願わくば、意味のある死を   作:虚憂

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間話:とある男の独白

「が、は……クソ、痛ぇじゃねえか、おい」

 

 

 試合場で何やったんだよ、お偉様方はよ。

 ガキ共を殺し合わせて悦に浸る訳でもなく、ただ経過を見守るだけのイカれた奴ら。

 お偉方の中には楽しむ趣味の悪ぃのも居たのかも知れねぇが、俺の知った事じゃねぇ。

 

 

「おい、アホ共……ちっ、全員潰れてんのか」

 

 

 どうやら俺は幸運だったらしいな、他の同僚(アホ)共はみんな潰れてやがる。

 この建物は構造的に一箇所壊れりゃ全部落ちる、壊れるまでは強いが壊れたらそれまで、幹部様も潰れてんだろ。

 

 

「あのガキ……」

 

 

 達観した顔で、何考えてるのか分からん小憎(こにく)らしいガキ……ちっ、何であいつの顔が思い浮かぶんだか、忌々しい。

 

 

「……」

 

 

 最初にあのガキを見たのは、当時の施設に連れて来られて、戦いを教える事になった時だった。

 不幸な事に俺が担当になったからなぁ、よく覚えてる。

 来た当初は戦い方も知らねぇど素人だった癖に、今じゃ……ああくそ、やめだやめだ、なんでこんなジジくせぇ考えしなきゃなんねぇんだ。

 

 

「……ねぇ」

 

「あ?……生きてやがったか、ガキ」

 

 

 いつの間にか目の前に来ていたガキ。

 こいつも俺も悪運が強ぇこったな。

 こっちをジロジロ見やがって……何だおい。

 

 

「……その、きず」

 

「……はっ、ガキに心配される程ヤワじゃねぇよ……んで、何の様だ、殺し合わせた俺達に復讐でもしに来たか?」

 

「……ちがう、ただ……こえ、きこえた……から」

 

「生きてピンピンしてるかも、ね……見ての通りすぐにゃ動けねぇさ」

 

 

 相変わらずすました顔しやがって、気に食わねぇガキだ。

 このお人好しのこった、どうせ生き残った……ピンクのガキと逃げる途中で、声が聞こえて先に来たって所だろうよ。

 

 

「……他の奴らは潰れてる、応援もすぐには来ねぇだろ、逃げるならさっさと逃げるこったな」

 

「……やっぱり、あなた?」

 

「ああ?」

 

「かぎ、あけて……あのこ、にがしたの」

 

「知らねぇな、偶々開いてたんだろ、カギが」

 

「……そう」

 

 

 ……ちっ、やめろその目。

 何であんな事したのか、バレりゃ食い扶持を無くすってのに。

 くそ、ガキが来る前ならこんな事しなかったんだろうによ……情でも湧いたのか?俺。

 

 

「……けっ」

 

「?」

 

「おら、さっさと行けよクソガキ……それとも、まだ何かあんのか」

 

「……まりょく」

 

「返事しろよ、ったく……魔力ねぇ、そもそも下っ端の俺が教えると思ってんのか?」

 

「……きき、だす、だけ……」

 

 

 そう言って、不慣れな手つきで俺の首に刃折れのナイフを突き付けやがった。

 殺し合いは慣れてても、脅しは慣れてねぇってな。

 

 

「脅し、ね……はっ、良い度胸だなぁ?」

 

「……」

 

「だんまりか……わぁったよ、つっても教えられる事は少ねぇが」

 

 

 幹部様方から俺ら下っ端に流される情報は多くねぇ。

 だが従ってりゃ生きるのに困らねぇ、そう言うのが集まったのが下っ端(おれたち)だ、少なくとも俺と同僚はな。

 

 

「俺らに命令されたのは、ガキ共に負荷を与える事だ」

 

「……ふか?」

 

「ああ、お偉方は負荷を与えりゃその魔力とか言うモンを発現させられる……って言ってやがった……それだけだよ」

 

「……」

 

 

 多分こいつには発現しなかったんだろうな。

 あの時以降、こいつは感情を閉ざし気味だからなぁ。

 ……ああくそ、そこが一番気に食わねぇ!

 

 

「ちっ」

 

「?」

 

「なんでもねぇよ」

 

 

 ガキのくせに一丁前に背負いやがってクソガキが。

 ……ちょいと試すか。

 

 

「どうせ、お前には発現してねぇんだろ?ガキ」

 

「……かんけい、ない」

 

「ねぇな、確かに……だからこれは俺のエゴだ、()()()を思い出してみろよ」

 

「!……うる、さい……」

 

 

 思った通りだ、まだネチネチ考えてんのか、あの事を。

 だからテメェはお人好し何だよ、クソガキ。

 

 

「確か……ああそうだ、来てから一ヶ月程度ん時だったよな?」

 

「やめて」

 

 

 あん時は性格の悪いジジィがまだ現役だった。

 

 

「アホな事に、お前が相手のガキと引き分けになろうとした」

 

「だま、って……!」

 

 

 黙るかよ、黙ったら()()()()

 

 

「それを見破った当時の担当……()()()()のジジィが、お前と相手のガキを、懲罰と称してボロボロにしたんだっけか?」

 

「……」

 

 

