願わくば、意味のある死を   作:虚憂

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裏の馴染み深さは、変わらない

《すまないな、いきなり呼び出す事になって》

 

「大丈夫……で、ここがどうしたの?」

 

 

 緊急の案件があるからとある場所まで行って欲しい、と言う事をボスに伝えられ、その場所に来た訳だが……。

 

 

《ああ、色々言いたい事はあるが、まずその場所についてか……》

 

「……支部の一つ……だよね、ここ」

 

《正確には支部だった、だな》

 

「と言うと……」

 

《占拠された、いつもの奴らに》

 

「やっぱり」

 

 

 支部、と言っても旧幹部達の色が濃く残る残骸の様な物だが。

 こう言う幅広くある支部施設は、その……全てが旧派閥の遺産であり、本部とは仲が悪い。

 

 ボスやその配下ポジションである俺を含めた三人は、あまり近寄る事も無く、あちら側も排除しようとするこちら側とは……って感じ。

 犬猿なのはボスの後始末が原因なんだが、まあその分色々と力は落ちる訳で……そこを襲撃で潰されて行った、と言う感じ。

 

 

「……で、今更何の用事なの、ここに」

 

《ここを潰せ、徹底的に》

 

「……え?」

 

 

 また随分と物騒な。

 ここ、そんな重要な施設でも無かった気がするんだけどな。

 

 

《先日、ドクターから妙な報告が入ってな》

 

「うん」

 

《ここの奴等の人員に、変な爺さんが紛れ込んでるらしい》

 

「……え?」

 

 

 お爺さん、と。

 そりゃ確かに妙だけど……ん?待ってあいつらって確か……。

 

 

「と言う事は、魔力絡み?」

 

《……そう言う事になる、その爺さんは外部からの、所謂傭兵って奴らしいんだが……その出所も怪しくてな、要するに保険だ》

 

「分かった」

 

《俺や他二人が出られたら一番良かったんだがな……他にも妙な案件が多過ぎて手が回らん》

 

「とりあえず、ここの人達を……全員やれ、と」

 

《……すまん》

 

「謝られる事じゃないよ……私、これでも幹部だしね、それに……」

 

《……》

 

「……何でもない」

 

 

 ……危ないな、またこの考えか。

 

 

「それじゃ、行くね」

 

《……ああ、それともう一つ》

 

「?」

 

《学校、楽しんでるか……友達とか、ちゃんと出来てるか?》

 

「……うん、大丈夫だよ?」

 

《そうか……なら良い、健闘を祈る》

 

 

 そう言って切られる無線。

 ……急に親みたいな事するね、ボス。

 元々親みたいだったけども、少し前からそれが顕著だ。

 

 

「よし……《あー、あー……うん、行ける》」

 

 

 いつもの仮面も、いつも通りだな。

 ……今の俺は、怪物じゃなくて、殺し屋だ。

 

 

「《……殺されるつもりは、無いけどね》」

 

 

 ボスも言ってた怪しい組織。

 ……お爺さんとやらは、どんな人なんだろうか。

 

 

 

△△▲△△

 

 

 

「《……どう言う事?》」

 

 

 支部に潜入して、最初に目にしたのは……血だ、それも真新しい。

 要するに死体だな、よく見る兵隊達の。

 しかしこの傷は……?

 

 

「《やけに深く切り裂かれてるな……》」

 

 

 骨ごと斬ってるんじゃなかろうか、これ。

 切断面も綺麗だし……こんな環境でそんなに良い得物を用意するメリットは無い、と言う事は……。

 

 

「《魔力、か》」

 

 

 嫌な予感がするな、それも結構強めの。

 だが奥に行かない選択肢は無い、俺の目的は全員の排除だ。

 一人でも生き残ってたらダメなんだよな。

 

 

「《……行くしか無いか》」

 

 

 慎重に、されど早く足を進める。

 ……凄いな、これだけの数を、大抵一撃か。

 見た感じ、死後一時間あるか無いか、って程度なんだがな……かなりの手練れか。

 

 

「《……厄介な仕事だなぁ》」

 

 

 死体は見慣れてるが、異常な身体能力を持つ殺人鬼の映画みたいな死に方で大量に横たわっている、と言うのは見た事がない。

 ボス達の殺し方を見たわけでも無いから、もしかしたらそうなのかもだが。

 ……ん、これは……。

 

 

「《……この先か》」

 

「あ……た、す……」

 

「《……私は死神側だよ、ご愁傷様》」

 

「ふむ……どうやら目的の人物が来た様じゃな」

 

「《……貴方が雇われた傭兵なのかな、お爺ちゃん》」

 

 

 奥の通路から現れた爺さん。

 ……ヤバいなこれ、想像以上に。

 

 

「そうじゃの……そう言う事になる」

 

「《何が目的なの?》」

 

「お主を雇い主の所まで連れて行く事じゃ……無論、あちら側のな」

 

 

 なるほど、釣られた訳か。

 俺を組織から釣り出す為に、爺さんと言うエサを使ったのか。

 となるとボス達の他の案件とやらも、怪しいか。

 

 

「《……はいそうですか、って言うと思う?》」

 

「思わんよ……思わんからこそ、()()()()

 

「《?……とりあえず……『時は加速する(クロック・アップ)』》」

 

 

 こう言う時こそ冷静に。

 相手の実力は不明、本当なら時間停止(おくのて)を使ってしまいたいが……嫌な予感がする、様子見だ。

 速くなった足で、一気に爺さんの懐へ……!

