願わくば、意味のある死を   作:虚憂

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新たなる出会い

「ここ、彼等もここまで来ない筈」

 

「ん、了解」

 

 

 少女の言う洞窟に着いたが……生活の跡があるな、と言うか思いっきり誰かが生活してる?

 

 

「ここ、もしかして誰か住んでたりするの?」

 

「私」

 

「……ん?」

 

「私、街の方の家とか、物は全部壊されたから」

 

「え」

 

 

 女の子になんて生活させてんだ?

 街の奴等……いくら何でも過剰じゃねぇかよ、これは。

 

 

「取り敢えず、傷の手当てするね」

 

「……必要無い、もう治りかけ」

 

「え?流石にそれは……」

 

「ほら」

 

 

 そう言って、頭の傷があったであろう場所を見せてくる。

 ……確かに治ってる、現在進行形で。

 

 

「……えと、これって?」

 

「私の体質、傷は治るし海とも話が出来る」

 

「水を纏ってなかったっけ」

 

「それもそう」

 

「失礼だけど、いつからこうなってたの?」

 

「……海がこうなってからだと思う、お母さんも同じだったから」

 

 

 海がこうなった……って事は例のトンデモな日で間違い無さそうだが。

 だが同じって何だ、魔力は受け継がれたりする物なのだろうか。

 ……うーん、そこら辺はドクターにまた聞かないとかな。

 

 

「それでも、包帯と消毒をしても良いかな」

 

「……必要無いけど」

 

「どんなに治ってても怪我は怪我、放置はダメだよ」

 

「……分かった」

 

 

 分かればよろしい、と言う事で持参してある包帯と簡易医療キットで手早く治療する。

 このご時世だ、何でも良いから傷口を掃除出来る物と、出来る限りで良いから綺麗な布を持っていれば、少なからず不慮の怪我が悪化した、ってな事は減少すると思う。

 ついでに、彼女の事を聞いておこう。

 

 

「……お母さんも、そうだったんだ」

 

「うん、お母さんの頃は、海がまだ大人しかったから、街にも受け入れて貰えてた」

 

「……えと、そのお母さんは……」

 

「二年前に亡くなった」

 

「……ごめんね」

 

「大丈夫、もう折り合いは付けてる」

 

 

 淡々と俺の言葉に返事をしてくれる少女。

 ……強い子だな、親も居なくて、街からは迫害を受けているのに。

 

 

「貴女は、何でここに来たの」

 

「ん、私?」

 

「そう、余程の物好きとかでも無い限り、この浜には誰も来ない、呪われてるらしいから」

 

「……近寄らせない為の口実じゃ無いかな」

 

「多分、でも石を投げに時々彼等がやって来るから、意味無いとは思ってる」

 

「あー……まあ例外だから気にしなくて良いと思うよ」

 

「そう……で、どうして来たの」

 

「ここに来たのは、ボ……親代わりの人に、この街に住んでるらしい人を、探してうちまで連れて来てって頼まれてたからだよ」

 

 

 危な、見た目ただの女の子なのに、ボスとか何となく不自然だろ。

 それ以前に何かの組織の一人であるだなんて、出来るだけバレない方が良い気がする。

 

 

「そうなんだ、でも何で浜なの?」

 

「その人、会うのは数年ぶりらしくて、最後の記憶によれば、その人浜が好きだったらしいから、もしかしたらって思ったんだけどね」

 

 

 と言うかボス、浜が好きな人って何だよ、情報が少なすぎるんよ。

 その癖にボス達この街付近の施設やら何やらの調査で居ないしさ……こう言うの当事者がやった方が絶対効率良いんだけど?

 

 

「残念だけど、お母さんが死んですぐに私がここに来たから、少なくとも二年間は誰もこの浜には近付いてない、彼等を除いて」

 

「……当ては外れか、残念」

 

「それ以前ならそれなりに居たけど」

 

「詳しいね」

 

「……よくお母さんと二人で通ってたから」

 

 

 うーん、どうしたものか……街に聞き込みは行き辛くなったし、そもそもあんな所に聞きに行きたく無いかも、行かなきゃなら行くけども。

 

 

「私の所為で、ごめん」

 

「え」

 

「あの時関わらなかったら、貴女はその探し人を探せてた筈だから」

 

「それは違うよ?」

 

 

 ネガティブにならないで欲しいかなぁ。

 アレは俺が勝手にやった事だし……って言っても、気に病むんだろう。

 だから、今言うべきはそんな言葉じゃない。

 

 

「貴女と彼等、どっちに近寄りたいかなーって考えた時に、貴女の方だったから」

 

「?」

 

「助けようと思ってた訳じゃ無いって事。変な事したら石を投げられそうな人達には近寄りたく無いかなぁ」

 

「……そう」

 

「そう言う事だよ」

 

 

 こう言う時は思いっきり言った方が良いとは思う、そりゃ気にするなって言って気が楽になるならそれが一番良いが。

 それにしても表情が変わらない……側から見た昔の俺ってのもこんな感じだったのか?

