願わくば、意味のある死を   作:虚憂

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戦いにおいて、友情は毒となる

「おー、意外と集まってんのな……ん?如月(きさらぎ)、お前も参加するのか」

 

「あ、いえ……私は見学です」

 

 

 髪紐に何かあっても嫌だしな、どうあっても今日は不参加だ。

 今日の授業は希望者参加型の模擬戦闘、何かあった時の為の場所とは言え、やはり政治的な意味では、組み込む事も視野に入るんだろう。

 

 

「魔力がどんな物なのか、と言うのを見ておきたかったので」

 

「おーおー、あんま面白いもんでもねぇとは思うが……ま、不用意に近付くんじゃねぇぞ」

 

 

 (生徒の)魔力がどんな物なのか、だけどな……俺は初めて見るし。

 俺は兎も角、万が一彼等が強くなり組織と敵対した場合、幹部達との相性とかは重要だ、場合によっては報告しないといけない。

 

 俺が参加しても……なんだよな、学校生活で使える魔力の性質もあるが、何より身バレする、日菜(ひな)達に。

 ……もうバレてる気がしなくもないが……してないよ、うん。

 それにまだ素人って設定だし。

 

 

「じゃあまずは小池(こいけ)林田(はやしだ)だ……ま、ぼちぼち頑張れよ」

 

「うっす!」

 

「オダセンも気を付けてくれよ!」

 

「はっはっは!言うじゃねぇか……始め!!」

 

 

 おー、始まった。

 居るメンバーは……陽真(はるま)に、有栖(ありす)と……ん?日菜……ああ、怪我の治療かな、結構貴重だと思うし。

 将来どうなるにせよ回復の経験は積ませておけば得しかないな、本人にもその他にも。

 ……と言うか、拍子抜けだな、うん。

 

 

「そりゃ!『当たれ』!」

 

「へへっ!当たんねーよ!」

 

 

 ……児戯、って言う程でも無いけど。

 得物が無いのは、まぁ分かる、魔法訓練だし。

 でもなんか……いや、住む世界の違いか、良い加減慣れろ、俺。

 

 

「……そこまで!」

 

「くっそー!当たんねぇ!」

 

「はっはー!避け切ってやったぜ!」

 

「次はちゃんと魔力使えよ林田、訓練にならねぇ」

 

「すんません!」

 

 

 相変わらず賑やかだね林田君、陽真は……わあ、イチャついてる、日菜と。

 あの空気感は間違い無い、この三ヶ月で俺はそれを学んだんだ……結構巻き込まれたが。

 有栖は……あ、ヤバいなんか周りを渦巻いてる……相変わらずの真面目顔だけど、隣の子とか震え上がってるし……あ、二人の方に向かった。

 

 ……うん、見てる分には微笑ましい限りなんだよな、これ。

 だけど場所を考えようか三人とも、周りの女子は微笑ましそうだけど、男子とか殺気凄いよ?

 

 

「相変わらずだなぁ陽真達」

 

「如月さんは混ざらなくて良いのかい?」

 

「……うーん、遠慮しとくよ、林田君」

 

「あれま残念、正妻戦争は二人の勝ち逃げか……?」

 

「二人が幸せになるなら、その形が一番じゃないかな?」

 

 

 一夫多妻だろうが、本人達が幸せならそれで良いだろう。

 まあこの世界でそれを認めるかどうかの法なんて、実質的には機能して無い様な物だけども。

 

 

「それはそうだなー、でも突然現れた転校生が、メインヒロイン枠を掻っ攫って行くってのも王道だと思うぜ?」

 

「あはは、どうあっても私は参加しないよ?」

 

「これは難敵だな、むむむ」

 

 

 俺男だから……中身は。

 あの二人邪魔する気も無いしな。

 と言うか、この体になってからそこら辺は曖昧な上、俺自身が恋愛に興味無い、ってのがあるからな。

 

 

「どうしてそこまで参加させたがるのかな、他の男子は恨みがましく見てるのに」

 

「あー……」

 

「?」

 

 

 ……何かあるみたいだな、これ。

 

 

「いや、そうなりゃあいつも前みたいに笑えるかなーって、思ってな」

 

「……前みたいに?」

 

「俺とあいつって、この世界が()()()()前からの付き合いなんだよ、で、昔はもっと笑う奴だった」

 

「……」

 

「あとは簡単な……って言っちゃ失礼だけどさ、色々あってあいつが大人しくなったんだ」

 

「……そうなんだ」

 

「詳しい事情は、俺の口からは言えねぇけど……あいつは今もそれに……なんつーか……兎に角、笑わせてぇんだよ、あいつを」

 

「……笑わせる?」

 

「そうそう……んで、あいつがどうやれば笑うのかって考えてみた結果……男の幸せと言えば美少女と話す事!ってな訳でどうよ!如月さんも!」

 

 

 事情は分からんけども。

 林田君は陽真君を笑わせたい、だから色々考えた結果日菜や有栖みたいな美少女と絡ませよう、と。

 ……やり方は兎も角友達思いだな、やり方は兎も角。

 

 

「それでも、あの中に突撃させようとするのは、どうかと思うよ」

 

「……確かに」

 

「でもまあ……良いよ、その話に乗せられてあげる」

 

 

 色々アレだけど、日菜達が幸せになる事は前提条件だが、その将来の相手が、幸せになれないままってのもだし。

 方法があってるかどうかを度外視しても、クラスメイトの中で一番仲良いグループがそもそも彼等だから、関わるのは変わらないしな。

 

 

「……サンキューな、如月さん」

 

 

 律儀に礼を言う林田君。

 ……と、色々理由を並べた訳だが、一番は……。

 

 

「……私としても、日菜ちゃん達には幸せになって欲しいから、その為だよ」

 

 

 誰にも聞こえない程度に、そう呟いてから、未だイチャついてる三人の方へ向かう。

 ……まだやってたの?

