願わくば、意味のある死を   作:虚憂

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保たれよ、平常心

「……」

 

 

 体が痛い。

 あの爺さんから逃げ切ったは良いが、傷が……。

 ボス達から最低限の手当の仕方は教えて貰ってるとは言えど限度がある。

 こんな傷誰かに見せる訳にも行かないし……いてて。

 

 

「……大丈夫、だよね、うん」

 

 

 替えの包帯はある……多少無理を通せば、不自然には見られないだろ。

 と言うか爺さんが凄すぎる、止血した筈なのに切り口から包帯に血が滲むって、どんだけ切れ味良いんだ。

 

 

「最悪、縫い合わせようかな……」

 

「何を縫うんだ?」

 

「……服が破れちゃったからさ、捨てるか、縫ってまだ使うかって言うのでちょっと悩んでるんだよね」

 

 

 (自分の)体を縫おうとしてたなんて言える訳が無いので、その場で誤魔化しておく。

 血も放課後には止まるだろう、うん。

 いや流石に自身の体に針を通したいとは俺も思わないけどさ。

 

 

「あー……と言うか、裁縫出来たんだな」

 

「まあ、教えてくれる人達が居るからね……おはよう陽真(はるま)君」

 

「……おはよ、如月(きさらぎ)

 

 

 相変わらず登校中によく出会う、いつもは他の二人も居るけどな。

 ドクターの名に恥じず、医療行為はお手の物らしいからな。

 自分で治療する為って名目で教えて貰った、便利だよ。

 

 

「その人達って、こっちに来る前の?」

 

「うん、凄く優しいよ」

 

「へえ、そりゃ……良い人なんだな、その人達」

 

「……うん」

 

 

 ドクターに限らず、オーガやボスも色々教えてくれたからなぁ……感謝してもしきれない、とはこの事か。

 

 

「……あ、そう言えばさ」

 

「ん?どうした」

 

「最近、遅刻する事あんまり無くなったよね、陽真君」

 

 

 出会った頃は結構頻度多かったのに、最近じゃ大抵席に着いてるんだよな……珍しい。

 

 

「あー……なんか最近、困ってる人を見かけなくてな」

 

「そうなんだ」

 

「……ま、良い事だろ、困らないってのは」

 

 

 ふむふむ。

 まあ遅刻しないで済むし、彼の言う通り困らないのは良い事だ、あまり気にしないでも良いだろう。

 

 

「ふーん……残念、全力で駆け込んで来る陽真君はもう見られないのかー」

 

「何だよそれ……絶対揶揄ってんだろ」

 

「あ、バレた?」

 

「バレるだろ一瞬で」

 

 

 良いツッコミだな、その配慮を日菜(ひな)有栖(ありす)に向けられたら恋心にも気付くんじゃなかろうか?

 ……。

 ……無理な気がするな、うん。

 

 

「……そう言う如月だって、俺の事笑えないだろ」

 

「え?」

 

「この前、昼飯前に頼まれた仕事を、昼飯食べずに終わらせてたしな」

 

 

 ……お昼前?

 あー、あれか……確かにそんな事あったな。

 

 

「あー、確かにそんな事もあったね」

 

「ほらな」

 

「うーん、何も言い返せないかなー……と、着いたね」

 

 

 話していたらいつの間にか教室前まで歩いて来ていた……俺も結構馴染めて来た、か?

 扉を引いて、教室の中に入る。

 

 

「お、来たなハーレム野郎、この野郎!」

 

「……誰がハーレムだ、こら」

 

「毎朝毎朝、美少女三人の中の誰かと登校してくる癖に何言ってんだ!」

 

「くそぅ、俺も一緒に歩む人生が良かった……!」

 

「何言ってんだ朝から……」

 

「あはは、おはよう二人とも」

 

「「おはよう如月さん!!」」

 

「……こいつら……」

 

 

 と、言いながらもどこか楽しそうだよねいつも。

 いや、呆れてる部分が大半なんだろうけどさ。

 

 

「おはよう、涼音(すずね)ちゃん」

 

「おはようございます」

 

「……おはよ、日菜と有栖」

 

 

 この二人もいつも通りだねー……時々視線が怖いけども。

 ……とりあえず席に着いてしまおうか。

 

 

「……」

 

「……如月」

 

「ん?どうしたの」

 

「大丈夫か」

 

「……え?」

 

 

 何だいきなり……日菜達もか?

 

 

「無理してない、かな」

 

「いきなりどうしたの?」

 

「……動きがぎこちないですから」

 

「ああ、昨日色々夜遅くまでしてたからさ、その所為だと思うよ」

 

「……そうですか」

 

「なら良いんだが……」

 

 

 ……怖い。

 一瞬バレてるのかと思ったぞおい。

 と言うか……。

 

 

「……」

 

「……大丈夫だからね?」

 

「……うん」

 

 

 日菜、昔から鋭いのは変わらんな……。

 それでも言えないんだよ、ごめんね。

 

 

 

△△▲△△

 

 

 

「……と、今日は水泳について説明しとくか」

 

「お!来た来たー!」

 

「待ってました!」

 

 

 ……はい?