 

 最近は作った表紙や仕草(演技)を多用してるけど、相変わらず俺自身の気持ちを反映してくれない表情筋。

 笑う時にも、顔をこう動かして……ってな感じで片隅の方で意識しなきゃならんのは結構面倒だ、どうなってるのかなぁ。

 

 

「あ、そうだ」

 

「?」

 

「自己紹介してなかったかなって」

 

「……確かに」

 

「私は如月(きさらぎ)涼音(すずね)、二月の如月に、涼しい音で、涼音だよ」

 

「……(みぎわ)朱璃(しゅり)……渚と、朱雀の朱に、瑠璃色の璃で朱璃」

 

「よろしくね、渚さん」

 

「……よろしく」

 

 

 そう言えば、何でボスはその人の名前教えてくれなかったのかな。

 その人の苗字で探せばすぐだったのでは……今更か。

 恨み言より行動をしなきゃなんだが……手掛かりが無い、本当に。

 

 

「これから、どうするの」

 

「んー……暫くはこの街に居るよ、探し人を見つけないとだから」

 

「……場所とか、大丈夫?」

 

「街の方で宿泊させて貰え……あ」

 

 

 そう言えばどうしようか。

 この街は街と呼ばれては居るがそこまで規模が大きい訳じゃ無い、石投げしてた人達は口が軽そうだし、噂が広まるのは早いだろう。

 ……あれ、結構不味いか?

 

 

「……場所が無いなら、うちに泊まって」

 

「え、良いの?」

 

「私が原因だから、当然」

 

 

 荷物は……最悪魔力使えば良いか。

 ……それよりも。

 こんなに良い子で、街も助けてるのに、何で彼等は迫害してるんだ?

 本当に魔獣達を操ってマッチポンプじみた事をしているんだとしたら、彼等がやっている事は自分の首を絞めているだけだ。

 

 魔獣を操れる子に対して迫害とか、復讐されるとか思わんのかな。

 この街の防衛力はまだまだ低い、見た感じかなり量が居る海の魔獣を捌ききれるか、と言われるとちょっと怪しいと思う。

 言ってしまえば、この街はこの子の匙加減でどうとでもなると言う事だ。

 

 

「……どうしたの」

 

「あ、ううん……ありがとう、渚さん」

 

「朱璃で良い、苗字呼びは変な感じがするから」

 

「……分かった、私も涼音で良いから」

 

 

 ……と、物騒な事を考えてるが、彼女にそんな気持ちは無いんだろうか。

 恨み辛みを抱えててもおかしくは無いんだが。

 

 

「ねえ、朱璃ちゃん」

 

「朱璃」

 

「え?」

 

「呼び捨てて、その呼ばれ方、好きになれない」

 

「あ、うん……朱璃?」

 

「……どうしたの」

 

「朱璃は、この街に……」

 

 

 ……いや、何聞こうとしてるんだ?

 そんな事、知り合って一日も経って無い俺が聞いて良い事じゃ無い。

 

 

「ごめん、何でも無い……自分の荷物取って来るね」

 

「?……気を付けて、街の人達は噂好きだから」

 

「分かった」

 

 

 洞窟を出て、歩きながらさっきの自分を振り返る。

 何でいきなり聞こうとしたんだ?

 彼女に同情でもしたんだろうか、俺は。

 

 

「……聞いて何がしたかったんだろ」

 

 

 もしも恨んでる、とか答えられたらどうしてたんだろうか。

 そう、と言うだけか、一緒に復讐するのか、それを諌めるのか。

 ……どれにせよ、踏み込み過ぎだろう。

 何故か名前を呼び捨てる事になったが、出会ってまだ一日も経ってない。

 

 ……さて、これからどうなるんだろうか。

 ハードなのは確定してる、それならそれでやりようはあるんだ。

 情報集めに、彼女の現状に対する何か、か。

 

 

「……これから、どうなるんだろうね」

 

 

 まずは一旦、荷物を取って来よう。

 考える事は、それからだ。




投稿に関してちょっと安定しないです。
一日一話投稿が作者が理想としてた事ではあるので、それを基準にするつもりではあるんですけどね、一応。
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