忘れられた者たちの叶わぬ恋 作:幻想郷の恋路管理者
博麗の巫女が襲来し、天狗たちを何人か葬った後、龍は部下の天狗に治療されて目を覚ました。
首を絞められた為か、若干呼吸がしづらい。一旦深呼吸をし、辺りを見回していると、治療されている天狗の中に見知った姿があった。
服もボロボロに破け、全身から血を流している天狗は、××だった。
龍は立ち上がり、向かおうとするが、治療していた天狗から止められる。
「龍様!今は治療中ですので、動かない様に!」
「あ..あぁ、分かった...それならば聞きたいのだが、××の管理場所の被害はどうなっている?」
言われた通りに動かないようにはするが、××の状態が気になるので聞いておく。聞いた所でどうにかなる話でも無いが..
「被害としてはほぼ半壊状態です。大半の天狗が死に、今埋葬をされている最中ですね。あとは..××様が意識不明と言うところです」
「...そうか.....意識不明..か」
何故か心が傷んだ気がした。死んではいないのだから安心するところだが、××が傷付いたと聴いただけでも自分も傷付けられた感覚に陥る。
今思えば、何故痛いのかは明白なのだが、この時には考える事が出来なかった。
その日は治療に専念し、早めに仕事を終え帰宅した。帰る途中、××が管理する場所に赴いたが、××はどこにも見当たらなかった。
次の日、××が目を覚ましたという知らせを聞いた。いても立っても居られなくなった龍は××の元に急いだが、対面拒否との事だった。
龍は××の傷がまだ完全に癒えていないと思い、帰ることにした。この時、会っておけば何か変わっていたのだろうか...。
日が過ぎ、龍は順調に仕事を進めていると、部下の天狗から驚きの知らせが伝えられた。
「龍様。××様が部下の大半を配属から外したこと知ってますか?」
「仕事の配属を?..知らないが..それがどうしたんだ?部下の入れ替えの際の配属外しは珍しいものではないだろう?」
書類の片手間に話を聞き続ける。
「いや..それが入れ替えではなく、一方的に外し、迎え入れる事も無いそうです。残っているのは補佐と熟練の数人としか...」
龍は気づけば握っていた羽根ペンを落とす。その落ちる音に幾人かの天狗は龍の方を驚きながら見る。だが、龍はお構い無しで話す。
「アイツは馬鹿なのか...。少し××の元に行ってくる。もしかすれば、戻るのが遅くなるかもしれない。それぞれ自分の仕事を終わらせれば帰って良い」
すぐ側に置いてある自身の武器を手に取り、外へ出る。仕事をしていたほかの天狗達は心配の目を向けられていたが、今更引き下がれない訳がある。それも、無意識の上での行動であったのだが..
××の管理する場所まで真っ直ぐに飛んで行く。
今は夏ということもあり、木々は緑に染まって揺れている。
ある程度飛んでいると、目の前にその場で飛び続けている人物を見つけた。その人物は何かを待っているかのように、仁王立ちで飛んでいたのだが、龍の姿を見るや否や..声をあげる。
「龍か...。まさか本当に来るとは思いもしなかった....。それだけ俺の事を心配してんのかね?」
そこに立つのは××であるのだが、龍からすればどうしても××と思いたくなかった。腕や顔に傷跡が残っており、更には性格がねじ曲がったかのように、口調、仕草が豹変していた。
普段の××はふざけてはいるものの、明るい存在で、動きも騒がしい天狗だった。それ故に人望も厚く、人気ではあったのだが...今目の前にいる××は心が荒んでいると思えてしまう程に、人の事を考えるとは到底思えないような状態だった。
だが、龍はここに来た本当の目的を達するべく、質問を投げかける。
「...お前は一体何がしたい。部下を切り捨てたらしいじゃないか」
すると、××は少し考えたような仕草を見せ、ゆっくりと話し始める。
「あぁ..そういやそうだったな。もう呆れちまったんだ....弱いヤツらは足でまといにしかならねぇ。だから、切り捨てた。何か悪いか?」
××は、強さのプライドが異常なまでに高まっていた。龍から見ると馬鹿馬鹿しく思え、心の底から怒りが湧いて出てくる。自分の武器を握りしめ、殴り掛かる。
「...どうした?一直線で殴り掛かるだなんてお前らしくないじゃないか。それだけ怒ってんのか?弱い奴を思ってか?...その考えの方がよっぽどだぜ?」
簡単に××は受け止め、そう囁いてくる。その後はあまり覚えていない。一撃を入れられ、半分気絶していた。
それから、××は段々と考えが荒々しくなっていった。何故そうなったのか、どうして急に弱者に呆れを向けるようになったのか。
ついには自身一人で十分だと、縄張りを一人で管理するようになった。
最初は龍が毎日説得、説教をしに行くも××はまともに聞き入れてくれなかった。
それから何十年も経ち、現在となった。
相変わらず××は強さに大きなプライドを持ち、完全に「力」を体現したかのような存在になってしまった。
どこで間違えたなんて明白だった。
いつ、あの明るい××に戻るのだろうか。いつ、あのうざったくも楽しかった時間へ戻れるのだろうか。
考えても分からない。溜息を一つついた後、縁側にでる。
秋で綺麗に紅葉した木々は落ち着きをくれる。
一つ葉を取り、月にかざしていると...遠くで地が揺れる程、轟音が鳴り響いた...。