そうして俺は、私になった
「……」
……?
俺は今、何をしている。
なんで目を瞑って寝てるんだ……?
「……」
目が開かない、それだけで無く、体も上手く動かせないみたいだ。
そもそも俺、何してたっけ……?
……頭にモヤがかかってる、ってのはこう言うことか、鬱陶しいな、これ。
「し、ご……と……」
仕事、そうだ仕事だ。
色々と黒い仕事場だが、俺はそこでの業務を終わらせて……どうなった?
後頭部への圧迫感がある、つまり……俺は倒れているのか、仰向けに。
「……ぅ……」
……倒れたのか?
いや、意識朦朧とするほど何かをした覚えは無い、いつも通りの残業だった、その後、光が俺を……光?
「……」
そうだ光だ、通路の向こう側に紙袋があって、それが光ったと思えば、轟音が響いて……そして俺は、赤い炎に……。
……。
いや何故、意識がある?
生き残っていた?
あれが曲がりなりにも爆弾で、しかも強力そうなソレの爆心地に居た俺が、生きているとは思えない。
「……あ、おい……」
ましてや、瓦礫の中にあるはずの俺の体が、青い空を拝めるか。
否だ……やっと開けた目で、己の異常性を感じさせられるとは思わなかったが。
「……どこ、ここ」
口の方も上手く動かせない、と言うか声が高い。
子供の音域、と言い表せる高さ、動かしにくいが無事そうな手足……まさか、いや、あり得んだろ。
「おき、られない……」
発音できるし赤ん坊とかそのレベルじゃ無さそうだが……なんだこのもどかしさ。
肘を支えにしたいのに、上手く乗せられない。
「……ぁ、でき、た」
よし!
起き上がり、周りの光景を見回して……。
……え。
「なに、これ」
集落、と言うには文明が進み過ぎていて、都会、と言うには少々劣化が酷い。
何の?
……無論、そこに佇む建物の。
「……なにが、あった?」
ひび割れ、今にも落ちそうな看板には、使い慣れた日本語が書いてある。
この場所は日本、である事は間違いない、のだが。
建物はボロボロで劣化していて、ソレを覆う様に植物が生い茂っている。
この状況は何なのか。
戦争……にしては、ミサイルなんかが爆発したような痕跡が無い。
ならば地震……にするには、断層とか倒壊した建物が少ない様に感じる。
つまりだ、つまり……何も分からない。
俺一人で考えても無駄だな。
「……じょうきょう、かくにん」
△△▲△△
「……やっぱり」
悲惨なマネキン達の姿が、一分後の俺にならないことを祈ろう。
服屋……だったのだろう場所の、姿を写す役目を辛うじて残していた鏡で、自身を見て、今の状況に確信を持てた。
長く伸び切った灰色の髪、こちらを見つめる青色の瞳、その様はさながらお姫様、か?
「……」
いや、冗談じゃねぇ。
俺、男なんだが、だったんだが。
見知らぬ場所に、見知らぬ容姿の自分、そして直前の出来事。
何となくだが察しが付くぞ?性転換、TS転生とか言うジャンルじゃねぇのこれ?
「……」
……。
落ち着け俺、パニックになった所で何も変わらん、取り敢えず鏡を見て自身の事を知れ。
「……かわ、いい」
自画自賛だが、自賛だけども!
悲しいかな、己の容姿は、女性としてはとても優れている。
その他……は、何歳だ?
五〜八歳か、その辺りだろうか、近くの男性マネキンの腰よりちょっと高い程度の身長だから……うん、その辺りだろう。
服装は、全体像を見るまでもなく傷だらけ。
だが大きな怪我はない、多分中身も大丈夫だろう。
「……すりきずに、きりきず……くらい?」
あんな所で倒れてたにしては傷も少ないし……どうなってるんだ、一体。
そんな事を考えていたら、何かが俺の体を揺らし始めた。
「なに、これ」
ズシン、ズシン。
一定の間隔で響くソレは、さながら何かが大地を踏み締める様であり、そしてその音の鈍さは……人間には出せない、大型の物だと直感する。
「……ばけもの……?」
普通ならあり得ない、と自分自身で否定している訳だが。
あり得ないのは自分の体や今の状況も同じである。
……大きめのゾウでも歩いてるんなら、まだ良いんだけどな。
「……どう、しよう」
発生源は店の外だ、このまま店の中に入れば隠れる事は簡単、だが。
「それだと、なにも……」
情報が無い、食料も。
衣服や住む場所は、今は度外視しなきゃならないが、食だけは確保しないとだ。
件のバケモノがすぐに居なくなるのかも不明、ずっとそこにいるかも知れないのなら今動いた方が賢明、決まりだ。
「……いくしか、ない」
△△▲△△
「……おお、きい……」
いやマジで、家ぐらいあるなアレ。
大きい手足に、思わず触ってみたくなる体毛、そして鋭く光る牙のような物……原種であるオオカミはあんなんだったんだろうか。
……いや、もう少し可愛げがあるだろ、うん。
あんな厳ついオオカミはなんか嫌だ。せめて凛々しくあってくれ。
そんな事言ってる場合でもない、何だあの大きさ、成長期どころの話じゃないぞ。
……そんな事を考えていた所為か、この時の俺は、背後に迫る誰かに気付かなかった。
「……とに、かく……いきのこらない、と……」
「そうだな、生き残ると言うのは大切な事だよ」
「!?……だれ……!」
「誰、ね……ソレはこちらのセリフだよ、少女」
俺の後ろに居たのは、大柄で、顔の傷が特徴的な男だった。
「まだこんな所に生き残りが居たのか……全く、運が良いのか悪いのか……」
「っ……こた、えて……!」
「……先に問うたのは少女、だったな……ふむ、私は……何だろうな?」
「……」
「失礼、ふざけているわけではないのだが……最近自身の存在に疑問が生じてね……自分探しを兼ねて徘徊していたのだよ」
何だ、この男……と言うか名前……あ。
「……さて少女、君の名前は何かな」
「……しら、ない……ぜんぶ、わすれた」
嘘じゃ、ない。
この体の名前は知らないし……その、恥ずかしながら……自身の名前も思い出せない。
「ほう、では
「いっしょ、に……しないで」
「……そうだな、どうやらキミの方が深刻な様だ、失礼した」
「……」
困った様に奴は手を振っている。
怪しい。
こんな場所に一人で……と言うのは俺にも当てはまる、が。
この男は俺と違い服装もしっかりしてるし、口ぶりからして最近まで何処かで活動してた、みたいな事が聞いて取れる。
「……ふむ」
どうするべきだ、俺は。
逃げるべきか、だがあのバケモノが居る以上大きな音は立てたくない。
立ち向かうにも、大の男と子供の俺では勝敗は目に見えている。
……なんて、考えていたのに。
「ぁ?」
カクン……と、力が抜けてしまった。
……抜けただけじゃなくて、ぜんぜん動かない。
「本当に幸運な少女だった……みたいだな、魔力に耐性もないだなんて」
なんか、頭もふわふわして……。
「……すまないね、見つけてしまった以上見逃すと言う選択肢は、私……いや、我々にはないんだよ、少女」
「ぅ……ぁ……」
……ぁ、これ、やばい……やつ……。
「せめて、キミがあの場所でも幸運である事を願うよ……本当に」
タグのいくつかは保険を兼ねてます。
あと駄文です、タグに追加する必要がありそうな点とかあれば指摘していただけるとありがたいです。
あらすじやその他も、不都合が生じたらその都度編集するつもりです。