忘れられた者たちの叶わぬ恋 作:幻想郷の恋路管理者
日常
天狗や河童が住む妖怪の山。
この山は秋に惚れ惚れする程の紅葉を見せる事で一部の人には有名。
だが、天狗のナワバリ意識は高く、迂闊に入ろうものなら怒りをかってしまう。
そんなプライドが高く、独立した種族が天狗なのである。
天狗の世界には、上下関係が存在する。
大天狗と呼ばれるトップ。平たく言えば、社長の様な存在で纏めることと仕事の管理も全て行う。
勿論、力も一番強く、時期大天狗を選ぶ際には、頭脳と力、バランスよく持つ人材が選ばれる。
これはまだ、現在の大天狗が選ばれる前の出来事。何十年も前の、紅葉の様に赤く染った過去の話....
季節はまだ春。
冬の名残がまだ残り、桜も蕾をつけ始める頃。
とある男と、女が開けた場所で睨み合う。
「××..。お前はどれだけ喧嘩を売れば気が済むんだ!縄張りに入ったからとて、直ぐに追い返す訳では無いんだぞ!?」
××と呼ばれた男は、気だるそうに女の前に立ち、ため息混じりでその言葉に反論し始める。
「ンなピリピリすんなっての、そんなンだからお前はカタブツって言われんだよ。それに、俺の事を知ってるなら分かるだろ?ナワバリを荒らされるのが大の嫌いだってな。もしかして..忘れちまったかぁ?めーぐーむーー?」
××はポケットに手を突っ込んだまま、龍と呼ぶ女性の顔に近づいて挑発する。
龍も、流石に苛立ちを感じ歯を食いしばりながら一歩踏み込んで言葉を返す。
「やはり何度言っても聞かんのは..相変わらずだな××..!その悪い頭を叩いて直してやろうか?」
まさに一触即発の状況。傍から見れば火花が飛び散ってもおかしくない程に、睨み合い、互いに拳を握っている。
鶯の鳴き声が辺りに響き、反響し終わった瞬間、まるで大きな風船を割ったかのう様な音が鳴り響いた。
龍が××に向けて鈍器を振りかざし、それを××が手で受け止めた音だった。
それを皮切りに、常人なら目に見えないと言っても過言では無い速さで戦闘が始まる。
辺りには突風が起きたかのように風が吹き、他の天狗達もその方向を向いていた。だが、他の天狗達は「またか」や「また始まった」などと言い、止める気が無かった。
何故止める気が無いのか、それは勿論日常の出来事だからなのだ。
××が何かしら行動を起こし、龍がそれを叱る。そうしたら、ほぼ十割喧嘩になる。
規律を重んじる故に慎重すぎる飯綱丸龍。
後先考えない故に躊躇をしない××。
なんの噛み合いもなく、いがみ合いしか起こさないこの二人、実は時期大天狗の有力候補だった。
龍は自身の中で規則を作り、慎重で正確な結果を見せている。それに対し××は自身の縄張りに入る者は許可の貰っている者以外、全てに力で圧を掛けていた。
この二人に力があると思い込む天狗達が挑んで行ったが、傷を付けることも出来ず、帰らされたと言う。
そんな二人は、今日も殴り合う。
「龍..そろそろそのキレやすい性格を直したらどうだ?他の奴らも迷惑してんぞ?」
「うるさい馬鹿が、この性格になったのは誰のせいだと...」
龍が手数で攻め、××は重い一撃で防ぎ続ける。
「誰のせいだと言われても、お前が勝手に気にかけんのが悪いんだろうが...。俺は頼んでねーからな!」
「んなっ..!勝手に気をかけるって....私の言ったこと..覚えて...」
××が口調を強くして龍に反論すると、いきなり龍が口篭り、顔を伏せて攻撃に力が入ってくる。
××は不思議に思うが、龍は自分と並ぶ強さを持つ天狗、油断大敵の為あまり考えない事にした。
結局、勝負が決着着く頃には××の拳が龍の鳩尾に入り、龍は悶絶していた。
どちらも攻撃を受け合い、ボロボロになって向き合っていた。
「..ったく、これに懲りたら気にかけんのは辞めろよな。お前と戦うのは好きだが、間違って殺しかねん」
××はそれだけを言うと翼を大きく広げ、その場から飛び立った。
一人残された龍はゆっくりと立ち上がり、深く呼吸する。
「......××の奴、昔約束した事忘れてるじゃないか...」
飛んで行った方向を眺めて、そう呟いた。