「ロブロイを”お借りする”
でいいだろうか――?」
「えっと、ライスの事は気にしなくていいよ。
先にお部屋に戻っているからロブロイさんもクリスエスさんも
ゆっくり楽しんできてね」
私が birthday を終えたロブロイを出迎えると
彼女の同室であるライスシャワーは足早に去ってしまった。
「あの……クリスエスさん……」
「約束を果たしに来た――」
一週間前の事になる。
私がロブロイに申し出たのがきっかけだった。
『誕生日プレントは何が最適だろうか』
『どの方に贈るんですか?私でよろしければお力になります』
『――?
ロブロイに送るものなのだが――』
『え……?わたし……?』
『今から一週間後の3月27日はゼンノロブロイの誕生日。
そう記憶しているが、誤っているだろうか――?』
『いえ!それよりも、どうして私なんかに……』
『今から57日前の1月21日。
お前は私に誕生日プレゼントを贈った。
その時の恩を返したい』
『でも……私はお水だけしか……』
『いや、あの水はいつもより美味かった。
だから、ロブロイ――
私はお前にプレゼントを贈りたい。頼む――』
『頭を上げて下さい!私にとってそのお気持ちだけでも
大きすぎるプレゼントになっていますから!』
『すまない。だが”贈くる”という行為をしなければ
私の恩を返したいという欲求を収められない――
だから、お前の望む物を提案してほしい――
……困らせてすまない』
『それなら……ひとつだけよろしいでしょうか……』
『Everything』
『もし、お嫌でしたら、断ってください……
……お耳を触らせてください!』
『かまわないが、それでいいのか――?』
『は、はい!!』
そのようなやり取りをしてから一週間が経過した3月27日。
ゼンノロブロイの誕生日。
約束を果たす日が訪れた。
私は誕生日パーティを終え寮へ戻ろうとするロブロイに声をかけ
そのまま行為をするのだと思っていたが
彼女は何故か私を学園の裏庭まで案内した。
理由は分からないが
私は私の役目を果たすだけだ。
「本当によろしいでしょうか……」
「Don’t mind」
私は姿勢を下げる。
ロブロイの腕が届くように。
「そ、それでは……失礼します……」
ゆっくりと近づく指先から空気を通して
彼女の心臓の音が耳の中に広がっていく。
――なぜだ?
ロブロイはなぜ、こんなにも動揺しているのだろうか?
故郷に居た頃は気軽に私の耳を触らせてほしいと頼まれていた。
特にレースクラブのに居た太陽の髪色をしたSenpaiからは頻繁に。
だから私にはロブロイが恥ずる気持ちが理解できない――
だが、その疑問を口にすればロブロイは手を止めてしまうだろう。
それでは、私は約束を果たす事が難しくなる。
私は口を噤んだまま彼女を待つ。
段々と彼女の熱が近づいているのが分かる。
――なんだ?
激しい鼓動か何処かすぐ近くで鳴り響いている――
ロブロイからではない。
一体、誰からだ――?
私が疑問を浮かべた直後。
ロブロイの指先が私の耳のすぐ側で制止した。
「クリスエスさん……やっぱり……」
私は咄嗟に頭を動かして
引っ込めようとしたロブロイの指に
自分の耳を押し当てた。
「……!」
ロブロイが声にならない音を上げる。
よくない事をしてしまったか――?
「ふわふわ……ふわふわです……
すごくふわふわです……!」
ロブロイは歓喜しながら自身の指を
私の耳に絡ませていく。
――そうか。
この激しい鼓動は私からだ。
指から伝わる熱が私の心臓を激しく動かしている。
だが、どうして――
ロブロイに触れられると私は――
不意にロブロイの指が離れる。
「へ、変なお願い聞いてくれて、ありがとうございます……」
ロブロイは頬を染め俯きながら呟く。
その耳の内側もほんのりと桃色に染まっている。
「ひゃ!?」
気付くと私はロブロイの耳に触れてしまったいた――
すぐさま手を放すが遅すぎる――
「……すまない」
「い、いえ……」
自分でも何故こんな愚行をしたのか理解できない。
許可を得ず相手の身体に触れるのは許されない行為だ。
どうして私は――
「あ、あの……クリスエスさん……」
思考が整理できない私は口を動かす事さえできないまま
ロブロイは言葉を続ける。
「もっと、触っていただけませんか……」
「……いいのか?」
「はい……」
私は指を震わせながら、彼女の耳を触れる。
私と違って毛も肉も薄い。
彼女の熱が直に私の指へと伝わっていく――
「そ、その……
クリスエスさんの指……
冷たくて気持ちいいです……」
「そうか……」
長いのか、短いのか
計る事のできない時間が経過し
私は彼女から指を離した。
「あ、あの……」
「なんだ……」
「また、お耳を触らせて貰えますか……」
「――かまわない。
……私もいいだろうか」
「は、はい……」
私は彼女と別れ、自室へと戻り
一日を終える為のroutineを済ませ就寝した時も
私の指先に彼女の熱が残っているような錯覚を感じ続けていた――