願わくば、意味のある死を   作:虚憂

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元より分岐していた道のりを

「勢ぞろい、かな」

 

涼音(すずね)ちゃん……」

 

「……日菜(ひな)ちゃん」

 

 

 悲痛な面持ちで、こちらを見つめる三人。

 揃いも揃ってその顔辞めてくれないかな……やり難い。

 

 

「あの先生、気を付けなよ」

 

「……え?」

 

「詳しい事は、()()にも関わりがあるから、言えないけど……あの人……」

 

「おやおやぁ、人聞きの悪い事ぉ、言わないでもらえますかねぇ?」

 

「そのセリフ、そっくりそのままお返ししますね」

 

 

 人の()()に俺の素性バラしといてよく言うなおい。

 ……この女は素性もそうだが、その他にも奇妙な点が多い。

 俺を捕まえたいとか言う組織に居ながら、作戦は随分と杜撰な様に見える。

 

 

「あらあらぁ、私は事実を述べただけですよぉ?」

 

「その事実を、どこで知ったのかが私、気になります」

 

「そこはぁ、企業秘密って奴ですねぇ」

 

 

 時間停止に逆らえる手段がある訳でもない、仮にあったとしてもどんな手段か見当もつかんが。

 時期も時期だ、日菜達は兎も角、確かに陽真(はるま)君を動かしたいなら……今のあまり仲良いとも言い難いが、そいつの為に動ける関係性を利用するのは分からんでも無いが。

 

 

「とりあえずぅ、貴女には大人しく捕まって欲しいですねぇ」

 

「……ドクターに勝ったからって、調子に乗らないで下さいよ」

 

「調子に乗る要素はありませんねぇ……『記し捧げる者(ヨハネ)』の最高幹部の一人にしてぇ、最も危険だと言われる貴女相手にぃ」

 

 

 ……そんな名前だったねうちって。

 確か神様の何とかかんとか〜って言うので、供物を捧げようってのが目的だったらしい、昔の話だが。

 多分その供物の一つが、俺や日菜、有栖(ありす)だったんだろうと予測している。

 要するに宗教の延長線上だったって事、そりゃ規模も大きくなる。

 ……と言っても、既に犯人達は居ないし、済んだ話だが。

 

 

「最も危険かどうかは疑問が残りますけどね」

 

「ご謙遜をぉ……機械人形(キラードール)さん?」

 

「……」

 

 

 ……陽真君達に余計な事を……いや、俺個人の目的の為なら……。

 なんてな、今の陽真君達にそんな強さは無い。

 不可解な点はあれど、ドクターを退ける強さがあるのは事実。

 

 

「如月」

 

「……どうしたの、陽真君」

 

「……本当、なのか」

 

「本当だよ」

 

「……何、でだ……?」

 

 

 ふむ、何で、何でと来たか。

 ……というか、さっきも言わなかったっけか。

 

 

「そこまで親しくない君には関係の無い話だよ」

 

「ッ……」

 

「レイちゃん!」

 

 

 ……今度は日菜達か。

 

 

「レイちゃん……なの……?」

 

「……レイさん……」

 

「……」

 

 

 正直な事を言ってしまうか、否か。

 言ったとしても今更関係修復、とはいかない気がするが……。

 

 

「……元気な様で何より、二人とも」

 

「「!」」

 

「……なんてね、初めて会った時に言った通りだよ。貴女達の言うレイって子の事は知らない」

 

「……そんな……」

 

「……何故、嘘をつくんですか」

 

「嘘なんて言ってな……」

 

「嘘ですよ!そんなの!」

 

「……」

 

「有栖ちゃん……」

 

「貴女は、初めて出会った時からそうでした!自分よりも私達を優先して!傷付いて!……なのに、貴女は文句の一つも言いませんでした……言ってくれませんでした……!」

 

「……」

 

「私は貴女に……貴女達に救われました、誰よりも信用しています、努力もしてきました……なのに、まだ……頼って、くれないんですか……!」

 

「……」

 

 

 泣きながら、こちらから目を離さない有栖。

 ……俺を殺しかけた事や、結果的には見捨てた様な形になったことを、尾に引いてたか。

 気にするなと、一言言うのは簡単だが、それは望まれてないんだろうな。

 誰よりも努力家で、誰よりも溜め込むタイプだから。

 

 

「……私は、後悔してないから」

 

「……え」

 

「……ごめんね、その手を取るには、私の手は汚れ過ぎたから」

 

「ッ!レイさ……!」

 

「『時間よ(クロック)』」

 

 

 有栖が一番、この中だと傷付いてたのかもしれない。

 一番頼りになりそうだと思ってたが、単純に我慢してただけだった様だ、悪い事をした。

 ……だが、今更戻って仲良し小良し、って訳にはいかないんだ。

 

 

「……これ、返しておかないと」

 

 

 雪の飾りの付いた、白い髪紐。

 出来るだけ汚さない様にはしてたが……大丈夫だろう、多分。

 髪紐を、有栖の手の上に置き、その場から離れる。

 

 

「……髪の毛邪魔だなぁ……」

 

 

 家に一旦、あれを取りに行こうかな。

 ……魔力持つかな?

