願わくば、意味のある死を   作:虚憂

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キッカケが来るのは、心構えを持つより早い

 不思議な友達が出来、運良くその子と殺し合う日が来ないまま、既に……何日だろう、数ヶ月……いや、数年は経っていると思う。

 相変わらずここは窓のある部屋にはならないのだけど。

 

 

「ぜろちゃん」

 

「どうしたの」

 

「なんでもない!よんだだけ!」

 

 

 なんせ俺と同じくらいだった少女が、少しばかり目線を上にしなければならなくなっているからだ、成長期だったとしても数ヶ月はあり得ない、と思いたい。

 俺は……ほんの少し伸びた筈、多分、きっと。

 

 あとこの不思議な少女はやっぱり俺以外にも友達……みたいなものをそれなりに作っているらしい、至る所で誰かと話しているのを見かける。

 こんな環境なのに友達を多く作る行動力はすごいと思うし、尊敬だってする。

 

 

「〜〜♪」

 

 

 だが少なくとも一日?一回はこちらに来るのは流石にやめて欲しい、背後に居る直前まで話してた子や、その他周りの子の視線がすごいのだ。

 

 

「チッ」

 

「人形か」

 

「またあいつ……」

 

 

 うーん、凄まじい嫉妬と言うか、警戒心と言うか……君ら殺し合うよね、すごい絆されてるけど大丈夫なのかな。

 そんな中、原因である少女とは、と言うと。

 

 

「えへへ」

 

「……」

 

 

 嬉しいオーラ全開でこちらを見ている。

 

 ……。

 

 この笑顔を見ると、表情は変わらないにしろ、まぁ良いか、と思ってしまう。

 大概俺も絆されている様だが、悪い事ばかりではない、と思う。

 なにせ俺と言う、このピンクの少女に悪影響を及ぼす敵が少年少女達の中に生まれるんだ。

 それが生きるための活力になるのならそれで良し……まぁ大半はそうではない様だが。

 

 そんな事を考えていると、檻の外から、乱雑に床を踏み鳴らす音が近付いて来た、時間かな。

 しかし今日は人が多い、いつもは一人二人なのに、今日は四人も、何かあるのか。

 

 

「おい、零番、時間だ、出て来い」

 

「……」

 

「今日は()()の皆様も見物にいらしてる、下手な事すんじゃねぇぞ」

 

 

 ああ、そういう。

 この粗野な連中も珍しく身なりを整えているのは上役様がいるからか。

 

 だから俺が呼ばれた訳だ、よく殺す俺が。

 

 そういえばコイツらの目的は……なんだろう、魔力だとか言うとんちきなものを、子供である俺たちに発現?させようとしてるらしいことは知ってるんだけども。

 看守どもがなんやかんや言ってるのを、こっそり聞いたからな。

 

 ただ下っ端らしいコイツらからそれ以上は聞けず、魔力だとかそれらに関する云々は全く分からない。

 

 ただ戦いの道具として扱う為にしては簡単に命を散らせているし、肉壁とするにはかなり手間のかかる方法っぽいし……それなりに大事な事なんだろう。

 

 

「ったく、なんでこんなところに幹部様が……」

 

「他支部の……ほら、例のガキの試験運用だとか」

 

「なんでも、この世代の()()とやらせたいらしい」

 

「ほぉ……こんな薄気味悪ぃガキがねぇ……」

 

 

 ……。

 

 優秀ね、まあ俺に当てはまる、と言うのならば、そう言う優秀さなのだろう。

 例の子供、と言うのは……蠱毒の壺の中で生き残った子供同士なら、魔力とやらが出るかもしれない、って思っての行動なのか。

 

 

「お偉い様の考えなぞ俺らに分かるわけもねぇ、俺らはただ命令に従えば良い」

 

「そうだなぁ……おら零番、さっさと行って来い」

 

「……はい」

 

 

 所々に拭い切れていない血が滲む、試合場。

 それなりに大きいと感じていたソレは、今日に限り……とても狭く感じる。

 一歩一歩歩いて行く度に、明瞭になって行くのは、人、人、人……彼らが全員、悪趣味な蠱毒の見物を目的にした、悪人なのだろう。

 

 

「……」

 

 

 そしてその中央に映るのは優秀らしい、金の少女。

 不思議っ子にも言えるけどさ……何でこう見た目も優秀なんだろうね、この子ら……俺もだけど。

 ……俺もだけど!

 

 

「……」

 

「……」

 

 

 俺と、相手の少女の視線が合う、が……言葉は無い、こんな中で話す事がある方がおかしいけど。

 あの不思議っ子なら、お構いなしに話しそうだなとも、感じる。

 

 

「よぉし、揃ったな?……ひひ、それでは今から、番号七百七十二番と、零番による、試験運用を開始する」

 

 

 ……試験運用?

 

 

「ッ……」

 

「……」

 

 

 俺が構えるのはいつものナイフ、お相手は……持って、ない?何でだ。

 ……嫌な予感しかしないが、間合いには気を付けよう。

 

 

「……始め!」

 

 

 始まった、まずは初動を見て、背後に回らない……と?

 

 

「……なに、それ」

 

「?」

 

「……モヤ、みたいなの」

 

「!……見える、んですか」

 

 

 開始と同時に、踏み込もうとして……少女の周りに、モヤが浮いているのに気が付いた。

 なんだアレ、近付きたくない、嫌な予感がする。

 

 

「うん、でも……やらないと、ですね」

 

「……」

 

「……『切り裂いて』」

 

「……!?」

 

 

 少女がモヤに、何かを命令したと思えば、結構な速度でこちらに迫って来る。

 嫌な予感、これは……あの時と、同じ……!!