 陽真の番は……後少しか、まだ間に合うか。

 

 

「相変わらず仲良いね、三人とも」

 

「あ、涼音(すずね)ちゃん」

 

「如月か、どうしたんだ?」

 

「特に理由は無いけど、ダメだった?」

 

 

 割り込む形なのは謝るけども。

 ……ふむ、とりあえず応援ぐらいはしとこうか。

 

 

「……なんてね、もうすぐ出番な陽真君に、一言声掛けとこうかな、って思っただけだよ」

 

「ああ……別に応援される程のことじゃ無いぞ、これ」

 

「……確かに、まあ形の問題って事で」

 

「なんだそりゃ」

 

 

 呆れた様に笑う彼、呆れられても困るんだけど。

 ……と言うか、笑わせるって実際何すれば良いんだろうか。

 まあ今はとりあえず応援しとくか。

 

 

「ファイト……応援してる」

 

「……おう」

 

「「……」」

 

「……よね?二人も」

 

「え!?あ、うん!」

 

「はい、勿論です」

 

 

 危な、後ろから殺気を感じて二人に回した俺、ナイス判断だ。

 こうやって二人を巻き込んでおけば多分被害は少ないと……信じてる、うん。

 

 

「よし……次、藤堂(とうどう)伏木(ふしぎ)!こっちに来い!」

 

「……呼ばれましたね」

 

「そうだな……」

 

「……負けません」

 

 

 二人の対決だったのか。

 ……あ、よく見たら相手の方に有栖の名前がある、見落としてたな。

 だがこれは……有栖があれからどうしてたのかってのもあるが、有栖が勝つ気がする。

 魔力を扱ってた年季だけなら、有栖は俺よりも上だからな。

 

 

「よーし……始め!」

 

「『渦巻いて』」

 

 

 いきなり風を……へえ、小さな竜巻みたいにして、自身の周りに保持出来るのか。

 簡単な盾だな、以前も似た様な事はしてたが、あれなら破られようとも自身に被害は無いし、更には……。

 

 

「……『迎え撃て』」

 

 

 飛び道具にもなる、って寸法か。

 風の刃程の殺傷力は無いにせよ、便利だし今の状況ならそっちの方が良いし……強いな、これ。

 はてさて、陽真君の方は……え?

 

 

「……な」

 

「……やっぱり流石、です」

 

「……大丈夫か、怪我とか」

 

「……多分大丈夫です」

 

「勝負あり!そこまで!」

 

 

 ……何が起こった?

 俺が陽真君の方を向こうとしたら、既に有栖の懐にまで潜っていた。

 

 

「光速で、動いたんだよ」

 

「……え?」

 

「陽真君の魔力、光を操作出来るんだ、それで光の速さで有栖ちゃんの所まで行ったんだよ」

 

「ッ……それは、凄まじいね」

 

「うん、先生にも、不意をつかれたら誰も勝てないんじゃ……って、言われるくらいの、凄い魔力だよ」

 

 

 ……光の速さ……そうか、それなら……?

 私が時を止めるより、彼が速く私を狙える、と言うことになる。

 

 

「……そっか」

 

「……?」

 

 

 つまり、私を正々堂々殺せる可能性がある。

 魔力は、その効力を大きく発揮させる場合、言葉にして発音するのがセオリーだ、今の所は。

 詠唱、と呼ばれるソレは、途中で途切れさせられたりすれば勿論魔力は発動させられない。

 極論、詠唱させる前に殺せたら勝ち、そう言う点で私の時間停止はかなり強い。

 

 だが、出来なければ、弱い。

 そこら辺が不便なんだが……無詠唱になると、途端に魔力操作の難易度が跳ね上がるんだよな、原因も分からない。

 言葉にする事でイメージを単一化しやすい、逆に言葉にしないと自身の他の考えと混ざって上手くいかない、と言うのをドクターが言ってたが。

 まあ、隠れて発動すればそんなデメリットは無いに等しいけどな。

 

 

「……彼なら……?」

 

「……涼音、ちゃん?」

 

「……どうしたの?」

 

「いや、えっと……ぼーっとしてたから、体調悪いのかなって」

 

「……ああ、大丈夫だよ……一瞬の事過ぎてびっくりしてただけだから」

 

「そうなんだ……良かった」

 

「……とりあえず、怪我してるかもだし、行ってあげて」

 

「あ、うん!」

 

 

 ……。

 彼なら、俺を殺せるんだ。

 ……彼はそれを望まないだろうと言うのは、この三ヶ月で良く分かっている事だが。

 そうだとしても……良いな、うん。

 

 

「……英雄に、なるのかな、君は」

 

 

 願うならば……なって欲しいが。

 そして俺を……怪物(あく)を切り裂く光に、なってくれるとありがたい……なんてね。

 

 

「……淡い希望だなぁ」

 

 

 彼が敵になるとは限らない、そう言う可能性があるなー、程度が丁度良いだろう。

 

 ……だがもし、そうなったら……。

 

 

「私は、どんな意味を持って死ぬのかな、ねえ……」

 

 

 陽真君?




主人公は重い奴()。
世界観や展開的にこうなる事は何となく分かってたけど、実際書くと重いですね……。
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