願わくば、意味のある死を   作:虚憂

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久しぶり……とは、言えないけれど

「……終わった、かな」

 

 

 クラスメイトからの怒涛の質問攻めを、何とか捌けた……か?

 捌けただろう、うん。

 ただ結構疲れたな、練習していたとは言えど、喋り方や表情に違和感は無かっただろうか。

 

 

「……お疲れ、如月(きさらぎ)……騒がしかっただろ、あいつら」

 

「確かに賑やかだけど、みんな良い人なのは、何となく分かったよ」

 

「疑うって事を知らないからな」

 

 

 悪意みたいな感情は一つも感じられなかったしな……分かる範囲で、だが。

 まあ、人が良さそうだし、騙されやすそうだ……隣の席の彼も含めて。

 そう言った意味を込めて彼を見つめて見る。

 

 

「……何だよ」

 

「何でも無いよ、お人好し遅刻魔さん」

 

「ぐ……あの時は偶然が重なっただけだ」

 

「ふーん……小田(おだ)先生がまた、って言ってたけど?」

 

「それは……その……」

 

 

 言葉に詰まり、何も言い返せなくなる陽真(はるま)君。

 揶揄い甲斐がある、と言うのはこの事か。

 ……おや、向こうから、誰……か……。

 

 

「陽真君」

 

「ん?おお……どうしたんだ、日菜(ひな)

 

「えっと……その、如月、さんに用があって……」

 

 

 ……参ったな、早速出会った、と言うか……顔の良い女子って彼女達の事だったのか。

 

 

「……私に、何か?」

 

「……うん、それで陽真君には……」

 

「あー……了解、席外しとく」

 

「ごめんね」

 

 

 目の前に立たれると、どうしようも無い懐かしさを感じてしまう。

 六年振り、なんて言う事は出来ないし、するつもりも無いけどな。

 ……ハルに、アリス。

 

 

「……レイ、ちゃん?」

 

「……ごめんね、それは多分、私じゃ無いよ」

 

 

 そんな悲しまれると……なぁ。

 やめてくれよ、こっちまで辛くなる。

 

 

「……そう、だよね……ごめん、人違いだったみたい」

 

「大丈夫……まあ、この髪と目の色は珍しいから、その人もきっと見つかると思うよ」

 

 

 どの口が言ってんだ。

 ……。

 落ち着け、ここで暴露しても何にもならない。

 ……俺は組織の人間で、彼女達は、もう無関係だ。

 

 

「……」

 

「えっと……私の名前は如月涼音(すずね)、貴女達は?」

 

「あ、私は花見(はなみ)日菜、で……こっちが」

 

「……伏木(ふしぎ)有栖(ありす)です、よろしくお願いしますね、涼音さん」

 

「花見さんに、伏木さん……よろしくね」

 

 

 ふむふむ、ハルは日菜で……アリスは、そのまま有栖か。

 どっちも良さそうな名前を貰えたんだな、良かった良かった。

 

 

「日菜」

 

「……え?」

 

「日菜、だよ……苗字じゃなくて名前で呼んで欲しいな」

 

「……日菜さ」

 

「呼んで欲しいな、涼音ちゃん」

 

「……日菜ちゃん、ハイ……」

 

 

 押しが強いのは変わらないな!?

 ……結局、アリスの方にも名前呼びをする事となった、うーん……。

 

 

「……何だ、結構仲良く出来てるな」

 

「あ、陽翔君」

 

「日菜達が深刻そうな顔でこっち来た時は心配だったけど、杞憂だったみたいだな」

 

「私達の勘違いだったみたいです」

 

 

 そろそろ良いと判断したんだろうか、陽真君も帰って来ていた。

 ……そう言えばこの三人ってどう言う関係なんだろうか。

 

 

「君達三人って、どう言う関係なの?」

 

「どう言うって?」

 

「いや、転校生(わたし)から見ても仲良いのは分かるけど、付き合ったりしてるのかなって」

 

「「!?」」

 

「……付き合ってねぇよ、()()()幼馴染だ……家が隣なんだよ、俺達」

 

「「……」」

 

「あー……そう言う事なんだ、納得」

 

 

 おっけいそう言うタイプね把握した。

 しかし二人の反応よ。

 一瞬で顔を真っ赤に染めたと思えば、次の瞬間、そんなぁ……みたいな顔に早変わり、失礼なんだけど……ちょっと面白いな。

 

 しかしまあ、このお人好しが相手ならどっちが結婚したとしても安定しそうだな、安心安心……ん?

