供達はカリクローの元に寄り添う。
アポロンとアルテミスは拳を出した。義理であっても、二人にとってケイローンは最高の息子だ。
アルテミス「ケイローン。貴方が本当の子でなくても、私達は貴方を応援してるわ。夫も観客席で応援してるわよ」
アポロン「無論、君は俺達の誇りだ。お前の覚悟と試合を見届けよう。頑張れよ、我が息子よ」
ケイローンも二柱に拳を合わせた。
ケイローン「私も義父上と義母上から多くの事を学びました。それを総て、出し切ります」
拳を離してケイローンは別れの言葉を言った。
ケイローン「行ってきます」
アポロン&アルテミス「「行って来い/行ってらしゃい」」
その時、神側の門の扉が開く。振り返ったケイローンと弟子達は闘技場に向かい、アポロンとアルテミス、カリクローと子供達は、出場の道から闘技場の席へ戻っていく。ケイローンの試合を、この目で見届ける為に。
――――――――――――――――――――――――
そして闘技場にて、先ずは人類側からの紹介に入る。
ヘイムダル『先ずは人類代表からだ!!人類代表として立ち上がるのは、嘗て戦争にて活躍した艦の名を継ぎ、その力を引き継いで戦う、この娘だ!!』
ヘイムダルは人類側の扉を指差した。その時、人類側の扉が水を押し退けて開く。
ヘイムダル『少女達は“艦娘”と呼ばれる、嘗て世界大戦に製造され、そして沈んだ艦の名と力を引き継いで産まれた!!世界の海を征した謎の存在、深海棲艦を倒す為に!!』
ヘイムダルの実況と共に、開いた扉から一人の少女が海を駆けるように現れた。ローラースケートで器用に移動するように、しかし足元から船の移動による水飛沫を起こしながら、闘技場内へ進み続ける。
ヘイムダル『彼女は駆逐艦でありながら、多くの艦娘達の運命を変えた!!本来沈み行く艦娘達の運命を変え、そして未来さえも変えてみせた、特型駆逐艦1番艦!!』
その単語を聞いた途端、人類側の観客席に居るある男達が立ち上がる。
艦長達『全員、敬礼!!』
それは、嘗て彼女が艦だった頃の、歴代の艦長達であった。艦長達の号令と共に、嘗て乗っていた船員達が敬礼を行う。
そして、闘技場の中心に到達した彼女は止まる。
ヘイムダル『その名は―――――ふううぅぅぅぶきいいいいいいいいいぃぃぃぃぃっ!!!!!』
吹雪「特型駆逐艦1番艦、吹雪!!抜錨します!!」
吹雪は敬礼を行う。海軍の男達、そして人類側に向かって敬礼を行う。
『艦隊これくしょん-艦これ-:吹雪』
睦月「吹雪ちゃーん!頑張れー!」
夕立「応援してるっぽーい!」
???「貴女のお陰で、私はまた睦月ちゃんの所へ戻って来られたわ。だから、貴女も帰って来て。勝ったら皆で、お祝いするわ」
『艦これ:如月』
???「吹雪ー!負けんじゃないわよー!!」
???「Держись!」
???「応援してるわよ〜!」
???「ファイトなのです!」
『艦これ:暁型駆逐艦、暁、響、雷、電』
???「吹雪さん。頑張ってください」
???「私も応援しているわ」
『艦これ:赤城、加賀』
???「吹雪さん。貴女は私達の希望です。此処でお待ちしています!必ず勝って、帰って来てください!」
『艦これ:大和』
???「大井っち。吹雪ちゃん、帰って来るよね」
???「ええっ、北上さん。吹雪は負けません」
『艦これ:北上、大井』
???「吹雪ちゃん!頑張れー!」
???「絶対負けんじゃないわよー!!」
『艦これ:翔鶴、瑞鶴』
???「ヘーイ!ブッキー!頑張るネー!!」
???「気合!入れて!頑張れー!」
???「榛名も応援しています!頑張ってください!」
???「吹雪さん。金剛型姉妹全員で、貴女を応援します。必ず勝ってきてください」
『艦これ:金剛、比叡、榛名、霧島』
人類代表の吹雪を応援する艦娘達。彼女達は吹雪のお陰で運命が変わり、生き残る事が出来た。吹雪を応援しに来るのは当然である。
そして、神側の紹介に入る。
ヘイムダル『続いて、神代表はギリシャ神界の偉大な賢者である、この御方だ!!』
ヘイムダルが神側の扉を指差す。その時、神側の扉が開いた。そして、神代表の弟子達が姿を現した。船を漕いで州水の上を進む英雄達の姿に、神々は歓喜と興奮のあまり大歓声を上げる。
神々『アキレウス様だ!!格好いい!!』『ヘラクレス様!!バンザーイ!!』『アスクレピオス様!!最高のお医者様だー!!』『カストロ様とポルクス様!!ふたご座の英雄兄妹だー!!』『イアソン様ー!!アルゴー号の船長!!イケてるぜー!!』