 あのジジィ、どっから用意したのか知らんが、アホ程熱されて真っ赤になったムチで、背中をしばいてたな。

 他にもやってたが、アレが一番ひどかった、傷口を見た同僚が吐くぐらいだったんだから間違いない。

 

 

「んで、自白したお前に、お相手のガキが、なんて言ったんだだっけなぁ?」

 

「ッ!」

 

「その言葉がキッカケで、お前は容赦を捨てた」

 

 

 いや、()()()()()()、の方が正しいかもな。

 中途半端に生かすくらいなら殺すと、そしてその罪悪は自身で背負うと。

 イライラする程のお人好し、しかも自身を度外視したその姿勢が気に食わねぇ。

 

 

「うるさい……!」

 

「は、図星だろうが……!で、思い出せねぇなら言ってやるよ、確か……」

 

「や、めろ……!」

 

 

 ナイフを更に強く押し付けてくるが、ここまで来たら関係ねぇな、早いか遅いかだ。

 

 

「『ゆる、さない……なんで、こんなこと、するの……?』……だったなぁ?」

 

「ぁ……」

 

「そう言ってくたばりやがって、迷惑なこったよなぁ?八つ当たりにも程が    

 

 

「ちがう!」

 

 

 そう叫ぶあいつの手が、赤く、稲光を発しやがった。

 ……違ぇな、ありゃ赫か?珍しいこった。

 だが、出来たじゃねぇか。

 

 

「ッ!?」

 

「……やりゃ出来るんだな、お前にも」

 

「……なんで」

 

「少なくともソレがありゃ何とかなるだろ、お偉方が欲しがってた力だ」

 

 

 ソレがどんなモンか、俺には分からんが、あんな爆発起こしたのも、ソレだったんなら……なぁ?

 少なくともこんな爆発とかさせなきゃ、持ち主に損はねぇだろうよ。

 

 

「おら、行け、もう用事は済んだろ」

 

「……」

 

「何だおい、ガキに心配される程じゃねえって言ったろ、さっさと行ってくたばっちまえ」

 

 

 そう言っても行きやしねぇガキ。

 何か言いたげだが、聞いてやる義理は……。

 

 

「あり、がとう」

 

「……ああ?テメェの過去を掘り返して悦に浸っただけだよ、その表情を崩せなかったのは残念だがなぁ?」

 

「ん……さよ、なら」

 

 

 そう言って駆け足で去るガキ。

 ……ちっ。

 さっきまで焦ってた癖に、すぐに冷静になりやがる、本当にガキかよあいつ。

 

 だが、とりあえず、とりあえずは。

 

 

「……言い、切れたか……」

 

 

 喉の奥から込み上げて来る熱いモノ、思わずソレを吐き出してしまう。

 赤……まるで意図したかのようなタイミングだな。

 だが、出来る事はしてやった、後はあのガキ次第だ。

 

 

「……どうしちまった、んだろう、なぁ……」

 

 

 ……慈悲とかそんな感情じゃねぇ。

 散々ガキを殺し合わせて生き延びてきた俺に、今更そんな感情が湧く訳ねぇ。

 だが……あれは……。

 

 

「気に食わねぇ、ガキ……」

 

 

 あのガキの、あの時の決意。

 罪を背負う、そんな決意をしたあのガキに、ただ……。

 

 

「はっ……何、考えてんだ、俺は……」

 

 

 寒ぃ、血が足りねぇか。

 こんな世界でも、しぶとく生きて来た俺だったが……終わりが、こんな呆気ないとはな。

 

 

「……呪われた『人形』ね……」

 

 

 同僚達の間で流行ったあいつの呼び名、ガキ共はただ人形と呼んでたらしいが。

 あの後、ガキには嫌な気配が付き纏っていた。

 ちょうどよく嫌味ったらしいジジィはあの後すぐに死んだし、あのガキに呪われたかーってな。

 実際は、歳と……近寄るな、って意思の表れだったんだろうが。

 

 あんまり近寄らねぇ俺ですら感じ取るソレは、ガキ共には余計不気味に感じ取れただろうよ、恐怖としてな。

 だが、ピンクのガキ……ソレをお構い無しに突っ込んで行った奴が居ると、ソレが薄まっていた、つってもピンクの奴も大概だが。

 

 

「幸あれ、なんて……言える立場、でも……奴でも、ねぇが……」

 

 

 理由はどうあれ、俺もあいつも人殺しで、幸せを奪った立場だ。

 少なくとも、天国にゃ行けねぇよ。

 

 

「……笑顔を……なんて、な……俺らしく、ねぇ……」

 

 

 微笑みじゃ生ぬるい。

 あの無表情が、思いっきりバカみてぇに笑えるようになるくらい、幸せになれ。

 アレを罪と思うな、悔やむくらいならアホほど楽しみやがれ人生を。

 生きてる間は、ソレくらいしたって良いだろうよ。

 

 

「……」

 

 

 眠くなって来た、そろそろ限界か。

 俺の人生は悪人のソレで……実際、誰かを不幸にしかして来なかった癖に、俺自身も満足してねぇとか言う最低な人生だが……。

 

 

「……最後だけは、それなりに、満足だ」

 

 

 地獄(あのよ)に、早々来んじゃねぇぞ、ガキ。




男は悪人です、それだけははっきり言えます。
男がオリ主に抱いた感情は、果たして何だったのでしょうかね。

それはそれとして、この話を差し込んだのは、補足の為です、とだけ。
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