「……潜入調査?」
「ああ、そう言う事になる」
「イキナリ、ダナ」
「それに関してはすまないね。俺もこの段階でそこに踏み切るつもりは無かった」
「……襲撃、カ」
「そう言う事だ。お前らも知っての通り、最近は奴等の兵の質が上がって来てる。魔力持ちはまだ居ないみたいだがな」
難しい顔をしたボスが、淡々と事実を説明する。
うん、そこら辺は俺含め全員が把握してる事だ。
「俺達基準ではそれ程強いとは言えない。だが……ドクター」
「はい、これを見て下さい」
そう言ってドクターから差し出されたのは……学校の写真か。
……学校?
「学ビ屋ガ、ドウカシタノカ」
「ただの学校ではありませんよ。これは魔力持ちを集めた学校です」
「……魔力持ちを?」
「ええ。ボスの命により、この学校について調査を進めて居たのですが……この学校は、魔力の扱いを教える、と言う名目で幅広い年齢層の人材を集めているそうです」
ほー……合理的ではあるか。
魔力の発現は、年々容易に、そして頻繁に起こるようになって来ている、まるで魔力自体が人に馴染み始めたかの様に。
……俺や彼女達みたいに無理矢理発現させられるのはレアケースである、と言って良い。
「現時点では、襲撃隊に組み込まれる様子はありませんが……そう遠くない未来に、志願制で組み込まれる日が来る可能性があります」
「……と言う事で、だ。お前には、あの街に生徒として行ってもらう」
「……」
……ん?
こちらを見るボスと、ドクター。
そういや俺、ちゃんと呼ばれる名前とか持ってな……いや待って?
「え?」
「お前にしか出来ないから、頼むぞ」
「いや、待って……」
潜入調査と言われても、まず大前提としてバレない事が必要な訳だが、俺は……。
「……顔、バレるよ。確実に」
灰の髪に、青い目。
おまけに俺はほとんど表情が変わらない、いくら五年も経っているとしても、これだけあれば、少なからず疑われる。
「ああ、それに関してはこれを」
そう言ってドクターから渡された眼鏡。
「
へえ、そんな物あったのか。
ちなみに魔瞳、と言うのは例のモヤが見える体質の事だな。
それはそれとして……眼鏡かけただけで騙せる程印象変わるか……?
「ああ、戦闘などの際には外して頂けるとありがたいですが」
「それじゃダメじゃない?」
「容姿に気を遣えば色々と印象は変わる筈だ。そして……後一年で出来る限り表情を作れる様になれ」
「え」
「作り笑いだとかの偽物で良い。そうすれば、
「……了解」
「……気負う必要はない、楽にしておけ」
その後、学校での使用する魔力や戸籍、名前など……俺が学校に行く為の準備は着々と進んで行った……行ってしまった。
そして一度、違和感が無いのかのチェックを行う……つまり、変装してみる事となった。
「……これで、良いの」
「ああ……面白いな、髪型と眼鏡だけでここまで変わるか……表情はどうだ」
「ん……こう?」
今の俺は長い髪を横で一纏めにしている、サイドテールと言う奴か。
いつもはおろしたまま。
詳しい髪型の分類なんて俺が知っているはずもなく、ということは男連中は俺以上に知らない訳だからな、こうなる。
そして表情は微笑み程度だが、鏡の前で格闘して作った笑顔である。
笑ってないのに笑うの、意外と難しい物なんだな。
まあ面白い事があっても笑わない顔だからかも知れないが。
「お、おお……なんか違和感凄いな。寒気すら覚える」
「違和感の塊ですね」
「誰ダ」
「引っ叩くよ?」
失礼過ぎだろ。
特にオーガ、工程見てるんだから誰なのか程度分かるだろ、おい。
……ああ、オーガは
以上……この人の事はそんな知らないんだよな。
初めて会った時、見た目にそぐわない優しい態度に、無表情ながら驚いた記憶がある、その程度。
「失礼……ふむ、これなら最低限の変装は出来た、と言った感じか」
「……まあ、うん」
「笑顔はこれから慣らして行くとして……じゃあ、名前だな」
……名前か。
レイ、と言うのは番号から取ったあだ名だ、名前にも出来るが潜入調査には向いていないだろう。
魔力を使える、なら、あの二人は絶対入学しているだろうから。
「……うん」
自然と、体がこわばってしまう。
レイを捨てる……いや、とっくの昔に捨てたんだ、今更拾うな、未練を持つな。
そう考えていると……体は不思議と落ち着いた。
……どんな名前でも、こい。
「お前の、名前は……」
△△▲△△
そして舞台は、殺伐とした血の世界から、移り変わる。
「おーし、お前ら喜べ!今日は新しい転校生がやって来るぜ!」
「えっ!」
「センセー!男ですか?女ですか!」
「男だ!……と、言いたい所だが、女だよ」
その言葉に男子生徒達はより騒がしくなる。とは言え女子生徒達も、新しい
「おーおー、一丁前に騒がしくしやがって、ったく……おーい、入って来いよ」
「分かりました」
「え……」
「……」
そう答え入って来た彼女は、そのまま止まる事なく教卓の前まで進んだ。
そして騒めく彼らを傍目に、黒板に何かを書き記す。
……彼女が書き終えると同時に、誰かが教室に駆け込んで来た。
「遅れまし……た……!」
「あ……
「……あ、よろ……しく?」
薄い笑みを浮かべる少女に、戸惑いながらもしっかりと相手を見ている少年。
これが……後に、英雄と怪物と称される事となる、二人の
血に濡れた
彼らの出会いが、果たしてどの様な過程をもたらすのか。
……そして、怪物にどの様な
「……レイ、ちゃん……?」
それはまだ、誰にも分からない。
プロローグ終わり。
次話からほのぼの?学園ストーリーの始まりです。
正直、日常タグがニートになってそうで怖い。
残りを書き切ったので文字数は少なめです。