 

 

 

△△▲△△

 

 

 

「……っとと、着いた」

 

 

 途中で加速魔法に切り替えたが、まだ来ないだろう。

 どれだけ早くとも、俺の家の場所は教えてないからな。

 

 

「……あ、あったあった」

 

 

 使った機会が少ないからか、新品の様に……とまでは行かずとも、まだまだ使えそうな、シンプルな紐。

 これからは多用する……気がする、多分……兎に角、ナイフと……あれ?

 

 

「……そう言えば、あんまり物置かなかったっけ」

 

 

 置いてあるのは、替えの制服や家具一式に、食料品と……水着か。

 ……あまり欲しい物無かったしな、うん。

 

 

「……もう着る事は無い、うん」

 

 

 あの時の事は思い出したく無い。

 ……もう行かなきゃな。

 もう戻る事は無いだろう家を出る。

 

 

「『時は加速する(クロック・アップ)』……ッ!」

 

 

 加速し一気に駆け抜け、目の前に障害物が横入りして来た。

 ……ん!?

 

 

「如月ッ!!」

 

「!?って、ちょっと、待……」

 

 

 ぶつかった、思いっ切り、陽真君と。

 いきなり出て来るな……!加速系は不測の事態に弱いんだ……!

 

 

「い、たた……」

 

「う、ぐ……きさ、らぎ……!」

 

「……何、話す事は無いけど……って言うか、よくここが分かったね」

 

「……片っ端から探し回ったからな」

 

 

 は?

 街全体を駆け回って来たと。

 

 

「……バカだね?」

 

「ぐ……そうするしか、思い付かなかったからな」

 

「そこまでして、何がしたいの?」

 

「……聞きたい事が、ある」

 

「……だから、それに応えるつもりは……」

 

「無くても良い、ただ聞いてくれ」

 

「え?」

 

 

 質問しに来たのに、聞くだけで良いって。

 頭を変な場所にでも……打ったなさっき、手遅れか?

 

 

「如月は、さっき……手が汚れ過ぎたから、有栖達の手を取れないと言ったな」

 

「……」

 

「有栖達はそんな事を気にしない……ってのは言われなくても分かってると思う、が……それだけじゃ無いんだろ」

 

「……それがどうしたの」

 

「……答えないんじゃ、無かったか」

 

「……」

 

幹島(みきしま)先生の事を信用ならないと言ったり、さっきの言葉だったり……」

 

「……」

 

「……日菜と有栖が、本当に大切なんだな……万が一にも、あの二人に自分達の世界に関わって欲しくないって事だろ」

 

「……それが、何かおかしいかな」

 

 

 肯定したとも取れる返答しか出来ないのが……いや、肯定したんだが。

 

 

「……いや、それが分かっただけでも十分だ……それに、応えてくれたしな」

 

「……そ、じゃあね」

 

 

 ……調子狂うな。

 彼は何がしたかったんだろうか、俺が本当に嫌って行った事では無いと二人に行って、慰めるつもりなんだろうか。

 それならそのまま末永く幸せになって欲しいな。

 自分の死も大切ではあるが、それ以上にあの二人には幸せになって欲しいからな。

 ……ただ。

 

 

「……まだ、終わらない気がするなぁ、これ」

 

 

 何と言うべきか、いつもの勘だが。

 ……それよりも……。

 

 

「……あんなに早かったっけ、陽真君」

 

 

 彼の魔力は光だが、実際に光の速さで動いている訳じゃ無い。

 人間が光の速さで動いたら、体千切れるしな。

 俺の加速にも言える事だが、体の耐久度以上の加速は出来ないし、魔力を体に纏う必要がある。

 魔力を纏う、と言う事は俺の目で見る事が出来る……残滓を。

 

 光速予備軍を目視出来るわけがない、だが残滓……この場合は軌跡か、それを辿ればある程度は行った場所を予測出来る……自分の後ろに回った、だとかな。

 さっきの彼は……目の前に止まったんだから軌跡も何も、無いんだけどね。

 それでも速さには慣れてる俺の目は、少し前の彼の動きであればギリギリ追えたんだ。

 

 

「……いきなりだったからかなぁ……それとも……」

 

 

 それでもギリギリだから、勘の域は超えないが。

 それが真実だとすれば……それは物語で言う、主人公補正。

 つまり、急成長だったとしたならば。

 

 

「……なわけないか」

 

 

 なんてな。

 淡い期待だ、また会うかも微妙な相手に、そんな事を思うとは。

 ……まあ、あれだ。

 

 

「……私が死ぬのは、いつになるのかな」




一日空きました。
昨日は色々ありまして投稿を見送りました、すみません。
おそらく平常運転に戻れると思います……はい。
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