忘れられた者たちの叶わぬ恋   作:幻想郷の恋路管理者

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いつから愛した

龍は××と戦闘した後、ボロボロのまま家へと帰り、縁側で酒を呑んでいた。

いつもならば余裕で一本は呑むのだが、まだ一杯目も飲み切ってないほどに、とある事を考えていた。

 

それはもう何年か前も忘れる程遠い昔の事。

龍はまだ幼く、新米の天狗として働いていた。

縄張りの管理は上がする為、ただ巡回するだけの仕事だった。

縄張りに入る者が居るなら警告し、聞かないようなら武力行使。簡単で一番危険な役割だった。

 

とある日、龍がいつも通り担当する場所へ向かうと、そこにはもう一人の天狗がいた。

それが××であった。

木の上に立ち、遠くを見渡す様に目を細める××に龍は語り掛ける。

 

「ねぇ、貴方は誰?ここは私の担当の筈だけど」

 

そう声をかけると、××は振り向き、龍の前に降りてきた。

 

「俺は××、ここを担当する奴を手助けして欲しいって言われてな。待ってたんだよ。アンタは..めぐむ?だっけ...まぁいいや、よろしくな」

 

そう言って××は握手を求めるかのように片手を前に出すが、龍はその手を無視しいつもの定位置に向かう。

 

「おいおい..シカトは無いだろ?折角仲良くしようと思ってんのにさぁ」

 

「..私に馴れ馴れしくしないで。仕事の邪魔だから」

 

龍はハッキリと言うが、××はそんな事関係無いと言わんばかりに隣に居続ける。

たまに話しかけてくるが、龍は全てに無視を決め込んでいた。

その日は終わり、次の日もまた次の日も同じように隣には××。

龍にとっては邪魔で仕方なく、何とか辞めてもらえる様に反発するも、全て無駄だった。

 

そんなある日、堪忍袋の緒が切れた龍が強硬手段に出る。

いつも通り××が横に居るが、話しかけてくる瞬間に手に持っていた武器を××に向けて振る。

 

「あっ....ぶな....何だよ急に..」

 

間一髪で避けていた××は顔を引きつらせ、龍を見つめる。

龍は舌打ちをした後、話し始める。

 

「ここ最近、貴方が居るせいでストレスが溜まっていくんですよね。なので、ここで決闘をしましょう。私が勝ったら金輪際、関わらないように」

 

龍は力には自信があった。下っ端の中では一番と言えても良いほど圧倒的な自信があった。

だが、××は怯むことも無く笑顔で答える。

 

「なら、俺が勝ったら..この状態を続けさせて貰うぜ!」

 

龍も××も、了承の上の決闘。

それぞれ数メートル程離れた場所に立ち、龍が手のひらほどの大きさの石を上にほおり投げる。

それは綺麗な放物線を描き、地面へと落ちた瞬間、戦いの火蓋は切られたのだが...決着はすぐについた。

 

それぞれ一直線で相手の元に向かい、拳が衝突、互いに防ぎ、避け、殴り合う。

××が拳を大きく外し、龍がそこを突こうと蹴りを入れようとしたが、××の身体がしなり、蹴りを避けた瞬間に××が逆に蹴りを決める。

腹に大きく入った蹴りは、龍を仰け反らせるには十分。そのまま腹を抑え、龍は地面へと尻餅をつく。

龍が顔を上げた頃には、目の前に××の拳。もうダメだと目を瞑ったが、××はデコピンで勘弁してやった。

 

「な..殴らないのか...?」

 

龍が痛みで泣き顔になりながらも、××に問いかける。

 

「殴るわけねぇだろうがよ...お前とこれから仲良くすんのに、顔を傷つけちゃ失礼だしな。..ほれ、手を取れよ」

 

まるで余裕かと言わんばかりにそこに立つ××に、初めて龍は悔しいと思った。初めて他人に嫉妬をした。

だが、決闘前に誓ったことは守らなければ行けない。

××の手を取り、立った後に××を軽く睨み一言。

 

「納得が行かない。再戦を申し込むわ」

 

それを聞いた××は一瞬、困惑の表情を見せたが直ぐに笑顔で答える。

 

「再戦はどうぞご自由に、だが今日はもうダメだ。最善の状態じゃないとな」

 

