『かくれんぼするひと、このゆびとまれ』
私の最初はこの言葉から始まる。
すでに相手の顔も声も思い出せないがこの言葉だけは残っていた。
『かくれんぼするひと、このゆびとまれ』
「わたしなんかがこのゆびにとまってもいいのかな」
周りの子はみんなあの子の指にとまる。
けど私の身体は動かない。
「わたしとあの子たちのちがいはなんだろう」
なぜ迷いなくこの指にとまれるのだろうか。
──とまったあとにどうなるかわからないのに。
悲観的な私が生まれた。
一番最初のイマジナリーフレンド。
いつも下を向いてる私。
「なにかよくないことがおこるの?」
──おこるかもしれない。
生まれて初めて友達と会話をした。
相手は悲観的な私。
難しい言葉だと対話性幻声というらしい。
正直どうでもいい。
「でもあの子たちにはなにもおきてないよ」
──あの子たちはわたしじゃない。
「あの子たちとわたしはなにがちがうの?」
──わたしかわたしじゃないか。
「そっか」
私って何だろう。
あの子たちには私がいなかったのだろうか。
あの子たちは何だろう。
──じゃあ、あの子たちがどんな子かかんがえてみよう。
論理的な私が生まれた。
2人目のイマジナリーフレンド。
一番頼りになるけど頼りにならない私。
だって答えを考えるのはいつも私。
「かくれんぼする子だよね」
──そうだね。かくれんぼはどんなあそび?
「おにからかくれるあそび」
──それだけ?
「うん、ちがうの?」
──ちがわないけど。
かくれんぼは鬼から隠れる遊び。
なら誰にも見つからないところに隠れたらいい。
押入に。ロッカーに。屋上に。宇宙に。
ずっと。ずっと。ひとりで。
何も楽しくない。
それは遊びではないから。
かくれんぼは鬼に見つけてもらう遊び。
隠れて。探して。見つけて。見つかる。
──みつけられなかったら。
悲観的な私が呟く。
──だれにもみつけられなかったら。
──だれもみつけられなかったら。
悲観的な私がうつむく。
「なんでそんなことをいうの」
──わたしだから。
「そっか」
なら私なんかがこの指にはとまれない。
だって私はかくれんぼができないから。
私は誰にも見つけられない。
私は誰も見つけられない。
──なんでかな。
論理的な私が聞く。
「わたしだから」
私が答える。
悲観的な私はうなづく。
論理的な私はうつむく。
──いつか、みつけられるといいね。
どうすればいいかわからない。
だって身体は動かないから。
「かくれんぼってむずかしい」
あの子たちは外で走り回っていた。
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