忘れられた者たちの叶わぬ恋 作:幻想郷の恋路管理者
初めての恋
とある神社の境内にて、男が竹箒を持ち、掃除をしている。
この男の名は�����、良く愛称で××と呼ばれている。
その××が掃除を終え、神社の横へと回り込む。
そこには一人の巫女の姿、陽の光を縁側で浴びてお茶を啜っていた。
「霊夢さん。掃除終わりましたよ。次は..何をすればいいですかね?」
「あ〜..お疲れ様。今日は少し早かったわね。もう溜まってることも無いし、手伝いはもう大丈夫よ」
××が「霊夢」と呼んだ少女は特に目線も合わせず、淡々と返してきた。そして、再度お茶を口に運ぶ。
××も霊夢の横に座り、持参してきた水筒で休憩をとる。
これは、いつもの光景と言っても過言では無い。
いつも××は神社に訪れ、霊夢の手伝いをする。初めの頃は霊夢も一緒に作業していたのだが、完全に××に任せっきりになっていた。
二人とも、明るい陽射しをその身体で受け止め、くつろいでいると、ふと霊夢が××に問いかける。
「そう言えば..なんでアンタは私の手伝いをしてくれるの?そりゃ..手伝ってくれるのは嬉しいのだけれど、ここまでしてくれなくても別にいいのよ?」
××はキョトンとした顔で霊夢を見つめ、何だそんなことかと言わんばかりに笑顔になって返答し始める。
「それは霊夢さんに恩がありますからね。霊夢さんが居なければ、今頃僕はこの世から姿を消していた程の恩です。それを全部返しきれたと思うまでは、勝手ながらも手伝わせてもらうんですよ」
恩返しは××にとって、とても大事な事だった。受けた恩は何かしらで返す、それが××の性格だったのだ。
そのためか、××は人里でも人望が厚く、貧しい身でありながらも、周りと助け合って、割と楽に生活出来るほどだった。
「恩ねぇ..。私そんな人の命に関わるような事したっけ...。言っても妖怪退治ぐらいよ?」
「その妖怪退治ですよ。人里の人達も、何人か助けられているんですから。まぁ、命の危機に瀕している時に助けられるのは中々いないと思いますけどね」
霊夢は神社の巫女なのだが、この世界に住まう人達を、妖怪の被害から守る仕事を代々引き継いでいる。
初代の巫女は守り神と言われたり、祀られたりする程、感謝されていたそうだが、現在は人里から少し離れた場所に神社が位置し、妖怪退治はして当たり前のような風潮が流れていた。
それでも、××の様に巫女の重要性を理解する者はもちろん居る訳だが..
やや時間は進み、××が神社へ足を運ぶようになって一ヶ月程経って、霊夢はいつも通り××の訪れる時間まで自分で掃除をする。
大体日が昇って二から三時間ほどすれば現れるのだが、今日に限って姿が見えない。
「..××...何か用事でも入ったのかしら」
誰も来ない境内で呟き、掃除を続ける。
結局、掃除は一人で終わり、昼を過ぎても来ることは無かった。
きっと、用事でも入って来れなかったのだろうと思い、パトロール兼妖怪退治へと出かける。
その日は、××と会う事は無かった。
また次の日、昨日と同じく××を待つが..来る気配が無い。
「全く..用事があるなら先に言って欲しいものだけれど...」
ため息を着いて、若干俯く。数分、何も考えずに突っ立っていると..ここで、霊夢は一つ疑問を抱いた。
「..あれ?そう言えば何で私..××の事待ってるんだろう...別に、来なくてもやるべき事はするんだし...集中だって...できるし」
依存、という訳では無い。普通に過ごす事は出来る。特に××が来なくとも生活や仕事に支障が出るということも無い。
だが、何故か頭の片隅で××の事を考えてしまう。
霊夢はこの事が何なのかよく分からなかった。だが、××の事を考えれば考える程、胸が苦しくなるような感覚に襲われる。
「..早く会いたい....わね」
心配になる気持ちを抑えて、掃除を再開した。だが、××は来ない。
××の使う竹箒も用意して、もてなしの菓子も準備しているのに。
今日も来ない。明日も来ない。明後日も....
一週間、二週間と時が経ち、時間が解決すると思っていた謎の胸の苦しみは増すばかりだった。
忘れようとしても、××の顔が離れない。
もういっそ、こっちから会いに行こうか、迷っていた時だった。
「霊夢さーん..居ますか?」
鳥居の方から、聞きなれた声が響いた。霊夢は反射的に目を向ける。
そこには待ち焦がれた××が立っていた。
「えぁ..××...?」
霊夢は、言葉を失ってしまう。自分でも分からないが、きっと嬉しいのだろう。また会えた事に、有り得ないほどの嬉しさを感じたのだ。
霊夢は竹箒を持ちながら、××の近くへと走り出す。
そのまま、××の肩を掴み、そこに居るのだと、実感する。
「えっと..霊夢さん?ど、どうかしましたか..?」
「どうしたもこうしたも無いわよ!アンタ今までどこ行ってたの!また妖怪に襲われたのかと心配してたのよ!」
霊夢は涙が出そうな程嬉しい感情を抑え、××に大きな声で問いかける。
自分が欲していた物、時間はこれだと更に嬉しさが増していく。
「いやぁ、心配させてたならすみません..。少し家の方で用事がありまして、ココ最近は忙しくて来れなかったんですよね」
よかった、と心の中で思う。きっと今とてつもなく笑顔なのだろう。抑えきれないほどの感情が零れ出していた。
「あ、それで、霊夢さんにちょっと伝えたい事があって今日来たんですけど..今時間いいですか?」
「つ..伝えたい事?別に時間は幾らでもあるけど..」
「あぁ、それなら良かったです。ちょっと大事な事なので..」
何なのだろうかと霊夢は考える。もしかしたらまだ用事が溜まっているのかもしれないと思い、若干不安だが、××の肩を離し、耳を傾ける。
「実は、僕の余命が..あと一年も無いみたいです」