この学校に通い始めて……既に一ヶ月、分かった事が色々あった。
まず、この学校はそこまで魔力に重点を置いていない、と言う事だ。
集めて居るのは暴発した時に対処しやすくする為、と言う風の意味合いが強い様に見える。
次に……。
「おい
「何をだ」
「あれだよあれ!隣のクラスで……!」
「……ああ、それなら……」
彼、陽真君は中々人気者だと言う事だ。
男子には言うまでも無く、女子には……まあ明らかな先約者じみた二人が居るから、恋愛感情とまでは行かないが、好意的に見られて居る事が多い。
まあお人好しだし、その所為で遅刻する様な人間だし、嫌われる事なんて早々無いか。
「あ、
「……ん、どうしたの?」
「丁度良かった、ここなんだけど……」
「ああ、そこならここを、こんな風に分解してから、計算したら簡単だと思うよ」
「あー!ありがとう!」
「どういたしまして」
分からない点を聞きにきてくれる程度には、クラスでも馴染めて居るんだと思う。
いやもっと聞ける人居るだろ、とは思ってはいけない。
「……だよな、やっぱりお前」
「……うるせえ」
「はは、おもしれー」
「違ぇっての、さっさとあっち行ってろ」
「はいはい……お!如月さーん!」
「?」
「ちょ、お前……」
あれ、何かお呼ばれしたな。
てっきり陽真君と二人で話してると思ったんだが。
「どうしたの、二人とも」
「いやこいつがさ、そろそろ花見さんと伏木さんのどっちかに決めるって言うんだが……」
「え?そうなの?」
「そうそう、それで」
「……何言ってんだ、
「まあ任せとけって!……だがこいつ、ちょっとあれだろ?」
「あれ?」
「ほら、その……色々鈍いと言うか、さ?」
……あー、なるほど。
「確かに」
「おい」
「それでさ、同性である如月さんが、こいつの異性への贈り物の選び方を教えてやって欲しいんだわ」
ふむ、厳密に言えば中身異性じゃないんだけどな。
体が体だから女性扱いされるのはもう色々諦めたが……参考になるか?
「参考になるかは怪しいけど、それで良かったら」
「いや待て、そもそも俺は……」
「ありがとよ如月さん!近くの大型ショッピングセンターとかだったら、ある物は大抵あるからさ!」
「うん、じゃあまた後でね、陽真君」
「いや、ちょっと待……」
「わー!後でこいつの事よろしくな!」
「?……うん」
何か騒がしいな壱成君とやら、まあなんだかんだで仲良さそうではあったけど。
「どう言う事だ壱成……」
「だってお前、贈り物とかどうせ……」
「……だが、あの言い方は……」
「まあまあ、そこは後で、な?」
「……面倒な」
何か言い合ってんなー……まあ多分、どっちかに決めるとかは嘘なんだろうから、そこら辺かな。
決める、決めないの段階に居るんならあそこまで鈍くないと思う……多分。
贈り物、と言う点は多分あってるんだろう。
……何はともあれ、これで少しでも縮まってくれたらありがたいかも。
△△▲△△
「ここ……で、あってるよね、ショッピングセンター」
「ああ、あってるよ」
放課後、ショッピングセンターへと来た私達。
大きいな……と言うか前世のと大差無い、凄いな。
「おおー……来るのは初めてだから、迷いそうだね」
「……そうなのか?」
「あ……うん、私はここからちょっと遠めな所に住んでたから」
「……そう言う事か」
そうだった、俺は魔力が発現してこの学校に来た、って設定だったな。
緩み過ぎたな……何とか今回は誤魔化せたが、学校はともかく、その他で安易な発言は控えた方が良さそうだ。
「って、私の事より贈り物だね」
「あー……それは……」
「あ、嘘なのは分かってるよ」
「な」
「憶測だけど……お返しか何かで、二人に贈り物するけど、どうしようか、ってのを
「……大正解、よく分かったな」
「これくらいはね……それにしても、良い友達だね、林田君」
形はどうあれ、友人の悩みを真摯に受け止めて、解決策を作ってる。
しかも当てずっぽうとかじゃ無くてしっかりとしたのを。
……頼った相手は悪いけど。
「……まあ、悪い奴じゃ無い」
「……こう言う所、男の子は素直じゃ無いって言うんだろうね?」
女子目線、もとい第三者目線から見るとよく分かる。
どちらも人が良さげだし、類は友を呼ぶんだろうね。
「違うっての……さっさと行こうぜ」
「うん、まずはどこに行くのかな」
歩きながら、二人への贈り物について話し合う。
「……アクセサリー系の所だ」
「ふむ、何を送るの?」
「……髪留め、ってかそう言う系、だな」
「へー……具体的には、どう言う?」
「あの二人……おんなじ色の髪紐を使ってんだよ、丁度……ああ、初めて会った時の如月の奴みたいなの」
「え」
「……どうかしたか?」
……。
……これか。
まだ使ってたんだな……あの二人、一緒にいた頃から付けてたってのに。
俺は仕事柄、付けずに保管してたのを、この為にって、感じだが……。
まあ、二人が同じ教室って分かって、すぐに変えたけど、な。
「……大丈夫か?」
「あ、ごめんね……教室では見なかったからさ、同じ紐使ってるとは思わなくて」
「……如月が来るちょっと前に切れたんだよ、二人同時に……何か、誰かとの思い出だとかで……」
「へー……」
「代わりの物も付けようとしないんだが、悲しそうなあいつらを、流石に見てられなくなってな」
「……それで、なんだ」
……どうしようか。
想像以上に重い。
勝手に離れて行った奴なんて、すぐに忘れてくれれば良かったんだがな。
「とりあえず、お店に行こう」
「……いや、目の前がその店だ」
「え?」
そう指摘されて、目の前を見ると……あ、本当にそのお店だ……周り見えてなかったか、集中しなきゃな。
「じゃあ、中の物を見て回ろうよ、何か良いものがあるかもだし」
「……だな、行くか」
そう言ってお店の中に入る。
おお、本当に色々あるな。
「いらっしゃいませー……何をお探しなんですか?」
「あ、彼の幼馴染二人に送る物を探してまして……」
「なるほど……失礼ですが、お二人は付き合って」
「「ないです」」
いきなり何を言ってるんだ?