 

 

「……速いが、甘いな……『(じん)』」

 

「《ッ……》」

 

 

 硬い、弾かれた……肉体に作用するタイプか!

 とりあえず一旦離れて……。

 

 

「……『(じん)三連(みたび)』」

 

「《ぐ……!》」

 

 

 やらかした……ナイフ共々、思いっきり行かれた。

 格上、なんてレベルじゃ無いぞこれ……!?

 

 

「……終わり、と言う訳には行かぬか」

 

「《……》」

 

「……子供を傷付けたい訳ではない、大人しく着いて来ぬか?」

 

 

 間違い無く利用されるよな、これ。

 殺さず持って来い、と言う事は間違いなく、利用される。

 ……ふざけんなよ。

 

 

「《……断る》」

 

「……一応、理由を聞いておく」

 

「《これ以上、利用されるつもりはない……誰にも》」

 

「……組織には従っとるのに、か」

 

「《自身の目的の為に、必要なら》」

 

「……あくまで自分の為、と言う事か」

 

 

 英雄(ヒーロー)に殺されたいなんて言う、身勝手な理由だ。

 それに……。

 

 

「《今の環境は、それなりに心地良いから》」

 

「……そうか」

 

 

 決して良いとは言えない職場だけどな。

 殺しが良いとは思わんが……それ以外は、良いと思える。

 

 

「……ならば、やるしかないな」

 

「《ッ……》」

 

 

 考えろ、逃れる方法を。

 時間停止は唱えられない、明らかに相手の方が詠唱速度は上だ、斬られて終わる。

 だが、発動させないと逃げられない、加速して逃げるにしろ、距離が必要だからな。

 あの刃を、どうにかしないといけないのか。

 ……一か八か、だな。

 

 

「《……『時間固定(クロック・ソリッド)』……》」

 

「……む?」

 

 

 武器がいる、刃に負けない、武器が。

 ならば、作るだけだ。

 

 

「《『赫の剣(ブレード)》」

 

「……ほう、儂の刃を写し取るか」

 

 

 見本はあった、同じ物なら、魔力を込めれば……何とかなる、筈だ。

 俺の魔力は、ボスによると赫いらしい、真っ暗なこの空間だと妙に目立つな。

 

 

「……ふむ、ならば試そうかの『(じん)四連(よたび)』」

 

「《ッ!》」

 

 

 さっきは至近距離で対処出来なかったが、今回は距離がある、それなら俺の目で見ても間に合う!

 赫の刃と、爺さんの……黒い刃が、ぶつかり合い、黒い刃が弾かれた。

 ……行ける!

 

 

「ほう……ならば『(じん)五連(いつたび)』」

 

「《ッ……!》」

 

 

 弾く、弾く、受け流す、弾く……ッ!?

 

 

「あ、ぐ……!!」

 

「!」

 

 

 一つ受け損ねたが、仮面が代わりになった。

 今なら……!

 

 

「……」

 

「『時間よ(クロック)』……!」

 

 

 そして、世界が音を失った……!

 

 

「危、なかった……」

 

 

 何故かは不明だが、爺さんが惚けてくれて助かった。

 ……。

 ……何で惚けた?

 

 

「……逃げよう、今は」

 

 

 とりあえず、今は逃げる。

 次は無い、だろうから。

 

 

 

△△▲△△

 

 

 

 結構離れた筈だ、ここからなら……。

 

 

「……ここまで、来れば……『刻め、何時迄も(エバー・ワークス)』」

 

 

 時間停止を解除し、その後すぐに……。

 

 

時は加速する(クロック・アップ)……うぐ……」

 

 

 結構辛い、傷にも響く……元々他の技と併用前提じゃ無いんだ、時間停止は。

 魔力も多くなってるとは言えど、あんまり多用したいとは思わない。

 とは言えど、今足を止める訳には行かない。

 

 

「……理由無しに、利用されるのは、もう嫌だから」




三千文字程度を、毎回心がけてるんですけど、大丈夫ですかね?
後行間とか、その辺り。
どうしてもこんなのは嫌だとか、あればご指摘頂けたらと思います。
文字数増やすのは作者が倒れますが。
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