願わくば、意味のある死を   作:虚憂

8 / 24
血に塗れて、青春が始まる

「……潜入調査?」

 

「ああ、そう言う事になる」

 

「イキナリ、ダナ」

 

「それに関してはすまないね。俺もこの段階でそこに踏み切るつもりは無かった」

 

「……襲撃、カ」

 

「そう言う事だ。お前らも知っての通り、最近は奴等の兵の質が上がって来てる。魔力持ちはまだ居ないみたいだがな」

 

 

 難しい顔をしたボスが、淡々と事実を説明する。

 うん、そこら辺は俺含め全員が把握してる事だ。

 

 

「俺達基準ではそれ程強いとは言えない。だが……ドクター」

 

「はい、これを見て下さい」

 

 

 そう言ってドクターから差し出されたのは……学校の写真か。

 ……学校?

 

 

「学ビ屋ガ、ドウカシタノカ」

 

「ただの学校ではありませんよ。これは魔力持ちを集めた学校です」

 

「……魔力持ちを?」

 

「ええ。ボスの命により、この学校について調査を進めて居たのですが……この学校は、魔力の扱いを教える、と言う名目で幅広い年齢層の人材を集めているそうです」

 

 

 ほー……合理的ではあるか。

 魔力の発現は、年々容易に、そして頻繁に起こるようになって来ている、まるで魔力自体が人に馴染み始めたかの様に。

 ……俺や彼女達みたいに無理矢理発現させられるのはレアケースである、と言って良い。

 

 

「現時点では、襲撃隊に組み込まれる様子はありませんが……そう遠くない未来に、志願制で組み込まれる日が来る可能性があります」

 

「……と言う事で、だ。お前には、あの街に生徒として行ってもらう」

 

「……」

 

 

 ……ん?

 こちらを見るボスと、ドクター。

 そういや俺、ちゃんと呼ばれる名前とか持ってな……いや待って?

 

 

「え?」

 

「お前にしか出来ないから、頼むぞ」

 

「いや、待って……」

 

 

 潜入調査と言われても、まず大前提としてバレない事が必要な訳だが、俺は……。

 

 

「……顔、バレるよ。確実に」

 

 

 灰の髪に、青い目。

 おまけに俺はほとんど表情が変わらない、いくら五年も経っているとしても、これだけあれば、少なからず疑われる。

 

 

「ああ、それに関してはこれを」

 

 

 そう言ってドクターから渡された眼鏡。

 

 

魔瞳(まどう)封じの眼鏡です。それをかければ多少マシかと」

 

 

 へえ、そんな物あったのか。

 ちなみに魔瞳、と言うのは例のモヤが見える体質の事だな。

 それはそれとして……眼鏡かけただけで騙せる程印象変わるか……?

 

 

「ああ、戦闘などの際には外して頂けるとありがたいですが」

 

「それじゃダメじゃない?」

 

「容姿に気を遣えば色々と印象は変わる筈だ。そして……後一年で出来る限り表情を作れる様になれ」

 

「え」

 

「作り笑いだとかの偽物で良い。そうすれば、()()()のお前の印象から自ずと離れるだろう」

 

「……了解」

 

「……気負う必要はない、楽にしておけ」

 

 

 その後、学校での使用する魔力や戸籍、名前など……俺が学校に行く為の準備は着々と進んで行った……行ってしまった。

 

 そして一度、違和感が無いのかのチェックを行う……つまり、変装してみる事となった。

 

 

「……これで、良いの」

 

「ああ……面白いな、髪型と眼鏡だけでここまで変わるか……表情はどうだ」

 

「ん……こう?」

 

 

 今の俺は長い髪を横で一纏めにしている、サイドテールと言う奴か。

 いつもはおろしたまま。

 詳しい髪型の分類なんて俺が知っているはずもなく、ということは男連中は俺以上に知らない訳だからな、こうなる。

 

 そして表情は微笑み程度だが、鏡の前で格闘して作った笑顔である。

 笑ってないのに笑うの、意外と難しい物なんだな。

 まあ面白い事があっても笑わない顔だからかも知れないが。

 

 

「お、おお……なんか違和感凄いな。寒気すら覚える」

 

「違和感の塊ですね」

 

「誰ダ」

 

「引っ叩くよ?」

 

 

 失礼過ぎだろ。

 特にオーガ、工程見てるんだから誰なのか程度分かるだろ、おい。

 ……ああ、オーガは鉄鬼人(オーガ)、と呼ばれるカタコト人間。

 以上……この人の事はそんな知らないんだよな。

 初めて会った時、見た目にそぐわない優しい態度に、無表情ながら驚いた記憶がある、その程度。

 

 

「失礼……ふむ、これなら最低限の変装は出来た、と言った感じか」

 

「……まあ、うん」

 

「笑顔はこれから慣らして行くとして……じゃあ、名前だな」

 

 

 ……名前か。

 レイ、と言うのは番号から取ったあだ名だ、名前にも出来るが潜入調査には向いていないだろう。

 魔力を使える、なら、あの二人は絶対入学しているだろうから。

 

 

「……うん」

 

 

 自然と、体がこわばってしまう。

 レイを捨てる……いや、とっくの昔に捨てたんだ、今更拾うな、未練を持つな。

 そう考えていると……体は不思議と落ち着いた。

 ……どんな名前でも、こい。

 

 

「お前の、名前は……」

 

 

 

△△▲△△

 

 

 

 そして舞台は、殺伐とした血の世界から、移り変わる。

 

 

「おーし、お前ら喜べ!今日は新しい転校生がやって来るぜ!」

 

「えっ!」

 

「センセー!男ですか?女ですか!」

 

「男だ!……と、言いたい所だが、女だよ」

 

 

 その言葉に男子生徒達はより騒がしくなる。とは言え女子生徒達も、新しい学友(なかま)の存在に、興奮を隠せない様子である。

 

 

「おーおー、一丁前に騒がしくしやがって、ったく……おーい、入って来いよ」

 

「分かりました」

 

「え……」

 

「……」

 

 そう答え入って来た彼女は、そのまま止まる事なく教卓の前まで進んだ。

 そして騒めく彼らを傍目に、黒板に何かを書き記す。

 ……彼女が書き終えると同時に、誰かが教室に駆け込んで来た。

 

 

「遅れまし……た……!」

 

「あ……如月(きさらぎ)涼音(すずね)、よろしくね」

 

「……あ、よろ……しく?」

 

 

 薄い笑みを浮かべる少女に、戸惑いながらもしっかりと相手を見ている少年。

 

 これが……後に、英雄と怪物と称される事となる、二人の英雄譚(ものがたり)の、始まりの一ページ。

 血に濡れた序章(プロローグ)が終わり、英雄と怪物(しょうねんしょうじょ)は既に出会い、関わった。

 

 彼らの出会いが、果たしてどの様な過程をもたらすのか。

 

 

 ……そして、怪物にどの様な(おわり)をもたらすのか。

 

 

「……レイ、ちゃん……?」

 

 

 それはまだ、誰にも分からない。




プロローグ終わり。
次話からほのぼの?学園ストーリーの始まりです。
正直、日常タグがニートになってそうで怖い。
残りを書き切ったので文字数は少なめです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。