 

 

「……水泳?」

 

「初参加も居るから、詳しく説明するとだな……」

 

 

 ……。

 ……ふむ。

 小田(おだ)先生にの説明を要約すると、ここの近く海に海があるから、各々好きな水着で色々な活動をするのが水泳、と言う授業科目らしい。

 

 

「参加するかしないかは自由だ、って事だ、後は好きにしろよ」

 

「……」

 

 

 ……辞退するか、うん。

 流石に中身男が水着を着るのはな……色々不味い。

 

 

「涼音ちゃん」

 

「ん……どうしたの?」

 

「放課後さ、陽真君と有栖ちゃんと一緒に、買い物に行くんだけど、涼音ちゃんも行こう?」

 

「……良いけど」

 

 

 まあ買い物くらいなら大丈夫か……。

 

 

 

△△▲△△

 

 

 

 ……なんて、安請け合いしてしまった事を後悔している、何故って?

 そりゃ……。

 

 

「これ、どうかな」

 

「あ、ああ……良いと思うぞ」

 

「……これは、どうでしょう」

 

「……良い、な」

 

 

 ……二人の水着の評論会を眺めているからな。

 何だろう、とてつもなく甘い感じがする、後嫌な予感も。

 ……。

 ……流れで俺も選ぶことにならないよな……ならないよな?

 

 

「如月、助けてくれ」

 

「……巻き込まれたくないから、ごめんね」

 

「ぐ……神は死んだか……ッ!」

 

 

 隣の水着の評論者は、物凄い気迫を放っている。

 まあ恥ずかしいんだろうな、色んな二人の水着姿見るの。

 それにしても凄い気迫だけどな。

 

 

「……涼音ちゃん」

 

「ん?……どうしたの、日菜ちゃん」

 

「涼音ちゃんは水着選ばないのかなって」

 

「うん、辞退しようかなって思ってるからさ」

 

「そうなんだ……」

 

 

 そう伝えるとあからさまに落ち込む日菜。

 ……うーん、そうなられるのは何となく察してたが、改めて見ると罪悪感が……。

 

 それでも心を鬼にしよう、今試着すると傷がな。

 最近のもだけど、古いのも残ってるし。

 隠せるけど、バレたら困る……ってかバレた瞬間お通夜になるだろ。

 

 

「ごめんね?」

 

「……うん、私の方こそ、無理言ってごめんね」

 

「涼音さん」

 

「?どうし……え?」

 

 

 有栖の手に握られていたのは一つの水着……それも有栖にはちょっと小さい気がする……待って、何する気?

 

 

「着てみてください」

 

「え」

 

「参加しなくても、試着するくらいは可能ですから」

 

「いや……そうだけど……」

 

「それに、気が変わった時に持っていれば困りませんよ?」

 

「あ、うん、分かった」

 

「……!」

 

 

 有栖も押しが強い……いや、俺が流されやすいのか?

 まあ隣の女の子が凄く嬉しいオーラを放ってるし良いか……。

 ……。

 ……水着選ばないとなのか、流石に自分で選ぶよ、うん。

 

 

「……俺はどうすれば良いんだ……」

 

 

 

△△▲△△

 

 

 

「もう大丈夫?」

 

「構いません」

 

「……うん」

 

 

 あの後何故か、三人順番に自分が良いと思う水着を試着して公開する事になった、何でだよ。

 包帯は一応取り替えた、これで万が一にも血は滲まないと思っておく。

 

 

「それじゃあ……私から、どうかな?」

 

「……可愛いな」

 

「!えへへ……」

 

 

 どうやら高評価らしい、俺は見てないが。

 だって日菜→有栖→俺の順番らしいし……。

 俺最初にしてさっさと終わらせてくれれば良かったんだが。

 

 

「次は私ですね」

 

「……!?」

 

「ふぇ……!?」

 

 

 ……全員黙ったな。

 有栖だし、真面目な顔して際どいの着てるのかもな。

 いっつも無理して、顔に出さずに頑張るからね有栖。

 

 

「……何か、言ってくれませんか」

 

「ッ……綺麗、だ」

 

「ふふ……良かったです」

 

 

 うわ、開けたくないな……。

 この向こう側には、ブラックコーヒーですら震え上がる程の糖分が詰め込まれてるに違いない、うん。

 

 

「……えと、良いのかな?」

 

「……あ、うん!」

 

「問題ありません」

 

「ん、了解」

 

 

 ……こうなったら勢いだ、さっさと終わらせてしまうに限る。

 そう思って、試着室のカーテンを開ける。

 

 

「ッ……」

 

「わぁ……」

 

「……」

 

 

 ……何でこっち見て黙るんだ。

 別に際どくないだろ、露出抑えてるんだから。

 沈黙が痛い、つか恥ずかしい。

 

 

「……もう着替えて良い?」

 

「似合ってるよ!」

 

「……流石です」

 

「え?」

 

「……似合ってる」

 

「……そう、ありがとね」

 

 

 何だいきなり。

 ……と言うか、褒められても複雑なんだよこっちはさぁ……!

 ああもう、傷は痛いし、貧血で色々辛いし、水着は着る事になるし……くそ、なんて日だよ。




あんまり水着詳しくないんで詳細は避けましたけど、あった方がイメージしやすい!って人用に一応作者の何となくなイメージ図だけ。
読み飛ばして貰って構いません。

主人公→露出の少ない水着とかラッシュガード系、白色系統。

日菜→他二人からすると丁度真ん中、赤色系統。

有栖→露出の多い系、黒色系統。

ってな感じ、正直こんな感じかなーってな感じのふわっとしたイメージだから不自然だったら申し訳ないです。
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