神側の観客席が大歓声に包まれる。ギリシャの英雄達が此れだけ集ったのだ。大歓声を上げて彼等を歓迎するのは当たり前だ。
アキレウス「やれやれ。先生が来たらもっと騒がしくなるな。行こうぜ」
ヘラクレス「そうだな。俺達にしか出来ない事をやろう」
アスクレピオス「まどかとほむらが釈迦とレッドリボン軍撃退に向かった以上、先生を見守るのは今の僕達の使命だからね」
カストロ「見届けよう」
ポルクス「私達の師を」
イアソン「ああっ、見届けよう。先生の戦いを」
弟子達が2列になり、道を空ける。そして、開いた神側の扉から、彼がが歩いてくる。水没都市にも関わらず、その水の上を歩いている。
ヘイムダル『この御方は、父である巨人族の王クロノスと、母である女神ピリュラーの血を受け継いだ、ギリシャ神界最強の三兄弟、ハデス様、ポセイドン様、ゼウス様の異母兄弟!!』
人類も神々も驚愕する。巨人族の王クロノスの血を受け継ぐ。それだけでも強大な力を持っている事を、大半の者達が理解出来た。
神側の英雄達も人類側の英雄達も、次の代表の正体を察する。
ヘイムダル『そして太陽神アポロンと月の女神アルテミスから知恵と技術を学び、弟子達は彼の知恵と技術を受け継いだ!!』
弟子達はそれを誇りに思う顔をしており、夜の闘技場を照らす街頭とビル群の光に加え、船に乗る弟子達の周りに太陽の様な温かさが照らされる。
ヘイムダル『十二の難行を突破し、半神半人の神へと昇った剛勇無双の大英雄ヘラクレス
多くの戦場やトロイア戦争を、不死の力と無双の力で戦場を駆け巡った一騎当千の大英雄アキレウス
医学の腕で、生と死の理を崩壊させる死者蘇生を作り上げた医術の神アスクレピオス
船の守護神であり、兄妹神カストロとポルクス
アルゴー号で多くの英雄達と旅をした、冒険者イアソン
全ての魔法少女を救った希望の女神、鹿目まどか
鹿目まどかと一体化した愛の悪魔、暁美ほむら
全ウマ娘の祖である三女神、ゴドルフィンバルブ、ダーレーアラビアン、バイアリーターク!!全員がかの御方の弟子達である!!』
そして、大賢者は水の上を歩き終えて、吹雪の前に立つ。お互いの距離が10メートルも離れているが、互いにとって命中させやすい射程距離である。
ヘイムダル『天界、地上界、神や人類、そして神話に、己の名と師の名を広げた!!』
大賢者はその手に弓を顕現し、右手に持つ。
ヘイムダル『全ての英雄に問おう!!この御方こそギリシャ神話の大賢者!!その名は―――――ケイロオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!』
『Fate/Apocrypha:ケイローン』
ケイローンは登場した後、神側と人類側の観客席に微笑んだ。その瞬間、神々が大歓声を上げる。闘技場が揺れる程の大歓声だけではなく、彼の偉大な功績を尊敬してる神々は立ち上がり、右手を心臓の位置に当てる。女神や妖精は黄色い歓声を上げ、美の女神達も静かに黄色い歓声を上げて恋する乙女顔になっていた。
女神「何て高潔な姿なのケイローン様♥その姿を私だけを見てほしいわ♥」
女神「抜け駆けは許さないわよ!って言いたいところだけど…………その気持ちは一緒ね♥私もケイローン様の高潔な姿を独り占めしたいわぁ♥」
そして、人類側でも反応があった。
ゼンノロブロイ「す、凄いです!!アレが、本物のケイローン!!ヘラクレスにアキレウス、アスクレピオスにイアソン、カストロとポルクスまで!!」
マックイーン「テイオーと闘った三女神様を鍛えた!?でも、アレスやヘラクレスがトレーナーだったのでは!?」
シンボリルドルフ「いや、トレーナーとしてではなく師として鍛えていたのだろう。それにしても、三女神様を鍛え上げた師匠とは、どれだけの実力者なのだろうか」
ゼンノロブロイは英雄の物語が好きだ。故にケイローンの事も知っていた。マックイーンやルドルフは、名家の出身だ。三女神を鍛えたというケイローンに注目している。
そしてケイローンは、人類側の観客席を見た時、彼の知る一人の少女の姿を見た。
それは、彼が嘗て弱体化した状態で召喚された時、彼のマスターを務めた一人の少女であった。
ケイローン(やはり見に来ておりましたか…皆さん…そしてマスター………貴方方の敵として立ち塞がる私を、どうかお許しください)
ケイローンは心の中で謝罪を飛ばした。そして、人類代表の吹雪と向かい合う。
ヘイムダル『ギリシャ神界の大賢者ケイローン様!!吹雪型1番艦吹雪!!果たして勝つのはどちらか!?ふぁいっ!!』
このステージになるなんて、誰も予想してなかったでしょうね。