そう言って××は蹴った箇所を軽くつつき、龍はまた舌打ちをするのだった。

この日以降、毎日の様に戦闘が行われるようになった。

勝率は××の方が多いぐらいで、大して差は無かった。

だが、実戦というのは大切なもので両者ともメキメキと力を伸ばしていき、簡単に昇進する事となった。

 

昇進後は、巡回をする事はあまりなく、自分の下に就いた者たちに担当の割り当てと縄張りの管理がほとんどだった。

それでも、ほぼ毎日行われるよう決闘は終わらない。天狗の中では、二人の戦闘を見て恐怖する者が出るほど激しかったそうだ。

そんな日が続く中、××が決闘終わりに呟く。

 

「やっぱ..俺には龍が居ねぇとダメだな」

 

勿論、龍にもこの声は聞こえており、呆れたような口調で返す。

 

「お前は何を言っているんだ...気持ち悪い。私が居なくても十分強いだろう」

 

「あぁ〜..いやいや、そういう意味じゃなくてだな...まぁいいや、忘れてくれ」

 

××はへらへらと笑っているが、龍は何を言いたいのか全く分からなかった。

忘れろと言われれば忘れられなくなる訳で、今でも考える事がある。

少しの間、二人に沈黙が続き、龍が帰ろうと立ち上がった時、××が一言

 

「龍、もし俺が間違えた道に行くようなら止めてくれ。俺はそんなの自分で分からねぇからよ」

 

「...はぁ?何を言って...別にお前が変な事をする様なら、殺す勢いで行くわよ」

 

龍がそう答えると××は有難いと言い、飛び去っていった。

終始何も理解する事の出来なかった龍だが、後々理解する事になる。

 

また日は飛んで数ヶ月後、龍はいつもの様に仕事をこなしていると、緊急の連絡が届いた。内容は単純で難しいものだった。

 

「博麗の巫女が襲来、戦える者は縄張りを守る為援軍を頼む....ですか。時間があまり無いですが..巫女ならば行くしかないですね」

 

龍はため息をついて、その場から立ち上がり飛び上がった。

 

巫女が暴れている場所から遠く離れず、視認できる場所で地面に着く。龍が見た先には、縄張りを守る為戦う天狗達と一方的な蹂躙を行う巫女の姿があった。

だが、龍が思った事は巫女の事では無く、××の事だった。

巫女が侵入したのは××の管理下である場所なのだった。彼の性格上、巫女だろうと追い出そうと戦闘するだろう。

 

「...無事だと良いんだがな」

 

そう呟き、龍は巫女の元に向かう。そして、巫女に一言。

 

「博麗の巫女!ここはお前の来る場所では無い!何用で我らの縄張りに入る!」

 

そう言葉をかけると、天狗達と巫女は攻撃の手をやめ、全員が龍の方向を向く。

 

「あら?何用と言われても、ただ天狗を間引きに来ただけよ。最近、人里の上空を遠慮なく飛ぶ輩が居てね。言っても聞かないもんならこうなるぞって実行してるだけよ」

 

巫女がそんなことを話すと、それを聞いていた天狗達は巫女に反論の言葉をガヤガヤと並べ続ける。龍も、巫女が何を言っているのか分からなかった。だが、ここで止めておかなければ甚大な被害を受ける。

そう思い、巫女と対峙するが、地面に降りた瞬間に信じられない光景が広がった。

 

「ここまで荒らしおって..尚更やりすぎと言いたいところだな」

 

地面には何体もの天狗達の死体。まだ弾幕ごっこなんて生ぬるいゲームは存在しない。全てが殺し合いの、命をかけた世界だった。

これ以上、被害を出しては行けない。そう思った龍は戦闘を始めるも、劣勢にしかならなかった。

数発は当てられるものの、速さも力も劣っていた。相手は人間だが、霊力を持ち身体は尋常ではない程に強化される。

数十分は時間を稼げただろうか、流石に限界で巫女に首を掴まれる。

 

「が..離せ....この..っ!」

 

抵抗するも、巫女の手には力が入る。メキメキと、体からなる筈のない音が全身に響き渡る。意識が遠のいていく。

すると、巫女がいきなり手を離す。

 

「..強い存在は残して置いた方が良いわね。上下関係を重んじる種族なら、上の存在には逆らえないわよね...これは失念ね。まぁ、ここに来て直ぐに襲いかかってきた強かった男天狗は生きてるか分からないけどね」

 

意識が薄れゆく中、そう呟く巫女の姿があった。

××は...生きているのだろうか..そう思っても、意識は暗く落ちていく。

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