「……分かりました、それでその幼馴染さん達に、どんな物を?」
「髪紐のような物……二人とも、それをとても大切にしてたので」
「……」
「ふむふむ……少々、お待ち頂けますか?」
「あ、はい」
そう言って店員さんは奥に入って行った。
俺が選んで良いものかとは思ってたから、二人で進めてくれたのはありがた……ちょっと待て?
「……陽真君?」
「!?」
「
「な、何で二人ともここに……?」
「……ちょっとした用事です、それでお二人らしき人を見かけまして、追いかけて来ました」
あ。
ヤバい、確実に勘違いされてる顔だこれ。
「「「「……」」」」
沈黙。
ヤバい、何がって俺が陽真君と勘違いされてるのが。
ただでさえ髪紐の件で負い目が凄いのに、これ以上は……。
「お待たせしまし……あら、お二方もご一緒でしたか」
「あ、この前の店員さん」
「……この前?」
「ええ、二日前に、お二方からご相談がありまして……先程彼のお話を聞いたのと似たものでしたので……もしやと思い、こちらを」
そう言って店員さんが持って来ていたのは……。
「髪紐、ですね」
「ええ、髪紐です……それも、三つで一つの」
「三つで、一つ?」
「はい……皆様は、雪月花……と言う言葉を、ご存知ですか?」
雪月花?
それって中国の、あれだよな。
「古い詩の、言葉ですね」
「はい、意味としては、四季折々の美しい自然の事を表します、そこからとって、この髪紐はそれぞれ、雪と、月と、花の、小さな飾りを付けた色違い品になって居て……三つの美しき願いを、と言った感じです」
「へー……」
「……ですが、飾りの用意が簡単ではない事や、三人……と言う中途半端な数字が仇となりまして……用意出来たのは、この一組だけなんです」
そんな由来なんだな、その髪紐。
……綺麗だな、特に雪の結晶とか。
「綺麗……」
「綺麗ですね」
「三つ……これ、ください」
「いえ、差し上げます」
「え?」
「店長には在庫処分、と言う形で許可はとってありますから、どうぞ」
「えっと……良いんですか?」
「はい……店員としてこんな事は言うべきではないのですが……美しい友情に、値段はつけられませんから」
「ありがとう、ございます」
……良い人だなこの人。
「ふふ……またのご来店を、お待ちしております」
△△▲△△
夕焼け空の、帰り道。
……何か途中から黙ったままだったなぁ。
あの良い人店員さんには、また来る事を約束させられた気がしなくもないが。
「良かったな、二人とも」
「……うん」
「はい」
「陽真君達もありがとね、私達の為……だったんだよね」
「私はただの付き添いだよ、お礼なら陽真君に」
「それでもありがとう……あと、これ」
そう言って差し出されたのは……え、待ってくれ?
「え、いや……受け取れない、けど」
「大丈夫です、受け取って下さい」
「いや、でも……大切なんじゃ」
「
……あの。
目が怖いんですよ日菜サン。
バレてないよね?
後ろに居る有栖からも何だか圧を感じる……感じない?
「え、えっと……じゃあ、受け取っとく、ね?」
「……良かったな、如月も」
「……うん」
バレてないかは心配だがな。
……まあ、嬉しくは、思う。
……美しき願いを、か……。
俺には、そんな綺麗な物を受け取る資格なんて、ないのにな。
ご察しの通りだと思って貰って大丈夫です、何がとは言いませんが。
ゆっくりですけど、進んでいる……と思います。
まあ、急がないと行けない理由もないんですけどね。