 いや誰目線だよ俺、人の恋路に俺が何か言う権利は無い。

 

 

「そう言えば、如月」

 

「……ん?どうしたの」

 

「学校の案内ってされたか?」

 

「あ、まだかも……お願いしても良いかな、三人とも」

 

 

 簡単な図は組織の方で覚えたけど、こっちに来るのは初めてなんだよな、俺。

 丁度良い、確認したかった所だ。

 

 

「あ……ごめんね、今日は用事があって」

 

「……私も、この後は難しいです」

 

「俺は大丈夫だな……っし、じゃあ俺が連れて行くよ」

 

「「え」」

 

「……何か問題あったか?」

 

 

 あー……どうしたら良いんだこれ。

 他の人に頼みに行ける程交友関係広くもないけど、二人の心境は何となく察せるしな……どうしよう。

 

 

「……いえ、何も問題ないです」

 

「あ、うん!大丈夫だと思う……」

 

「?……そうか」

 

「あー……じゃあ、お願いするね」

 

「おう」

 

 

 

△△▲△△

 

 

 

「ここが音楽室、であの向こう側にあるのが美術室だ」

 

「へー……結構広いんだね」

 

「広いだけだよ、空き教室も結構残ってるしな……今なら部活作り放題って所だな」

 

 

 ふむ……まあそこら辺は関係無いな。

 

 

「如月は、部活入ったりする予定あるのか?」

 

「うーん、今の所作ったり入ったりする予定は無いよ」

 

「そうか」

 

「これで、教室は全部かな」

 

 

 結構普通の学校してたな。

 模範的な学校にある教室は大体あったし。

 

 

「……あ、そうだ」

 

「?」

 

「如月、まだ時間あるか?」

 

 

 何かを思い付いた、と言う顔で時間を聞いて来る彼。

 ……何を企んでる?

 いやまあ、予定はないけども。

 

 

「あるけど」

 

「……じゃあ、ちょっと来てくれ」

 

「……どこに行くの?」

 

 

 そう聞くと彼は、自信ありげにこう答えた。

 

 

「秘密だよ」

 

 

 

△△▲△△

 

 

 

「ここだ」

 

「……って、屋上じゃん」

 

 

 どこが秘密なんだろうか。

 生徒なら誰でも来れるだろここ。

 

 

「秘密だよ……ここ、生徒立ち入り禁止だからな」

 

「ええ……転校生に、初日からそんな場所教えるかな、普通」

 

「良いだろ、それに……景色、見てみろよ」

 

「景色……?」

 

 

 そう言って彼が指差した方向を見てみると……おお。

 

 

「この学校、街の中心部だからな……見渡せるんだよ、街を」

 

「……確かに、綺麗だね……秘密にしてでも来たくなるかも」

 

「だろ?」

 

 

 この景色を見てると、世界が荒廃したなんて嘘に思える。

 ……そう言えば。

 

 

「ねえ、お人好し君」

 

「?おう」

 

「私の名前は如月涼音」

 

「……だな?」

 

「……」

 

「……何だよ」

 

 

 うーん、鈍いと言うか、何と言うか……。

 この鈍さは確かに厄介だ、頑張れよ日菜、有栖。

 

 

「名前、教えてよ」

 

「……あ」

 

「私、まだ君の名前は聞いてないなーって思ってさ」

 

「そうだったな……忘れてたわ」

 

「忘れたらダメな気がするけど……?」

 

 

 あ、誤魔化す気だ。

 ……なんか既視感を覚える光景だなぁ。

 

 

「……俺の名前は藤堂(とうどう)陽真……陽真で良い」

 

「それと……今日は一日、ありがとね」

 

「……あん時のお礼だよ」

 

 

 あの時……朝の事か。

 律儀だなぁ……いや、お人好しだったな。

 

 

「それでも、ありがと」

 

「……おう」




プロローグまでとは大違いですね本当に。
日常タグ付けてるし多少は……うん。
所々暗さがあるのは気にしないで下さい、過去が過去です。
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