 

 

「あぶ、ない……!」

 

 

 直感的に、後ろからの圧力を感じ飛び退く。

 するとあら不思議……なんて言ってられない、なんせ地面が抉れたのだ、文字通り。

 

 

「避けるんですね」

 

 

 抉った本人は、極めて無関心。

 

 呑気だな。

 同い年くらいの少女に、試験運用という言葉と、いきなり過ぎる試合……バカでも分かる、これがっ。

 

 

「まりょく……!」

 

「そうです、零番、さん」

 

 

 少女から感じるのは……無、もはや何も感じない、と言いたげな顔だ。

 ……そりゃ、人を殺せばそうなるか。

 

 俺みたいに、自分勝手な何かを抱かなければ……いや、抱いていたとしても何人も殺しといて、未だ心を保ててる俺は異常だ。

 成る程、確かに()()らしい、俺も、目の前の少女も。

 

 

「……」

 

「大人しく、死んで下さい……『切り裂いて』」

 

 

 心を壊した健全(まとも)な少女と、心を保つ異常な俺……なんの因果なんだ、本当に。

 だが……。

 

 

「どうして、そんな……」

 

「……?」

 

 

 無なのに、どこか……違和感を感じる。

 だが同時に、その違和感に触れちゃいけないという気もしている。

 

 考えろ、俺。

 触れるのならどうする、触れないならどうする、という事だが……。

 懐に潜り込んで、みるか。

 

 

「ッ!」

 

「……近付かせ、ません……『切り裂いて』」

 

「ぐ、ぬ……」

 

 

 モヤがある所が、抉られるんだとするならば。

 ……多少なら触れても大丈夫、か?

 

 

「……いく、しか、ない……!」

 

「な……」

 

 

 掠った肩や、腕、脚に、これまでの物よりも鋭い何かが切り付ける。

 痛い……痛いが、()()()()()

 

 正気じゃない様に映るだろう、だが、俺に出来るのは、これくらい。

 更に踏み込み、床を蹴る。

 少女の懐まで……これ、なら……!

 

 

「とっ、た……!」

 

 

 即死を狙える、いつもの場所じゃない、だが、そんな事が出来るほど、俺は強く無い。

 一気に、突き刺す!

 

 

「『渦、巻いて』……ごめんなさい」

 

「……え」

 

 

 ……嘘でしょ。

 過酷な人生を送っていても、俺には一瞬目の前の現実が非現実だとしか思えなかった。

 

 ()()()()()()、文字通りに、刃がモヤに遮られている。

 

 

「ッ……」

 

「無駄ですよ」

 

 

 それどころか、鈍い音を立て、俺のナイフが折れた。

 無理矢理押し込もうとするべきじゃ、なかったかっ。

 

 

「そこに居ると、危ないですよ」

 

「……ぁ……!」

 

「『切り裂いて』」

 

 

 やば、後ろに飛べ……ない!?

 何故……モヤか!

 モヤっとしたものが俺の進路を邪魔しているのが見える。

 

 だったらせめて、防がないと    ッ!?

 

 

「ッ……ぐ、ぁ……」

 

「……凄いですね、零番さんは」

 

 

 そんな暇もなく切り裂かれた、肩から、大きく。

 ……ヤバい、死ぬ。

 

 いや、死ぬならそれも?

 この世界に親族が居るとも思えない、居たとしても顔すら覚えていない人に何か感じるものは無い。

 

 いや、でも、不思議っ子は……悲しむか、すまん、本当に。

 

 

「まるで、()()()、みたいに」

 

「ぜろちゃん!!」

 

「……ぇ」

 

 

 ちょっと、待て。

 檻は閉められて……え?は?何で?

 見慣れた、桃色の髪に、聞き慣れた声。

 その目は、不安と、焦りに染まりながらも……俺を支えている。

 

 

「……どう、やっ、て……でて、きたの」

 

「あいてたの!そんなことより!ちが!?」

 

「……」

 

「……ぉいおい、どっから出て来たんですかねぇ、今は大事な行事の途中なんだ、出て行きなさい?」

 

「いや!ぜろちゃんにてをださないで!」

 

 

 いや、いやいやいや。

 相変わらずこの子が関わると急展開で困る。

 

 

「チッ……ん?おや、確か……ふむ、勿体無いですが、邪魔をするなら関係ありません、七百七十二番、二人ともやってしまいなさい」

 

「……」

 

「……七百七十二番?聞いているのですか?」

 

「……ん、で……」

 

 

 ……ぐ、なんか眠くなって来た……が、もっとヤバい、俺が触れるべきじゃ無いと思ってた何かに、触れちまったか……!?

 

 

「あ、ぁぁ……ご、ごめん、なさ……いや、やだ……」

 

「七百七十二番!?落ち着きなさい!」

 

 

 科学者風の男が、慌て始めた、ヤバい気がする。

 モヤが、爆発しそうになりながら、少女の周囲を渦巻いている。

 非常に嫌な事ではあるが、この施設に来てから、この勘は外れてくれない……くそ、この子だけでも……!

 

 

「ッ……はな、れて……あぶ、ない……!」

 

「やだ!はなれない!」

 

「そん、なこと……いっても」

 

 

 ならせめて、俺を盾に……!

 でも、ダメだった。

 遅かったことに、勘付いたのは……張り裂けん程の叫び声を、聞いてしまった後だった。

 

 

「ああぁぁぁぁぁっ!!!!」




キリが悪い気がしなくも無いけど、ここで一旦終わり。
なんか予想以上に重くなってってる……なってない?
もう少し表現豊かになれれば良いんですけどねぇ、作者。
ひらがな文が読みにくいのはすみません。
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